FE風花雪月 神謀の黄金卿   作:伝説の超三毛猫

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この物語はブラックジョークを含めた面白おかしいストーリー……にする予定です。シリアスに振り切れないようにするので、そういう作風だと言うことで寛容にお願いします><


「彼は、私の人生で生きた人の中で一番の馬鹿である。」
 …リシテア=フォン=コーデリア(帝国暦1164〜帝国暦1239)


9.KABEDON

「リシテアさん、今回はありがとうございました」

「良いですって。事前に決めていた事ですから」

 

 黒鷲の学級の課題であった、ある制圧任務からの帰り道。夕陽がガルグ=マクの尖塔を茜色に染める頃、バラキエルは隣を歩くリシテアに、改めて頭を下げた。

 先月のロナート卿の蜂起に際し、他学級であるベルナデッタとリンハルトに協力を仰いだのはバラキエルの提案。

 その見返りとして、今度は黒鷲の学級の課題を手伝うというのは、筋の通った取引だった。

 もちろん、迷惑をかけた二人には、約束通りお詫びの品を送ってある。

 ベルナデッタには南方の珍しい絹の刺繍糸を。

 リンハルトには鳥の羽と蕎麦殻を多層構造にして頭圧を分散させる、新開発の安眠枕を。

 二人とも大喜びだったと聞いている。

 

「リシテアさん、今回の件、重ねて本当にありがとうございました。貴女には助けられてばかりです」

「もういいですって。課題の手伝いは、これで貸し借りなしでしょう」

「そうではなく。ロナート卿の乱の時、ベルナデッタさんを説得してくださいましたでしょう。あの時ばかりは、てっきり止められると思ったのに、貴女は私に協力してくださった」

 

 バラキエル本人からすれば、そのことは意外なハプニングだった。本当は、誰にもバレないようにベルナデッタに狙撃させる気満々であった。

 

「……まぁ、まさか騎士道精神に堂々と喧嘩を売るような真似をするとは思っていませんでしたが」

「あれは偶然ですって。それで…何故、あの時、私を信じてくださったのですか?」

 

 結果オーライとはいえ、予想外のあの行動……その真意を尋ねると、リシテアは少しだけ視線を逸らし、「アルビレオ商会が作るクロスボウの品質は、信頼していましたから」と憎まれ口を叩く。

 だが、あの時のリシテアからすれば、ただバラキエルの瞳の奥にある必死さを信じただけなのだ。

 

「……ここ二年、あんたが誰よりも努力しているのは、私が一番よく知っていますから」

 

 彼女がぽつりと漏らしたそれは、あまりに意外な言葉だった。

 バラキエルにとって、数多の未来を知ってからの二年間は来るべき戦乱を生き残るための、孤独な準備期間でしかなかった。誰かに褒められるためでも、理解されるためでもない。だからこそ、その努力を真正面から認められ、彼は面食らったのだ。

 

「……ありがとうございます。貴女の声援一つで、私はあと百年は頑張れそうです」

「思ってもいないことを、すぐ口にするのは悪い癖ですよ」

「酷いな〜」

 

 精一杯の心を軽くいなされる。だが、そのやり取りすら、今のバラキエルには心地よかった。

 

 

 

 

 

 その夜。バラキエルはリシテアを、誰にも聞かれないよう、大聖堂のバルコニーへと呼び出した。月明かりが、二人の影を長く伸ばしている。

 

「少し、真剣な話をしたい。よろしいですか」

「何ですか、ここまでしてまで改まって、話って」

 

 バラキエルは、夜風に吹かれながら、真っ直ぐに彼女の瞳を見つめて話を始めた。

 それは、彼女の身体を蝕む、二つの紋章の代償について。そして、その呪いを解き、失われた寿命を取り戻すための研究を、本格的に始めたいという提案。そのためには、紋章学の権威であるハンネマン先生に、彼女の秘密を打ち明ける許可が欲しい、と。段階的に、リンハルトも巻き込んで。

 その言葉を聞いた瞬間、リシテアの指先に、パチリと小さな火花が散った。彼女はそれを炎の弾丸へと変え、無言でバラキエルに突きつけた。放たれたファイアーが彼の耳を掠め、背後の石壁に黒い煤の跡を作る。その間、バラキエルは眉一つ動かさなかった。

