裏切り・絶望がテーマの同人ゲー世界で、全てぶっ壊す   作:棘棘生命

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明日は7時投稿です。よろしくお願いいたします。


友と予定を立てる

 じんわりと意識が戻っていく。ぱちぱちと薪の弾ける音が聞こえてきて、暗闇を見つめるだけの明晰夢が終わったのを自覚する。金属が錆びないように、乾燥した部屋の空気が鼻腔を通り抜けた。

 俺は顔前に巻いた布を少しずらし、周囲に誰もいないことを確認する。そして俺の顔である兜と、鎧の各部位が並べられているのにも気づく。

 手に取ってみれば、戦闘によって出来た傷凹みが完璧に修理されているのが分かった。流石、熟練の鍛冶師である。

 

 

(……?光に翳すと青くなる…。)

 

 

 高揚した気分のまま修理された鎧を順番に見ていると、違和感を覚える。暖炉の火が揺れるのに合わせて、妙に金属が青白く光るのだ。

 元々、リシディア騎士の白銀鎧*1は特殊な加工を施されている。しかし、俺の兜も同じように光るのは不自然だ。リィートイが改良してくれたということだろうか。鎧の表面に淡く、魔力を感じたことから確信する。

 

 俺はリィートイの私室にある窓を見た。もう外は暗く、陽は沈んでいる。つまり朝からずっと眠っていたのである。

 愕然としたが、それだけ鍛冶工房が安心できるということの裏付けになる。友人、それも猛き戦士の家ともなれば警戒も緩むというものだ。俺はすっかり軽くなった体を動かし、兜と香料、それと替えの下衣を持つ。

 

 

 鍛冶工房の中には、リィートイだけがいた。彼女は肘をついて微睡んでいる。ケルは既に矛神の孤児院に戻ったようだ。

 俺の足音に反応したようで、小さな左掌から頭を揺らしリィートイは目を開く。そして彼女は、数度目を瞬かせると、手を挙げて言った。その内容からして、俺は想定以上に眠ってしまっていたらしい。

 

 

「おはよう、エド。もう少しで朝だな。よく休めたか?」

「…ほぼ一日寝ていたのか。ああ、おかげで調子も戻ったよ。修理してくれて助かった。この鎧、もしや強化もしてくれたのか?」

「ならよかった!そうだ、エドから受け取った土産を有効活用した結果さ。詳しくはお前が戻ってきたら話そう。体を洗ってきな。」

 

 

 リィートイは俺の言葉に返すと、鍛冶工房の入口を親指でくいと示す。気になる部分は多々あるが、友人の言葉に従い、井戸の水を浴びてくることにした。

 

 

 

 鍛冶工房から少し離れた場所に、王都民や旅人用の水浴び場がある。石煉瓦で囲いが作られた、簡易的な施設だ。こんな朝早くに冷たい水を被る人間はいないだろうと思っていたが、先客がいた。

 

 それは肩幅が広く、筋肉質な青年だった。彼のすぐ近くには意匠が擦れ切った鎧が並べられており、戦いに精通した者であることが分かる。しかしその金属板の造形は、矛神騎士のものとは違っていた。はっきりとは見えないが、特徴的な緑がないのだ。

 今俺は鎧を身に着けていない。そのため、「感知」によって人間であることが分かっても、警戒してしまう。

 

 

(冒険者か、雇われか…。ルヴネト王都だと、荒事で食い扶持を稼ぐのは難しそうだが…。)

 

 

 陽が昇っていないのに外に出ているのは、純粋な王都民ではないことを物語っている。土地に根差していない戦士であると見て間違いないだろう。

 矛神の騎士がルヴネトを守っているため、異相付き討伐の依頼が越境組織にあまり入らない。旅の繋ぎとして寄ったのかとまで考えを巡らせてから、詮索をやめた。

 

 俺は会釈し、闇討ちの類ではない事を示す。近づいたことで見えた姿形は、黒髪緑目の美丈夫であった。顔に走った古傷も深みを増している。バックスタブレイブ作中において、標的にされそうな顔の良さである。

 

 

「…失礼する。」

「……。」

 

 

 兜を誰かに盗られないよう近くに置き、桶を手に取る。名も知らぬ青年もまた、俺と同じように驚いたようで目を少しだけ大きくしていた。

 彼は無言ではあったが会釈を返してくれ、俺が水を浴びている近くで、アンダーウェアの上に胴鎧をつけ始めた。ファンタジーらしく、一人で着られる鎧のようだ。

 

