〜小早川瀬那視点〜
─足首は直角で固定!足全体の力で地面を押しながら進むんだ。─
─足の内側後ろの筋肉を使って前にドンと押し出す!足を漕ぐ感じで!―
─引っ張る力よりも押す力の方が強いに決まってるんだ!─
昔……小学生の頃、僕に走り方を教えてくれた同級生がいた。
2週間だけ一緒のクラスだったその子は、弱かった(今も弱い)僕に走り方を教えてくれて、喧嘩に勝つ為に教えてくれたその走り方を僕は……パシリに使った。
ねぇ、陸。
相変わらず喧嘩には使ってないけど今はパシリじゃなくてアメフトで使うことになったんだ。あの時は陸に怒られたけど今は怒らないよね?
だから……
「不器用な人への教え方を教えて欲しい……!!」
おかしい!教わった走り方をそのまま教えてるはずなのに双葉さんの走り方が全然違う!
地面を押す感じって言ったはずなのにどうしてバタバタと足を上げて走っちゃうの!?
「なんか……悪いな」
双葉さんに申し訳なさそうな顔で謝られた。
「いえ…きっと僕の教え方が悪いんです。僕って頭悪いのできっと教えられたそのままを言ったつもりでも間違えてると思います」
「元から不器用なんだよな俺…単純な動作ならいけるけどこう、複雑なものになるとちょっとな」
「ちょっと!?あれがですか!?」
地面にいるはずなのに溺れないような感じでバタ足で走るのがちょっと!?絶対に違う!!試合の時はもっと普通に走ってたのにどうして!!?
「すまん」
「ケーケッケッケ!ダッセエ走り方だ!」
「ヒル魔さん!」
ガムを噛んでいるヒル魔さんが現れた。
「こいつを理屈で教えんのは無理だ、教えても頭の中で噛み砕いて飲み込むまで時間がいる」
「こういう時ってどうすれば…?」
「簡単な話だ。ファッキンチビは何度か走って見せろ、ファッキンセカンドはチビの走ってる姿を真似しろ」
「それだけ!?」
そんなので出来たら楽でいいのに……。
「あぁそれなら出来る」
「出来るんですか!?」
それなら初めから教えて欲しかったです!!
ヒル魔さんの言う通りに走ってる姿を見せた。
3回走り終わった後、双葉さんを見れば片足で僕の足の動きを真似し始めている。
「もう何度か見せてくれ」
もう3回走って見せると、今度は軽く走り始めている。
「1回走ってみる」
双葉さんがそう言うとグラウンドで40ヤード走をすることとなった。
パアン!!
ヒル魔さんがハンドガンを上へ撃つと双葉さんが走る。
ゴールを駆け抜け、まもり姉ちゃんがストップウォッチでタイムを計って記録を見た。
「5秒ジャスト!」
「コンマ6秒速くなった!」
「やっとか…おせーぞ」
何回か見せただけでもう成果が出てる!
「ヒル魔さん、どうして双葉さんがいきなり速くなったのか分かります?」
「あ?テメェがやったのは見取り稽古、動きを見て覚えるやり方だ」
「見取り稽古?」
「あいつは動きの真似から始まって、体に馴染ませてから自分の最適解の動きに昇華させる。理屈じゃねぇ、形から覚えるタイプだ」
「懐かしいなぁー!アメフト部に入ってすぐの頃は全然できなかったもんね!」
「ボールの持ち方から教えてもヘッタクソで何回も零すから仕方なしにラインをさせた。それでも目も当てられねぇぐらいヘッタクソだったがな」
「そこをムサシが見て覚えろって言ったのがきっかけだったよね!」
ムサシさん?誰だろう。
「あだっ!」
ヒル魔さんが何も言わずに僕のお尻を蹴ってどこかへ行ってしまった……。
「怒らせたのかな…?」
「ううん、あれは褒めてるんだよ」
「そうなんですか?」
「ちょっと伝わりにくいと思うけどヒル魔なりによくやったって、蓮次の足が速くなるきっかけを作ってくれたのがセナ君のおかげだって褒めたんだよ」
「良かった…何か怒らせたと思ってました」
「コツは掴めた、後は繰り返して覚えるだけだな」
双葉さんかギュッと拳を握っている。
「ありがとうセナ、おかげで何とかなりそうだ」
「いえ、結局僕はちゃんと教えられなかったです」
「そう謙遜するな」
双葉さんに頭を撫でられ、また走り始めた。
ズベッ……
だけど2歩目で転けて動かなくなった。
「もう無理……筋肉痛と疲労で動けねぇ」
昨日試合で今日は練習禁止だから仕方ないと思う。
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〜双葉蓮次視点〜