 

「……避けられたはずです。なぜ、何もしないのですか」

 

 震える声で問うリシテアに、彼は静かに答えた。

 

「貴女の怒りがそれで収まるなら、喜んで受け入れましょう。貴女ほどではなくとも、私も奴らを……貴女で実験をしでかした『闇に蠢く者共』を殲滅し、紋章の呪いを解き放ちたいと、心から願っているのです」

 

 息を呑んだ。

 自分が『非道な人体実験』を受けたことをなぜ知っているのかと。

 あれは、何年も前の話。コーデリア領内も悲惨なことになったため、戒厳令を出していて領内の民も知らないのに。ましてや、バラキエルは巻き込まないためにも近づけさせることすらしなかったのに、と。

 

 その隙を突くようにバラキエルは一歩、リシテアに迫る。彼女が後ずさると、さらに一歩。やがて壁際に追い詰められたリシテアは、彼の腕の中に閉じ込められる形――いわゆる、壁ドンをされる。

 

 客観的な話、バラキエルは所謂イケメンに分類される男だ。170センチという身長も、ライバルが強すぎるだけで決して低くはない。また、彼自身の知恵をもって、商会も大成功を収めている。古き良き時代、女性にモテる条件である3高が揃っている。オマケに責任も取れる甲斐性もあった。この上で「紋章がないから」と彼に見向きもしない女性は、ハッキリ言って男を見る目がない。

 

 加えて、リシテアの現在は身長140センチ台。子供扱いされることが多く、それに対して憤慨してきたが、まさかこの段階から大人のレディ扱いされるとは思ってもみなかった。バラキエルがアピールし続けたハズだが、彼のラブコールを冗談か何かだと思っており、耐性は一切ついていなかった。

 

「貴女の力になれることは何でもします。資金も、情報も、私の全てを使いましょう。研究の過程で、貴方に一切の負担を掛けないよう努めることを誓います。万が一、このことが誰かに知られたら、全て私が貴女を強要したことにすればいい」

「わ、分かった! 分かりましたから!! ち、近いですって!」

 

 真っ赤に沸騰した顔で、リシテアは慌ててバラキエルを突き飛ばす。だが、その瞳に先程までの怒りはなく、潤んだ瞳で彼を見つめ返すその表情は、拒絶とは程遠いものだった。

 あまりに衝撃的な経験に、『闇に蠢く者』云々の話は、すっかり頭から抜けてしまっていた。

 

 

 …しばらく息を整えた後で、リシテアは気を取り直すかのように、バラキエルに話を振る。

 

「………それで、どうするつもりなのです?」

「どうする、とは?」

「私の研究ですよ。あんなこと言った以上、具体的に考えてあるんでしょうね?」

 

 不安の眼差しに、勿論、と告げるバラキエル。

 彼女に彼が差し出したのは、ハンネマン教授との間で交わされたという「研究における被験者の個人情報(プライバシー)保護に関する覚書」の写しだった。そこには、インクでこう記されていた。

 ――『本研究における被験者は、コードネーム『小鳥(ロビン)』と呼称し、その正体は研究者と発起人を除いて秘匿される。研究に関する全責任は、発起人である私、バラキエル=フォン=アルビレオが単独で負うものとする』――

 フォドラにはまだない、誰かの情報を秘匿するという概念。新たな試みに躊躇いもなく全責任を賭けようなどという覚悟は、生半可なものではない。

 

「あとは、これを」

「何ですか、これ?」

「貴女の『保険』ですよ。万が一、この研究が教会に咎められた時に、先生に渡してください」

 

 バラキエルが渡してきた羊皮紙。

 なんのことだといった顔で、それを丸めていた紐を解くと、リシテアは信じられないものを見たかのように、「…は?」と声が漏れ出た。そこには、信じがたい文面が書いてあったからだ。

 

『リシテア=フォン=コーデリア殿。貴家の血に纏わる秘密、その全てを私は把握している。これを公にされたくなければ、我が紋章学の研究に全面的に協力せよ。これは取引ではない。命令だ。 バラキエル=フォン=アルビレオ』

