「バラキエル、少しいいか」
バラキエルが医務室から動けるようになった頃。ある男に声をかけられた。
「おや、セテス様。どうかいたしましたか?」
CV子安の彼の名はセテス。
セイロス教団でレアの補佐を担当している者だ。
彼の表情は晴れず、むしろ剣呑な雰囲気を纏っている。
「ここ最近で、貴殿が作っているというものなのだが…一体、何の目的で作り出しているのだ?」
セテスが言っているのは、アルビレオ商会が新たに売り出した商品・酒の蒸留器のことだ。
既存の蒸留器と違い、二段冷却構造の導入や魔石による温度安定、抽出管の密閉性に力が入っており、より純度の高いアルコールの抽出が可能になっていた。
「報告書は提出したはずですが……」
「……無論、読んだ。隅から隅までな。貴殿の書面によれば、これは『高純度の酒精を抽出し、医療用消毒液および聖霊祭のための香水を製造する装置』とある」
セテスはそこで言葉を切り、鋭い眼光をバラキエルに向けた。
「完璧な書面だ。用途の説明、安全上の配慮、提供先の一覧。何一つ、咎める理由がない」
「ありがとうございます」
「……だからこそ、不気味なのだ」
セテスは、硬い表情のまま言い切る。
バラキエルは表情を変えなかった。
「不気味、とは手厳しい。私はただ、傷を負った生徒や騎士の方々の役に立てればと思い——」
「貴殿が慈善家だとは思っていない」
セテスの声は低く、しかし感情的ではなかった。それが余計に、重かった。
だがセテスはなにも分かっていない。
バラキエルは紛れもなく慈善家だ。砂漠で彷徨う人間に、1杯の水を与えるタイプである。それを見ずにはなから疑ってかかるとは失礼な話である。
「私は長いことこの立場でフォドラを見てきた。そうしてると、わかることがある。『完璧な書類』を持ってくる人間は、二種類しかいない。本当に何も隠していない者か、あるいは、隠すべき全てを書類の外に出した者か、だ」
バラキエルは、内心で舌を巻いた。
この男、千年以上を生きているだけのことはある。報告書の中身ではなく、報告書が「完璧であること」そのものを疑ってきた。
流石は四聖人。悪魔の証明で人を疑うことに慣れているかのようだ。
証拠がないことは、隠蔽した証拠……そんなことがまかり通れば誰も健全には生きられない。
「では、私はどちらに見えますか」
「それを確かめに来た」
セテスは腕を組み、続けた。
「高純度の酒精は、燃える。貴殿もご存知のはずだ」
「ええ、存じております。ですから引火の危険性についても、報告書の第三項に——」
「書いてあった。丁寧にな」
わずかに目を細めたセテスの口調は変わらない。
「だが貴殿は、その危険性を『注意事項』として書いた。私が気になるのは、それを『利点』として考える者が現れた場合のことだ」
沈黙が落ちた。
書類仕事において、完璧に記すのは当たり前だ。
にもかかわらず書類に不備がなければ疑われ、不備があれば咎められる。これが教団式の審査というものか。
バラキエルは、そのような理不尽な基準に反論する言葉が五つほど即座に思いついた。が、それを言っても得にならないので、黙っておくことにする。
残念なことに今回の件は、皮肉にもバラキエルの誠実な仕事の結果招いたものだったからだ。
バラキエルは三秒ほど、窓の外に視線を移した。それから、セテス様のお目に留めていただけるとは光栄です、と静かに言った。
「率直に申し上げましょう。セテス様のご懸念は、正しい」
すべてを認めるかのようなバラキエルの発言に、セテスの眉がわずかに動く。
「高濃度の酒精を布に染み込ませ、火を点ければ——それが武器になることは、私も否定しません。ですから私は、製造工程の管理と供給先の記録を、全て商会の帳簿に残しています。何かあれば、その帳簿ごと教団にお渡しできる。最初から、そのつもりでした」
「……つまり、自ら証拠を残すと?」
「隠す必要がないからです」
バラキエルは真っ直ぐにセテスを見た。
「セテス様。もし私が本当に後ろ暗いことを企んでいたなら、これほど目立つ形で蒸留器を普及させるでしょうか。帝国にも王国にも同盟にも、貴族の名を出して堂々と売り込んでいる。やましい技術なら、もっと静かにやります」
「……それもそうだが」
「それに」
