キヴォトスに転生したけど銃撃戦とか嫌なのでコンビニでバイトする 作:Minus-4
前略、正座させられてもうた。敬具。
……はいはい、詳細省きすぎね。分かってる分かってる。
肩を組んでいた(つまりは密着していた)私と先生は、現在ユウカちゃんに平謝りしているのでした。
「いやごめんって、そんなに怒らなくてもいーじゃない。仲良い人同士ならあんくらいの距離感はふつーでしょーよ」
「それは同性の場合に限るんです! 異性同士であんな距離感……目撃したのが私だからよかったものの、他の人に見つかってたら今頃大惨事ですから!」
「うーむ、勉強になるね。なるほどなるほど、普段からあの調子だったけど、これからは控えた方がいーのかなー」
「なっ!? 先生、普段からこの人と、あんな距離感で──」
「"違う違う違うから! キョウカも揶揄うのはやめてね!?"」
ちぇっ。いーじゃん別にこのくらいさ。こちとら先の質問の答えを得られなくてちょっともやもやしてんだから。
……つーか、そもそもこの子──ユウカちゃん、
先生の仕事は既に終わっているらしいし、今日はシャーレに先生以外誰もいないことは確認済みである。先生への連絡だって二日前にしておいた。
私としては誠に遺憾だね。どのような理由であったにせよ、今の時間は私と先生の時間なんだが。
まあいっか。楽しめそうだし。
私と先生はソファに戻った。
「私ですか? 今日はシャーレの当番だったんですけど、午前中に突然『今日は仕事が早く終わったからオフで大丈夫!』って連絡が来て」
「……ほお? それで?」
「いや、先生のことだから、どうせそう言ってサボろうとしてるんだろうなーって……」
「"今日は本当に終わってたのに……"」
いや先生、お前何だ「今日は」って。
その言い方だとまるで以前にもその手口でサボったことがあるみたいになっちゃうぞ。
……あんの? えっ、マジ? うーん……これもユウカちゃん、何か勘違いしてるんじゃねーの?
私が見ている限り、先生はそんな無責任をしでかす人間じゃないと思うのよね。多分そう思うってだけなんだけど。
例えば……ほら、仮眠を取っていたタイミングで、ちょうどユウカちゃんに目撃された……みたいな。
「とにかく、そういうことなので。ただ先生が本当に仕事を終わらせているかどうか確認したかっただけなので」
「ふーん、本当に〜?」
「本当! です! さっきから隙あらばからかおうとしてくるのやめてくれませんか!?」
いやー、すんませんね。だってどう見ても
先生が鈍感で助かったね、本当に。
……いやこれ、別に向こうからしたら助かってはないわな。
ワカちゃん、どうしようね。この様子だと、早速ライバル確定っぽいけども。
何となく嫌な予感がしたので、モモトークのメッセージを確認する。今回は『怨』らしい。怖いって。
てかそうだ、先生への質問の途中だったんだった──けど、なんか、うん、もういーや。
私に密着されてろくにドギマギもしていない様子だったし、この人はまともな大人だろう。それが分かっただけでも、まーいいでしょう。
……ちなみにこの事実により、ワカちゃんの恋路がスーパーハードモードだってことも同時に確定してしまった。頑張れワカちゃん。
えっ、私に女性としての魅力がないだけなんじゃないかって? 黙れ殺すぞ。
「それじゃあ! 私はお邪魔みたいなので帰ります! お邪魔しました!」
「えっ、ちょっと待ちなよユウカちゃん。せっかく来たんだしさ、まあゆっくりしていきなさいって」
「さっきまであんなにいなくなって欲しそうだったのに!?」
「一期一会って言うじゃない。よく考えたら、私ってまだミレニアムの人とちゃんとお話したことなかったし?」
ほれほれ、とにかく座りなさいよ。何だかお疲れのご様子に見えるし、栄養満載の総合ビタミンゼリーをあげようね。
……私は念のため、隣を空けておいたんだけど、ユウカちゃんはさっさと先生の隣に腰掛けてしまった。
からんころん。棒付きキャンディのラムネ味を堪能する。いやあ、いいねえ、甘酸っぱくていかにも青春って感じ。
