〜姉崎まもり視点〜
「蓮次、おつかれさん」
「さんきゅムサシ」
試合が終わってベンチへ戻ってきたみんな。
先頭を歩いて来た蓮次君は疲れきった顔していて、ムサシ君がハイタッチをしながら話しかけると軽く返事をしてヒル魔君の元へ向かった。
「で?俺の合否は?」
「90点、キック決められてんじゃねぇファッキンセカンド」
「手厳しいなぁ……初めてクォーターバックをしたんだから100点出せよな」
「俺なら完封出来たしもっと点を取れた、詰めが甘ぇな」
「へーへー、とりあえずベンチ空けるぞ!」
蓮次君がみんなに言うとベンチから引き上げた。
「あれ?蓮次君は…?」
「えー?さっきまでそこでストレッチしてたよ?どこへ行ったんだろう…?」
アイシングやストレッチを終えてからみんなは客席へ行って賊学と巨深の試合の観戦をするんだけど…蓮次君だけが見当たらず栗田君に聞くも知らないみたい。
「もしかして帰った?」
疲れきった様子だったし有り得るかも、私1人で探してみよう。
「あっ見つけた」
携帯に電話しても出ないしどこへ行ったのか探しに会場の周りを歩いていると、蓮次君が1人ベンチに座っているのを見つけた。
「蓮次君」
「…」
声をかけても項垂れていて返事がない。
「蓮次君…?」
近寄ってまた声をかけると寝ていた。
この試合でクォーターバックをするってなってからずっと緊張していたから仕方ないのかもしれない。
いつも授業中寝ているのに今週はずっと起きてこれまでのデータを読んでいたのは知ってる。先生に怒られても無視を決め込んでいて凄い集中していた。私と一緒に考えたサインを覚えるのも必死で、今回初めてやって成功して嬉しかった。
今は初めてのクォーターバックをした緊張感から解放されて眠ってしまったのかも。
「……お疲れ様」
隣へ座って労いの言葉を伝えると何故か私の方へ寄りかかって来て肩に頭を置かれた。
「えーっと、これどうしよう」
起こすのもちょっと可哀想、かといってこのままにしておくのは……。
「お、起きてくれない…?」
軽く揺らしても起きる気配が無く、心地良さそうに寝ている蓮次君を見て諦めて肩を貸すことにした。
「まも姉〜」
「蓮次兄ちゃーん」
「「あっ!」」
「!!」
鈴音ちゃんとセイジ君の声が聞こえ、2人に見つかってしまった。
「やー!まも姉と蓮兄はっけーん!」
「おや〜?あらあらまぁまぁ、蓮次兄ちゃんとまも姉ちゃんったら〜こんなところで逢い引きですか?」
口元に手を当てて笑うセイジ君を見て一気に顔が熱くなってしまった。
「やっ!これはその…ち、違うの!」
「ぷーくすくす、いや〜お2人はお熱いですね鈴姉ちゃん」
「えっ何そのキャラキモ」
「ちょっとは乗って欲しいなぁ…」
「あっそういうノリね了解。やー!ほんと熱いよねセイジ!」
2人に揶揄われて段々と顔が熱くなってきた……。
「あとはお若いのに任せましょ!鈴姉ちゃん、僕達も何か熱いからさっさと退散しましょう!」
「そうしよう!」
2人仲良くルンルンと腕を組んでどこかへ行ってしまった。
「「……」」ニヤニヤ
行ってしまったと思ったらセイジ君が下で鈴音ちゃんが上で柱から顔を出して私達の方を覗いてニヤニヤしている。
「……!!!」
「ぐえっ!」
流石に我慢出来なくなった私は力いっぱい蓮次君を押して離れ、2人を追いかけたのだった。
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〜双葉蓮次視点〜
「いってぇ…」
突然何かに押されたと思ったら地面に倒れていた。
疲れが来てここで休んでいたんだが、誰か来てたのか?
周りを見ても誰も居ねぇし、何が起きたんだ?
