泥門の2番手   作:実らない稲穂

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関東大会初戦

 

 

 いよいよ関東大会初戦、相手は最強神龍寺ナーガ。

 

 会場前には大勢の記者団がいて、その殆どが神龍寺を目的にしている。

 

「ふ、双葉さん!おはようございます!」

「リコちゃんおはよう」

 

 1人だけこっちへ来たのかと思えばリコちゃんで、緊張した顔をしていた。

 

「い、いいいよいよですね!今のお気持ちを!」

「思ってる以上に冷静な自分と思ってる以上に滾ってる自分がいて今にも溢れ出しそうなぐらいだ」

「おー!気合い充分ですね!」

「当たり前だ」

 

 負ければ終わりのデスゲーム、クリスマスボウルへ行く為には絶対に避けては通れない強豪チームだ。

 泥門デビルバッツの総力を上げ、全部の作戦を駆使して、持てる力を全て発揮して勝ちをもぎ取りに行く。

 

「悪いなリコちゃん、今の俺は優しい対応をする気分じゃねぇ」

「いえ!試合頑張ってください!何故か今日私がゲスト解説をしているので特等席から見ています!」

「そ、いい感じで頼んだ」

「は、はい!奇跡的な大勝利を期待しています!」

 

 

 奇跡ね…果たして泥門デビルバッツが勝つと思ってると思ってる人達はどれだけいるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 フィールドに入ると歓声に包まれた。

 四方八方からの歓声を聞いた俺は周りを見渡し、最後に仲間を見た。

 これまで一緒に戦ってきた仲間がいる、そう思うだけで不安な気持ちが消え去り…………殺気を感じた。

 

「……阿含か」

 

 フィールドの反対側のベンチにいる阿含が俺を見ている。

 遠くにいても分かる程の威圧感と俺を殺そうとする殺意を感じ、ハッタリで笑みを浮かべて涼しい顔をしてベンチにカバンを置いた。

 

 

「がはははっお前ら!面白ぇもん見せてやるよ!」

 

 どぶろく先生が笑いながらパソコンを操作していた。

 

「あっらゆる賭けを受けてくれる海外の賭け屋に張ったんだが、今日の神龍寺戦オッズ何対何だと思う?」

「学生スポーツで賭けないでください…」

「どぶろく先生賭け禁止だって言ったはずなのに何勝手にしてるんですか…」

 

「冷たい事を言うな双葉。オッズは神龍寺が1.003倍、泥門は170倍だとよ」

「ケケケケケ!舐められたもんだな!」

 

 ヒル魔が笑いながら無糖ガムを口に咥えた。

 

「ま、実際そんなもんだろうがな」

 

 真剣な顔で言い放つとメンバーの顔が引きつっている。

 

「そんな訳で給料とボーナス前借りして、泥門の勝ちに100万ぶっ込んだ」

「おいジジイ…!」

 

 どぶろく先生の宣言に思わず頭をひっぱたいてしまった。

 

「試合が始まれば俺は何もしてやれねぇ、だから一緒に背負いてぇんだ」

 

 悲しい雰囲気を纏わせ、一緒に背負う覚悟を見せてくれたが……その背負い方がギャンブルってのは何か裏があると感じてしまう。

 

「本音は?」

「本音だ」

「……俺達が勝てば1億7000万、どう思います?」

「最高じゃねぇかおい!一気に大富豪「!!」」

 ガツン!!

 

 どぶろく先生の頭に全力のゲンコツを落とし、驚いて水が入ったボトルを落とした姉崎の元へ向かった。

 

「ありがとう蓮次君」

「試合までまだ時間がある。慌てなくていいから水分とアイシングを多めに用意していてくれ」

「うん……あっ」

 

 落としたボトルを拾い、姉崎が俺の後ろを見た。

 

「細川一休…すまん」

「す、すいません!!」

 

 そこには頭から水を被った細川一休がいた……。

 

「あぁ、別にいいっすよ…全然、気にしないでいいっす…」

 

 姉崎から目を逸らし恥ずかしそうにしている……女慣れしてないのが丸わかり。

 

「いっ…!」

「きゃっ!」

 

 突然俺のケツを蹴られ姉崎とぶつかり……転んでしまいそうだったので咄嗟に腰に手を回して支えた。

 