いやしかし、まだシャーレが始動してからそこまで時間も経ってないってのに、随分とまあ仲が良さそうだね。
もしかして、あれか。例の暴動を鎮めたのも、このユウカちゃんが一枚噛んでいるのか。あり得そうだよね。
「このゼリー美味しい……ふぅ、ごちそうさまでした」
「あれ、そんだけでいーの? お菓子やらジュースやらはまだまだあるし、好きなだけ飲み食いしてくれたって構わないのに」
「ダイエット中なんです。最近治安が悪化したのもあって、デスクワークばっかりで……」
「あー……書類関連はね、本当にめんどくさいからね……先生もその辺り、ユウカちゃんに共感できるんじゃない?」
「"確かにね。書類仕事ってなんでか、減らしても減らしても減らないから……"」
はあぁ。三人揃ってため息をつく。それが何だか示し合わせたみたいでおかしくて、全員吹き出してしまうところまで一緒だった。
はっはっは。いやあ、笑った笑った……笑いすぎてさっきまでに食べたお菓子が全部出てくるかと思った。流石にシャレにならん。
……っと、そうだそうだ忘れてた。私がシャーレに来たのは、別に遊び散らかしに来たわけじゃないんだった。
ちょうどよくユウカちゃんもいることだし、
「先生先生、これ見てちょーだいな」
「"これは……
「大正解! はい、ユウカちゃん。お近づきの印に、一枚どーぞ」
「あっ、ありがとうございます──えーっと? エンジェル24シャーレ居住区店限定、お会計総額から25%引きクーポン……えっ、これ、やりすぎじゃ?」
「ま、シャーレの先生にはお世話になってるからねえ。こーゆークーポンでも置いとけば、これ目当てで仕事の手伝いに来る生徒も増えるんじゃないかなーっと思って」
にひ。いたずらっぽく笑って見せる。ユウカちゃんは呆気に取られていた。
なあに、もちろん
うちのコンビニはとにかく客が来ないからねえ、年中経営難なのです。まだ一年も経営してねーけどさ。
そーゆーわけで、シャーレの当番としてやってくる生徒たちの何割かを、こちらに引っ張って来れないかな〜、みたいな。こすいことを考えてるのだ。
はい、これどーぞ。自費で印刷して来たクーポンの束ですよ。シャーレの部室に置いておくでもいいし、居住区のカフェテリアやゲームセンターに置いておくでもよし。
「"……キョウカ。もしかして今日遊びに来たのって、これを渡すため?"」
「いひひ、バレちった? まーそんな感じですよ。日中も深夜も暇に暇を重ねた暇ミルフィーユみたいになっちゃってるから、打破したいなーと思って」
「暇ミルフィーユ……? というか、これ、私も使っていいんですか?」
「そりゃーもちろん。ばしばし使って、どんどんうちの商品を好きになってもらえたらいいなって!」
そう言いながら、ユウカちゃんに向けてばちっとウィンクをかます。笑いを堪えられた。何だそりゃ。
ユウカちゃんは「全くしょうがないですねそこまで言うなら先生の手伝いをする前や後にでも寄ってってあげますよ」みたいな感じのことを言って、クーポンを丁寧にカバンへとしまい込んだ。
「あっ、ちなみにそのクーポン、連続して使ってると段々グレードアップする感じにしようと思ってるから、是非ともご贔屓に」
「……それって、何%オフくらいになるんですか?」
「最大
「それをもっと早く言ってよ! 毎日でも行きますから!!」
「"ちょっ!? ユウカ、落ち着いて……!"」
「これが落ち着いていられますか!? 何でもですよ、何でも半額なんですよ! どうしよう、お昼ご飯が安く済むなんて、半額だなんて……!」
あははは、やはりみんな「半額」という言葉の魔力には抗えないらしい。
これでもギリ黒字だからね。マジでギリギリだけども。いやあ、やっぱ仕入れ値と売値システムって悪魔的だよ。
ともかく、これで常連客(予定)一人ゲット。
うふふ。私って、案外商才あるのかも。
本来昨日でここまで投稿するつもりでしたが、忙しすぎて分割です。
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