キヴォトスに転生したけど銃撃戦とか嫌なのでコンビニでバイトする   作:Minus-4

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Shift.12 バ先の怖い先輩って仕事さえちゃんとやってれば案外仲良く接してくれることの方が多い

 

 

 どうも、ソラです。

 エンジェル24シャーレ居住区店というコンビニでアルバイトをしています。

 

 はい、今日はキョウカ先輩──キョウカちゃんがお休みなんです。とは言っても、早朝に来て少しだけ作業をしていたらしいですけど。

 

 キョウカちゃんは働き者で、ほとんど毎日バイトに来てます。私は大抵の場合隔日、つまりは一日おきのシフトなんですけど、毎日だなんて、そんなの考えられません。

 

 というか、考えたくないです。

 キョウカちゃんは普通にワンオペとかもこなしてますけど、どういう理屈でそんなことができるんでしょうか。

 

 ……本来の店長(オーナー)は、どうやらどこかへ飛んでいってしまったらしいので、キョウカちゃんこそが実質的なお店の責任者ということになってます。

 

 それも信じられません。コンビニの経営って、とんでもなくつらいと聞いていたので。キョウカちゃん、まだ17歳なのに。

 

 だから私は、キョウカちゃんにばかり負担を強いるのはなんだか嫌だなと、そう思いました。なので今日は、無理を言ってお休みしてもらっています。

 

 私だっていつまでも研修中じゃいられません。私一人でも仕事をこなせるんだ! そう証明して、キョウカちゃんには安心してもらいたいんです。

 

 ……と、そう意気込んだまでは、良かったんですけど。

 

 

「……何ですか? (わたくし)の顔に何か付いています?」

 

「いえ、いや、全然何も……」

 

 

 怖い先輩とシフトが被ってました!

 

 それも、とびっきり怖い先輩とです。狐坂ワカモさんと言って、とっても綺麗な人なんですけど、〈災厄の狐〉って呼ばれてるくらいに怖い人です。

 

 実は、私とワカモさんだけでシフトに入るのは初めてです。今までは大抵キョウカちゃんと二人きりか、三人全員でのシフトでした。

 

 本当のところを言ってしまうと、私はこの人のことがまだ怖いです。キョウカちゃんが隣にいてくれれば安心できるけど、二人きりは、流石にまだ……。

 

 ……そもそも、うちのお店がめちゃくちゃにされたのだって、元を辿ればワカモさんが原因です。何でかこうして一緒に働いて、ワカちゃんだなんて呼び方を強要されてますけどね。

 

 整った顔立ちには憧れます。近くから見るともっと綺麗です。百鬼夜行自治区には目の覚めるような美人さんが多いと聞いたことがありますけど、あれって本当なんですね。

 

 

「あの、そんなにまじまじと見られると、何か話したいことでもあるのかと思ってしまいますよ?」

 

「ぅあっ!? いっ、いえ! 何でもないので、そのままお仕事を続けていただいて構わないので……!」

 

「……分かりましたわ、ソラさん」

 

 

 私はレジ中の業務、ワカモさんは陳列や補充品出し。それぞれ分担して作業しています。

 

 ぱぱぱっ。ワカモさんの手際はものすごくいいので、品出しはあっという間に終わってしまいます。多分、キョウカちゃんよりも速いです。

 

 一方私は、まだまだ仕事も遅いです。キョウカちゃんに言わせれば、私も十分に速い──速過ぎるくらいらしいのですが、説得力がありません。

 

 コンビニを実質的にほとんど一人で回しているキョウカちゃんと、負けず劣らずのシゴデキであるワカモさん……に挟まれている私。あんまり役に立てている気がしません。

 

 はあ。私、コンビニのバイトは向いてなかったんですかね。キョウカちゃんはかわいいかわいいと言ってくれるけど、正直愛嬌がある方ではないですし。

 

 はっ。いけません、うじうじしていては。お客さんが来た時、こんな調子だと口コミで低評価を付けられてしまいます。

 

 というか、それ以前にワカモさんに怒られてしまいそうです。ほら、今だって業務が終わったワカモさんが、こちらの顔をまじまじと見ていますし。

 