 俺は下衣を脱いで、水をひとかけする。凍り付くのではないかと思うほどに、夜の冷たさを感じる。

 桶の水をかける度に、体が震える。芯まで冷え込む前に汚れを落としてしまおうと、俺は腹に力を入れ寒さに耐える。

 香料を全身に使ってよく洗い、仕上げにもう一度流す。歯も磨き砂で綺麗にしておき、体を拭く。粗布がひりと皮膚を擦り、水気をとっていく。

 

 

 そうして俺は全身を拭き終えると、もう一着の下衣を履いていく。横を見れば、青年は既に鎧を着終わっており、両手で持った兜を被ろうとしている最中であった。尖った鼻が特徴的な、あちらの世界で言えばハウンスカルに似た形状の兜である。

 

 そのときだった。街灯が再び点き、もうすぐ朝陽が昇ることを知らせたのだ。これにより、青年が着ている防具の意匠がはっきり見えたのである。

 彼の胴鎧には、重なり合う腕の刻印が模られていた。冒険者の中でも特別な意匠。「束ねられた腕*2」と呼ばれる、越境組織の上層部に座す人間の証であった。

 

 俺は驚き、下衣へ袖を通そうとした状態で固まる。今の状況はいわば、学院の教導役に学舎以外で出会うのと同じくらい奇妙なことである。上層部の冒険者というのは、大陸北東の国「シウゼヴァク」から殆ど出てこないからである。

 それに加え、全身を見れば彼の着る鎧には既視感があった。ゲーム内において序盤の締めに登場した人物、「犬面」のヨヌアが着こんでいた鎧にそっくりなのだ。

 体格は全く違うし、そもそも性別が違う。しかし関連性を思わずにはいられなかった。

 

 

 俺はその青年が立ち去る前に素早く下衣を着終え、鎧が無くとも兜だけはつけて声をかける。「犬面」のヨヌアは、主人公の勇者と共闘してくれた仲間であり、総力戦にて命を落とした戦士。つまり彼女もまた、俺が生き長らえてほしいと願う人間の一人なのである。

 

 

「待っていただけないか。越境にて高名な戦士とお見受けするが、王都にはどのような御用で?俺も冒険者。荒事なら、お力になれると思う。」

「…ある人物を探している。『青月』エドワルド。知っているか?」

「…それは何か、その人物が悪さをしたのだろうか。」

「知らぬなら、気にせず。情報が入れば、越境の施設まで。相応の報酬は出そう。」

 

 

 青年の口から出てきた、俺の通称と名前に心臓が口から飛び出そうになった。咄嗟に誤魔化したが、青年には勘付かれないで済んだようだ。

 名を聞こうとしたが、青年は影に溶け込むように姿を消していた。この状況で「感知」を使ったとして、魔力が乱れていなければ反応を辿ることはできない。

 

 越境上層部の人間とは思えないほど驕らず、実力の高さを感じさせる戦士。俺は尚更興味が湧き、ルヴネトに残る理由を増やした。彼の正体を追うことである。

 

 俺が知る、ルヴネト付近での裂け目の出現は一つだけだ。一つと言っても、このタイミングで現れる上位種は、ルヴネトの王権が変わる理由に深く関わっているため、気は抜けない。それでも時間の余裕はある。

 考えれば、現ルヴネト王の逝去まで残り二年を切っている。ここでルヴネトにおける破滅の兆しをぶち壊せるかが、大きな転換点となるだろう。俺は気を引き締め、鍛冶工房へと戻った。

 

 

 

 鍛冶工房のドアを開けば、せっせと俺の鎧を運んでいるリィートイの姿があった。そして俺が戻ったのに気がつくと、にっと歯を見せて笑う。幼い顔なのに、表情の作りは老成していて頼もしい。

 

 

「寒かったろ!一緒に炉で温まろうぜ。お前が鎧を着ている間に説明してやるからさ。」

「ありがとう。言葉に甘えさせてもらう。」

 

 

 俺は火が灯った炉の近くに赴き、リィートイが並べてくれた鎧を身に付けていく。胴鎧、肩甲、腕の装甲と締めながら、リィートイの言葉に耳を傾けた。

 

 

