泥門の2番手   作:実らない稲穂

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試合終わり

 

 

「1億7000万円!!」

 

 試合が終わってベンチへ戻ると、どぶろく先生が叫びながら死んだ。賭けの事を思い出してしまったか…とりあえず。

 

「ヒル魔、どぶろく先生が死んでる今のうちに必要なもんだけ掻っ攫うぞ」

「ケケケッ!貧乏性だなテメェは」

 

 ヒル魔がパソコンを操作し、どぶろく先生の口座を開いた。

 

「先ずはヒル魔が貸していた2000万の回収」

「おう、やったぜ」

「次にどぶろく先生が賭けていた100万円、色をつけて200万円にして残してやろう」

「お優しいこって」

「これで残り1億4800万円を…泥門デビルバッツの全員で山分けだ」

 『おおおおおっ!!』

 

「助っ人の石丸と佐竹と山岡も入れて……」

 

 ヒル魔・栗田・ムサシ・俺・姉崎・雪光の2年組に加えてセナ・モン太・瀧・十文字・黒木・戸叶・小結の1年組と助っ人3人で……鈴音も入れておくか?

 なんて思って鈴音を見ると激しく首を横に振って拒否している。じゃあ鈴音を抜いて16人か。

 

「結果、1人925万円か」

 『うおおおお!!』

 

「おう、全員の口座に振り込んだぜ」

「流石ヒル魔、なんで全員の口座を知ってるのか敢えて聞かねぇがこれで無事に精算したな」

「ケケケッ!」

 

「どうする!?いきなり1000万近くの大金が手に入ったぞ!」

「何を買おうかなモン太!と言うかほんとに手に入れて大丈夫なお金かな!?」

「何言ってんだセナ!どぶろく先生が賭けたって言ってもやったのは俺らだぞ?双葉先輩が決めてヒル魔先輩がやってくれたんだから有難く貰おうぜ!」

「う、うん!!」

 

 

 いきなり大金を手にしたな、何に使おうか。

 弟達の学費に使う?それも良いが、これだけの大金だ……少しぐらい俺の為に使ってもバチは当たらないだろ。

 

 

「ねぇ蓮次君、もしかして私も計算に入れてる?」

「当たり前だろ、お前も泥門デビルバッツのメンバーだしマネージャーなんだから貰う権利はある」

「……ありがとう」

「大事に使えよ」

「うん」

 

「姉崎なら何に使う?」

「え?えっと………貯金、かな」

「姉崎らしい」

「蓮次君は?」

「今回に限って俺も何かに使いたいけど、今のところ思いつくのは美味い飯をたらふく食うって事しかねぇんだよ。良い使い道あるか?」

「だったら置いといたらどう?」

「ま、そうだよな」

 

 思いつくまでは貯金しておこう。

 

 

「やる事は済ませたんだ!今度はベンチ開けるぞ!」

 

 あー疲れた、手刀を何度も貰った腕がいてぇわ。

 

 

 

 試合が終わってベンチから引き上げ、客席へ移動した俺達の前に死んだ筈のどぶろく先生が怒った顔をしていた。

 

「俺の1億7000万円をどこへやった!!?」

 

 どうやら賭けで買った金がごっそり減っているのに気が付いたらしい。

 

「口座にあるでしょ?」

「200万円だけな!後は全部消えてやがる!!」

「俺達を使って賭けをしたなら出場した俺達にも分け前を用意するのが普通じゃないですか?」

「あぁ!?」

「もしかして独占するつもりでした?それはちょっと酷い話でしょ、学生スポーツに賭け事を持ち込んで私腹を肥やすなんて大人としてどうなんですか?」

「うぐっ…!で、でも俺だって背負いたかったんだよ」

「じゃあ200万円で手打ちにしましょう。大丈夫です、賭け金の倍に返って来てるのでぼろ儲けですよ」

「…………確かに!もっと儲けたけりゃ次の試合で賭けに勝てばいいんだ!!」

「マジでダメな大人だな…」

 

 略してマダオ。

 

「次の試合!太陽スフィンクスと白秋ダイナソーズの賭けは太陽に全額賭けた!オッズは低いがこれで勝てば400万円!倍倍ゲームだ!」

「……」

 

 マジでダメだこいつ、早く何とかしないと……。

 

 

 

 

 だけど白秋ダイナソーズか…確か抽選会で円子ってクォーターバックが番号を交換したがってた理由は何だったんだ?

