FE風花雪月 神謀の黄金卿   作:伝説の超三毛猫

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なんだかんだ2か月たってました。そしてもう年の瀬です。
許してクレメンス………別の連載に集中してたんです…




「彼は爵位を金で買う俗物だった。しかし、その責務を結果で示すような男だった。その生き様は、誰よりも高潔な貴族のそれだったよ」
 …ローレンツ=ヘルマン=グロスタール(帝国歴1161~帝国歴1221)


11.領地経営者

 聖墓の奥深く。

 石棺が整然と並ぶ広間は、不法侵入者たちの松明によって不気味に照らし出されていた。

 

「来たか、盗賊ども! 出迎えてやろうぜ!」

 

 クロードの鋭い声が響く。

 儀式の隙を突いて現れた西方教会の兵士たちが、金鹿の学級とベレトの前に立ちはだかる。予想通りの来客。だが、その背後から現れた異質な存在に、生徒たちの空気が凍りついた。

 

 カツ、カツ、と響く重い足音。

 

 黒一色の禍々しい鎧を纏い、巨大な鎌を携えたその姿は、まさしく死神。

 

「死神騎士よ、お前は強いのだろう? 奴等を蹴散らしてやれ!」

 

「……弱者に興味はない。我の目的は強者のみ……」

 

「……死神騎士…!」

 

  誰かが呻く。

 その圧倒的な強者の気配、肌を刺すような濃密な死のオーラ。

 歴戦の傭兵であるベレトでさえも、生徒たちを背に庇うように剣を構え、動きを止めた。

 

「(メルセデスの弟、エミール=フォン=バルトリス……いや、今はイェリッツァ=フォン=フュルムか)」

 

  バラキエルは、その正体を知るが故に、誰よりも冷静に敵を分析していた。

 目の前の凄まじい威圧感を肌で感じてしまっては、もう闇パスおじさんと誂う事も出来なくなっていた。

 

「(知識としては知っていたが、この威圧感は本物だ。原作通り、今の我々の戦力でまともにぶつかれば被害は甚大。弱点をつくことさえリスキーだ。………と、なるとプランC一択だな)」

 

 正面から戦っては勝ち目のない相手だ。

 ゲームでは、リシテアがダークスパイクTをぶちかませばワンパンできる相手だが、リシテアの練度はまだそこまで高くないし、現実において絶対はない。

 彼は静観を決め、ベレトと『天帝の剣』の覚醒という、運命の特異点の発生を待つ。

 

 死神騎士が鎌を構え、盗賊の一人が棺に手をかけた、その瞬間。

 

 

 ———ドォォン! ドゴゴゴゴ!!!

 

 

 聖墓全体を揺るがすような爆音と衝撃が、地下深くに響き渡った!

 

「な、なんだ!?」

「敵の増援か!?」

 

  盗賊たちが混乱し、あの死神騎士までもが「……騒々しい」と苛立たしげに音のした方向――入り口とは逆の壁――に視線を向けた。その一瞬の隙を、ベレトは見逃さなかった。

 

「今だ!」

 

 神速の踏み込み。ベレトが死神騎士と棺を開けようとする魔道士の間に割り込み、戦線を分断する。

 

「(よし、かかった!)」

 

 バラキエルとクロードが、目配せをして不敵に笑う。

 爆音の正体――それは、先日二人が「不届き者への歓迎」として仕掛けた、アルビレオ商会特製の信号爆竹だった。

 密閉空間での反響を計算に入れた大音響は、敵の三半規管を一瞬麻痺させるのに十分だった。

 

「今です! 各個撃破!」

 

 バラキエルの号令で、混乱から立ち直った生徒たちが一斉に盗賊たちへ襲いかかる。

 その間、ベレトは祭壇の前で黒魔術師と対峙していた。

 

「手遅れよ! 封印は既に解かれた! おぬしらなど……な!? この剣は………」

 

 一本の奇妙な、骨のような剣。

 それを魔術師が手にした瞬間。

 

