公安対魔特異課のヒーラー   作:水滴

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モンちゃんがお酒を怖がったので6話目です。
今回本文内で言及するスペースがないのでここでゲロっちゃいますが、ミミが持っているコンテンダーは可能性の悪魔の力を使うことで弾が無限化します。単発銃から二発目以降が連射されるという初見殺しですね。

皆さん誤字報告ありがとうございました。


6. 襲撃

 

 今は月曜日昼間。つまり、そろそろ公安特異課襲撃だ。一般人のふりをして急に銃撃をしてくるという手口で、敵の狙いはデンジの心臓の奪取とされていたはずだ。

 現在僕とモンちゃんはビル街を歩いている。もう昼休みとしては遅い時間なので出歩く人は少ない。

 前を歩いているモンちゃんに話しかける。

 

「モンちゃん。悪いけど今日は多分昼ごはん抜きだね」

 

「え、なんで?」

 

 振り返って不思議そうなモンちゃんの向こうにはたった今まで少し先を歩いていた3人組の一般人がいた。

 とても自然な様子でこちらに拳銃を向けてくる。僕に当てたいならもっと近くから撃つのがお勧めだ。

 可能性の悪魔の能力で少し弄らせてもらおう。手を叩くのは偽装のためで本来は叩かずとも力は使える。今回はノーアクションでの発動だ。

 直後に周囲の静かさを破るように発砲音が響くが僕達には一発も当たらなかった。

 

「運が悪いね」

 

 僕らの担当にならなかったら今日の所は生きて帰れたかもしれないのに。……いや待て、どの道マキマに潰されるじゃん。

 

「じゅ、銃が⁉︎」

 

 どうやら3人とも初弾で弾詰まりを起こしたらしい。上手くいった。

 僕とモンちゃんは既に走り出していた。モンちゃんは右手を変化させて黒い鉤爪を作ったみたいだ。

 あっという間に僕らは距離を詰めると、突然の弾詰まりで硬直したままの3人の内1番左側の1人をモンちゃんが爪で、1番右側の1人を僕がグラディウスでそれぞれ素早く首を切り裂く。

 これで動けないどころか、死ぬことも免れないはずだ。

 真ん中の1人は敗北を悟ったようで、駄目になった銃を持ったまま逃げ出そうとしている。

 生かすことは最初から考えてないので、そのままの流れで最後の1人の喉にグラディウスを刺して仕留める。

 

「殺しちゃうんだ」

 

 モンちゃんが意外そうにこちらを見ている。捕縛して情報を抜こうにも僕らには時間がない。

 

「アキくん達のところに急ぎたいからね」

 

 それに、どうせ情報はマキマが持っている。

 話を聞くモンちゃんは爪についた血を勿体なさそうに舐めていた。

 

「朝会った時に昼はどこで食べるか聞いておいたんだ。ここからそこまで遠くないよ」

 

 その時に一緒に食べたいと思われたようで、店に着いたアキくんから少し前に電話も来ていた。時間的にまだそこにいるのは間違いないだろう。

 モンちゃんは付いていた血を粗方舐めとったようで、爪を無くしていつもの腕に戻すと訊いてくる。

 

「走っていくの?」

 

「それしかない」

 

 あまり遠くない距離から建物が崩れたような大きな音が聞こえてきた。アキくん達がいるのはこの音がした建物だろう。

 

 

 

 

 

 

 建物の上側が吹っ飛ばされたラーメン屋の店内に到着すると、頭と両手から刀の生えた武器人間であるサムライソードによってアキくんが斬られたようで、アキくんが膝をついていた。その後方には左胸に銃弾によると思われる傷を負った姫野さんとそれを支えるパワーちゃんがいる。

 

「2人も新手か。面倒だな」

 

