泥門の2番手   作:実らない稲穂

8 / 105
足を引っ張らない様に

 

 

 恋ケ浜キューピッドとの試合が終わり、1週間後に2回戦があり相手は王城ホワイトナイツとなっている。

 

 ヒル魔と特訓した翌朝になれば学校、ヒル魔から今日1日練習禁止とメールが届いていて、今日は試合での疲労を抜いて明日から練習漬けという訳だ。

 

 

 

「おはよ双葉君」

 

 教室に着くと姉崎が既に来ていた。

 

「おっす、昨日はお疲れさん。昼休みか放課後にビデオ見るからデータくれ」

「今持ってるから渡しておく」

「さんきゅ」

 

 頼むと早速昨日撮ったデータをもらって忘れずに鞄の中へ入れた。

 

「昨日の疲れない?ずっと出てたから筋肉痛とかあるんじゃないの?」

「あるにはあるが今日1日で取る、栗田とかラインをやってた奴らの方が疲労はでかいから助っ人に来てくれた奴らのフォローを頼む。助っ人のリストはあるか?」

「あるよ、湿布とか用意してるから渡しに行ってくる。双葉君も使って」

「おう」

 

 湿布を貰い、肩や肘に貼っていると姉崎はクラスから出て行った。

 

 

 そして授業が始まって気が付けば昼休み。

 

 授業?寝てたけど?

 

 

 

 

 部室でヒル魔と一緒に試合のビデオを見ていた。

 

「パスルートがアップ(直線)しか無い、それじゃあ直ぐにバレるに決まってるか」

「んなもん急造チームに覚えられるわけがねぇ、その都度言っても実行出来る面子じゃねぇだろ」

「せめてフェードかジグアウトを覚えさせてロングパスに繋げねぇとな」

 

 アップとは真っ直ぐ進んでパスをもらうルート、フェードは途中で外側に逸れてパスをもらうルート、ジグアウトは内側に進んでから外側へ向かって走るルート。

 数あるパスルートの内幾つか覚えさせないとモン太を上手く使えないな。

 

「テメェはショートパスの方を頭に叩き込んで体で覚えさせろ」

「夜の練習で付き合ってくれ、まだ完璧じゃねぇ」

「今日は禁止だ……って言いてぇがやるぞ。もちろん連携プレイもな」

「流石、お前っていつも人の居ない時間でこっそりやる男だよな」

「ぶっころすぞ」

 

 否定しないってことは実際その通りなんだろ?1年も付き合ってれば分かる。

 

「明日の練習はクソザルにパスルートを覚えさせるよりも俺のパスを受ける事に集中させる。テメェはクソザルと競ってインターセプトの練習とファッキンチビとランの練習だ」

 

 ビデオが終わり、明日の練習メニューをホワイトボードに書き始めた。

 

「俺がインターセプトだと?」

「ディフェンスは桜庭につけ」

「あぁそういうことか」

 

 桜庭春人、王城ホワイトナイツのワイドレシーバーでジャリプロって芸能事務所所属のアイドルをしている。ワイドレシーバーの実力はそこそこだがアイドルをしているから有名人で”王城のエース”と呼ばれているインチキエース。

 身長は186cm、体重は72kg。俺と比べて1cm桜庭の方が高く、体重は1kg俺の方がある。

 

 そんな桜庭につけとヒル魔の指示だ。

 

「背が高いレシーバーは桜庭だけ。高見も桜庭を気に入ってんのか高確率で桜庭にパスを出してはそこそこヤードを稼いでいる。そこを徹底的に潰せ」

「了解」

「オフェンスの時はチビについて進の盾になれ、テメェには一切パスを出さねぇつもりだから覚悟しておけよ」

「あれは?」

「第4クォーター、僅差の時だけだ」

秘密兵器(ジョーカー)だな」

「ケケケッジョーカーってのはここぞと言う時に出すから効果的なんだ。はなから見せて対策取られれば不利になんのはこっち、誰が好き好んで不利になるか」

「確かにな」

 

 

 

 

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 昼休みが終わるチャイムが鳴り、部室から出て教室へ向かった。

 昼からの授業?寝るに限る。

 

 

 

 

 

「流石に寝すぎじゃない?先生怒ってたよ」

 

 放課後、姉崎と一緒に部室へ向かうと怒られた。

 

「試合明けは勘弁してくれ、これでも十分な程の成績を収めてんだから言われる筋合いは無い」

「これで学年2位なんだよね、おかしくない?」

「これって言うな、裏では勉強してる」

「どうだか、どうせヒル魔君みたいに先生を脅して成績改ざんしてるんでしょ」

「俺をなんだと思ってんだ…?」

「悪魔の右腕」

「否定できねぇ」

 

 部室へ到着し、姉崎は速攻で部室の掃除を始めた。

 

「双葉君、部室の中にあるもの勝手に動かして良い?」

「勝手にしろ、授業ノート借りるぞ」

「いいよ」

 

 椅子に座って姉崎の掃除している姿を横目に姉崎が取っていた授業ノートを取り出して自分のノートに写す作業を始める。

 

「汚ねぇ絵」

「それは見ないで!」

 

 落書きみたいな絵に突っ込むと怒られた。

 

 

 

「なぁ姉崎、セナがいざ選手として出るってなったらどう思う」

「本音を言えば止めたい」

「だが次は絶対に出すぞ、じゃねぇと負ける」

「……」

 

 掃除の手を止めてしまったか。

 

