後半は泥門の攻撃から。
ヒル魔君に怒られた瀧君はベンチへ、瀧君の代わりに雪光君が入った。
「……アリエナイ」
さっきまで雪光君が居た場所に座っている瀧君はフィールドを見ないで俯いて落ち込んでいた。
試合が進み残り時間は10分。
スコアは3対3から17対18…1点のリードを許してしまい盤戸が優勢。
後半の泥門は2回のタッチダウンとキックで7点で合計17点。
雪光君が入った事で、ヒル魔君のパスを織り交ぜた攻撃が展開され、風の影響を全く気にしない鋭いパスを投げていた。
モン太君へのロングパス、雪光君へのミドルパス、蓮次君へのショートパス。3種類のパスが出来るようになった泥門の攻撃は凄かった。
タッチダウンを決めてくれたのはモン太君で、雪光君と蓮次君がパスを貰いに動くようになればモン太君のマークが薄くなり、ヒル魔君の巧みなパスを通して決めてくれた。
そしてセナだけど…ランフォースでセナの走る道を誘導しようとすればパスが通ってしまうから結果的にランフォースを封じ込める事ができ、セナは赤羽君と一対一で勝負出来るようになった……が、毎回抜く事は出来ずに止められてしまう。
ヒル魔君はパスメインの作戦で攻撃をせず、セナのランメインで作戦を立てていて、中々点を取るのが出来なかった。
対して盤戸は2回のタッチダウンと1回のキック、そしてトライフォーポイントの時、キックのフェイクで赤羽君がボールを持ってタッチダウンを決められてしまい合計18点。
キックゲームに特化した盤戸スパイダーズらしい鮮やかなフェイクだった。
後半からの攻撃は、赤羽君が蓮次君と勝負を避ける様になり、蓮次君を違う人に任せてリードブロッカーとしての役割を果たしている。
今のところスパイダーポイズンに対抗出来るのが蓮次君だけで、対抗策を伝えたみたいだけどそれで直ぐに出来るわけでもなく……赤羽君にやられてしまい、タッチダウンを決められた。
「アリエナイ、どうして僕よりもムッシュ雪光の方が活躍している?僕は天才でこれまでずっと試合に出てた、なのにどうして僕はここに?神様に愛されているはずのこの僕がどうして?」
「瀧君…」
「僕は何でも出来る天才、蓮次君よりも活躍して華麗にスターになる男だったのに…なんで?」
「お前ロクな活躍してねぇだろ」
「ムサシ君…!」
止めようとしたけどどぶろく先生が無言で私の手を取って止めてきた。
「何が天才だ、何が神様に愛されてるだ。パワーもスピードも経験もあらゆる点で蓮次に負けてるお前が仲間の言葉を無視してやりたい様にしかやってねぇからここにいるんだろうが」
「……!」
「西部戦でヒル魔と蓮次がやってたバカを、今お前が同じことをしてんだ。だから頭を冷やす為にフィールドから追い出したんだろうが」
「そんな…」
「お前は西部戦に出て2人の何を見て何を学んだ?この試合の初めに蓮次から何を聞いた?もう一度よく思い出して考えろ凡人」
「凡…人…」
「お前はただのB級選手だ、神様なんかついちゃいねぇ」
そう言ったムサシ君がフィールドへ歩き出した。
今は泥門の攻撃でゴールポストまで45ヤード、フィールドゴールを狙いにヒル魔君がムサシ君を呼んだ。
「……そうか、そうだったんだ。アハーハーやっとわかったよ」
瀧君が開き直った様子でヘアゴムを取り出していた。
「どっかで思いたかっただけなんだ、自分はきっと特別な人なんだって、でも…僕は神様に愛された男じゃなかった、僕はただの人だ」
長い髪を後ろで纏め、ヘアゴムで留めた。
「なら僕は、自分の力で神様に打ち勝ってやる!!」
『ゴール成功!!』
この強風の中フィールドゴールに成功した泥門は3点追加、これで20対18で逆転!
そしてムサシ君のキックで盤戸の攻撃は残り50ヤードからとなった。
「瀧、お前の役目はなんだ?」
どぶろく先生が瀧君へ話しかけた。
「お前の武器はなんだ」
「僕はヒル魔君のパスを貰いに動く事、それと作戦をよく聞いて蓮次君と協力してセナ君を守る盾になること。僕の武器は…?」
「双葉と比べりゃお前は下位互換だが、ある1点だけは双葉を超えている。それが武器だ」
「なんだいミスターどぶろく」
「その柔軟性だ、ブロックされてもその柔らかさを使って押し合いを避けて躱せ。スパイダーポイズンだかなんだか知らねぇが押されても柔らかい体で受け流せ」
「!」
「後な、ブロックの勝利ってのは押し勝つんじゃねぇ、ボールとの間に体を入れ続ける事だ」
「……!!」
瀧君へ喝を入れたムサシ君と役割を改めて教えてくれたどぶろく先生、2人からの言葉に瀧君は真剣な顔でフィールドを見ている。
―瀧君はもう大丈夫―
ハンドサインを蓮次君とヒル魔君へ送ると、2人で少し相談した後蓮次君がハンドサインを返してくれた。
―こっちの攻撃に1度タイムアウトを取る、それまで待機―
盤戸の攻撃を泥門のディフェンスが何とか止め、4回目の攻撃で残り41ヤード。ファーストダウンまであと1ヤードと言う場面で盤戸はフィールドゴールを選択。
『Hut!』
これを決められると逆転されてしまう!