 

 あまりにも完璧な逃げ道だった。フォドラの捜査技術は、平成・令和に比べればお粗末にも程がある。中世の魔女狩りレベルの捜査知能しかない教会の目を欺くことなど、彼にとっては朝飯前だ。しかも、バラキエルはリシテアの秘密を本当にすべて知っているため、調べれば調べる程、リシテアを疑う人間はいなくなる。

 リシテアは、愕然とした。怒りはもう既に、氷解していた。代わりに湧き上がるのは、バラキエルの熱意と本気に対する呆れと、尊敬であった。

 自分の短命は、決まっているものだと思っていた。だが、そんな“決まっているもの”に、ここまでしてまで挑む人間は初めてだった。しかも、それが知り合いにいたのだから、呆れも尊敬も、さらに加速する。

 手の震えを無理やり押さえつけるように、バラキエルが作成(偽造)した脅迫状を胸につき返した。

 

「―――こんなもの、必要ありません。今すぐ焼き捨ててください」

「…良いのですか?」

「バカバカしい研究とはいえ、私のために、ここまでしてくれる人に、全責任を押し付けたくありません。そんなのは―――卑怯者のする事です」

 

 リシテアの瞳は、真っすぐバラキエルを見つめていた。

 そこに、もう迷いはなかった。

 

「ここまで来たら、もう私だけの問題じゃないでしょ。私『たち』の問題です」

「リシテアさん………」

「やりましょう。いくらでも協力します。どうせ人間、いつかは死ぬんですから」

「フ…人間、いつか死ぬと来ましたか。まぁ、間違ってはいませんね」

 

 リシテアは、自らの意思で共犯者になった。

 その決意を受け、絶対にリシテアを元の体に戻してやると心に誓ったバラキエルである。

 人間、いつか死ぬのは事実だが、それが数年後ではなく、しわくちゃのBBAになった数十年後の可能性もある。

 

 

 

 

 ロナート卿の遺品から、レア大司教の暗殺を示唆する書状が見つかった――教会が公式に発表したその情報に、ガルグ=マクは騒然となった。セイロス騎士団はレアの警護を固め、修道院は厳戒態勢に入る。

 

 だが、金鹿の学級の作戦司令室と化した一室で、クロードは腕を組み、つまらなそうに言った。

 

「どうもきな臭えな。どう考えても、ロナート卿が単独で大司教を暗殺できるわけがねえ。それに、あんな物騒な密書をバレるように持ってたのもおかしい。こいつは陽動だ。俺たちの目を、もっと別の何かから逸らすためのな」

「同感です」

 

 バラキエルも頷く。元より原作知識で、この事件の真の目的がレア暗殺ではなく、紋章石の奪取、及び聖セスリーンことフレンの誘拐であることを知っている彼は、クロードの慧眼に内心で舌を巻いた。

 

「では、級長。我々で、その『何か』とやらを突き止めてみせましょうか」

「おう。各々、聞き込みを始めてくれ!俺も情報を集めてみる!」

 

 クロードのその提案と号令で、金鹿の学級は独自の調査を開始することになった。

 

 そして、解散後。バラキエルは一人、自室に戻ろうとするリシテアを呼び止めた。その口元には、悪戯っぽい笑みが浮かんでいる。

 

「リシテアさん」

「何ですか、まだ何か?」

「えぇ、とっておきのお誘いです。――今夜、私と二人で、怪盗ごっこしませんか?」

「は?」

 

 きょとん、と目を丸くするリシテア。

 この何気ない一言が、彼女をフォドラのさらに深い闇へと誘うことになるのを、彼女はまだ知る由もなかった。




はい、次は教会内調査編です^^
怪盗ごっこにちなんで、リシテアにはアレを身に付けてもらいましょう。
なぁに、ガワだけなら、フォドラの技術でも容易に作れるさ。コレ付けた上での舞踏会とかやってそうだし^^
何なら、スマブラでコラボしたもんね。

バラキエル「私が誰をスカウトするか知りたいですか?…賭けてみるのはいかがでしょう?まぁ使える人間は、誰でも使いますがね」

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