公安対魔特異課のヒーラー   作:水滴

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更新頻度は落ちますね。目標は週一投稿です。


7. お見舞い・遭遇

 

 4課では死体をバディに隠蔽処置されていた都築さんと荒井くんのみが蘇生に成功。伏・金垣ペアはバディの両方ともが射殺されてしまっていたため死体を十分に目撃されてしまい、死体を綺麗な状態へ戻すことにこそ成功したが再び彼らが目を覚ますことはなかった。他の課の人員ではバディの両方ともが射殺されてしまうケースが大体であったため、4課でこれだけ蘇生に成功したのでも奇跡的だと言っていいだろう。

 これは、僕が救える人員の中でアキくんと姫野さんに優先順位をつけた結果でもある。救える人員の中から結果的に2人を選んだということだ。

 後悔はないが僕は死んだ彼らのことを忘れることはないだろう。すでに実行犯はマキマによってペシャンコだろうが、ヤクザ連中との決着の場で奴等を血祭りにあげることで彼らへの弔いとさせてもらおう。

 コベニちゃんの荒井くんが死んだことへの認識が強すぎて蘇生に時間がかかったなんてこともあったが、公安特異課への襲撃後の概要はこのようになった。

 都築さんのバディであった円さんは、今回の事できな臭さを感じ公安を去ったらしい。実際、対悪魔の部署に人間が襲撃を仕掛けてくるなんて前代未聞なので、きな臭いかきな臭さくないかといえばきな臭すぎると言っていいレベルだ。

 

 僕は思考を打ち切った。現在、僕はモンちゃんと共に病院へアキくん、姫野さんなどの今回の襲撃で入院することになった人たちへのお見舞いをしに来ていた。

 歩きながら今回の襲撃のことを考えていた僕は扉の前で止まる。この個室には姫野さんが入院している。1人で過ごしているならそれなりに退屈だろう。扉をノックすると中から「どうぞ〜」と聞こえてくる。

 横開きの扉を開け、僕は部屋に入った。病院服の姫野さんがベッドから上半身だけ起き上がっていた。

 

「どうも、体の方は大丈夫そうですか?」

 

「大丈夫だよ。やっぱりミミ君は腕がいいね」

 

「契約悪魔の能力に腕も何もあるんですかね……」

 

 「あるよ、ある」と答える姫野さんはとても穏やかな顔をしている。どうやら大丈夫というのは言葉通りに受け取って良さそうだ。

 

「あ、そういえばさ」

 

「ゴーストの手がまだ使えるんだけど、私の記憶が確かならパーカー女が呼んだ悪魔に食い殺されてなかったっけ?」

 

「蛇と呼んでいたので蛇の悪魔じゃないですかね」

 

「…体内で殺さずに保存出来るのかもしれないね」

 

 僕の発言に続いてモンちゃんが推測を話した。僕もそういう話だと考えている。

 本来、この世に現れた悪魔は死んだらこの世での影響力の一切を失う。つまり眷属を作るタイプの悪魔がいた場合、悪魔本体を殺せば眷属も元に戻るとか死ぬとかするわけだ。でも今回は悪魔が死んだように見えたのにまだ契約者が能力を使えている。

 姫野さんは顎に手を当てて思案している。

 

「そういうことになるよね…」

 

 原作ではなぜか吐き出された後アキくんに対し敵対していたが、幽霊の悪魔って公安と協力してる悪魔なんじゃないのだろうか?蛇の悪魔の能力で生きたまま飲み込むと支配下に置けるというのが今の所の予想だ。

 まぁ、どの道敵対してくる悪魔なら殺すのみだ。なんか前からアイツは裏切ると思ってたんすよ。

 一転して、姫野さんは心配そうな顔になった。

 

「ってかアキくんのことも治したんでしょ?寿命は?」

 

「感覚でしかわからなかったんですけど、なんとかなったと思いますよ」

 

 曖昧にしか答えられないが、確信はある。僕の力はなんとなくで話さざる得ないのだが、これを聞いて姫野さんは安心したようだ。

 ここでお見舞いの品をあげよう。少し高いやつだがその分箱が小さい。

 