 パーカーを着た女が僕らに気付き、銃を撃ってくるが可能性の悪魔の力で当たることはない。あのパーカー女が蛇の悪魔の契約者の沢渡だ。サムライソードか蛇の悪魔が攻撃してくるまでは無視させてもらおう。僕は姫野さんの隣に膝をつき囁く。

 

「治療の時間稼ぎをしたいので、右手以外の四肢で完全なゴーストを呼んでください」

 

 原作で姫野さんがゴーストの全身を呼んだ時の笑顔を見るに、おそらくゴーストは一時的になら契約者の全部をあげなくとも完全な状態で呼ぶことが可能だと考えている。原作では助からないことを悟ってか全てをあげることで呼んでいたが、今回はさせない。

 

「私の両足と左手をあげるから…少しの間ゴーストの全部を使わせて……」

 

 そう苦しそうな姫野さんが告げるとアキくんを守るように、巨大で花に覆われた長い首の上に目と口が縫い閉じられた長髪の頭、多腕でできた足を持つ不気味な悪魔が現れる。

 それと同時に姫野さんから左手と両足が幻のように消えたため倒れないように抱える。やはり全てをあげなくとも呼ぶことは可能なようだ。

 

「モンちゃん、姫野さんを万全な状態みたいに結晶で覆って」

 

「わかった」

 

 モンちゃんは頷くと姫野さんの胴を結晶で覆っていく。姫野さんはゴーストの操作に集中していてこちらを気にしてはいないようだ。

 まずは命に関わる傷を負った左胸から治していく。

 幽霊の悪魔はちゃんと仕事をしているようで、窮地に陥ったサムライソードの恐怖を感じている声が聞こえてくる。

 

「ヘビ、丸飲み」

 

 その沢渡の声と共に巨大な蛇の悪魔が突如現れ、首の上を残して幽霊の悪魔をその口に飲み込んだ。

 

「帰れ」

 

 その沢渡の言葉と共に、出てきた時と同様に蛇の悪魔の姿が消える。時間稼ぎとしては十分だ。左胸どころか姫野さんの手足も戻させてもらった。

 幽霊の悪魔が消えたのでパワーちゃんに姫野さんに肩を貸して撤退してもらおうと思ったがすでにいなくなっていた。仕方ないのでモンちゃんに肩を貸させて撤退してもらう。

 アキくんとデンジがまだいるので僕は居残りだ。グラディウスを抜いて逃げる2人への追撃を警戒する。

 

「あいつら逃げるぞ」

 

「目的はチェンソーの心臓だ。追撃はしない」

 

 サムライソードと沢渡がそう話していると、彼等の後ろからエンジンがかかった音がした。

 姫野さんが逃げ際にゴーストでやってくれたようだ。音の発生源を見ると敵味方どちらも注目する中、デンジがチェンソーマンになりながらゆらりと起き上がっている。

 

「次は真っ二つにしてやる…」

 

「心臓は傷つけないで」

 

 僕のことは無視ですか〜?こちらに背中を向けてくる無警戒具合にコンテンダーをブチ込みたくなるが、こっちにちょっかいを掛けられてもまだ困るので堪える。

 デンジが口を開く。

 

「……な〜んかわかんねぇけど…テメェらが悪いヤツだってことはなんとなくわかったぜ」

 

「俺悪いヤツは好きだぜ?ぶっ殺しても文句言われねぇからなぁ〜!!」

 

「もう一回殺してやるよ」

 

 サムライソードはデンジを殺すことに執着しているが、あくまで冷静に振る舞っている。

 サムライソードと沢渡がデンジに注目している間に、静かにアキくんに近寄らせてもらう。

 胸を斬られたため、姫野さんほどではないがアキくんも予断を許さない。ここから移動するなら治してからでないと死んでしまうだろう。とりあえずスーツのジャケットを脱いでアキくんの傷をそれで隠す。これで治療が始められそうだ。

 

