巨深ポセイドンとの試合が終わった。
「双葉さん」
試合後、筧がやって来た。
「本当にアイシールド21じゃないんですか?」
「その話か…本当に俺じゃねぇ、勘違いさせて悪かったな」
「いえ、俺の勝手な思い込みです。でも、双葉さんはあの時見たアイシールド21と似たタイプでした」
「へーまぁ特に意識した事ねぇが勝手にこうなったってだけだ。あまり気にすんなよ」
「はい」
「それと、水町に冷たい態度を取って悪かったって伝えといてくれ」
「はい、あいつも真面目なんですがちょっと頭が…すいません」
「俺に言うな、これまで倒して来た選手達へ言ってやれ」
「はい」
膝をついて泣き叫んでいる水町へ今伝えるのは間違いだ、落ち着いた頃に伝言で伝えてくれればそれでいい。
「蓮次」
兄貴が少し離れた所から話しかけてきて後ろにはセイジも居た。
「兄貴も来てたのか、なんでそんな離れた所から話しかけてんだよ」
「猫を触ったから」
「来んな近寄んなそこでいい」
「分かっている、ほらセイジ説明」
兄貴の後ろからセイジが現れ、指を合わせて気まずい顔をしていた。
「ちょうど良かった。お前何した」
「えーっと……そのぉ〜筧さんから本物のアイシールド21のことを聞いてもしかしたらなぁって話をしたら…蓮次兄ちゃんが本物だと勘違いさせてしまった…って感じ」
「なんでその時訂正しなかった」
「しようとしたよ!?でも筧さん作戦練るって言って出て行っちゃっただもん!もうどうしようもなかったよ!」
「だったら他の部員に訂正しておくよう伝えるとか出来ただろ、なんでしなかった」
「あっ……ね、ね〜なんでだろうね〜?」
ゴスっ!
「いっ!…たぁー!!」
「キミドリスポーツにも迷惑かけただろ!何が黄緑セイジだバカ!」
「ごめんなさーい!」
「今すぐ謝罪して来い!その後キミドリスポーツにも行って謝罪だバカ!」
「うぅ…タンコブできてない長嗣兄さん?」
「もう2、3発貰ってもバチは当たらないよ」
「えぇ…」
「蓮次、僕はセイジについて行って巨深の人達へ謝罪した後キミドリスポーツさんの所にも行くよ」
「あぁ頼んだ」
「うん。試合凄かったよ」
「さんきゅ」
2人を見送った後、客席へ向かうと姉崎が用意してくれた弁当を貰い席に座って次の試合を観戦することにした。
「デビルボーンの時のパス、瀧はバランス崩してたが軌道がブレてたか?」
「天才の僕でもあのパスはキツイね、ちょっと押されちゃったよ」
「勢い凄いからなぁ、双葉先輩のパスをまともに取れるの俺ぐらいッスよ」
「瀧も取れてたけどバランス崩してたもんな、その分カットされにくいから良いと思うんだが…もう少し抑えようか?」
「僕の華麗なキャッチをファンのみんなに見せられたから良かったよ!今度はもっと上手く取るから気を落とさないでね!」
「いや別に落ち込んでねぇし…雪光は……って疲れてるか」
半分寝ながら飯食ってる…緊張で疲れたんだろ、今はそっとしておくか。
西部ワイルドガンマンズと江戸前フィッシャーズの試合は西部の圧勝で終わり、準決勝の相手は西部に決まった。
「まだ隠してるな」
セイジの調べた資料じゃ登録者数とベンチにいる数が合わない。
1人足りない……背番号29の姿がねぇな。
「1年の甲斐谷陸か…遅刻?それとも怪我?」
「陸!?」「陸っくん!?」
セナと姉崎が反応した。
「知ってる奴なのか?」
「陸は僕に走り方を教えてくれた師匠です!」
「2週間ぐらいセナと同じクラスの子だったの!」
セナの走りは甲斐谷陸から教わったのか、じゃあ俺からすれば師匠の師匠って位置か。
もしかしたらセナと同じように光速の脚なのかもしれねぇな。
「じゃあ甲斐谷陸はランニングバックの可能性があるな、西部お家芸”ショットガン”に光速のランニングバック…この2枚看板か。いい情報をありがとよ」
「そっか〜陸が西部にいて戦うのか……勝てるかな」
「勝つんだよ、じゃなきゃクリスマスボウルへ行けねぇ。正面からぶっ殺せ」
「…はい!」
「にしてもここに来てないってことは随分ズボラな奴なのか?もし西部が負けたらって考えがない奴なのか…」
それとも自分がいなくても勝てるってチームへの信頼の証か。
何れにせよ肝が据わってる選手の印象だ。
西部の試合が終わり、今日の試合が終わったので帰る事になった。
「姉崎、西部の試合は全部撮ってるか?」