「果物とかは他の人が持ってきてそうだったんでチョコにしました。怪我での入院なんで大丈夫だとは思いますが、なるべくこっそり食べてください」

 

「おお〜。いいねぇ、お酒も欲しくなっちゃうかも」

 

「酒は退院してひと段落してからですかね。その時はアキくんと何人かでどっか行きましょう」

 

「楽しみだなぁ。……………本当にありがとうね」

 

 さっきまでの朗らかさから急に真面目な顔になって姫野さんが話しかけてきた。

 

「僕のしたい事をしたんです」

 

 「だから、こちらこそ生きてくれてありがとうございます」と返して僕は部屋の扉の方を見る。その時目に入ったモンちゃんは優しげな表情で僕を見ていた。なんだよ。

 

「アキくんのとこにも行ってやろうと思うので、そろそろ出ますね。お大事に」

 

「お大事に」

 

 モンちゃんも僕に続いて部屋の扉へと向かう。

 

「うん」

 

 姫野さんは肉体的にも精神的にも大丈夫そうだ。安心した。

 扉をゆっくりと閉めて歩き出す。まぁ、アキくんの部屋もここから近いのでそこまで歩かないで済むだろう。

 

 

 

 

 

 

「あ」

 

「どうも」

 

 アキくんの部屋の扉を開けようとしたら先に中からデンジが開けてきた。ちょうどデンジとパワーちゃんもお見舞いに来ていたようで、2人揃って出ていくところだったようだ。片手に見舞いの品だったであろうリンゴの籠を持って去っていく。

 あれ他の人が持ってきたやつだよな……。

 

「調子はどうだい?」

 

「多分昼には退院だろうな」

 

 アキくんは病院服でいつも結ってるマゲも解かれている。僕がアキくんの分のチョコを机に置いているとアキくんが切り出してくる。

 

「大丈夫だってのは分かってるが、人を生き返らせることすら出来る力を十全に振るって代償はないのか?」

 

 アキくんにこの力の代償は最初に払ったのみだということは話してある。しかし、こんだけ都合が良いと疑いたくもなってくるよね。

 

「これが不思議でね、今もたまに検査はしてるんだけど何も無くなってないんだ」

 

「最初に払った代償も自覚がないから実質無料ってとこか?可能性の悪魔はよっぽどのバカだったんだろうな」

 

「……うーん、私の記憶だとバカというよりは人間好きのせいだと思うけど…。あ、でも悪魔なのに人間が好きってのは十分バカだね」

 

 モンちゃんが言うには可能性の悪魔は人間好きだったようだ。

 でも、この能力じゃ身体の欠損は自分のであろうと誤魔化せるだろう。そういう意味では概念的な代償の上、内容を忘れさせてきた可能性の悪魔はかなり自分の能力をよく分かっていると言えるだろう。

 

「寿命を戻してくれたのは本当に助かった。だが、さっきそのことでカースから契約を打ち切られた」

 

「へぇ〜。そうなったんだ」

 

 呪いの悪魔は寿命が短くなったことに絶望する姿を見ることまでセットで考えていたタイプだったようだ。そういう条件は最初に詰めとくべきだぞ。

 契約を打ち切られたって言うが、寿命を代償に戦うのなんて周りの人的にはして欲しくなかったからそれはそれでいいと思う。

 

「代償を取り戻されたのがそんなに悔しかったのかな?」

 

 モンちゃんはその話を聞いて楽しそうだ。

 

「もしかしてと思って、狐の悪魔も呼ぼうとしたが反応がない。ゲテモノを食わせたのがまずかったみたいだ」

 

「つまり、新しい悪魔と契約しなきゃってことだね」

 

「ああ、つっても個人でどうこうできる話じゃないから公安の案内待ちだな」

 

「そればっかりはしょうがないね」

 

 やはり未来の悪魔と契約させられることになるのだろうか。アキくんを死ぬ未来を歩ませるつもりはないけど対価はどうなるんだろう。原作同様未来の悪魔のお眼鏡に適う未来を送れているといいんだけど。

 

 見舞い人用の椅子を見ると上に漫画雑誌が置かれている。

 

「これ、忘れ物じゃないかな?」

 