 僕がアキくんを治療しようとする間にデンジとサムライソードが戦い始めたようだ。鉄がぶつかるような音がうるさい。

 アキくんの傷を完全に隠すことができていないからか、いつもと比べて傷の治りが悪く感じる。

 ふと視線を感じ、顔を上げると手元の通信機を顔から離しながら沢渡がこちらを見ていた。僕の邪魔をするか迷っているように見える。

 

 そこへデンジとサムライソードが戦闘音を響かせながら近づいてきたことによってそれどころではなくなったようだ。狙ってやってるかは知らないけどナイスだ。

 

 その後、デンジとサムライソードの戦闘音がしばらくした後、沢渡が呼んだであろう増援2人が崩れた壁から侵入してきた。

 侵入するなりこちらに1人が銃を向けてきたので膝をついたままコンテンダーを2発打つことで、一発目で銃を手から弾き二発目でそのまま銃をはじき飛ばさせてもらう。可能性の悪魔の力の無法さを感じる。

 手にも衝撃が来たようで痛そうに呻いたたニット帽の男の隙を見逃さず、デンジが膝蹴りを入れもう1人のロン毛に回し蹴りを入れた。

 増援の一時の無力化ができたようで、そのままサムライソードへデンジが切り掛かる。また一度斬り合ったようだが、技量の差があるからかデンジにのみ傷が増えた。

 

「イタタタタ〜。あれぇ⁉︎いつ切られた⁉︎」

 

 デンジにも見えない速度でサムライソードは斬撃が行えるらしい。

 ここでアキくんの傷がようやく治った。気づくとアキくんは気を失っている。

 一方で真正面からでは勝てないと感じたのか、デンジは先ほど膝蹴りを入れてダウンさせたニット帽の男を人質にして時間稼ぎをしようとしている。

 

「おい!刀のワルモン‼︎こいつはテメェの仲間だろ」

 

「それならどうした」

 

「お〜1ミリでも動いてみな〜⁉︎お仲間のお顔がおミンチになるぜ〜‼︎」

 

 デンジの三下じみたセリフが聞こえた後、「ん⁉︎消えた⁉︎」と言うデンジの声の直後に何か思いものが落ちる音がする。見るとデンジは人質にしていた男もろともヘソの辺りから横に両断されて下半身とさよならしていた。

 それを見て助けに入ろうとも思ったが、よく考えたらそんなことをしている暇はない。

 アキくんは現在、呪いの悪魔の力を使ったことで寿命が大幅に削られてしまっている。おそらく可能ではあるが僕は寿命の操作なんてやったことがないので、ここからデンジを助けに行ってしまうと時間が足りず、アキくんの寿命をいじって戻すことができなくなってしまうかもしれない。

 それに、誰にもバレずに寿命をいじるには病院に行ってからではなく今でなくてはならない。アキくんは意識を取り戻したら真っ先に今回無くなったであろう寿命のことを呪いの悪魔に聞くはずなので、そうしたら寿命が確定してしまう。どうする?

 そこまで長考してから、僕はまだ安全でないことを思い出し、出口の方向を見る。

 持ちやすくなったデンジを引きずりながら、1人になった増援の男がこちらは銃を向けているのが見えた。次の瞬間には弾丸が飛んで来るだろう。今から回避は間に合わない。

 そう思考した瞬間、僕の体は真っ暗な闇の中へアキくんと共に沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 大災害が起きた後のような店内でアキを治していたミミは、銃が撃たれたのとほぼ同時にアキごと沈むように消えた。放たれた弾丸は人体を貫くことはなくミミの後ろの床に銃弾の跡を作るのみとなった。

 

「なっ、消えた?」

 

 その光景を目撃した増援の男は驚く。

 

「契約してる悪魔で逃げたんだろう。速くチェンソーを運べ」

 

 そう話したサムライソードの頭やそこから生えていた刀が泥のように溶けていき、中から特徴的なもみあげを持った男が出てくる。顔にはかなりの汗をかいていて、ほとんど一方的に勝ったとはいえ相当疲労していることが伺えた。