「今日も昨日と同じで連携プレイ。その後テメェは走り込みとパスルートの練習とパスを投げる練習、時間がねぇんだからやるぞ」
「ま、まて…まだ体が動かねぇ…」
「知るか、禁止だって言ったのに走ったのは誰だ」
「うぐぐ……へーへーわるうござんした」
夜のグラウンドでヒル魔と秘密の特訓……だが疲労で動けない俺は休ませて欲しいと言うがド正論を突きつけられて休むのを諦めた。
そこからはひたすらに特訓。
疲れて動きが鈍い中でもミスすることなくやる。疲れていても出来るように体に慣らして行き、試合でも出来るように……。
「今日はここまでだ」
「つかれたぁ…」
ヒル魔の言葉に俺はその場に倒れた。
「40ヤード走5秒ジャスト、まぁまぁ使えるレベルだな」
「コンマ1秒抜かされた気分はどうだ?」
「ケッ!元々そのポテンシャルがあったくせに嫌味かよ」
「大真面目にやってたんだがな…」
「まだまだ伸びる、凡人の壁を越えろ」
「越えられるかわかんねぇな」
「超えんだよ!」
「ぐえっ!」
ヒル魔が俺の腹にアサルトライフルを叩きつけた。
「アイシールド21が黄金の脚ならテメェは白銀の脚を目指せ!」
「白銀って…銀メダルか」
「脚だけじゃねぇ!全部だ!全部白銀を目指せ!……そうすりゃテメェが1番だ」
「全部2番なのに1番っておかしくねぇか?」
「おかしくねぇ」
アサルトライフルを俺から離したヒル魔が隣に座り込んだ。
「なんで俺はテメェをタイトエンドにしたか分かるか?」
「知らねぇ、教えてくれ」
「アメフトは専門職だ、それぞれ得意な武器を持っててそれを発揮するポジションがある。デブならパワー、チビならスピード、サルならキャッチ。だが全員苦手な部分がある」
「栗田はスピード、セナはパワー、モン太はパスだな」
「テメェはどうだ、得意な奴らと比べて劣るが他所じゃエース級、厳しく見ても準エース級。完璧じゃねぇがどのポジションにつかせても及第点以上の成果を出せる。だからテメェはそれでいいんだ」
「欠点らしい欠点がないのがいいってか?」
「ケケケッそういうこった」
ガムを取り出し1枚口に咥えたヒル魔が俺にも1枚投げ渡してきた。
「ウチにはエースが揃い始めているがエースだけじゃペアには勝てねぇ」
「?…あぁポーカーの話か。確かにペアにならねぇとどんなに良い手でも負けるよな」
「エースを使ってペアに勝つには同じペアにするのが当たり前、ペアにすんのに同じ数字が必要だがそんなもん現実にはねぇ。だがエースには劣るが何にでも合わせられるジョーカーがテメェだ」
「……まるで個人戦じゃ無理でもチーム戦なら勝機を見いだせるって言ってるな」
「そういうとこが俺にとってのジョーカーなんだよ」
「そう褒めるな照れる」
「真顔で言うなキメェ」
「悪かったな」
「元から何でもかんでも揃ってる奴は自分が天才だと理解してそれ以上を目指さねぇ。けどな、2番からの奴は上がいるのを知ってるから努力しようと、必死こいて上を目指そうと努力をする、テメェのようにな」
「お前もだろ」
ヒル魔が立つと部室の方へ歩き出した。
「王城、勝つぞ」
それだけを言って振り返ることなく行ってしまった。
「もちろんだ」
ヒル魔に貰ったガムを口に入れた俺はボソッと答えた。
そして練習を続け、あっという間に王城ホワイトナイツ戦の日がやって来た。
日常パート3つ目でした。
ここで何故2番手になるのか伝えられたかなと思います。
補足…する程でもないですが、真似をする所からスタートする「形から入る」人間だからです。(感想で書かれているのを見た時ゾッとしました…もうバレた!なんて思ってました)
それから、アンケートに答えて頂いてありがとうございました!
圧倒的多数で姉崎まもりになりました!!……とはいえ、ヒロインとしてどうすれば正解?なんて問題に直当たりになりまして、何名かの提案に乗らせて頂く感じにします!(じゃあなんでアンケートなんてしたんだこのバカ!って言うのは無しで…すいません)
ヒロインムーブを書けるか分かりませんが私なりのやり方で姉崎まもりをヒロインとした感じで今後の展開を考えて行きます!どんな感じになるかはこれからをお楽しみに!!
それでは次回、3話連続で”王城ホワイトナイツ戦”をお送りします。
どのような試合展開になるのか、勝者はどっちなのか…!!
多くの方々がオリ主が今後どう成長するかの予想を感想で書いてくれていまして、その流れで王城戦の点数まで当てられたらもう怖いです(笑)