「デンジのだな………取りに戻ってくるぞ」

 

 そうアキくんが言うと僕の後ろの扉が開く。開けたのはデンジだ。こんな朝から見舞いに来てくれるなんてデンジもパワーちゃんも割と優しいよね。

 

「よく分かったじゃねぇか」

 

 僕らが話していたから少しタイミングを測っていたらしい。

 

「じゃあな」

 

「気をつけてね」

 

 雑誌だけ回収するとデンジが扉を開け出て行こうとしたが、扉の前の廊下には男女の2人組が立っていた。2人共に鼻筋のあたりに目の下まで続くような傷を持っている。

 デンジが先に扉を通らせてもらい、その後にその2人組が部屋の中に入ってくる。

 女の方が口を開いた。

 

「お取り込み中ですか?」

 

「いや、一旦大丈夫ですね」

 

 ここは僕が答えておこう。

 

「私達マキマさんに頼まれて京都から特異4課を指導に来ました」

 

 女の方が返答を聞いて話し出す。

 

「僕にも関係ある感じですかね?」

 

「キミは?」

 

「ミミっていいます」

 

 僕が誰であるか話すと男の方が話しだす。関西のイントネーションをいくらか感じる話し方だ。

 

「キミがミミくんか…。キミとバディの悪魔ちゃんには指導はいらないって判断らしいから、後でマキマさんとこに来て欲しいって伝言です」

 

 男の方が僕の質問に答えた。関西のイントネーションを僅かに感じる話し方だ。

 

「じゃあ、出て行こうかな。アキくんお大事に」

 

 アキくんのことも心配だが、僕にマキマから用があるのも心配だ。サムライソード等との決着までに、デンジ達が特訓をしばらくするぐらいの猶予があるはずなのでその間の仕事があるのだろう。

 部屋から出るまで、知らない人間の登場でモンちゃんは空気になっていた。後で余分に買っておいたチョコをあげよう。

 

 マキマに会いに行く前に、他の入院してる人達のところにも行く時間はまだ残ってるよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「伝えられた通り、ミミ君とモンちゃんは特に指導の必要がないと判断しました。みんながいない間も悪魔駆除をやってもらいます」

 

 マキマの執務室へ来た僕達は挨拶もそこそこに淡々と話された。

 

「今回の襲撃で減ってしまった人材の補充もまだ目処が立っていないから、それなりの激務になると思われます」

 

 おそらく以前よりも悪魔の出現頻度は減るだろうが、それでも今動ける人材では対処するには少ないだろう。

 

「頑張ってね」

 

 公安辞めたくなってきたな。

 

 

 

 

 

 

「鯉の悪魔、参考書の悪魔、可処分時間の悪魔、落とし物の悪魔………今週やり合った連中はなんかパッとしないね」

 

 「もっと怪物っぽいのと戦いたいなぁ〜」とぼやくモンちゃん。彼女は公安に流れてくるであろう可能性の悪魔の情報以外に、駆除することになる悪魔の怪物っぷりを目当てにデビルハンターをしている節がある。

 僕らは今外回りとして昼時の街中を歩いていた。そろそろどこかの店へ入っても良い頃だろう。

 

「そういえば、高校生ぐらいから公安で働いてるはずなのによく大学入試の問題が解けたね」

 

「それはそれとして勉強してたんだよ」

 

「ふーん」

 

 ヒヤリとすることを訊かれたが適当に流しておく。この話が長引くと怖いな。

 

「お腹が空いてない?どこか適当な店に入ろうよ」

 

「じゃあ、あそこがいいな」

 

 そう言ってモンちゃんが指差した先には落ち着いた雰囲気の……カフェだろうか、なんとなく見覚えがある。

 カフェ前にありがちな黒板タイプの看板には「二道」と書かれていた。

 

 

 

 店は昼時なのに客がいなかった。いや、マスターと思われるちょび髭で髪を七三ぐらいで分けた男性か皿を洗っているようなので少し前に客が出たところなのだろう。

 少し期待していた部分はあったが『彼女』はまだここで潜伏をしていないようだ。よく考えたら面識を作ってしまうと面倒なことになるかもしれないので、むしろいなくて助かった。