 

「姉崎、白秋について何か情報は?」

「ちょ、ちょっと待って…パソコン苦手なのよね」

 

 

 『GYYYYAAAAAH!!』

 

 

 誰の叫び声!?

 

 

 

 声の発信源を見れば栗田以上の巨体の男が口から何かを吐き出していた。

 

「あいつは?」

「が、峨王力哉君…白秋ダイナソーズのラインで1年生だって」

「あれで1年?化け物通り越して怪獣だろ」

 

 その峨王が俺を見ているのに気が付いた。

 

「なんで俺を見てんだ?」

「知り合い?」

「いや全然」

 

 まるで獲物を見つけたとでも言う様な凶暴さを見せている…俺狙われてる?

 

「俺やべぇのに目をつけられたかも」

「どんまい…?」

「うっせぇ」

 

 

 

 

 さて、試合の結果だが……太陽の棄権で終わった。

 

 峨王とマッチアップしていた番場がノックダウンされ、次々とラインの選手が峨王に潰されてしまった。

 姉崎の話によれば地区大会ではクォーターバックを大怪我させて退場させている程の男。

 だが太陽のラインはちゃんと原尾を守り切り、残された原尾が棄権を申告したのだ。

 

「クォーターバック潰しの怪獣峨王から守りきったか、すげぇな」

 

 前に試合した時も思ったが太陽ラインは強い。

 敗因を上げるとすれば、太陽ラインよりも峨王力哉の方が強かった…技も連携も意味をなさない程の圧倒的な力で正面からぶっ壊した。

 

 

「あ・はー!!ダッセェー!!」

 

 太陽が棄権して会場が静まり返っている中、後ろから笑う声が聞こえた。

 

「番場かバン馬鹿かしんねーけど瞬殺された瞬殺!もうあれ学校の恥プギャァー!!」

 

 誰が言ったのか見ると室サトシ、泥門高校のサッカー部の奴だ。

 

「蓮次放っておけ」

 

 思わず体が動いたがムサシが俺の腕を止めた。

 

「ああいう馬鹿はどこにでもいる」

「今すぐ俺の手を離せムサシ、肩の関節を外して顔面崩壊させる程度で済ませる」

「それを止めろと言ってんだ、出場停止処分食らうぞ」

「……」

 

 

「誰だ」

 

 フィールドから去ろうとしていた峨王がこっちに向かって問いかけてきた。

 

「今番場を笑ったの誰だ、降りてこい」

 

 峨王がキレている。

 

「出て来ねぇなら話は早え、このスタンドにいる全員背中の骨へし折ってやりゃ済む話だ」

 

 客席との柵をぶち破りながらこっちへ来た!

 

「姉崎と鈴音は下がってろ」

「蓮次君?!」「蓮兄!?」

 

 ヒル魔もスタンガンを用意し、十文字達も金属バットを手に取って戦闘態勢が出来上がっていた。

 

 

 

 

 

「俺だよ。俺が言った」

 

 峨王の暴走が始まる前に客席にいた甲斐谷が明らかな嘘を言い放った。多分目的は峨王の情報を得るためだろう。

 

「お前じゃない。目が腐ってない、そのくらいは分かる」

「…」

「さしずめ…マルコが隠しまくって情報の少ない俺の力を計りたかったと言うところか」

 

 意外と頭があるな、脳筋だがバカじゃない。

 

 

 

 

「みんなこれドッキリ!はいドッキリ大成功!だからここでドンパチはなし!OK?」

 

 甲斐谷と峨王と睨み合いをしているとマルコが現れ仲裁、峨王は大人しく去って行った。

 

 

 

 その後の試合は通常通り行われ、西部対岬は西部の圧勝で終わり、雷が近付いているので一旦中止。

 

 雷が去るのを待つ為にナイターから王城対茶土の試合となった。

 

 

 

 

 

 

 

「蓮次」

 

 夜まで時間があるので会場周りにある自販機でコーヒーを買っているとジジイが来た。

 

「マジで来てたんだな」

 

 ジジイが俺の傍まで来ると、何も言わず俺の背中を撫でた。

 

「…………なんか言えよ」

「まだ足りん、精進せよ」

「うっせぇ」

 