と、バラキエルは、少しだけ声のトーンを落として付け足した。
「セテス様が報告書を読んで、こうして直接おいでになった。それ自体が、私にとっては何よりの安心材料です」
「何?」
「ええ。教団がこれだけ目を光らせているなら、万が一、私の商会の技術が悪用されそうになった時も、きっとお気づきになる。私一人では守りきれないものを、セテス様が見ていてくださるということですから」
セテスはしばらく黙った。
褒めているのか、丸め込もうとしているのか、判断がつかない。この若者は常にそうだ。言葉のどこにも嘘がなく、だから余計に掴みどころがない。
「……一つだけ、約束しろ」
「何なりと」
「供給先の帳簿は、月次で教団に提出すること。これを条件に、今回は認める」
バラキエルは一拍置いて、深く頭を下げた。
「喜んで。むしろ、そうしていただけると助かります。私の商会が教団のお墨付きを得たとなれば、取引先への信頼担保になりますので」
セテスは踵を返しかけて、足を止めた。
「……貴殿は、本当に食えない男だな」
「商人ですから」
廊下に消えていくセテスの背中を見送り、バラキエルは静かに息を吐いた。
月次の帳簿提出………喜んで受け入れよう。なぜなら……後ろ暗いことなど、本当にしていないのだから。
バラキエルが見つめ直した窓の外では、聖霊祭の準備をする生徒たちの声が、のどかに響いていた。
フレンが姿をくらます、2日前の話である。
◇◇◇◇◇
バラキエルは、これまでで一番に己の不運を呪った。
フレンの拉致があるのは知っていたが、まさかあの嫌な会話のほぼ直後に起こってしまうとは。
これでは「どうぞ疑ってください」と言っているようなものではないか。
「―――という訳で。先生、リシテアさん、クロードさん。助けてください」
「お前ホント運がない奴だなー」
「年貢の納め時では?」
ドライ過ぎる貴族の冗談に泣きたくなる。
幾ら何でも、時とタイミングを考えてから冗談を言うべきである。カラカラと笑うクロードについては気楽なものだと思ってしまう。
意外過ぎたのはリシテアだ。バラキエルの知る限り、このタイミングで笑えない冗談を言う人ではない。ある男の悪影響を受けた結果なのだが、自覚がないバラキエルである。
「クロード、一応笑いごとじゃないぞ」
「分かってるって。アルビレオ家はリーガン家と仲良しだからなぁ。今ここで教団にいらん疑いを持たれるのは厄介だ」
溌溂とした、だが胡散臭い笑みでクロードは協力を約束する。
調子のいいヤツと思ったが、バラキエルはそれに全力で乗ることにした。
「えぇ。クロードと私はマブダチですからね。話せば判ってくれると思ってました」
「まぶだち?」
「普通の友人よりも仲のいい……所謂親友のことを指します」
「おいおい、マジか? 俺の事、親友だと思ってくれるのかい?」
笑顔で握手をするクロードとバラキエル。
だが、どう善く見ても邪悪な目的の為に手を組む悪党と悪徳商人の協力関係にしか見えてこないリシテアである。
それを知ってか知らずか、ベレトはバラキエルにこう告げた。
「ひとまず、こちらからセテスとレアに話をしに行こう」
「勿論です、先生。…少しばかり、準備をして参ります」
翠風ルートを進む以上、こうなる事は分かっていた。
なので、バラキエルは準備を怠らない。それが、数ヶ月前から始まっている事など、誰も知る由もない。
大聖堂の奥、レア大司教の執務室。
普段は選ばれた者しか通されない重厚な扉が、今日は異様なほど静かに開いた。
室内には、すでにセテスが立っていた。その表情は先日よりも硬い。フレン失踪の報が入ってからというもの、彼の目の奥から「冷静な補佐官」の仮面が少しずつ剥がれ始めていた。
そしてレア。
窓辺に立つその姿は、いつも通り慈母のような穏やかさを湛えている。だが、バラキエルにはそれが余計に不気味だった。
フレンが攫われたというのに、この女はどこまで落ち着いていられるのか。そもそも落ち着いているのか。感情が一切読めない。千年以上を生きた存在の感覚は、人間のそれとはまるで違うのだろうと、改めて実感する。
「ベレト、そしてバラキエル。来てくれましたね」
レアの声は穏やかだ。
「フレンのこと、すでに聞いているかと思います。この度は……セテスも、大変な思いをしているでしょう」