 …………えーっと。

 いつまで見てるんでしょうか、私の顔を。

 

 

「あ、あの……! どうしましたか、その、私の顔にっ、何か付いてますか……!」

 

「いえ、特に何も。ただ、そうですね。せっかく新店舗なのですから、もっと明るく振る舞っても良いのではないかと、そう思っただけです」

 

「き、肝に銘じます……」

 

 

 普通に怒られました。

 やっぱり怖いです、この先輩。ついついキョウカちゃんに助けを求めてしまいそうになります。

 

 ……思い返してみましたが、キョウカちゃんも見た目は結構怖い部類でした。何というか、こう、ピアスとかしてて威圧的に見えます。

 

 美人さんと言われればそうなんですけど、どっちかと言うと()()()()っぽい感じな気がします。何でなんでしょうか。

 

 やっぱり身長が高くてすらっとしているからなんでしょうか。二人とも160cm越えなのに、一方の私は身長も低いから、余計に子供っぽく見えます。

 

 

「ソラさん、あなた大丈夫ですか?」

 

「ひゃわぁっ!? なっ、いきなり何ですか!?」

 

「いえ、いきなりというか、先ほどから呼びかけていましたけれど……」

 

 

 びっくりした、びっくりした!

 気付いたら目の前にワカモさんの顔があったので、驚きのあまり飛び跳ねてしまいました。

 

 ワカモさんは「ちょっと失礼しますね」と言いながら、私の隣に移動してきました。いきなりどうしたんでしょうか、やはりお説教されてしまうのでしょうか。

 

 私の方が、先にバイト始めたのに。

 それなのに、怒られちゃうのかな。

 

 

「うぅっ……」

 

「──えっ、あの、どうしたのですかソラさん!? そんな、何故、何故涙を!?」

 

 

 情けないことに、泣いてしまいました。

 どうにか涙を引っ込めようとしたのですが、しかしそうすればするほど、自分がどんどん惨めに思えてきてしまって、次から次へとこぼれ落ちます。

 

 恥ずかしくて、耳まで真っ赤になりました。全身がかっとなって、内側で何か大きなものが暴れているみたいな感覚もします。

 

 いけません。こんなところ、もしお客様に見られでもしたら、ただでさえ少ないお客様が更に減ってしまうかもしれません。

 

 こんなところでも、キョウカちゃんに迷惑をかけてしまうんでしょうか。戦車の砲弾から、命懸けで私を守ってくれたキョウカちゃんに、また、迷惑を。

 

 

「ああもうっ、これでは(わたくし)が泣かせたみたいではありませんか! 早くっ……泣き止みなさい!!

 

「もがっ!?」

 

 

 ──あまりにも突然衝撃がやってきたので、私は涙を拭うのを止めざるを得ませんでした。

 

 どうやら口に()()()()を突っ込まれたようです。甘さが広がりますが、同時に涙のしょっぱさも流れ込んできました。

 

 ……一口食べると、何だか落ち着きました。

 

 落ち着いて見てみると、眼前のワカモさんは、見たことのない表情(かお)をしています。「しょうがないなあ」みたいな、「困ったなあ」みたいな。

 

 ……たまにキョウカちゃんがする表情と、何だか似ている気がしました。

 

 

「ああ……ほら、せっかくの可愛らしいお顔が台無しですわ。少し失礼しますわね──」

 

「わぅっ……」

 

「まったくもう、突然泣き出されると、流石の(わたくし)でも驚いてしまいます。ソラさん、どうして泣いてしまったのですか?」

 

「それは、その……」

 

 

 ……言っていいんでしょうか、これ。

 いやでも、嘘をつくのは何だか違う気もしますし。

 

 それにワカモさんは、真剣に話を聞こうとしてくれているようです。それならこちらも、不誠実なことはできません。

 

 私は意を決して、話してみることにしました。

 

 

「……その、ワカモさん──ワカちゃんって、うちの店に戦車で砲撃したじゃないですか」

 

「ええ、まあ、間接的ではありますが、事実ですね」

 