 ベレトが持っていた鉄剣でそれを弾き飛ばし、空中でその柄を掴んだ。 ドクン、と脈打つような音が響き、剣が赤き光を放つ。まるで生きているかのように変形する『天帝の剣』。ベレトは最後の抵抗として放たれた魔法ごと、魔術師を一刀両断にした。

 

 それを見届けた死神騎士は、「逸楽、見つけたり」と謎めいた言葉を残し、闇の中へと姿を消す。

 間もなく駆けつけたセイロス騎士団によって聖墓の平穏は守られた。だが、生徒たちの心には、師が手にした異形の剣の輝きが、強く焼き付いていた。 

 

◇◇◇◇◇

 

 聖墓の防衛戦が終わってから数日後。

 リシテアは、あの戦いの後、二日も姿を見せなかったバラキエルを、彼の自室でようやく見つけた。

 

「どこに行っていたのですか! 用があったのに!」

「これはこれは、リシテアさん。申し訳ありません、急遽、父に呼び出されまして」

 

 バラキエルは、山積みの羊皮紙を処理しながら、平然と答えた。

 なんでも、彼の領地経営の手腕を聞きつけたある貴族から、父を通して相談があり、その経過観察のために領地に戻っていたのだという。

 

「それって、許されるのですか?あなた士官学校の生徒でしょう」

「レア様とセテスさんには、正式に許可をいただきました。『学外実習の一環として、ぜひフォドラの発展に貢献してほしい』と。何の問題もありませんよ」

 

 大司教とその補佐の名前を、まるで馴染みの取引先のように当たり前に口にする彼に、リシテアが若干引いている。

 

「それよりも、私がいない間の大修道院はどうでしたか? 西方教会の皆様が処刑の嵐に遭ったのではないですか?」

「………あんた、実は修道院にいたんじゃないんですか?」

「私の事情は先程申し上げたではありませんか。領地経営について、ある貴族から相談を受けたと」

「じゃあなんで修道院で起こった事を知っているんですか?」

「無論、任天堂から話を聞きました」

 

 また出たな、ニンテンドーと。

 コイツどんな嘘をついているんだ。どうやって大修道院の状況を知ったのだ、と疑いのジト目を向けているリシテア。

 リシテアの中では、ニンテンドーの名はバラキエルの誤魔化しの常套句となりつつある。

 ファイアーエムブレムシリーズを生み出した大本に対して無謀な話である。

 と、その時。

 

「おい!バラキエル=フォン=アルビレオ!これは一体どういうつもりだ!!」

 

 怒号と共に、ひとりの貴族が風のように現れた。

 寮の扉を蹴破るように開いたのは、ローレンツ=ヘルマン=グロスタールであった。

 

「やあ、ローレンツさん。ご機嫌麗しゅう」

「麗しいわけがあるか! 父上から手紙が届いたぞ。我がグロスタール領の改革に、貴様らアルビレオ家が関わっているとな!」

 

 怒り心頭のローレンツが、バラキエルの机に手紙を叩きつけた。

 彼の主張はこうだ。神聖なる貴族の領地経営に、平民上がりの商人が口を出すなど、貴族の権威と尊厳に関わる由々しき事態である、と。

 バラキエルは内心でため息をつく。確かに、旧体制に固執していたグロスタール卿に、税制改革と輪作の導入を提案したのは彼だ。すでに領民からの支持が上がり、税収も改善していると報告があった。実際に収益は改善し、領民の暮らしも良くなっているのだが、ローレンツにとって重要なのは結果よりも「あるべき姿」なのだ。

 

「(やれやれ……結果が出ているのだから喜べばいいものを。相変わらず面倒くさい………いや、一本気な人…って言えばいいのだろうか?)」

 

 バラキエルは内心でため息をつきかけたが、ここで反論して波風を立てるのは愚策と知っている。

 彼はすっと立ち上がると表情を改め、恭しく頭を下げた。

 

