…バラキエル=フォン=アルビレオ(帝国歴1163~帝国歴1251)
ガルグ=マク大修道院。
その壮麗な学び舎には、平民、貴族、王族…フォドラ全土から様々な出自の若者たちが、各々の夢を叶えるために集っていた。陽光が降り注ぐ中庭では生徒たちの溌剌とした声が響き、誰もが希望に満ちた日々を謳歌している。
そんな喧騒から離れた回廊の片隅で、バラキエルは一人、暗躍を忘れていなかった。
従者から定期的に送られてくる報告書―――アルビレオ商会の情報網を駆使して集めさせた生徒たちの個人情報・家族構成・領地状況・その他諸々の情報と、自身の脳裏に焼き付いた『攻略本』の知識を、慎重に擦り合わせる。
2年前から行っている重要な仕事だ。お陰で、あの日蘇った膨大な記憶を、ほぼ忘れることなく戦略に活かせそうだ。
懐には、万が一に備えて鍵をかけた革張りの手帳。中身はその全ての情報がフォドラには存在しない「日本語」で記されており、情報漏洩対策は万全だった。
「はぁ〜、ホント勘弁してほしいわ」
しかし、計画通りに事が進んでもストレスがないわけではない。
つい先ほども、回廊で鉢合わせたローレンツ=ヘルマン=グロスタールに、「ほう、貴様がアルビレオ家の…。爵位を金で買った俗物とは、一度顔を拝んでみたいと思っていたのだ」という、あまりにもテンプレ通りの嫌味から始まる挨拶を受けた後だ。
俗物なのは否定しないし、ローレンツが本当は貴族の責務を誰よりも重んじる好人物だと知っている。だが、初対面でそんな挨拶をされたらバラキエルだって萎えるというものだ。
幸い、大人の対応を知っていたバラキエルが、その場は「これはこれは、偉大なるグロスタール家の次期当主様。貴族としての在り方について、ぜひご指導ご鞭撻を」と彼を立てまくり、満更でもない顔のローレンツを丁重に見送ったため拗れはしなかったが、盛大な時間の無駄を食わされた気分だった。
「今のうちに支援レベルを上げておきたい人は、山程いるというのに…」
独りごち、バラキエルは手帳の余白に思考を整理する。
例えば、ベルナデッタ。帝国領ヴァーリ伯爵である父親からの虐待が原因で極度の引きこもりになった彼女だが、戦場での専用戦技『囲いの矢』には何度も助けられた。今のうちから地道に部屋に通い、交流を深めればいい。まずは彼女の趣味である執筆や裁縫の話題を振るため、珍しい刺繍糸でも部屋の前に置いておく。
例えば、マリアンヌ。呪われた紋章のせいで心を閉ざす彼女には、動物たちの話題を中心に少しずつ距離を縮め、自身が安全な避難場所になるのが最善手。人見知りは、心を開かせる最初の一歩さえクリアすれば、後はチョロイのだ。
例えば、イングリット。困窮するガラテア家の財政状況は知っていたので、すでにアルビレオ商会から「将来性のある事業の斡旋とそれへの投資」という名目で、イングリット本人には内密の経済支援を始めている。これで彼女が家のための結婚に悩む必要は少し減るはずだ。
一つ一つ、パズルを組むように人間関係の最適解を模索していると、背後から凛とした声が飛んできた。
「見つけましたよ、バラキエル!」
「おや、リシテアさん。どうしました?」
振り返ると、少し頬を膨らませたリシテアが立っていた。
「探しましたよ。どこに行っていたのですか?」
「少し、ハンネマン先生の研究室まで。リンハルトさんと三人で紋章の謎について、つい盛り上がってしまいまして」
半分だけ本当のことを言う。
研究室にいたのは事実だが、実際は面倒くさがるリンハルトの首根っこを捕まえ、ハンネマンと共に質問攻めにして知識を吸い上げていただけだ。
貸し借りはきっちりとしないと後が苦しいため、今度、リンハルトには極上の昼寝スポットでも紹介しておこうと考えているバラキエルである。
「それで、ご用件とは?」
「ベレト先生が呼んでいました。級長会議の結果を共有してくださるそうです。早くこちらへ」
そう。
ベレトは、
あの日、レア大司教の前で三人の級長から選択を迫られた彼は、クロードの誘いに乗った。
その一報を聞いた時、バラキエルは心の中でガッツポーズをしたものだ。
これで、王国や帝国に寝返るためにリシテアを説得する、という一番面倒な仕事が一つ減ったのだから。
「分かりました、では急ぎましょうか」
リシテアに促され、書庫を出て先生の待つ教室へと歩きながら、バラキエルは話を振った。
「それにしても…ベレト先生がうちの学級を選んでくれて、本当に良かった」
「先生が来た時、バラキエルったら飛び上がらんばかりに喜んでいましたよね。そんなに嬉しいものですか?」
リシテアが不思議そうに小首を傾げる。
「当然です。彼の存在こそが、フォドラの歴史の転換点ですから」
「そんな、大袈裟な…」
「事実です」
バラキエルは、確信を込めて断言した。
「彼がどの学級を選ぶかで、未来は大きく変わる。帝国がフォドラを統一する未来も、王国が覇権を取り戻す未来も、あるいは同盟や教会が一人勝ちする未来も、全ては先生の選択次第。私は、その来るべき未来に備えるだけです。『備えあれば憂いなし』とも言いますしね」
「ちょっと、何を言っているのか分かりませんよ」
的確過ぎる未来予想図に、リシテアがジト目を向けてくる。そんな、物語の英雄じゃあるまいし、たった一人で世界が変わるわけないだろうと。
だが事実である。
ひとたび先生がエーデルガルトを選べば、あっという間に帝国はフォドラを統一するだろう。
青獅子の学級に付けば、ファーガス神聖王国が失った力を取り戻し、後世の騎士物語のモデルになるだろう。
同盟の盟主につけばクロードの野望の実現が大いに近づくし、教会と組めばなんかセイロス教会が一人勝ちする未来もある。
なぜならここはファイアーエムブレムなのだから。
……もちろん、こんな情報バラキエル以外は知るハズもなく。
リシテアの疑念に満ちた視線から逃れるように、バラキエルは少しだけ歩を速めた。
「いずれ分かりますよ。さあ、先生がお待ちです」
今はまだ、世界の真実を彼女に背負わせるわけにはいかない。
バラキエルはそう心に誓いながら、運命の歯車を回す『主人公』の元へと急いだ。
バラキエルのスカウト条件
・なし ※どの学級・ルートを選ぼうとも、リシテアと共に主人公の学級に自動的に編入する。
バラキエル「私が誰をスカウトするか知りたいですか?…賭けてみるのはいかがでしょう?まぁ使える人間は、誰でも使いますがね」
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ベルナデッタ
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ドロテア
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リンハルト
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カスパル
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ペトラ
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フェルディナント
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メルセデス
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フェリクス
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シルヴァン
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イングリット
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アッシュ
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アネット
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フレン
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カトリーヌ
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シャミア
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ハンネマン
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マヌエラ
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それ以外