「姉崎の気持ちは理解できる。俺だって弟が芸能界へ入るって聞いて止めたが本人がやる気を見せて今もデビューに向けて必死に頑張ってる」

「双葉君はなんで応援しようと思ったの?」

「それが弟の為だからだ、弟の意志を尊重してやるのが兄の務めだとジジイから教えられた。お前はどうだ?セナの意志を尊重してやったか?」

「ぅ…」

「アメフトは怪我が多くて危険、それは否定できねぇ。だが意志を尊重しないでカゴに閉じ込めるような真似はしてやるな、セナの事を思うのなら余計にな」

「…………わかった、セナの意志を尊重する」

「それでいい」

 

 

 

 

 掃除が終わった姉崎がお茶を入れてくれると、姉崎が勝手に部室に置いてある栗田のお菓子を食べ始めた。

 

「そういえば双葉君自分の家族のこと話してくれたの初めてじゃない?」

「あ?」

「ほら、兄弟が多いって言っててどんな兄弟だとか聞いても教えてくれなかったじゃない」

「そりゃ関係ねぇからな」

「じゃあなんでさっき話してくれたの?弟さんが芸能人なんて初めて聞いた」

「さっき初めて言ったから知らなくて当然、それとまだ芸能人じゃなくてたまごだ。話した理由は姉崎があまりにもセナを過保護にしているからだ」

「過保護…!?」

「無意識か?だとしたら重症だな、頭の医者へ行った方が良いぞ」

「行かないから!」

「話は終わりだ」

 

「まだ終わってない!別に教えてくれてもいいでしょ!?」

「俺、弟、ジジイ、兄弟沢山わーい、以上」

「絶対に嘘…!」

「嘘じゃねぇ」

 

 

 

 姉崎と話しているとセナとモン太が来て遅れて栗田も部室へ到着。

 栗田が大量のケーキを買ってきたみたいで姉崎が掃除したテーブルいっぱいに並べて全員で食べることにした。

 

「アメフト部っていつもこんな感じなのか?」

 

 モン太がセナへ質問している。

 

「今日は珍しいかな、僕も入って間もないからよくわかんない」

「へー野球部じゃこんなにケーキ食うことなんてねぇぞ」

「そうなんだ?」

「いいなーアメフト部、昨日タッチダウンした時も燃えたしキツかったけど楽しかったしよ〜また次の試合に出た時にタッチダウン決めたいぜ!」

「モン太なら行けるよ!僕はまだ……双葉さん、次は出られますよね?」

「当たり前だろ」

「!」

 

 何を驚いてる?

 

「セナが出ないとうちは負け確定、パス中心に攻撃してると相手が勘違いしてるならラン中心に切り替えて攻撃するのは当たり前の作戦だ」

「じゃあ…!」

「アイシールド21の出番だ、お前を守ってやっから黄金の脚をこれでもかと見せてやれ」

「が、頑張ります!」

「モン太も期待してる。ラン中心とは言ったがパスを出す場面もあるから気を抜かずに全力で取ってくれ」

「はいッス!」

 

「とりあえずモン太君はルールを覚えて貰わないとね、蓮次が簡単に説明したと思うけどアメフトのルールって細かいんだよ」

「そうなんスか?」

「蓮次教えてあげてよ」

「栗田が教えてやれ。俺は王城のビデオ観る」

 

 ケーキ片手に部室に置いてあるテレビをつけ、王城の試合を観ることにした。

 主に見るのは進清十郎と桜庭春人、後はクォーターバックの高見伊知郎の3人。

 高校最強のラインバッカー(対パス守備も対ラン守備もこなすディフェンスの中心)進清十郎は身長175cm、体重71kg。これだけなら俺の方が背丈も体重も上だが、特筆すべき点は足の速さ。

 40ヤード走4秒4……セナを除いて高校最速のラインバッカーで、俺と1秒以上差がある。この化け物選手をどうやって抑えてセナのランのフォローが出来るか…俺のブロックにかかっている。

 

 桜庭?あれはビデオを見る限り進ほど警戒する選手じゃない。

 弱いとは言わないがモン太と比べてキャッチ力は見劣るしセナ程足が速い訳でもない。本当に背が高いという1点が優れていてその身長を上手く使えてないのが惜しい。

 

 高見は193cmという高身長、そしてかなりの練習をしたであろう正確なパスをする選手。

 ヒル魔情報によれば40ヤード走は5秒7、これは足の怪我が原因らしい。対して俺は怪我をしてなくて5秒6…………俺、遅くない?

 

 やっぱ遅いよな。

 

 

「セナ、どうやったら足が速くなる?」

「え?」

 

 俺の走り方が悪いのか足の筋肉とか色んな所がスポーツに適してないのか……何にせよこのままじゃチームの足を引っ張ってしまう。

 

「今からお前の走り方を教えてくれ」

「僕が?双葉さんにですか?」

「教えてくれ、鈍足のタイトエンドなんて使えない。王城に勝って春大会を勝ち進むには俺も成長しないとダメだ」

「わ、分かりました!僕でよければ力になります!」

 

 付け焼き刃になるかもしれねぇが今の遅さが改善されるならやる、勝つ為ならどんな苦行もやってやる。

 

 






 日常パート2つ目でした。

 今もセナを守ろうとするまもりだけど王城戦に出すセナの事を考え、少しだけ蓮次の兄弟について触れながら説得させました。
 これからちょっとずつ兄弟について匂わせて行けたらな〜なんて考えています。

 そしてとうとう来ました蓮次のスピードアップフラグ!これがどのように作用するか楽しみにしてください!
 

 最後に……ヒロインがガチのマジで決められません、アンケートとやらを試してみようと思うので協力してもらえたら幸いです。

ヒロイン誰にしたらいいですか?

  • 姉崎まもり(2年)
  • 瀧鈴音(1年)
  • 熊袋リコ(1年)
  • 小泉花梨(1年)
  • なし
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。