俺たちはその後中学に上がり同じチームの江戸川リトルからシニアに移行した。
江戸川リトルでは結局小5の時に丸亀シニアに負けたがそれでも小6の時には全国制覇も果たした。あ、そういえば東京の決勝で成宮鳴のいるチームと対戦したが前世ほどの実力はまだ有していなかったのでそこまで苦にすることなく勝つことが出来た。
まぁ打線が弱かったから勝てたのもあるけどな
リトルからシニアに移ったって言っても出る大会が小学生から中学生に変わっただけだし基本的にメンバーも一緒なので特に何かが変わった訳ではないのである
「俊!俺の練習付き合ってくれよ!」
「おう」
一也がキャッチングの練習に付き合ってほしいのでそのまま俺たちはブルペンに向かうことにする
_ ズドォォォン!
「くぅ〜」
俺の投げたボールを一也は鈍い音を立てながら捕球した
「やっぱまだこの球は芯では取れてねぇな」
「かもな。てか、そんな簡単に取られちゃあたまんねぇよ」
「味方は取らなきゃダメだろ…」
一也が苦戦するほどのボール…そう
俺は今年から新球を投げている。
と言っても今世での話だが
俺が投げているのはシュートとカットだ。前世でのウイニングボールの一つであり今世では前世の今の歳と比べて球速・キレ・変化量が全て上昇しており流石の一也もまだ綺麗に取ることは出来ていなかった
_ ギュッ!
俺のシュートとカットはスピードを保ったまま変化するので打者が対応しづらい
しかも
大きくダラっと曲がるのではなく、打者の手元でスパッと斬り込む刀の様な切れ味を持つボールだ
打者からすると「差し込まれて詰まる」「ファールにしかできない」ような、嫌らしいボールになるだろうな
「もう一球行くぞ!一也!」
「あぁ!頼む!」
そして中学に入って初めての公式戦人数的にも背番号をもらってる一年生は俺と一也だけである。このチームは中堅クラスのチームなので仮にも小学生の時に全国制覇したバッテリーではあるのでそのレベルの中学生には負けない。
ただこれまで頑張ってきた3年生を憐れんで監督は1番と2番を3年生に譲ったが
実力的に考えればこのチームのエースと正捕手は俺と一也である
俺たちは地区大会を1試合目は先輩が投げ6対4で勝ち進み、2回戦は俺が投げ7回1失点の快投を披露して完投勝利
そして地区決勝戦の相手が
やはり丸亀リトルからそのまま上がってくる丸亀シニアである
「久しぶりだな。真田・御幸」
「…そうですねお久しぶりです。クリスさん」
「今日こそ今までの借り返させて貰いますよ?」
試合前に会場の入り口でクリスさんと遭遇してしまった
「今日もうちが勝つさ…それにお前らのチームの先発は真田じゃないんだろ?」
「…なんでそれを」
「お前がエースナンバーを背負ってない時点でこちらは色々察しているさ」
「まぁそうですね先発は俺じゃないっすよ」
「御幸も正捕手じゃないしお前たちが出てくる前に試合を決めさせてもらうとしよう」
「「…」」
「…言われたい放題だったな一也」
「まぁしょうがねぇよ。何言っても俺たちは試合出れねぇんだからな」
俺たちはクリスさんと話してからベンチに戻ることにした。
うちのチームは2回戦に俺が先発したということもあって今回はエースが登板する
一回戦のチームと乱打戦を繰り広げていた様な投手が全国区のチーム相手に試合を作れるとは到底思えない。
「一也この試合どう思う?」
「正直にいうな9:1で向こう有利だな」
「そこまでか」
「そりゃそうだろ?向こうは全国トップクラスの実力に対してこちらは地区大会を勝ち抜くのも精一杯の中堅クラス…宝くじみたいな確率だよほんと」
「ま、お前が投げるなら6:4にまで持ってけるぞ?」
「それでも負けてんじゃねぇか!」
「流石のお前でも無失点はきちぃって!それに向こうのエースを俺たちが早々に打てるとは考えずらいしな」
そんなことを話しながら時間が過ぎていく
_カキィィィィィィン!