「まぁいい、ちょっとだけ寝れたし戻るか」
確か次は賊学と巨深の試合があったんだよな。
次はそのどちらかと試合、見て対策を練らねぇと。
「あっ蓮次兄ちゃ〜ん!」
頭にタンコブがあるセイジが俺を見つけて手を振ると、弁当箱を手渡してきた。
試合はまだ始まってねぇな、両チームアップをしてる最中か。
「はいこれ、まも姉ちゃん特製弁当!」
「おう、ありがとよ姉崎」
「う、うん…みんなの分を作っただけだから別に特別って訳じゃないよ」
座って飯を食べていると、鈴音が俺の隣へ座った。
「蓮兄ってまも姉と付き合ってんの?」
「ウキィ!?」「「!?」」
なんかモン太と山岡と佐竹が反応してる。
「あ?別に付き合ってねぇけど?」
「うっそだ〜!まも姉いつも蓮兄のこと蓮次君って呼んでるしさっきも「しーっ!鈴音ちゃんしーっ!!」…モゴモゴ」
鈴音が何か言おうとした所へ姉崎が口を塞いで止めている。
「離してやれ姉崎、名前ぐらい好きに呼べばいいだろ。俺は瀧と被るから鈴音って呼んでるけど付き合ってねぇだろ?」
「ぷはっ!…うん」
「それにうちは兄弟が多いから苗字呼びされるより名前呼びの方が区別がついて楽なんだ」
「確かに!セイジと蓮兄がいて双葉って呼び分けるの面倒!」
「だろ?だから付き合ってねぇ」
「そっか〜」
「僕的には鈴姉ちゃんよりまも姉ちゃんの方がいいな〜」
「!?」
「どういう意味だセイジ」
「え?だって将来結婚するってなるなら鈴姉ちゃんよりもまも姉ちゃんの方がお姉ちゃん味があるじゃん」
「何言ってんだお前?」
「セイジ〜?私にお姉ちゃん味がないってどういうこと〜?!」
「自分の胸に……あっ…(察し)」
「今私の胸見て言ったでしょ!!」
「痛い痛い!スケートで踏まないで鈴姉ちゃん!!」
「このマセガキ!歪んだ癖を矯正してやる!!」
「ぎゃー!!」
まぁよくよく考えればうちは男ばっかりで女は小4の妹だけ、俺もセイジも姉はいねぇよな…別に欲しいって思ったことねぇが。
「で?実際まも姉のことどう思ってる感じ?」
飯を食い終えてからコーヒーを飲んでいると、セイジに制裁した鈴音がまた話しかけてきた。
「どうって、言わなきゃダメか?」
「ダメー!」
「そうだなぁ…鈴音がセナに抱いてる感情と同じかもな」
「え…?」
「試合始まるぞ、セイジは撮影の準備」
「はーい」
適当に流した俺はセイジに撮影を頼み、試合を見ることにした。
賊学と巨深の試合。
泥門に負けてリベンジを誓っていた賊学だったが…結果は残念ながら巨深の勝ち。
水町と筧の2人に加えて長身選手2人も出てきた巨深は賊学の攻撃をことごとく押さえ込み、実力差を身に染みて葉柱以外の選手のやる気が消失。
42対0で賊学は敗退、秋大会から姿を消すことになった。
「さてと、俺達も上がるぞ」
「あ、あの葉柱さんに挨拶ぐらいは…」
試合が終わってここから去ろうかと思っているとセナが話しかけてきた。
「勝った俺達が負けた賊学に何を挨拶するんだ?お疲れ様ですって言うつもりか?」
「えっと…」
「アメリカへ行く時に世話になったのは確かだがこういう時にかける言葉はねぇよ」
「でも…」
「戦う相手が違えど勝者が敗者に何を言っても相手を傷付けるだけだ。こういう時は心の中で労うだけに留めておけ」
「…」
「分かったら行くぞ。今日の打ち上げはあの焼肉屋らしい、しっかり食って明日から巨深との試合に向けて頑張るぞ」
「…はい」
打ち上げをする為焼肉屋へ到着。
店員がビビった顔をしながら対応してくれてそれぞれテーブルへついて飯を食うことにした。
「やっぱまも姉ちゃんの方がお姉ちゃん味がある」
焼けた肉を皿へ移してくれる姉崎を見たセイジが呟いた。
「まだ言ってる、そんなに姉が欲しかったのか?」
「不器用兄達の下にいる僕の身にもなってくれない?1人お姉ちゃんがいるだけで全然違うよ」
「知るか、兄貴に言え。兄貴の方が先に結婚とかするだろ」
「いや〜長嗣兄さんモテないだろうね〜効率厨で唐変木で頭のネジがぶっ飛んでる程の猫好きを好きになる人なんて居ないよ」
「ひでぇ言われようだな…」
「その点蓮次兄ちゃんモテるでしょ」
「んなわけねぇだろ、セイジの方がモテる。自分で見つけろ」
「鈴姉ちゃんはちょっとお姉ちゃん味が乏しくて…」
「なんで私振られてるの!?」
「まも姉ちゃんは蓮次兄ちゃんのでしょ」
「私は蓮次君の彼女じゃない!勝手に決めつけないで!!」
「やだ、泥門デビルバッツって女性少ない…?」
「「それな!!」」
山岡と佐竹がセイジの言葉に反応した。
「もっと女がいたらやる気出るよな!」
「恋ケ浜とか彼女を連れて来てんだぞ!羨ましくねぇか!?」
「お、おう…そっすね。あのチアの外国人は言葉通じない感じっすか?」
「「英語は無理!」」
「努力してぇ…僕も苦手だけど」
放って置こう。
「ヒル魔、試合を見ててどう思った」
「あ?フェイクが下手、パスはクソザルしかまともに取れてねぇクソボール、自分で走る選択肢が抜けてる、フォーメーションは2つしか使わねぇ、もっと頭使えカス。他にもフォーメーションあるだろうが」
「ひでぇなほんと、褒めて伸ばすって言葉知らねぇのか?」
「黙れファッキンセカンド、次の相手は今回みてぇに行かねぇぞ」
「あぁ、ちゃんと対策を練ろう」
「2人とも巨深に向けてどうすんだ?」
どぶろく先生が酒を飲みながら聞いてきた。
「どうする?んなもん必要ねぇ」
「いつも通り超攻撃型の作戦で攻め殺すだけです、だろ?」
「ケケケッ!そういうこった」
ヒル魔とどぶろく先生の3人で話しながら巨深との対戦に向けて作戦会議を始めた。
網をフィールドに例え、肉を焼きながらあーでもないこーでもないとお互い意見を出してはぶつかり、焼けた肉を奪っては奪われ、姉崎に肉の管理を任せながらも意見交換を続けたのだった。
という訳で日常パートその1でした!
次回も日常パート!視点はセイジ視点でお送りします!
それでは次回もお楽しみに!!