…バラキエル=フォン=アルビレオ(帝国歴1163~帝国歴1251)
アルビレオ子爵邸の執務室は、貴族のそれというよりは、近代の軍の司令室と呼ぶ方が相応しかった。壁一面にはフォドラ全土の精密な地図が貼られ、机上には各方面から届いた最新の報告書が整然と並べられている。
そこで、黒いマントを羽織り、どこか影のある、それでいて内に秘めた強さを感じさせる青年は、年老いた従者の報告を聞いていた。
「……以上が、ガルグ=マク修道院近郊で発生した事件のあらましです」
従者が淡々と読み上げる報告を聞きながら、バラキエルは手元の書類に目を通していた。
そこには、レスター諸侯同盟、ファーガス神聖王国、そしてアドラステア帝国、それぞれの次期指導者となる三人の名が記されている。彼らが賊に襲われ、そして、元セイロス騎士団団長ジェラルト=アイスナー率いる傭兵団に救出された、と。
報告書に記載された傭兵の姓――アイスナー。物語の主役たるその文字を目にした瞬間、バラキエルの口から、待ちわびて、そして同時に恐れていた言葉がこぼれ落ちた。
「ああ、ようやく始まったか」
それは、二年という雌伏の時を経て、ついに物語の幕が上がったことへの高揚と、これから避けられぬ血の嵐が吹き荒れることへの、深い諦観が入り混じった呟きだった。
「坊ちゃま?」
「いや、独り言だ。構わないでくれ」
バラキエルは立ち上がり、従者にきっぱりと命じた。
「例の件の手続きを進めてください。コーデリア家にも連絡を。万が一にも、手違いなどあってはなりません」
彼の瞳には、もはや一人の少年としての純粋な期待などなかった。
そこにあるのは、これから始まる、壮大な、だが恐ろしく血生臭い盤上遊戯を見据える、冷徹なプレイヤーの目だった。
荘厳な建築物が立ち並ぶ、ガルグ=マク大修道院。
新たな教員を迎えると聞いたバラキエルとリシテアを初めとした生徒達が、レア大司教からの説明を受けていると、一人の男が部屋に入ってきた。紺色の髪に、凪いだ湖面のような静かな瞳。感情の起伏を感じさせないその佇まいを一目見た瞬間、バラキエルは確信した。
「(なるほど……この世界では先生はベレト、男か。顔立ちは悪くないが、感情が死んでいるな。ソティスが目覚めるまでは、こんなものか)」
ゲームの記憶では、主人公の性別は自由に選べたが、この世界では一人の人間としてちゃんと存在している。バラキエルは、まずその事実に安堵した。
「紹介します。こちらは、先日士官学校の生徒たちを救ってくださった、ベレトさんです。この度、我々の教師として迎え入れることになりました」
レアの言葉に、周囲の生徒たちがざわめく。だが、バラキエルはただ一人、冷静に目の前の人物を分析していた。
「(この男こそが、この世界の特異点。フォドラの未来を、リシテアの運命を左右する、唯一無二の鍵だ)」
ひとまずの紹介を終え、自由時間になる。
先生にガルク=マクを紹介するとなり、生徒達が集まる中、バラキエルはそれに負けじとかき分けて、先生の前に現れる。
やがてベレトが見えるほどにまで前まで出てくる。彼は一歩前に出ると、完璧な貴族の礼を取り、慇懃に名乗った。
「はじめまして、先生。私はバラキエル=フォン=アルビレオと申します。以後、お見知りおきを」
内心でどんな計算をしていようと、表面上は敬意を払う。レア達教会勢力の正体を知っている以上教会ルートは極力避けてほしいが、最終的にどの道を選ぶかは、この男次第。
そして、その選択こそが、最も生存確率の高い道となる。ならば、今はただ従順な生徒を演じるのみ。
「聞けば先生は、
詳しくは各学級の級長から聞いてください、とバラキエルが軽く三つの学級を紹介すると、ベレトは静かな瞳で彼を見つめ、問いかけた。
「君自身の希望とかはあるのか」
「私の希望、ですか?」
バラキエルは一瞬だけ最愛の人の顔を思い出す。
そして、人好きのする笑みを浮かべて答えた。
「私には守りたいものがあります」
「…」
「その方とご一緒できるのであれば、どの学級に配属されようと、私にとっては最高の学び舎です」
それは、ただの社交辞令ではない。彼にとっての、絶対的な真実だった。
修道院での生活が始まり数日後、最初の紋章学の授業が行われた。担当するのは、帝国貴族にして紋章学の権威、ハンネマン=フォン=エッサー教授。
「(これが、魔法……いや、紋章の力か。血筋によって受け継がれる超常の力。現代科学では説明がつかないが、解析する価値は十二分にある)」