「端的に言ってしまえば、お前の鎧全体に手甲を融かした。魔力が残っていた分、今までの装甲とは一味違う。」

「そうか。有難いことだが…俺に使って良かったのか。」

「エドから貰った土産を、他の奴に売るわけないだろ?飾るでもないし。…そのまま使うより、合わせた方が魔力の濃度を増せる。だから融かしたんだ。」

「…報酬を上乗せしないとな。」

「いいって。わたしがしたかっただけだ。最近は鍛冶仕事で、結構お金も貰えてるしな。」

 

 

 友人の言葉に俺は胸が熱くなり、同じくらい申し訳なさを感じる。あの手甲の内一つは、リィートイの知り合いが身に着けた防具であった。「防具は使われなければ意味がない」とリィートイは主張するが、形見のようなものなら例外だと思っていた。修理し保管しておくのだと。

 トリネには、想定していた返事は出来ないが、良い事が聞けた。魔力を含んだ鎧は、溶かし合わせることで強度を増す。この情報は、サングの「猛進の鎧」を強化するのに役立つかもしれない。

 

 リィートイから鍛造における専門的な話を聞き、九割方理解できないまま相槌を打つ。内容が分からずとも、楽しげに話している彼女の姿を見るだけで、俺も嬉しくなるのだ。質問できそうな部分には積極的に言葉を返していく。

 

 

「――魔力を漏らさず金属に仕込むには、熱を入れる時よりも、焼き入れの工程の方が大事なんだ。冷やすときに使う液体がまた特殊でな。自前で作るか、それともわたしの友に頼んで仕入れてもらうか…どちらにせよ、普通の流通じゃあ出回っていない。」

「なるほど、そうなのか…。浅学だが、今の時代においても魔力を付与した防具は鍛造されているのは知っている。例えばリシディア騎士団の鎧の作り方は、リィートイの作り方とどう違うんだ?」

「おお、食い付いてくれるじゃないか!そうだな…わたしが普段、エドの鎧を修理するときと同じ方法さ。騎士団のは、金属に魔力を融かすというより、後から付与してるんだ。だから、時間経過で鎧の強度が元に戻ってしまう。魔力をそのまま放出するっていうのは、魔法を使うよりも難しいからな――」

 

 

 リィートイは小さな両腕で、手振り身振りを駆使して説明してくれる。彼女の語りが丁寧であったため、少しだけ分かった気分になれたが、俺自身が説明しようとしても難しそうだ。

 ともかく、俺の鎧が青白くなる理由が把握できただけでも収穫である。俺の生存率が高められれば、このエドムンドの鎧を孤児院跡に返せる確率も高まる。俺は改めてリィートイに感謝した。

 

 

 その後も、陽が昇るまでリィートイと雑談した。ルヴネトから離れて繰り広げてきた死闘を昨日より詳しく話したり、これからの予定を共有したり、先ほど会った戦士について不安を口にしたりなど、相談もしていく。

 最後、越境組織について、リィートイは意外にも楽観的な反応を見せた。「黒錆酒」を少量グラスに注ぎ、にこにこと口角を上がった顔で言う。

 朝から飲んで良いのかと尋ねたが、今日はもう工房を閉じるため問題ないと返された。

 

 

「そりゃあ、褒賞でも出るってことじゃないかー?リューンで何も受け取らなかったんだろ?」

「ああ、依頼を受けたわけじゃないからな。あの町の通称持ちは、正式に越境から招集されていたらしい。」

「清貧なのはエドらしくて良いけどな。今度からは、貰えそうなものは貰っとけよー。…そうだ。頑張った分のご褒美を、わたしからあげよう!マントの新調とかどうだ?」

「さっきも言ったが、他者に褒めてもらうことじゃない。俺の自己満足の結果だ。」

「はは!細かいことは気にすんなよ!わたしが偉いって思っただけ、こっちも自己満足だ。」

 

 

 リィートイの心遣いは、やはり魔性と呼べるほどに温かい。

 俺は鎧を覆う、継ぎ接ぎのマントに触れる。胴鎧を隠すためのもので、特段状態は気にしていなかった。愛着が湧くほどでもなく修繕しながら使っていたが、リィートイが改良してくれた新品同然の鎧と比較すれば、悪い意味で目立つ。こちらも新調して、不自然さを無くすべきだろう。

