17対14、試合終了まで残り4分、泥門ボールで巨深陣地まで後50ヤード。
この距離だとムサシさんの代名詞60ヤードマグナムでキックを決めれば20対14で勝利になる。
『Set!』
「あ、あれ?」
ムサシさんが居ない…キックしないの?
「蓮次兄ちゃんが最後尾?」
Iフォーメーション、最後尾に蓮次兄ちゃんが着いている。
いつもは真ん中なのにどうして?
「ここで点を取るのは簡単でもまだ時間がある、それなら時間を稼いで試合を終わらせば巨深は負けるって考えだろう」
「そうか!でも時間をかける方法なんてあるんですか?」
「キャノンだ、強引な中央突破なら少しずつ進みながらも時間をかけれる。それにいざとなればゴールキックも狙えてこの状況にピッタリな作戦だ」
「ほえーすっごくいい状況ですね高見さん」
まるで狙ってたかのようなこの場面。
「これをされたら王城はかなりキツイかな」
『Hut!』
プレイが始まり、1番後ろの蓮次兄ちゃんが中央突破へ向かうキャノンでラインを吹き飛ばしながら進んだ!
『4ヤードゲイン!』
『Set!Hut!』
2度目の攻撃。
流石にこれは不味いのかポセイドンフォーメーションじゃなくて水町さんはラインへ戻っている。
そしてまたキャノン。
小結さんが水町さんを押して道を作って突破!
『5ヤードゲイン!』
後1ヤード!
『Set!Hut!』
またキャノン!!
今度は栗田さんの所から突破!超えて直ぐに筧さんに止められてしまったけど進んだ!
『3ヤードゲイン!ファーストダウン獲得!!』
「よしっ!」
勝ち申した!あと3分で試合終了だ!
『Set!HutHut!』
作戦は続けてキャノン!
蓮次兄ちゃんの突進が巨深ディフェンスを引き付けている!
「いつまでも中央突破をやる程俺らはバカじゃねぇぞ!」
「!…アイシールドだ!」
ヒル魔さんのボールを渡した振り!蓮次兄ちゃんかと思いきや既にセナさんがボールを持って右サイドへ走っていた。
筧さんが先に気付いて止めに入り、一対一の対決。
「お前は抜かせない!」
「!」
デビルバットゴーストで抜こうとしたセナさんだったが、筧さんが捕まえた。
デビルバットゴーストが止められた事で会場か一気に静まり返る。
ここにいる全員が誰も止められないと思い込んでいた矢先にこれ…網乃戦でも夕陽戦でも独播戦でもこの試合でも、誰もが抜かれセナさんの走りが凄いと、この会場にいる全員が理解している。
泥門デビルバッツのエースで、あの進さんよりも速い光速の脚を持つセナさんが必殺のデビルバットゴーストを使ったのに筧さんに負けた。
きっとこの中で1番動揺しているのはセナさんだと思う。
1番自信のある必殺技が止められてしまうというのは誰よりもキツイ。
ザワザワ…。
点差はあるはずなのに何故か泥門が負けてしまうと言う変な空気が会場に流れ始める。
残り2分半、17対14。
何度スコアを見ても勝っているのは泥門、だけど会場は異様な空気に包まれていた。
「大丈夫だって!このまま行けば俺達の勝ちなんだ!」
「う、うん」
モン太さんがセナさんを慰めている。
「キャノンで時間潰すぞ」
「待てヒル魔」
「あ?」
「お前、このまま終わりたいか?」
「!」
蓮次兄ちゃんがセナさんへ質問した。
「今の状況を整理するぞ。17対14で残り2分半、このまま攻め続ければ泥門の勝ち。それはいいな?」
「はい」
「その上で聞く、このまま終わりたいか?」
「筧君を抜いて勝ちたいです」
「それでこそエースだ」
蓮次兄ちゃんがセナさんの背中を叩いて言うとヒル魔さんと2人で話し始める。
さっきまで勝てると思っていた空気が無くなり、心臓に負担のかかる様な重い空気の中プレイが始まった。
『Set!』
Iフォーメーションで始まる。
既に雪光さんはベンチに戻って石丸さんがヒル魔さんとセナさんの間にいて、蓮次兄ちゃんは前の方、タイトエンドの位置に居る。
『Hut!』
ボールがヒル魔さんへ渡り、直ぐにセナさんへ手渡し。
右サイドへ行くと筧さん以外の人をブロックして筧さんと一対一の状況になる。
「止める!」
「勝つんだ!」
「あぐっ!」
「捕まえた!」
デビルバットゴーストで抜こうとするも捕まる。
『Set!HutHut!』
2度目の攻撃。
またセナさんのラン、筧さんと一対一になる。
「今度こそ…!」
「お前の得意の走りは俺には通じねぇ!」
「くっ…!!」
2度目の対決も筧さんに軍配が上がり、どよめきが大きくなる。同時に巨深の応援が大きくなった。
残り1分。
もしかしたらこの攻撃で時間切れになるかもしれない。
『Set!…Hut!』
「何度来ても同じだ偽物!」
「偽物でもいい!僕は僕だ!!」
デビルバットゴーストで抜こうとするも筧さんの長い手がセナさんの肩へ触れる。
ギュン!