リシテアを救うという目的のために選択した授業だったが、その内容はバラキエルの知的好奇心を強く刺激した。
ハッキリ言えば、バラキエルはハマったのだ。授業後、他の生徒たちが教室を出ていく中、彼は一人、ハンネマンの元へと歩み寄った。
「ハンネマン先生、素晴らしい講義でした。いくつか質問をお許しいただけますか?」
「おお、バラキエル君か。熱心で大変よろしい! 何かね?」
上機嫌なハンネマンに対し、バラキエルは紋章の根源に迫るような、鋭い質問を投げかけた。
「紋章の力は、その者の血中に宿るエネルギーだと伺いました。であるならば、そのエネルギーには許容量や、あるいは拒絶反応のような現象は存在しないのでしょうか? 例えば、性質の異なる紋章を一つの身体に宿した場合、どのような代償が予測されますか?」
それは、フォドラの常識では思いもよらない、紋章を「解析」し「制御」しようとするかのような問いだった。
ハンネマンは驚きに目を見開き、やがて歓喜の表情を浮かべた。
紋章とは、貴族には必ずあって然るべきもの。紋章ある者は優れ、紋章なき者は劣る―――そんな考え方では、まず出てこないような質問を受けたからだ。しかも、初日の授業で。
「なんと……素晴らしい着眼点だ、バラキエル君!君は、紋章学の真髄を理解する才能があるようだ!」
興奮気味に自身の研究を語り始めるハンネマン。
バラキエルは相槌を打ちながら、冷静に彼の知識を分析していた。
「(間違いない。この男と、
彼は、紋章の短命化という副作用について、さらに遠回しな質問を重ねていく。
彼は元貴族だ。帝国に縁こそあれど、紋章自身への情熱とは裏腹に、妹の件で紋章に拘る貴族に嫌気がさして帝国を捨てた人間だ。そこから、紋章の力を誰もが自由自在に身に付けられる世を作れるよう日々研究に没頭する男でもある。
このハンネマンという巨大な知性を、いかにして味方につけ、リシテア救済計画に組み込むか。貴族に関するマイナスな情報をそれとなく伝え、同盟よりの思想に染めるのがよいか。それとも…直接紋章学に取り組む姿勢を見せ、懐に潜り込むのが良いだろうか。
バラキエルの頭脳は、この時すでに一手、また次の一手と己の行動を計算し始めていた。
ユニット性能詳細:バラキエル
名前: バラキエル=フォン=アルビレオ
初期兵種: 貴族
才能開花: 信仰
得意技能: 剣術、理学、指揮
苦手技能: 斧術、重装
紋章: なし (紋章を持たない)
成長率
| HP | 力 | 魔力 | 技 | 速さ | 幸運 | 守備 | 魔防 | 魅力 |
| 40% | 35% | 45% | 50% | 45% | 50% | 25% | 30% | 55% |
個人スキル
『金銭の魔術師』: 支援相手が隣接している場合、戦闘後に相手のHPを5%回復させ、かつ所持している金銭を一定額(幸運/2 G、最低10G)獲得する。
固有習得スキル (レベルアップで習得)
Lv 1: 入れ替え: 味方と自分の位置を入れ替える。 (指揮 E+)
Lv 10: 速さ封じ: 自分から攻撃した敵の速さ-6(1ターン)。 (剣術 C+)
Lv 20: 魅力の応援: 「応援」コマンドで対象の魅力+4(1ターン)。(指揮 C+)
Lv 30: すり抜け: 敵ユニットを通り抜けて移動できる。(理学 A+)
固有習得戦技 (剣術スキルレベルで習得)
風薙ぎ (C+): 追撃不可。速さが相手より高ければ反撃を封じる。
買収の剣撃 (A+): 威力+3 命中+10。命中した敵に「動揺」(全能力-2)の効果を付与する。
理学習得魔法
D: ファイアー
C: サンダー
B: バンシーθ
A: エクスカリバー
信仰習得魔法
D: ライブ
D+: レスト
C: リザイア
A: サイレス
才能開花: 『施しの見返り』 (信仰で味方を回復した際、幸運%の確率で「小さな金塊」を入手する)
バラキエル「私が誰をスカウトするか知りたいですか?…賭けてみるのはいかがでしょう?まぁ使える人間は、誰でも使いますがね」
-
ベルナデッタ
-
ドロテア
-
リンハルト
-
カスパル
-
ペトラ
-
フェルディナント
-
メルセデス
-
フェリクス
-
シルヴァン
-
イングリット
-
アッシュ
-
アネット
-
フレン
-
カトリーヌ
-
シャミア
-
ハンネマン
-
マヌエラ
-
それ以外