「レア様」
セテスが短く応じる。その声に、普段の威厳はあるが、底の部分が微妙に揺れていた。
バラキエルは、素早く室内の空気を測った。
レアは「待っていた」側だ。こちらが来ることを予期していた。セテスは「疑っている」側だ。フレン失踪との関連をまだ疑念の棚に乗せている。
ベレトは静かに前に出る。その存在感だけで室内の重心が動く感覚を、バラキエルは改めて確認した。やはりこの男は場が違う。
「フレンを取り戻すために、動きたい」
ベレトの言葉は短い。しかしそこに迷いがない。
「もちろんです、ベレト」
レアが静かに答える。
「フレンを見つける事を、今節の最重要課題としましょう。あなたのことは信頼しています。……ですが」
レアの視線が、ベレトの隣に立つバラキエルへと移った。その目は穏やかだが、何かを測るような静けさがある。
「バラキエル。蒸留器の件は、セテスから聞いています」
「……御耳に入っておりましたか」
「ええ。報告書も拝見しました」
レアは少しだけ微笑んだ。
「よく書けていましたよ。セテスが言うように、完璧でした」
セテスとまったく同じ評価を、まったく違う温度で言われる。バラキエルは内心で苦笑した。
この二人、方向性は違うが結論は同じだ。
「レア様もご不審でしたか」
「不審、とは言いません。ただ……あなたは、フォドラにいくつかの『新しいもの』を持ち込んでいる。それは事実です」
レアの声は穏やかなまま、しかし言葉の芯だけが静かに鋭くなる。
「石鹸、保存食、そして蒸留器。どれも、この土地には以前なかったものです。あなたはどこで、それらを学んだのですか」
来た、とバラキエルは思った。
この問いは、セテスの問いよりも本質的だ。
何を作っているか、ではなく
バラキエルは一拍置いた。急がず、しかし迷っているようにも見せず。
「フォドラの外との交易を続ける中で、少しずつ集めてきた知識です」
誠意をもって答えた。
嘘ではない。
「ダグザの商人からは東方の茶の製法を。スレンとの交易では北の石や砂の使い方を。帝国の錬金術師の文献からは蒸留の原理を。……私は商人ですから、知識そのものが商売の元手になります。どこで何を学べるか、常に探し続けてきました」
「なるほど」
レアは静かに頷いた。否定も肯定もしない頷き方だった。
裏を見せないのは、お互い様のようだ。
「あなたの商会は、フォドラの各地に物流の網を張っています。その網は、情報の網でもある」
「商売とは情報ですから」
「ええ。……だからこそ、お聞きしたいのです」
レアの目が、わずかだけ変わった。慈母の仮面の奥にある、何か別のものが覗く瞬間を、バラキエルは見逃さなかった。
「フレンを攫った者たちについて、あなたの情報網は何か掴んでいますか」
室内の空気が変わった。
セテスが視線を鋭くする。これは彼が聞きたかった問いでもあるのだろう。
バラキエルは、今度はすぐに答えなかった。三秒ではなく、五秒ほど沈黙した。
その沈黙は「考えている」というより「どこまで話すかを決めている」ように見えたかもしれない。実際、その通りだった。
「……ある傭兵の方に依頼していた調査があります」
バラキエルは、慎重に言葉を選びながら続けた。
「フレン様を攫った犯人については、まだ特定できておりません。……ですが、ここ数ヶ月の帝国内部の『金の流れ』には、極めて奇妙な偏りが見られます。調査結果も踏まえて、物流の情報をお渡ししましょう。ですが…」
「ですが?」
セテスが前に出る。その声に、補佐官の冷静さよりも
「タイミングが、良すぎます」
バラキエルは静かに答えた。
そして、羊皮紙を広げて、そこに記された取引記録を指さした。アルビレオ商会の情報網をもって、予め集めていたものだ。
「聖霊祭の直前。修道院の警備が儀式の準備に割かれる時期。そして、フレンさんは神聖な力を持つ方です。……エーギル公による工芸品の大量発注、ベルグリーズ領での軍需物資の移動。……そして最も不可解なのが、アランデル公領を通過する、中身の不明な大規模輸送です。これらはすべて、西方教会の過激派…その残党が活発化している地域と、物流の接点を持っています」
「西方教会…ですか? 彼等はこの前、女神の身許へ送った筈ですが……」