「また行った!」「今日2本目かよ!」「やっぱ丸亀シニアつえぇ!」
現在4回にしてもう7点目のダメ押しホームランをクリスさんに献上した
こちらは無得点に対して向こうは圧倒的な攻撃力を持ってしてこちらを攻め立てていた
このままでは5回で7点差以上あるのでコールドが成立してしまうと考えた俺は
「監督!俺に行かせてください!」
「真田…しかしなぁ」
「このままじゃ負けるっすよ!」
監督が渋るわけも分からなくない。おそらくこの負け試合とも思わせるゲームで一応は期待のルーキーである俺を登板させ万が一にも潰させるわけにはいかないのだ。
この人はチームを全国チームまで押し上げる監督力はないけど決して無能でもないことはわかってる
「…頼みます…監督」
「…よし。御幸!お前もこの回から行くぞ!」
「「はい!」」
そしてその後ランナーが1人出たところで交代の指令がでた
「俊!わかってるな?初球だぞ?一球で相手の心をへし折る」
「言ってくれるな一也。まぁそっちの方が腹くくれるからいいけどな」
相対するのは5番の強打者である。打率はそこそこだけどパワーはクリスさん並みのホームランアーチストである。
一球目一也が構えたのはインコース高め
俺はマウンド上で目を閉じ大きく息を吸う
「すぅ」
_シィィィィン
静寂の空間が訪れる
「…行くか」
俺はプレートを右側いっぱい使い大きく足を上げ自らの腕を振り抜いた
「ラァ!」
「――ストレートか!?いや違うッ!!」
(白球が一直線に迫る――次の瞬間)
_ギュンッ!!
視界の中で、ボールが刃のように切り込む。
わずかに遅れて反応したバットは――
_ガキィィィィン!(鈍い音)
打球は力なく内野の頭上へポトリ
「詰まったぁぁ!!」「鬼シュートえぐすぎる!!」
(ミットを叩きながら)
「ナイスボールだ俊!」
俺はマウンド上で目を目を細め
「次も詰まらせる…折れるまでな。」
次の打者をストレートとフォークの2球で追い込むと
3球目
「(ストレートだ…!芯で仕留めるッ!)」
――白球が一直線に迫る。
だが、バットが出たその瞬間――
_キュッ! ギュンッ!!
ほんのわずかにズレる軌道。
芯を外され、空を切るバット。
_パァァァァァン!
審判
「ストライーク! バッターアウトッ!!」
「うおおおおッ!!」
「最後も変化球だぁぁ!!「1年の投げる球じゃねぇだろ!」
俺は…俺たちはこの回を凌ぎ切り次の攻撃に備える
「俊!何が何でも出てくれ!」
「あぁ任せろ」
相手ピッチャーは初回から投げ続けてるエース…変化球ピッチャーではないがそれなりにボールはキレている
まぁ色々考えるより振り切った方が俺は打てる
ストレートだ…ストレートなら多少ボール球でも振り切ってやる
_ビュン!
_ブンッ!
_カキィィィィン!
「なに!」
俺が打った球は真ん中高めの明らかなボール球であったがストレートに標準を合わせていた俺はそこまで気にせずに振り抜いたおかげでセンター前に落ちる
「…明らかなストレート狙い…か」
ランナーが出た状況で一也…リトルの時もこの打順で点を重ねたおかげで勝ち進むことができた
さぁどーする?一也…
そんなことを考えているとまさかの初球
_カキィィィィン!
アウトコース低めのカーブをうまく拾いやがった!
俺は全速で二塁を周り三塁に向かう外野の中継が見えていないのでコーチャーの指示を見る…GOか
そのまま三塁ベースを大きく周りながらホームに突っ込む
しかしここでボールが返ってくるのがわかったのでホームに滑り込む
クロスプレー結果は…
審判
「…アウトォォォ!」
結果はホームアウトである。
「…クソッ紙一重か」
その後打者を討ち取られゲームセット
「「「ありがとうございました!」」」
挨拶をしベンチに帰ろうとすると
「真田!」
「ん?」
クリスさんがこちらに向かって歩いてきた
「…本当は打席で見て見たかったが勝負はお預けだな」
「ここまでやられといて勝負も何もないっすよ…完敗っす」
「お前が初めから投げてたら分かんなかったさ。実際こちらはお前の投球の研究の方に視点を当ててた」
「…次は…次こそは負けません」
そう言い残し俺たちはグラウンドを立ち去った