泥門の2番手   作:実らない稲穂

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3位決定戦

 

 

 

 10月23日、この日デス・アリーナで3位決定戦と決勝戦が始まる。

 

 決定戦は西部と王城、どちらも関東大会行きのチケットを手にし、東京1位か2位を決めるだけ。

 泥門と盤戸はこれから東京3位を決め、尚且つ関東大会行き最後のチケットを手に入れる為に戦う。

 

 

 

「双葉さん」

「ん?どうした」

 

 会場が目の前だという時、後ろを歩いていたセナが話しかけてきた。

 

「突然ですいません……僕、アイシールド21と名乗るのを辞めても良いですか?」

 

 良いですか?って聞いてきた割にはセナの意思は固まっている様子、それを止める程俺はバカじゃない。

 

「いいぞ」

「!」

 

「俺達泥門デビルバッツはノートルダム大附属中のアイシールド21が必要じゃねぇ、アイシールド21は元々必要なかったんだ」

「え…?」

「泥門デビルバッツに欲しかったのは……小早川瀬那、お前だったんだ」

「僕、ですか?」

 

「貧弱だの脆弱だのネガティブだったセナが勇気を出して主務をやると栗田に言って、その次の日にヒル魔に拉致されて俺と出会ったよな」

「はい」

 

「俺の言葉で熱を持って選手をやると言って初めて出た春の王城戦、お前は怖さもあっただろ。それでも勇気を出して走ってタッチダウンを決めた。他にもタックルをされて痛かったと思う、それでもお前は立ち上がった。俺が離脱してから進に勝ちたいと熱を持って何度も走った」

「……なんだか懐かしいです、まだ1年も経ってないのに不思議とかなり前だと思ってしまいます」

 

「それだけ濃密な半年だったんだ。もう既に、王城戦の時点でお前はアイシールド21じゃなくて小早川瀬那というアメフト選手が生まれたんだと俺は思う」

「!」

 

「試合を経験する度に成長し、今お前はアイシールド21を名乗るのを辞めたいと言い出した。それはもうアイシールド21じゃなくて小早川瀬那がフィールドに立って試合に出たいという欲に変わったんじゃないか?」

「……はい」

 

「だったら尚のこと名乗れ、そして小早川瀬那と言うアメフト選手はこんなにも凄いんだと、自分は最強のランニングバックだと胸を張れ。今日の試合に勝って泥門デビルバッツのエースは自分なんだと誇りを持て、その為なら俺は何度でも手を貸す」

「……ありがとうございます!」

 

 セナが泣きながら俺にお礼を言ってくれた。

 

「泣くなよ」

「うぅっ…すいません、なんだか勝手に…!」

「その涙は取っておけ、試合が終わってからなら幾らでも泣いていい」

「…はい!」

 

 

 セナの背中を軽く叩いて慰めると目を擦って涙を拭っている。

 

「僕、双葉さんに何度も助けられてきました」

 

 男らしい顔つきになったセナと目が合う。

 

「きっとクリスマスボウルが終わるまで何度も助けられると思います。ですが、双葉さんが引退する時までに必ず僕が双葉さんの助けになれるように頑張ります!」

「……そうか、頑張れよ」

「はい!」

 

 もう十分助けられてんだがな、ここでそれを言うのは野暮ってもんだ。

 

「なら早速助けて貰おうかな」

「へ?」

「今日は天気が悪くなるって予報、パスは通りにくいだろうって話をしてて今日はランで攻め立てる予定だ。俺が前を走って道を開けるからボールを落とさず走ってくれ」

「はい!!」

 

 東京最強のタイトエンドでリードブロッカーの赤羽隼人、色んなポジションを兼任してる俺よりも純粋にタイトエンドとして経験を積み上げてきているからタイトエンドとしては格上の選手だと思っている。

 だからと言って負けを認めるわけじゃない、今日は勝って関東大会へ行くんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「双葉君」

「?」

 

 フィールドへ出て準備を進めていると、熊袋記者がペンとメモ帳を手に俺の前へ来た。

 

「今日選手1人ずつ入場の時紹介を入れるんだけど、どんな呼び名が良い?」

「え?呼び名ですか?」

「双葉君は3種類あってどれにしようかこっちでも困っててね、双葉君はどれがいいか教えてくれない?」

「3種類も?一体何があるんです?」

「白銀、キャノン、重戦車…双葉君はどれがいい?」

 

 白銀は分かるけどキャノンは作戦名だし重戦車って鉄馬みたいじゃねぇか…最後のは嫌だなぁ。

 

「白銀でお願いします」

 