 

「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」

 

 マスターが僕達が入店した音に反応して顔を上げた。モンちゃんの頭の角を一瞬見たが、追い出したりはしないでくれるようだ。

 今日は天気がいいので窓際に座らせてもらおう。モンちゃんにソファー席に座ってもらい、僕が反対の椅子の席に座る。

 

「さて、どうしようかな」

 

 メニューを見るとカフェにはあまり見られないような物も多い。

 ちょび髭のオシャレな感じのマスターがチャーハンを作る姿は少し見てみたい。ちゃんと本格チャーハンを作りそうだよね。

 しかし、僕は別の食べ物の気分だ。

 

「僕はカレーとアイスティーにしようかな。モンちゃんは?」

 

「食後のコーヒーと……ナポリタン」

 

「コーヒーは後で頼もっか」

 

 マスターに注文を聞いてもらう。

 

「すいません、カレーとナポリタン、それにアイスティー2つつけてください」

 

「かしこまりました」

 

 いい雰囲気のカフェだとは思うんだけど、なんで人が少ないんだろう。水を飲みながら僕はそう考えた。

 

 

 

 少しして、僕達は昼ごはんを開始した。僕の頼んだカレーは欧風カレーでトロトロの牛肉と具材が入っていた。その上スパイスも丁度良く効いていて美味しい。味付けは僕の好みでカレー自体のとろみも良い具合だ。カフェで食べられる美味しいカレーといった感じで満足だ。

 モンちゃんも美味しそうに具沢山のナポリタンを食べている。お気に召したようだ。

 

 

 

 ナポリタンを食べた後、口を拭き終わるとすぐにモンちゃんが片手を上げた。

 

「マスター、キミのおすすめのコーヒーを一杯お願い」

 

 モンちゃんの食後のコーヒーを頼んだ。先ほどの様子からしてここのコーヒーに興味があるようだ。

 

 

 

「お待たせしました」

 

 モンちゃんの前にカップに入ったコーヒーが置かれる。こちらまでコーヒーの良い香りが漂ってくる。

 モンちゃんが一口飲んだ。

 

「カフェのコーヒーというものに興味があったんだけど、良いねこれ」

 

 モンちゃんの期待通りかそれ以上のコーヒーだったようだ。

 その後モンちゃんは味わうようにコーヒーを飲み干した。

 

 

 

 

 

 

「悪魔の娘を連れていたのに、ありがとうございました」

 

「来る人がそもそも少ないですから。コーヒーに興味がありそうでしたし私としても大歓迎でしたよ」

 

 今は二道での会計だ。モンちゃんは先に外で待ってもらっている。話しを聞く限りだとカフェのオーナーとしてコーヒーを売りにしていきたいようだ。

 

「美味しかったです。また来たいです」

 

「ありがとうございます」

 

 そうやりとりをしているとオーナーの後ろの扉が慌ただしく開かれる。

 

「えぇ〜⁉︎もしかして帰っちゃうところですか?」

 

「遅刻して来なかったら間に合ってたよ」

 

 マスターの呆れたような指摘に店に入ってきた美少女が「そんな〜」と項垂れる。客が居ないと暇なんだろうね。

 項垂れていた美少女は黒に近い暗い紫の髪を首の後ろのあたりで結んでいる。人懐っこそうな目は緑色で白いシャツの上にエプロンをしている。真っ白な首には右側にリングのついた黒いチョーカーをしていた。

 まぁ、つまり彼女はレゼだ。

 

「今度は私がいる時に来てくださいね」

 

「アンタが早く来りゃ良い話でしょうが」

 

 マスターがすかさず突っ込みを入れている。いつからバイトをしているのかは知らないが、結構打ち解けているようだ。

 

「本当に美味しかったのでまた来ますよ」

 

「常連さん候補だ」

 

 美少女の微笑みがとても眩しい。

 なりたくなってきたな、常連。

 

 

 

 

 

 




やったれオラァ‼︎
これは本当にレゼなのか⁉︎上手くらしさを出せているか心配な作者です。解釈違いだなと後で感じたら普通に書き直すと思います。
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