『タッチダウン!!』
痛みで動けない俺の前を走り去り、ゴールラインを超えるキッドを見送るしかできなかった。
誰もキッドの奇襲を止められず、完全に敗北した。
トライフォーポイントでキックを外し、最終スコアは49対45……4点差で準決勝敗退となってしまった。
「蓮次君…」
どうやってベンチへ戻ったのか記憶にないまま、気が付けば姉崎が下から俺の顔を覗いていた。
「悪い、勝てなかった」
「…………ううん、蓮次君は頑張ったよ」
「…ベンチ空けるぞ、次の試合もある」
「荷物は私がやっておくから今は休んで。アイシングも忘れないで」
「あぁ」
泣いている栗田と小結、悔しがる十文字と黒木と戸叶、まるで生気を失ったかの様な表情の瀧、もう何もかもが終わってしまった顔をしているセナとモン太、何も出来ずにベンチに座ったまま落ち込んでいる雪光、ボロボロと泣いている鈴音。
ヒル魔とムサシを除いたメンバーがそれぞれ落ち込んでいる中、俺はベンチを後にし…………足がもつれてしまった。
「よく頑張ったな」
「ムサシ…悪い」
片腕で俺を支えてくれた。
「いい、まだ終わりじゃねぇ」
「…悪い………出番、作れなかった」
「気にすんな、動けるか?」
「キツイ、足がいてぇ」
「端まで移動させるからそこで休んでろ、アイシングも俺が巻いてやる」
ムサシに肩を借りて壁の方にまで連れて行ってくれた。
そこで俺は疲労が限界に来てしまい、眠ってしまったのだった。
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〜蛭魔妖一視点〜
「危なかったよほんと」
「ちっ…!何の用だファッキンゲジ眉、嫌味を言いに来たのか?」
「ん〜まぁ今の君に何を言っても嫌味にしか聞こえないだろうしこういうの柄じゃないんだけど……敢えて言わせて貰いたい」
「なんだ」
「白銀氏に期待し過ぎ」
「……」
「徐々に迫って来る恐怖があったよ。俺の投げるスピードよりも速くにタックルされる、実際されたし…恐ろしかった。ヒル魔氏的には彼の成長を促そうとしたのかな?」
「さぁな」
「期待すればする程、彼は応えようと必死になる。期待し過ぎるとロクな事がないってよく分かる見本だったよ」
「…」
「それだけ、次戦うなら関東大会かな?上がって来れるといいね」
「クリスマスボウルへ行くのは俺らだ」
「……」
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「……ん…」
「起きたか蓮次」
「……兄貴?」
兄貴の後頭部が見え、おんぶされていると理解した。
「試合が終わって今病院へ向かってる、もうすぐ着くからそのままでいいよ。今アイシングもしてるから冷たさがあるだろうけど我慢」
「悪い。けどなんで兄貴が俺を病院に?」
「僕が連れて行くと言い出したんだ、みんな蓮次の事を心配してるけど次の試合も観戦したいって気持ちもあったみたいで3位決定戦に向けて前を向いていたよ。試合お疲れ様、よく頑張ったね」
「けど負けた。それでもまだ終わりじゃねぇ、絶対に勝ち上がる」
「流石だ、もう前を向いている」
「……なんかおんぶされんの久しぶりだよな」
「昔はこうしてよくおんぶしたね、稽古でヘトヘトになった蓮次を部屋まで連れて行って寝かせて、まだやるんだぁってやる気を見せて……僕がゲンコツを落として黙らせた」
「ははっそうそう、なんか懐かしい」
「あの頃と比べて蓮次は重くなった。成長したね」
「そりゃな」
「けど無茶をするのは相変わらず。バカだろお前、何で足の痛みを隠してたんだ?それで勝てると思っていたのか?そのせいで姉崎さんがどれだけ心配していたのか分かってねぇのか?」
マジギレ…なんか兄貴に言われるとズシッと胸に来る、反省しねぇとな。
「悪かった、後で姉崎にも謝っておく」
「そうしろバカ、もう2度とこんなことをすんじゃねぇぞ」
これ以上兄貴から話しかけることなく病院へ到着。診察を受け、走り過ぎによる関節の炎症だと診断された。
大事には至らないだろうけど念の為明日も診察へ来るように言われた。
会計をするまでの間に姉崎へ連絡をするも繋がらず、ヒル魔へ連絡しても繋がらない……1番可能性のある雪光へ連絡すると、今から泥門高校近くの銭湯へ向かっている最中だと聞いて、会計を終えてから兄貴と別れて俺も向かうことにした。
「ふ〜っ!気持ちいいね〜!!」
「栗田のせいで殆ど流れ出たけどな」
銭湯前で合流した俺はヒル魔とセナとモン太とセイジを除いた男子メンバーで試合の疲れを癒すことにした。
「蓮次〜今日の負けた原因って何だと思う?」
「反省会か?」
「うん、勝ってたのに逆転されちゃったし……何か原因があると思うんだよね」
「泥門デビルバッツよりも西部ワイルドガンマンズの方が強かった。それだけだ」
「…そっか」
「ところでセナ達はどうした?」