 ヒル魔が命名してくれた名の方が良い、それにそっちの方が唯一無二の選手っぽくて好みだ。

 

「わかった、白銀だね!」

 

 熊袋記者へ伝えると他のメンバーの所へ行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 アップを終えてロッカールームで一旦待機となり、なるべく体を冷やさないようストレッチをしながらヒル魔と作戦会議を始めた。

 

「本気でランメインでやるつもりか?」

「ケケケッ!んな訳ねぇだろファッキンセカンド、風に流されるようなクソパスを俺が投げると思うか?」

「別に、他の作戦は?」

「いつも通りだ」

「超攻撃型の作戦か、了解」

 

 そろそろ入場する時間になり、我先にとメンバー達が出て行く。

 

「フォローは任せた」

 

 そして俺とヒル魔だけになると小声で言い、返事をする前に出口の方へ歩いて行った。

 

「何かそれ言われんの初めてだな、いいぞフォローしてやるから思いっきりやれ」

「ケケケッ!」

 

 返事をしてから俺も後に続くと、いつも通り悪い笑みをするヒル魔と拳を合わせたのだった。

 

 

 

 

 

 

「蓮次君」

 

 入場口までもうすぐという所で姉崎に呼ばれた。

 

「蓮次君はいつも全力で頑張っているから今更頑張ってとは言わない。だから…………」

「?」

 

「みんなで関東大会へ行って、クリスマスボウルも行って、日本一になろう!」

「おう!」

 

 姉崎に手のひらを見せて答えた。

 少しだけ考えた姉崎が察してくれたのか俺の手をパシンと叩いてハイタッチを交わした。

 

 

 

 

 

 ■■■■■■■■■■

 

 

 

「さぁ勝てば関東負ければ敗退!両チームにとってはこれが決勝戦!!運命の決戦は泥門VS盤戸!まずは泥門デビルバッツの入場です!!」

「あっ実況はマシンガン真田さん、解説は僕熊袋でお送りします」

 

「入場口にドライアイスを撒き、煙の中から勢いよく飛び出して来たのは!!光速のランニングバックアイシールド21…ですが、その仮面を脱ぎ去り、ヘルメットを脇に抱えて登場!」

 

「彼の正体は!泥門高校1年2組……小早川瀬那だぁ!!」

「会場がざわめいてますね、特に泥門デビルバッツの応援席からは知ってる人がいるのでしょう」

 

「さぁ続けて紹介していきましょう!」

 

 ・栗田良寛!160kgのバーベルを上げる巨大不沈艦!

 ・雷門太郎!キャッチに命を捧げた空飛ぶもぎ取りモンキー!

 ・瀧ジェントル夏彦バカ!

 『アリエナイィィ!!』

 

 

「純白のドライアイスをドス黒い妖気へと染め上げて入場!」

 ・地獄の司令塔蛭魔妖一!!

 

「悪魔を守る番人達!」

 ・小回り抜群強力豆タンク小結大吉!

 ・バランス&テクニック十文字一輝!

 ・スピード&闘争心黒木浩二!

 ・パワー&ハード戸叶庄三!

 

 ・特大キック60ヤードマグナム!武蔵厳!

 『嘘だけどな』

 

 ・初出場で転倒してもガッツで取った光学迷彩!雪光学!

 

 ・地味石丸といいように使われる助っ人軍団!山岡、佐竹!

 

「そして純白のドライアイスを白銀へと染め上げて入場!」

 ・最強の白銀ジョーカー!双葉蓮次!

 『うわっ勝手に銀色になったすげぇなこれ、つーかヒル魔!最強のジョーカーって勝手に加えただろ!』

 『ケケケッ!』

 

「ちなみにドライアイスに関してスタッフは何もしていないとのことです!」

 

 

 

 ■■■■■■■■■■

 

 

 

「今日勝てば関東大会!クリスマスボウルへ1歩近付く!」

 

 試合開始前、円陣を組むとヒル魔が叫んだ。

 

「俺達は必ずクリスマスボウルへ行く!!」

『おう!』

「クリスマスボウルへの道を阻むクソ野郎共は全員倒して進む!」

『おう!』

 

「だがな……俺達は倒しに来たんじゃねぇ、ぶっ殺しに来たんだ!!」

 

 

 

 

 

 

 『ぶっころす!!』

 『YEAHー!!!』

 

 






 という訳で3位決定戦開始ィ!!


 蓮次がセナへ言った言葉、意味不明だと思われた方…考えるな、感じろ(無理矢理)
 
 次回からは盤戸スパイダーズ戦4話連続でお送りします!
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