「念には念を入れた結果分かった事実でございます。もしかしたら、彼らを手引きした者もいるかもしれません」
室内が静まり返った。
セテスの顔から、最後の「冷静」が剥がれかけるのがわかった。しかし彼は辛うじてそれを保ち、レアに視線を向ける。
「レア様」
「……セテス」
レアの声は、初めて少しだけ重くなった。
「バラキエル、この取引詳細を、全て共有してもらえますか。この件は、教団として動きます」
「喜んで」
バラキエルは深く頭を下げた。
「ただし、一つお願いがあります。傭兵の身元と、彼が調査していた他の案件については、伏せていただきたい。プロの仕事を守ることも、商人の誠意のうちですので」
セテスが眉をひそめた。だがレアは、静かに頷いた。
「分かりました。それは約束しましょう」
その言葉を受け、バラキエルは羊皮紙をセテスへと手渡した。シャミアの調査報告を、プライバシーを守りつつ、共有できる範囲で整理し直したものも含まれている。
セテスはそれを受け取り、素早く目を通す。その指先が、わずかに震えていた。
「……これは」
「確証ではありません。ただの商人の勘と、情報屋の嗅覚です」
バラキエルは付け加えた。
「ですが、フレンさんを取り戻すための、最初の糸口にはなるかと思います」
沈黙。
セテスは羊皮紙から目を上げ、バラキエルをまっすぐに見た。その目には、疑念がまだある。だが、それと同時に、認めたくないが認めざるを得ないという複雑な色もあった。
「……なぜ、これを我々に渡す」
それは問いであると同時に、確認だった。
「セテス様」
バラキエルは、いつもの商人の笑みではなく、ただ真っ直ぐな顔で答えた。
「フレンさんは、私の友人の友人です。それだけで十分な理由になります」
紛れもない本心だ。
ただ、それだけが理由でもない。
しかしその「だけではない理由」を、今ここで言う必要などない。
レアが静かに立ち上がった。
「ベレト、バラキエル。あなたたちの協力に感謝します。……フレンを、必ず連れ戻しましょう」
その言葉に、セテスは短く頷いた。
バラキエルもまた、深く頭を下げた。
執務室を出た廊下で、クロードとリシテアが待っていた。
「どうだった?」
クロードが低い声で問う。
「及第点、といったところです」
バラキエルは歩きながら答えた。
「教団の監視と、こちらの情報提供。双方が一歩ずつ歩み寄った形になりました。セテス様の疑念は消えていませんが……今は、フレンさんのことで頭が一杯のはずです」
「つまり、今が動き時ってことか」
「ええ。急ぎましょう。時間は、あまりありません」
廊下の向こう、聖霊祭の飾りつけがされた回廊に、夕陽が差し込んでいた。その光の中を、四人は早足で歩き始めた。
修道院が蜂の巣を突いたような騒ぎになる中、バラキエルは喧騒から離れた厩舎の裏手へと足を向けた。そこには、影に溶け込むようにして弓の手入れをするシャミアの姿があった。
「……何の用だ。捜索なら、私は騎士団の命令で動くことになっている」
顔も上げずに放たれた声は、相変わらず硬い。バラキエルは適度な距離を保って足を止めた。
「事後報告です。先ほどレア様とセテス様に、アランデル公に関する調査資料の一部を共有しました」
シャミアの手が止まる。
ゆっくりと顔を上げた彼女の瞳には……鋭い光が宿っていた。
「……話が違う。私はいきなりレアさんに知られることは了承していないぞ」
シャミアは、今回の件について、予めバラキエルから相談を受けていた。ご丁寧に、報告する範囲を写しを手に説明を受けた上でだ。
それでもこんなリアクションになったのには、認識の勘違いがあったからだ。
シャミアは、バラキエルの「教団に話しても宜しいでしょうか」を、騎士団の人々に聞き込みする程度だと思っていた。それに対してバラキエルは、教団への共有を、レアやセテスとのそれだと認識していた。
「ご安心を。貴女の名前と、他の案件については一切出していません。それと——」
バラキエルは一拍置いた。
「『情報源を伏せること』を、レア様に直接約束させました。口頭ではなく、セテス様とベレト先生も同席した場での言質です」