 

「一部生き残りがいたようだが、それ以外はそのまま死んだってことだ。デビルハンターと言えど銃には勝てんだろう」

 

 チェンソーの心臓奪取という今回の目的の達成を確信してか、疲労を感じさせながらも満足気だ。もっともこの目的はこの後、マキマからの遠隔攻撃と銃撃から生き残った1人の女によって粉砕されることとなる。

 

 

 

 

 

 

 突如闇の中に落ちた僕は逸れてもマズイので、アキくんを離さないように抱えたまま止まっておくことにした。そのまま30秒ほど経つとこの空間に入った時と同じように唐突に日の光の元に出現した。どこかの屋上のようだ。

 僕の隣にはモンちゃんが立っていた。やはりさっきのはモンちゃんが助けてくれたようだ。

 

「アキは大丈夫なのか?」

 

 モンちゃんがそう訊いてくる。屋上に出るための扉の隣には壁にもたれかかるようにして姫野さんが眠っていた。

 

「すぐに死ぬことはないよ、でも多分寿命が減っちゃってるからそれを早くどうにかしないと」

 

「寿命?悪魔との契約か…」

 

「減った寿命をまだ悪魔に聞いていないからまだどれだけ減ったかは僕たちにはわからない」

 

「知らないことを逆手に、減った分を無かったことにしようってわけか」

 

モンちゃんは僕が何をしたいかわかってくれたようだ。

 

「やりたいんだけど、寿命をいじる感覚がわからないな…。可能性の悪魔は運命とかに干渉する時のことなんか言ってなかった?」

 

モンちゃんは思い出すように目を瞑ると、少しして話し出した。

 

「糸のような物を引き伸ばすことをイメージすると出来るって言ってた」

 

 イメージか……。目を閉じて糸を引き伸ばす想像をしてみる。

 イメージしたアキくんの糸はとても短い。これが伸びるようにイメージすると先が見えないほどに長くなっていき、突如伸びるのが止まったのを感じた。なんとなく呪いの悪魔に支払う前まで戻せたと直感し、僕は目を開けた。

 目を開けるとモンちゃんがフェンスから下を見下ろしていた。

 

「なんかあったの?」

 

「聞こえなかったの?すんごい音したと思うけど」

 

 そう言いながらモンちゃんが指さす方向を見ると長くて大きな何かが地面に横たわっていた。おそらく蛇の悪魔の尻尾だろう。

 僕らが見ている中でその尻尾の上を走っていく女性が見えた。

 

「コベニちゃんだ。デンジを取り返しに来たみたい」

 

 アキくんと姫野さんは一旦ほったらかしておいてももう大丈夫そうだし、僕も向かったほうがいいだろう。

 

 

 

 コベニちゃんが走って行った方向を追うと、走り去っていくバンとデンジの上半身の近くに座り込んだコベニちゃんがいた。

 周囲には京都からのマキマの攻撃によって、いくつかの血の滲みとその中心にクシャクシャの服だけ残る壮絶な光景が広がっている。うわぁ、すっげぇ臭い。これ誰が掃除すんの?

 

「もうダメだ……この仕事してたらおかしくなる…」

 

 コベニちゃんは少し錯乱しているようだが、襲撃が終わったのなら死んだ特異課メンバーの蘇生に移りたい。

 

「コベニちゃん、荒井くんの体ってどこにある?」

 

「え………。か、隠しておきました」

 

「やってみないとわからないけど蘇らせてみよう。案内して欲しいな」

 

 果たして何人が生き返るだろうか。原作通り円さんが生き残っていたら特異課の死体を集めてくれているかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




基本的な悪魔って契約の対価が少ない場合はともかく、多い場合には何も言わないと思うんですよね。
悪魔との契約の対価は踏み倒せるなら踏み倒したほうがいい派の作者です。

この話書くのには結構時間がかかりました。
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