「あー確か盤戸の赤羽君が本物のアイシールド21なのかーって聞きに巨深の所へ行ったみたいだよ?姉崎さんと鈴音ちゃんもそっちへ行っちゃった」
「ふーん、道理で繋がらない訳か。と言うか去年の東京MVPが本物のアイシールド21?」
筧から聞いた話じゃプレイスタイルは俺に似ているとか言ってたし、違うような気もする。
「俺は蓮次の酷使と偏った作戦、色々やれるからとヒル魔も甘えが出た結果だと思う」
「ムサシ…?」
「うっ!……ふぅぁ〜……いい湯だ」
「おっさんかよ」
「んでハッキリ言えばヒル魔の作戦ミスが1番デカイ、次にお前もヒル魔もキッドに固執し過ぎ。その次にお前だ、ブリッツを決めたいが為に個人技になっていたのは悪手だろ。何でもっとチームプレイをするとかやりようがあったのにと思っていた」
ベンチからずっと見てたからこその目線だ、甘んじて聞き入れよう。
「それに負傷してたのも隠してただろバカ野郎が、下手すりゃもうフィールドに立てなくなるかもしれなかったんだぞ」
「あぁ、もう隠すような事はしねぇ。正直キツかった」
俺を見るムサシの目が厳しい、そりゃそうだよな。
おやっさんの事もあるし隠すような事をすれば嫌な気持ちにもなる。
他にも隠してたし吐いちゃえ。
「ついでに暴露するが…俺日本一強いアメフトチームの帝黒アレキサンダーズにスカウトされた」
「は?」
「もう断った話で関係ねぇがそれも黙ってて悪かった」
「……こっのバカ野郎!!」
「いっ!だぁ!!」
ムサシが全力で俺の頭にゲンコツを落としてきた…。
「双葉パイセンの弱点って何だと思う?」
戸叶が十文字と黒木に話しかけている。
「すぐバテるとこ」
「それはヒル魔のせいだろ」
「確かに」
「ヒル魔の頭の中では双葉先輩を酷使すりゃ勝率上がんだろ。実際今日以外の試合は勝てたし」
「酷使無双だな」
「うめぇなそれ!黒木に座布団1枚!」
「いえーい!」
仲良いなほんとこの3人、俺をネタに遊ぶなよ。
「つまり、ヒル魔に限らず俺らは双葉先輩に依存してる」
「おっ十文字マジモードだ、話聞こうぜ」
「キャノンで栗田にばっかり行ってたのは俺らの所から抜けるのが厳しいと判断されてるし双葉先輩と栗田頼りの作戦も多かった。んなもん俺らが頼れねぇって思われてる証拠だ、情けねぇだろ」
「そりゃそうだな」
「そうだそうだ」
「双葉先輩さーせん、俺らが情けないせいで負担かけてしまったっす」
「「さーせん!」」
3人揃って俺に頭を下げて謝られた。
ライン組の悪いところは無かった、むしろこの試合で悪かったのはバックス組だ。それなのに自分達にも責任があると思っている、律儀な奴らで成長したと同時に後輩達に謝られて申し訳なさもある。
「謝らないでくれ。十文字達が反省する所はねぇよ、この試合はバックス組の失態が殆ど、俺とヒル魔が反省して次に活かさなきゃならねぇ。明日は練習休みだからヒル魔と話をして今後の作戦を練り直す。みんなは休んで3位決定戦に備えてくれ」
『おう!!』
「ん?蓮次は3位決定戦があるの知ってたの?」
「そうだけど?」
「えー!?なんで僕には教えてくれなかったの!?」
「言えば油断する可能性もあった。それに勝ってれば問題なく関東大会へ進めたから言わない方が良いって判断をした」
「がーん…!」
色々反省する部分が多かった西部戦…この失敗を糧に進もう。
「高く跳ぶには1度屈む必要がある」
「……どぶろく先生?」
「今日の試合、春からずっとここまで勝ち進んできたお前さんらが更に高く跳ぶのに必要な負けだったかもしれねぇな」
どぶろく先生が俺の方へゆっくり泳いできた。
「双葉を酷使する前提の作戦は通じねぇと分かる良い機会だった。タイトエンドってのは何でも屋だが双葉みてぇにあちこちポジションを変えてやるもんじゃねぇ、明後日からタイトエンドについて一から叩き込んでやら」
「お願いします」
「1週間でものにしてやる、覚悟しておけ」
「はい、あっでも状況次第では別ポジもやれるようにしたいです」
「がははっ!欲張りだなぁお前さんは!」
バシバシと俺の頭を叩いて笑い飛ばそうとしてるのか、馬鹿な事を言うなと怒られているのか、足の負傷を隠していたことに怒っているのか、多分全部の意味を込めて叩いていると思う。
段々と力強くなって最後にはゲンコツを貰ったから……。
痛みを堪えながらセイジ達の事を気にしたが多分大丈夫だろうと思い、風呂上がりにコーヒー牛乳を飲んで帰ることにした。
という訳で西部戦完結!
秋大会、残るは3位決定戦のみとなりました!相手はもちろん盤戸スパイダーズです。
前話の感想を書いてくださった方々へ…いつもなら返信をしているのですが、数が多くここで纏めて御礼申し上げます、本当にいつもありがとうございます!
感想を見て学ばせてもらったり、楽しませて貰っていまして連続投稿しようと気力に繋がります!
次回からは日常パート、セナ達が巨深の所へ行ったお話になります。