バラキエルは、こんな事しか言えずに申し訳ないと思っていた。動かぬ証拠として、録音でもしておきたかったが、今のフォドラにそんな物は無い。
そんなバラキエルの報告のあとの沈黙。
シャミアは無言でバラキエルを測った。その視線は、嘘を探しているというよりは、どこまで信用できるかを探っているものだった。
「……なぜ、それが可能だと踏んだ」
「貴女が教団にとっても失いたくない存在だからです。セイロス騎士団に籍を置く腕利きの傭兵。名を伏せるくらいの配慮を、教団は払える。そして払う理由がある」
これは事実だ。
また、カトリーヌを厚く信頼しているレアもセテスも、カトリーヌとシャミアとの関係は理解している。
わざわざ、カトリーヌに不信の芽を植える理由もないし……何より、レア達ナバテアの民には明確な“敵”がいる。
シャミアは短く鼻を鳴らした。
「買い被りだ」
「事実の確認です。……それと、もう一つ。今回の件で、貴女への依頼を追加したい」
「続けろ」
「フレンさんの拉致に協力した者を探してほしい。修道院の内外を問わず、西方教会の残党と繋がりのある貴族、あるいは修道院に出入りしている者の中で、不審な動きをしていた人間です」
シャミアは一度だけ瞬きをした。
「騎士団がやることだろう」
「騎士団は『教団のために』動きます。私が欲しいのは、『私のために』動いてくれる目です」
その違いを、シャミアは一瞬で理解した。教団が知りたい情報と、バラキエルが知りたい情報は、必ずしも一致しない。
「……それだけか」
「もう一点。酒精の香りに注意してほしい。フレンさんが連れ込まれた可能性のある場所に、商会の製品が使われているかもしれません。消毒や照明の燃料として……あるいは別の用途で」
シャミアの表情がわずかに変わった。その意味を、傭兵としての経験が即座に補完したのだろう。
「……引火物の類か」
「可能性の話です。ただ、その匂いを嗅ぎ分けられる人間が、今の修道院に何人いるか」
「私くらいだな」
「ええ」
バラキエルは懐から小袋を取り出し、シャミアの前に置いた。受け取らせるのではなく、置く。その差は小さいようで大きい。
「前払いです。いつも通り、相場の三倍。リスクに見合う誠意として」
シャミアは小袋を一瞥し、それから静かにバラキエルを見た。
「……一つ確認しておく。今回の件、教団とお前の間で情報が共有されているということは、私が動いた結果が教団にも伝わる可能性がある。それは承知の上か」
「承知しています。ただし、貴女が私に報告した後、私がどう判断するかは私の領分です。教団に渡す情報と、渡さない情報は、私が選びます 」
「つまり、私はお前の篩にかけられるわけだ」
「そう取っていただいても構いません」
シャミアはしばらく黙った。やがて………小袋を手に取った。そして弓を背負いながら言った。
「……筋は通っている。受ける」
「ありがとうございます」
「感謝は要らない。……仕事だからな」
バラキエルは深く頭を下げた。その動作に、珍しく迷いがなかった。
シャミアは何も言わず、修道院の影へと消えていった。その背中が見えなくなってから、バラキエルは静かに頭を上げた。
「アフターフォローはこれでいいとして……後は後方支援…物資は間に合うだろうか……それと……アレだな」
厩舎の隅で、バラキエルと目が合った馬が静かに鼻を鳴らした。フレンが世話をしていた馬だ、とバラキエルは思い出す。
急がなければならない。時間は、あまりない。
悪魔の証明という言葉は現代に現れましたが、『証明が難しい事項』が存在する、という概念は古代ギリシャからあったそうです。
つまり……やってないことを証明しろ、というイチャモンはその時代からあったんでしょうか^^
バラキエル「私が誰をスカウトするか知りたいですか?…賭けてみるのはいかがでしょう?まぁ使える人間は、誰でも使いますがね」
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ベルナデッタ
-
ドロテア
-
リンハルト
-
カスパル
-
ペトラ
-
フェルディナント
-
メルセデス
-
フェリクス
-
シルヴァン
-
イングリット
-
アッシュ
-
アネット
-
フレン
-
カトリーヌ
-
シャミア
-
ハンネマン
-
マヌエラ
-
それ以外