 友人相手に遠慮しすぎるのは却って失礼だ。俺はまた、リィートイの言葉に甘えることにした。

 

 

「…よろしく頼む。これと同じように暗色で作りたい。」

「おう!まあ、とはいっても依頼するだけだ。手間取りはしない。」

 

 

 リィートイは依頼を出す人物について、続ける。ルヴネトにそのような人間がいたかと、ゲーム内での知識も踏まえて考え、思い当たる節があった。

 

 

「この前話した…わたしに小さな人形をくれた娘のことを覚えてるか?あの娘の家は道具屋だけじゃなくて、裁縫仕事も受け持ってるんだ。腕が良いし、ケルちゃんとその家の娘が仲良くなったしで、エドにも紹介したいと思ってな。」

「ケル君の友の家か…。確かに気になる。」

「そうだろー?ここ数年で移住してきたらしいから、売上が伸び悩んでいるんだと。でも鑑識眼は確かだ。今仲良くしておけば、お得意さんになれるから損はない。」

「そこまで貴女が推すなら、期待が高まるな。何という名前の家なんだ?」

「言い忘れてたか。バストル家っていう名前を掲げてる。」

 

 

 俺はその家名を聞いて、納得する。それはバックスタブレイブにて、リィートイと同じくチュートリアルを担った道具屋であったからだ。

 そしてリィートイが続けて言った名前。それもまた、俺の記憶にある。

 シーユ。ゲーム終盤で一家ともども骸となり、主人公の勇者とプレイヤーの心を折った少女だった。

 

 鍛冶工房の入口から光が射しこんできた。朝がやってきたのだ。

 

 

「――五日くらいはルヴネトにいるんだろ?ならまず、ケルちゃんたちの修練を見に行こうぜ。エドが保護した子たち、めきめき魔力量を伸ばしててな。四月前とは比べ物にならないくらいだ。」

「ああ、そうしよう。楽しみだな…。」

「ははっ!エドは本当にケルちゃんが好きだなー!うく、く…ぷはあ…。よしっ、行くぞ!」

 

 

 リィートイは豪快に笑うと、黒錆酒が入った瓶を傾けて飲み干す。そうして俺の手をがっしりと左掌で握り、右手でドアの先を指さした。彼女の赤らんだ顔は、陰りの一つもない晴れやかな表情だった。

 

 

 

 

 同時刻、関連性はない二つの集団について。

 疲弊しきったリシディア騎士団の遊撃部隊は、宿で倒れ込み。「越境」のモユヌエから命を受け、ルヴネトにやってきた冒険者二名は、街路脇にて朝陽を眺めていた。

 その二名、ヨヌアとオズは、エドワルドが王都に入ったことは分かっていても、行方をつかめずにいた。エドワルドは人前にあまり姿を現さず、纏う鎧も特徴的だとは言えないからだ。

 夜、化物を狩るときに青い「月」の魔法を用いる全身鎧の男。二名はそれだけを情報として持っていた。

 

 オズは言葉少なに、姉であるヨヌアへ話す。ヨヌアは二つ結びにした金髪を整えながらオズを見上げ、半分聞き流していた。

 

 

「…先ほど、妙な男に会った。私と同じく、鎧を着ているだろう戦士。冒険者だとも言っていた。」

「ふうん、そうなの。確かにルヴネトで、夜出歩く冒険者は妙ね。」

「それだけではなく。あの男は、魔力持ちだった。兜の形状もどことなく、大母が探す人物に似ていた。」

「…うもう!それを早く言いなさいってば!」

「確信は持てなかった。申し訳ない姉上。」

 

 

 両腕を下に伸ばして怒り、ヨヌアはオズを叱る。背の高い男は、兜で表情が読めなくても、ずんと落ち込んだ様相を見せていた。

 これ以上強くは言えないと、ヨヌアは怒りの吐き出し口を失い、ぱしりとオズの背を叩いて奮起させる。

 

 

「そんなに落ち込まないでいいの!ほら、探しに行くわよ!」

「承知。」

 

 

 姉弟は、それぞれ白い布で覆い隠した得物を取り、街路を歩く。隠さなければ、その異様な形状は目立ってしまうために。

 朝陽が昇ったことで、王都民が次第に外へ出てきており市街に騒がしさが戻っていく。

 

 