「!?」
触れる直前にセナさんが回った!
触れていたのに回ったせいで手が離れてしまい筧さんを抜いた!!
「スピン…!」
回って筧さんの手から逃れたんだ!凄い!デビルバットゴーストが進化した!!
もう筧さんを抜いたセナさんを止める人は居ない!この勝負セナさんの勝…………。
「あっ!!」
「スピンをした分遅れが出てしまったな」
進さんの言う通り水町さんがセナさんを追いかけている!やばい追いつかれる!!
「エースを立たせるのがジョーカーの役目だ!」
「双葉さん!」「ふたばっち…!!?」
蓮次兄ちゃんが追いついて水町さんをブロックした!
「この勝負はアイシールドの勝ちだ。ウイニングランを、雑魚が邪魔すんな!!」
「!!!」
水町さんを仰向けに倒した!!
『タッチダウン!!!』
残り時間30秒。
セナさんが筧さんを抜き去り、水町さんも必死に追いかけるも蓮次兄ちゃんのブロックに阻まれ最後まで走り切ってゴールラインを超えた。
キックも決めて24対14。
ムサシさんのキックでプレイ再開し、高々と上がったキックで巨深がボールを取るも蓮次兄ちゃんのタックルで止められ………………試合終了となった。
「この試合は元々決着がついていた」
高見さんがメガネのズレを直しながら話し始めた。
「キャノンで時間を稼いでいい時間になればゴールキックでも適当にプレイを止めても良かった。だが双葉はそれを良しとしなかった」
「アイシールド21が成長するのを間近で感じ取ったのでしょう」
「あぁ、アイシールドは更に強くなった。それだけじゃない」
「泥門の作戦の幅が広がっています。蛭魔妖一が指揮を執り双葉蓮次が作戦の穴を埋め、アイシールド21を始めとするメンバー全員を成長させました」
「最初にゴールキックをしたのは最初からリードを取って簡単には逆転されないよう保険をかけていたのだな。その後のオンサイドキックでボールを取ったのもそうだ」
「最初にキックを入れて点数に余裕を持たせる事で逆転されるのを未然に防いだ、ということでしょうか?」
「あぁそうだ、恐ろしい作戦だ。キッカーの射程距離も予想以上な上その作戦を立案したであろうヒル魔の知略…奴こそが泥門の裏エースだ」
「高見さん、最後に出てきた雪光はどういう選手だと思いますか?」
「それは分からない…ワンプレイだけ出てきて双葉からのパスを取っただけ。それに転んでしまったのにパスを取った、ビギナーズラックと言うやつかもな」
「転んだのに間に合った、それって雪光の足が速いってことでしょうか」
「恐らく40ヤード走5秒5、それなのに間に合いパスを取ったという事は双葉蓮次のパスの精度が良いということだ」
「そういうことか!」
桜庭の疑問に高見さんの見解と進さんの見解を聞き、自分達の試合があるので去って行った。
「このまま王城の試合撮りに行くけど長嗣兄さんは好きにしたらいいよ、それじゃあね。帰るなら先に帰ってて〜僕も適当なタイミングで帰るから」
さーってと第2グラウンドへ行こーっと。
「どこへ行こうというのかな?」
「ふおぉっ!?」
残念逃げられない!
「さ、先ずは蓮次の所へ行こうか」
「あのー僕これから王城の撮影に…」
「まだ説明と謝罪してないよね?」
「あ、えっと……てへ☆」
「セイジがやった事はセイジが始末をつける。僕も蓮次も手を貸さないからちゃんと頭を下げて謝罪して来るように」
「うへぇ…」
こりゃ逃げられないや…長嗣兄さん僕よりも足速いし力あるし、抵抗すれば投げられるし……やっちゃったなぁ。
「全く…蓮次だけじゃなくて人様の迷惑になるような事をして、後日巨深ポセイドンの皆さんとキミドリスポーツへ謝罪の菓子折りも用意しなきゃならないね」
ブツブツ言いながら僕を逃がさないようにしっかりと手首を掴んで離さない長嗣兄さんに連れられ、ベンチから離れて行く泥門デビルバッツを追いかけたのだった。
という訳で巨深ポセイドン戦試合終了!!
1波乱(セナのデビルバットゴーストが筧に止められる)がありましたが無事にデビルバットハリケーンを取得!
別に戦わせなくてもいいだろって思いますがそこは蓮次、セナの熱を感じ取って成長へと繋げました。
3回目の攻撃で止められてしまった場合ムサシのキックもありますから4回目の時にフィールドゴールを狙う選択肢もありました。
次回から2話連続で日常パート、その後秋大会山場となる例のチームと試合になります。
それでは次回をお楽しみに!!