「悪い、大丈夫か姉崎。おいヒル魔どういうつもりだ!?」

「ケケケッ」

 

 ヒル魔に怒鳴るも笑うだけで俺から離れた。

 

「ったく、何をしたかったんだあいつは…?」

「あ、あの蓮次君…もう大丈夫だから、ね?」

「あ?」

 

 姉崎の方を見ると顔を真っ赤にして俺のユニフォームを軽く掴んでいる。

 

 改めて見ると姉崎って美人だよな…………って今は試合に集中しねぇと……。

 

「おぅ一休、クソマネは既に白銀の女だ。テメェがいくら色目使おうが靡く事はねぇぜ?」

「!!」

「ウキィ!?」「モン太!?」

「おいやめろバカ」

 

 細川一休を煽ってるつもりだろうが違う奴にまでダメージが行ってる!

 

「この前なんか白昼堂々お姫様抱っこをして走ってたもんなぁ〜?」

「そのネタを出すなバカ野郎!」

「否定しねぇってことは事実だって認めんだな?」

「あっ!…こ、この悪魔!!」

 

「アンタ、半殺しにするつもりだったけど鬼殺しにしてやる」

 

 うわ〜殺意マシマシ……もうどうにでもな〜れ(現実逃避)。

 

「ウホォウホォ!ホァア!アァ!アァ!!ウキィー!?」

「モン太落ち着いて!!」

「とうとう野生化したか」

「ありゃ仕方ねぇよ」

「戸叶君と黒木君もモン太を落ち着かせるの手伝って!」

 

 カオスな状況を解決する思考を放棄し、姉崎を離さずに事が流れるのを待っていると細川一休を連れ戻しに山伏権太夫が現れ、俺を睨みつけて去って行った。

 

 

 とりあえず神龍寺のベンチにいる選手全員からの殺気を浴びながら姉崎を離し、モン太の頭を叩いて落ち着かせた。

 もうすぐ試合が始まる、いつまでも遊んでないで試合に集中!

 

 

「どういうつもりだヒル魔」

「あ?事実だろうが」

「2重の意味で違ぇよバカ、なんでまた煽る様なことをしたって聞いてんだよ」

「ケケケッこれで相手が油断してくれりゃ儲けもん、テメェを生贄に勝ちをもぎ取りに行く!」

「…………俺、生きて帰れるかなぁ」

 

「あー死ね、ファッキンドレッドと相打ちして死ね。そうすりゃ勝てる確率が跳ね上がる」

「うーわこいつまじか」

 

 絶対無理だわ。

 

「後半からだ」

「?」

「巻き返すのは後半、ファッキンハゲを入れてからが勝負だ。それまで点差を離されねぇようにやるぞ」

「限界ラインは?」

「30点、それまで守りに入らず攻め続けるぞ」

「おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おうテメェら分かってってか?俺らはここへ何しに来たんだ?」

「もちろん!」「神龍寺を!」「ぶっ倒しによぉ!」

 

 栗田、セナ、モン太の順でヒル魔の質問に答えた。

 

「ケケケ違ぇだろファッキンザコ共!もう忘れてやがる!倒しに来たんじゃねぇ」

 

 

「殺しに来たんだ」

 

 ヒル魔の言葉に全員が息を飲んでいる。

 

 

 

 『ぶっころす!!』

 『YEAHー!!』

 

 

 

 

 

 『さぁ始まりました関東大会!実況は私マシンガン真田と!アメリカへ行っちまった熊袋記者の代打で娘さんの熊袋リコちゃんがゲストで登場!』

 『…………』

 

 『リ、リコちゃん…?』

 『…………』

 『し、死んでいる!?なんとリコちゃん!試合開始前に緊張からか死んでしまったぞぉ!?』

 

 

 

 『だが実況は止まりません!このまま生き返るまで私1人でもこの試合をお届けする所存!”関東の神”へ挑む悪魔達は果たして不敗神話に穴を空けることができるのか!!』

 

 『次回!神龍寺ナーガ対泥門デビルバッツ!!』

 

 






 次回から9話連続で神龍寺ナーガ戦!
 


 次の投稿予定は2026/01/28の0:00です。
 お楽しみに!
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