 しばらく進んで、突然ヨヌアが大きく口を開ける。彼女が示す先には、青白い全身鎧の騎士と背丈の小さい童女があった。二人は思いがけず、すぐに目的の人物を見つけたのであった。

 

 

「ねえ、そこのお二人さん!止まって止まって!」

「…んん?わたしたちか?」

「そう、あなたたちよ!やっぱりそうね…!あなた、『青月』のエドワルドでしょ?」

「おお、噂をすればってやつじゃないか。」

 

 

 振り返るエドとリィートイに、ヨヌアは確信する。鎧の形状が、傀儡人形を通してみたものと一致しているからだ。変に体を強張らせているエドに対し、ヨヌアはふんふんと鼻息荒く迫る。道中散々振り回された不満と、ようやく見つけられたことへの達成感がそこには含まれていた。

 

 

「…ええ、ご認識の通り。」

「そう!私たち、あなたに用があるの。あ、まずは自己紹介よね。私は『鉄剥』のヨヌアって呼ばれてるわ。こっちはオズ。この子も通称持ちよ。」

「先ほどは、失礼。オズという。」

「…ヨヌア殿と、オズ殿。改めて、俺はエドワルドと越境で登録している者です。それで、上層部の方々が俺のような個人にどのようなご用命があるのでしょう。」

「ううーんと、そうね…。」

 

 

 ヨヌアは、エドの落ち着き具合に面食らう。越境組織の上層部が出向く理由は、一つである。名誉を称え、その冒険者が望む褒美を渡すことだ。用命について聞かれるなど今までなかったため、言葉に詰まってしまったのである。

 また冒険者とは程度の差こそあれ、粗暴さが見え隠れするものである。それが無く、しかも映写機越しに見たエドワルドの戦いは鬼気迫るものであり、穏やかさとは無縁であったから尚更驚く。

 

 普段はあまり話さないオズがヨヌアへ助け舟を出した。その言葉に対し、エドの手を握るリィートイは、嬉しそうにはしゃぐ。

 背丈の近いヨヌアは、リィートイから香る酒の匂いに首を傾けた。

 

 

「これまでの越境への貢献を、大母が見た。『白き巨影』討伐も含め、貴方が望む報酬を出そう。」

「ほらなー!良かったじゃないか、エド!」

「望む報酬…。なら、孤児院へ寄付をお願いする。最近かつかつで、送れていなかったんだ。」

「え、えっと…冗談よね?」

「…まあ、そうだよな。」

 

 

 困惑するヨヌアとオズへ、エドは本気だと話す。そのとき、リィートイがエドへしゃがむように伝える。二人の話し合いはひそひそと、そして素早く完了する。

 今求めているものは全て貰うべきだという旨を、リィートイは囁いたのである。

 

 

「加えて、貴方方と情報交換をしたい。『束ねられた腕』の人員との手合わせも。お願いできるだろうか?」

「…いいけど、情報交換っていうのは内容によるわよ。」

「問題ございません。少しでも貴方方について知れれば。」

 

 

 内容はぼかされており、ヨヌアは納得がいかないまま頷く。モユヌエは、エドワルドとの接触を成功させることを望んでいた。ならば、目の前の戦士からの心証を良くすることが最優先だと、ヨヌアは考える。

 

 オズは、エドの望んだ手合わせという部分にうずうずとしていた。「狂狼」の通称が示すように、オズは戦いに狂った戦士である。モユヌエに立場という首輪をつけられているとはいえ、異相付きを狩ることに歓びを感じる性質であるのだ。

 血の繋がった冒険者二人は、主の望みを叶えるためにこれからの動きを考える。そうして、エドと越境の施設内で再び会うことを約束し、二人だけの作戦会議を執り行うことにした。

 

 エドとリィートイは予定通り、ケルの修練する場所へと歩んでいく。騎士の心には、先ほどより熱く闘志が燃え盛っていた。

*1
リシディア騎士の鎧:頭、胴、腕、足の四箇所に装備できる防具の一つ。顔を完全に隠す兜における、覗き穴と空気穴は魔力により守られている。特に騎士長が身に着ける鎧は質素な装飾品により、しかし華やかに彩られる。

*2
「越境」のモユヌエに忠する派閥。しかし老女を支持しない派閥においては、逆さかつ歪んだ紋様を隠し刻んでいる。対外的には越境上層部を示す証であり、ゲーム作中においても意匠の違いを明言されることは無かった。

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