「茶土の方々は軟弱じゃった」

「ぶっ壊してねぇよな」

「…………」

「やったな?」

「言葉が通じないと言われ追い出された」

「パワフル語で話すからだろ」

 

 パワフル語通じなかったのか、なんかホッとした。

 

「柔道を辞めた俺なんか放って置けばいいのになんでアメフトに関わってきた」

「……」

 

「特別顧問に呼ばれて金稼ぎか?俺がアメリカで稼いできた金もあるしついさっき大金も手に入れたから生活の為に使えばいい」

「……」

 

「それでも足りねぇってならクリスマスまで耐えてくれ、クリスマスボウルが終わればバイトに精を出して家に入れる」

「……」

 

「兄貴の学費もセイジの学費も、これから中学高校へ進学する弟達の学費も俺が何とかする」

「バカモーン!!」

 バシーン!!

「おぶっ…!!」

 

 ジジイの全力ビンタを貰い地面を転がると俺の胸ぐらを掴んで無理やり体を起こされた。

 

「っ!……!!…………バカモン!!」

「パワフル語で話すなクソジジイ…!!」

「本気で打ち込むのであれば満足するまでやれい!!」

「……」

 

「蓮次の試合を見て確信した!お前は柔道家ではなくアメフト選手が合っとる!ならば満足するまで打ち込め!」

「……家の事はどうすんだよ」

「お前が気にすることではない!」

 

 ジジイが携帯を取り出して操作すると、ある画面を俺に見せてきた。

 

「これでボロ儲け!」

「ジジイ、お前もやったな…!」

 

 神龍寺ナーガVS泥門デビルバッツの賭け試合の結果の画面……賭けは勝ち、11億9000万円の大金が入金されている。

 それを170で割ると…………700万円!そんな大金どっから出てきた!!?

 

「この掛け金の出処は?」

「蓮次」

「俺がアメリカで稼いできた金ほぼ全部ぶっ込みやがったな!?」

「許せ」

「ぶっ殺す!!」

 

 弟達に使う予定だった金を着服しやがって!金が増えたからOKとかじゃねぇ!刺し違えても今ここでクソジジイをぶっ殺す!!

 

 

 

 

「ぜぇ…ぜぇ…」

 

 目の前には大量のたんこぶが出来てぶっ倒れたジジイ、今ここでトドメを差して息の根を止めなければ…!!

 

「蓮次兄ちゃんダメー!」

「離せセイジ!こいつはここで確実に息の根を止めなければ家が破産する疫病神だ!」

「だからってその辺に落ちてた棒で撲殺はダメだよ!やるならコンクリに詰めて東京湾に沈めなきゃ!」

「お前の思考の方がダメじゃねぇか…!」

 

 セイジのボケに怒りが抜け、持っていた棒を投げ捨てるとジジイがあぐらをかいて座って頭を下げてきた。

 

「許せ」

「100回死ね!」

「だがこれで家の事は気にする必要がなくなった。蓮次のやりたい事をやり続けよ、アメフトに打ち込んで良し他のやりたい事を見出して励んでもよし、蓮次の人生を悔いなく進め」

「…」

 

 すっげぇいい事言ってるけどこのジジイって息子がギャンブルで稼いだ金に手を出して勝手に賭けてんだよな…複雑な気持ちで仕方ねぇんだけど。

 

「とりあえず…お父さんのやった事、お母さんに報告しとくね」

「おう頼んだ」

「待てセイジ!」

「お前は死ねぇ!!」

「ふごー!!?!」

 

 トドメのゲンコツをジジイの頭に落としてようやく気絶してくれた。

 

 

 そして王城VS茶土の試合が始まったが…………注目していたチームだったのに結果は散々、見るも無惨な試合結果だったと言っておく。

 

 おっパイとか叫びながら大田原に突っ込むバカがいたぐらいだ。

 

 

 






 ジジイのおかげ?でお金持ち!やったね蓮次!もうこれからずっとアメフトに集中できるよ!満足するまでやってもらいましょう!

 Q:棒で殴ったらヤバくない?
 A:マッスルのおっさんが棒で殴られたぐらいじゃ死にません。
   それにこれギャグですから(笑)

 Q:お母さんに報告した後どうなったの?
 A:ボッコボコにされた後晩御飯抜きに加え、お金は全てお母さんが管理されるようになりました。


   
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