「誠に申し訳ありません、ローレンツさん。私も、事情を知ったのが手紙で呼び出されてからでして。事前の報告を失念しておりました」

「報告を忘れてた、だと!?貴様、我がグロスタール家の伝統と尊厳をなんだと思っている!卑しい商人が、貴族の領地に口出しするなど、断じて許されることではない!」

「仰る通りです。貴族には貴族のやり方、守るべき伝統がある。今回の件は、知らなかったとはいえ、こちらが出過ぎた真似をしました。深くお詫び申し上げます」

「む……そ、そうか…? 分かれば良いのだ、分かれば」

 

 完全に論破してやり込めるつもりだったローレンツは、あまりにあっさりと非を認められ、振り上げた拳の行き場を失った。 そこへ、バラキエルが畳み掛ける。

 

「つきましては、次期当主であるローレンツさんが考える『()()()()()()』について、是非お聞かせいただけないでしょうか? 私のような未熟な身に、貴族のいろはをご教授願いたいのです」

「むう…?」

 

 自分を立て、教えを乞おうとするその姿勢。

 いくら己の領地に口を出すような貴族のいろはを知らぬ無礼者であれど、指摘されれば即座に改める。

 誇り高いローレンツにとって、そのような学ぶ意欲のある者を見捨てることは、貴族の義務(ノブレス・オブリージュ)に反する行為だ。

 

「……いいだろう! 君に貴族の領地経営のいろはを、この私が直々に授けてやろうではないか! 感謝したまえよ!」

「ありがとうございます! では、食堂で詳しく伺いましょう」

 

 こうして唐突に始まった領地経営の勉強会は、予定時間を遥かに超え、夜まで食い込む熱の入りようとなった。

 なし崩し的に巻き込まれたリシテアも、最初は呆れていたが、ローレンツとバラキエルの議論が予想以上に建設的であることに舌を巻いた。

 

「――という変動税制の導入は如何でしょう? 将来的に農奴解放を視野に入れて、十年…あるいは二十年の計画を以て少しずつ規制を緩和していけば…」

「駄目だ! まだやり方が性急すぎるぞ! そのような急激な変化は、庇護されるべき平民にはついてこれまい。まずは教育とインフラを整え、その上でだな――」

「…でしたら、二毛作という形はどうでしょう。それで」

「ふむ……それならば、伝統を損なわずに改革ができるか。悪くない案だ」

 

 気がつけば、リシテアも前のめりで話し合いに参加していた。

 

「待ってください。その計算だと、魔道学院への予算が足りなくなります。もっと効率化できるはずです」

 

 そこに、「何やってんだ~?」と様子を見に来たクロードが現れ、さらにヒルダがお菓子を持ち込み、その匂いに釣られてマリアンヌまでもがやって来る。それに加えて、同級生の集まりを見てイグナーツとラファエルも現れた。

 

「へえ、面白そうな話をしてるな。交易ルートの確保なら、俺にも案があるぜ」

「え~、あたしは難しいことパスー」

「良いのですか? アクセサリーに関わる事ですが」

「え、じゃあ装飾品の関税についてはちょっと一言言ってもいーいー?」

「……森の管理については、私も……少し、意見が……」

「そういえば、兄と両親も関税の高さには悩まされていましたね……」

「オデ、むずかしい事はよくわかんねぇけどよ、そういうのって筋肉で解決できねぇかぁ?」

「いえ、これは流石に……」

「……ちょっと待ってくださいリシテアさん。もしかしたら、この部分については筋肉で解決できるかも…」

「正気かバラキエル!?」

 

 やがて、騒ぎを聞きつけたベレトも現れ、食堂の一角は金鹿の学級総出の盛大な勉強会へと発展した。

 机の上に広げられた地図と資料を囲み、身分も立場も超えて、より良い未来を語り合う生徒たち。

 バラキエルは、熱弁を振るうローレンツや、活き活きと意見を出す仲間たちを見渡し、静かに微笑んだ。

 これから訪れる過酷な戦乱の世。だが、この夜に交わされた言葉のいくつかは、きっと未来のフォドラを照らす灯火になるだろうと、そう確信しながら。




今年もありがとうございました^^
来年こそは、更新を途切れさせないようにしたいと思います^^;

バラキエル「私が誰をスカウトするか知りたいですか?…賭けてみるのはいかがでしょう?まぁ使える人間は、誰でも使いますがね」

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