「プレッシャーかけろぉ!」
ベンチからムサシ君が叫び、元々そのつもりだったのかセナが全速力で抜けた!
「なにィ!」
「まずい…!!」
佐々木君が驚き、赤羽君がセナをブロックして止められ……セナのプレッシャーのおかげで佐々木君が慌てていた。
だけど風の影響なのか分からないがゴールポストの下に当たると跳ね上がり…運悪く入ってしまった。
『ゴール成功!!』
「っしゃああ!スマートだぜ!」
「フー…風に助けられた」
これで20対21、再逆転されてしまった。
盤戸のキックでプレイ再開。
試合開始のようなオンサイドキックのフェイクではなく、高々と蹴り上げられるキック。
風向きまで計算に入れられたキックはみんなの想像以上に距離が伸び、泥門自陣ギリギリまで飛んでしまい自陣残り20ヤードからの攻撃となってしまった。
『タイムアウト!』
ここでヒル魔君がタイムアウトを要求、フィールドに出ているみんながベンチへと戻ってきた。
「雪光まだやれるか?」
「もちろん」
ベンチに戻りながら蓮次君が雪光君へ聞くと力強く頷いている。
「蓮次君」
「どうした瀧」
瀧君が蓮次君へ話しかけ、少し離れた所へ移動。何を話してるのか分からないけど瀧君が蓮次君へ頭を下げて謝っているのが見えた。
「石丸を下げてファッキン顎髭を入れる」
「!」
全員が集まった所へヒル魔君がピストル片手に話し始めた。
「レシーバー3枚で攻める…テメェらこの意味分かってんだよな!?」
ヒル魔君がモン太君と雪光君と瀧君へ銃口を向けると3人が力強く頷いた。
「ファッキンチビ!テメェいい加減赤羽を抜きやがれってんだ!」
「す、すいません!!」
今度はセナへ怒りながら銃口を向け、私の持っているボードでセナをガードした。
「そういうの良くない」
「ケッ!いつまで経っても抜かねぇこいつが悪い。ファッキン顎髭!」
「なんだいヒル魔君」
「タイムアウト明けの攻撃、テメェに1度だけブロックの役目をやらせる、次クソみてぇな事しやがったら2度と試合に使わねぇ。いいな?!」
「任せて」
「双葉さん」
「どうした?」
セナが水分補給しつつプレイブックを見てる蓮次君へ話しかけていた。
「僕にも双葉さんみたいに腕を使って倒すのできますか?」
「……いや無理だろ」
「…」
「そもそも俺は倒す事を目的にしてねぇ、柔道技の応用で走る道を作るために押しているだけで偶然倒れてるだけだ。それを真似してぇのなら、スティフアームって技術を使え」
「スティフアーム…」
「俺とセナで筋力差があるからセナには俺のように道をこじ開けるのは無理。それでもほんの少しだけでも道を作りたいって言うのならスティフアームで相手の腕を抑えるかバンプみたいに胸をどつけ」
「…!」
「キツイだろうがセナならやれると信じてる、頼んだ」
プレイブックをベンチに置いた蓮次君が立ち上がってセナの背中を軽く叩き、モン太君と雪光君と瀧君の元へ歩き出した。
「……そうか!これならきっと…!」
セナが何か思いついた様子でタイムアウトが明けた。
試合終了まで残り時間5分、ゴールラインまで後80ヤード。
台風が近付いて来た影響でさっきよりも風が強くなってきたフィールドの中、最後の戦いが始まった。
という訳で盤戸スパイダーズ戦その3でした!
後半始まってから雪光を入れましたがまだ普通にパスを貰いに走っています。つまり、オプションルートは使っていません。
それなら山岡か佐竹でいいだろ!って思うかもしれませんが雪光はパスルートから決して離れずに走るので助っ人2人と比べると雪光の方が有能です。
ちなみに雪光は原作よりも試合の経験が多いのでもう緊張して転ぶなんてことはありません(笑)
そして未だセナは赤羽を抜けず…原作じゃ瀧のブロックがあってようやく抜き、追いつかれることなくタッチダウンを決めていたので完全に一対一では抜いてないんですよね。
きっとセナのいい経験値になってくれるでしょう(笑)
次はいよいよ盤戸スパイダーズ戦最終話!
石丸を抜き、瀧を再び入れた泥門は一体どんな攻撃をするのでしょうか!
それではお楽しみに!!