「あっうん、戻ったら編集するつもり。何か気になることある?」
「キッドの早撃ちの平均タイムと、最速タイムと最遅タイムでパスをした場所とヤードとレシーバーの動きが気になる」
言葉で説明するとメモ帳にシュババと書き記している。
「OK!」
「頼んだ……っとこっち寄れ」
「!」
姉崎の肩に手を伸ばして手前に移動させると男2人組が姉崎の横を通り過ぎた。
「邪魔」
それだけ言うと先へ行こうとする。
その態度にイラッとしてしまった。
「ちょ!蓮次君!」
「こんな広い場所でわざわざぶつかりに来るなんて随分でかいな?その割には今ちっぽけに見えるぞ」
「あいででで!!」
男の手首を捻り、膝裏を蹴って座らせた。
「さっきまでの威勢の良さはどうした?」
「お、折れる折れる!!」
「女々しく叫ぶだけで謝罪はしねぇのか?」
「す、すいません!すいませんでした!」
「何がだ」
「わざとぶつかりに来てすいませんでしたー!折れるから離してください!!」
この程度じゃ折れないから安心しろ。
「わざとぶつかりに来たってか?そりゃねぇよな?」
「あだだだっ!すいませんすいませんすいません!」
「じゃあ俺もわざと関節外しても許されるよな?」
「ひいっ!!」
「もういいから蓮次君!」
「………うちのマネージャーに感謝しろクソ野郎」
手首から手を離すと、さっさと逃げて行った。
「なーんだ俺がしなくてもやってくれたんですね」
俺の目の前には銀髪で小柄な男が立っていた。
「初めまして泥門デビルバッツの白銀さん、俺は西部ワイルドガンマンズの甲斐谷陸です」
「おー君が甲斐谷陸か、噂は聞いてるぞ。セナに走り方を教えた奴だってな?巡り巡って俺も真似させて貰ったから感謝してる」
「みたいですね、俺やセナみたいに軽やかさではなく重さのある走りですがよく似ています」
「ま、次の試合はよろしくな。精々遅刻しないようにしろよ」
「!……えぇ」
それからセナと姉崎が甲斐谷と話をして別れた。
翌日、体育の日。
祝日である今日泥門高校は体育祭となっている。
だが朝練を終えた俺の所へ校長が現れ、今すぐに校長室へ来て欲しいと言われた。
「初めまして双葉蓮次君」
校長室へ入ればスーツを着た男が居て、俺に名刺を渡してきた。
『帝黒学園・アメリカンフットボールチーム帝黒アレキサンダーズ』
「帝黒アレキサンダーズ?」
それって確か日本一強いアメフト高校チームだよな。そのチーム関係者が何故俺に…?
「知らないのかな?まぁ帝黒学園は関西の高校だから知らなくても無理ないか。帝黒アレキサンダーズは日本一アメリカンフットボールが強いチームで、部員200人以上いて一人一人が他の高校でエース級の選手だ」
「そうですか、帝黒アレキサンダーズがクリスマスボウルで毎年神龍寺ナーガを倒して日本一になってるチームって訳ですね」
「その通り、帝黒アレキサンダーズは常に一番を目指している。部内も実力主義で実力さえあれば一軍でプレイすることも出来る。逆に実力が無ければずっと公式戦に出るのは不可能だ」
「選手層が厚いからこそ競争って訳ですか、それで俺に何の用ですか?」
「双葉蓮次君、泥門高校へ進学してからアメフトを始めて1年、記録ではベンチプレス140kg、40ヤード走4秒7とあるが本当かな?」
「えぇ本当です」
「では本題に入ろう」
顧問が1枚の書類を俺の前に置いた。
「転校届け…?」
「泥門高校から帝黒学園へ転校しないか?分かりやすく言えば……スカウトに来た」
「は?行くわけねぇだろカスが、ぶちのめすぞ」
「!?」
という訳で日常パートその1でした!
水町との和解はせず、筧に伝言を頼むという形で終わらせました。
カットしましたが、筧からの伝言を聞いた水町は特に気にしてないってオチです。(尚、何故冷たい態度を取られていたのか分かってない)
そしてこのタイミングで帝黒アレキサンダーズが蓮次へ接触しスカウト!……残念ながら速攻で断りを入れ、あえなく撃沈。
仮に行っていた場合、この年のクリスマスボウルはお預けで翌年のクリスマスボウルへ出場していました。(WCはどうなっていたか…想像におまかせします)
次回も日常パート、体育祭ですがほぼほぼカットします(笑)
その代わりと言っては何ですが、西部ワイルドガンマンズ戦は頑張ります!
それでは次回をお楽しみに!!