「それで、えっと、ワカちゃんって〈災厄の狐〉って呼ばれるくらい怖い人じゃないですか」

 

「……怖い人というのは心外ですが、それもまた事実ですね」

 

「ここでバイトし始めたのも、私よりも後なのに、私以上に仕事が早いじゃないですか」

 

「……はい、ええ、事実です」

 

「だから……私よりも後に働き始めた怖い人に『仕事が遅い』って怒られちゃうのかなって思って、私、情けなくって──」

 

 

 直後、()()()()と、私の両頬はワカちゃんに押さえつけられました。

 

 えっ、何、何事? 正直に全部言っちゃったのが悪かったですか? やっぱり私は今から怒られるんですか?

 

 当然のことだと思いました。本音って人を傷つけることの方が多いです。私はぎゅっと目を瞑り、びくびくしながら叱責に備えました。

 

 

「ソラさん、あなたねえ……」

 

「──ッ!!」

 

「何で(わたくし)があなたのことを怒る必要があると思ったんですか?」

 

 

 ぴんっ。痛い!

 何が起きたのかと思いましたが、どうやらワカモさんが私のおでこにデコピンをしたようです。

 

 しなやかな、白魚のような指から繰り出されたとは思えない威力です。何だか鼻の奥がまたツンとしてきました。

 

 

「なっ、なんで──」

 

「なんでも何もありませんわ。ソラさん、あなた()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「……いえ、今のところは……」

 

「ならば(わたくし)が怒ることなど一つもないでしょう。あなたはただ真剣に仕事をしているだけなのに、どうしてそのような考えになってしまったのです?」

 

「すっ、すいません……!」

 

 

 ワカモさんは本当に不思議そうな表情です。

 まあ、そうなんですよね。さっきまでのは全部私の早とちりなんですよね。

 

 ……余計に顔が真っ赤になりました。茹で上がったタコとそっくりだと思います。

 

 それからワカモさんは私の両頬をもぬもぬと揉みながら、心底呆れたといった感じで話しかけてきました。

 

 

「というかソラさん、どうして謝るのですか?」

 

「えっ、いや、だって……」

 

「考えて見てください。(わたくし)はあなたに戦車で砲撃していて、あなたは(わたくし)に砲撃されているんです。どう考えても、謝るのは(わたくし)の方ですよね?」

 

「それを言ったらそうなんですけど……!」

 

「そういえば(わたくし)、まだあなたには謝っていませんでしたね。申し訳ありませんでした、謝罪致します」

 

 

 うわあっ! 頭下げないでください!

 慌ててこちらも頭を下げる。女子二人でお辞儀をしている、よく分からないお店が完成してしまいました。

 

 しばらくしてからワカモさんは、何かおかしく思ったのか「うふふ」と笑い、顔を上げました。それを見て私も頭を上げます。ワカモさんと目が合いました。

 

 ワカモさんはうっすら微笑んでいます。きっと私のことを気遣って、優しげな表情を作ってくれているのだと思います。

 

 

「とにかく。ソラさんが(わたくし)に遠慮することなど一つもないのです。困れば頼っていただいて構いません、バイト歴で言えば、あなたの方が先輩なのですから」

 

「……本当に、ありがとうございます、ワカモさん!」

 

「うふふふ、いけませんわソラさん、今の(わたくし)は〈災厄の狐〉ではないのですから、ちゃんと()()()()()と呼んでいただけませんと」

 

 

 困ったように笑いながら、そんなことを言うワカモさん──ワカちゃん。

 

 その表情はやはり、〈災厄の狐〉という単語から受け取るものとは、どうしてもかけ離れていて。私には、目の前の女性が、穏やかな大和撫子にしか見えなくなっていました。

 

 キョウカちゃん。私、ワカちゃんとも仲良くできそうです! そんな風に意気込んで、私とワカちゃんは、それぞれの業務に戻りました。

 

 これからは、私とワカちゃんの二人シフトでもやっていけそうですよ、ねえ、キョウカちゃん。

 

 






 バイト中は「ワカモ」じゃなく「ワカちゃん」って論理で何とか通させてください。

 遅れてごめんなさい、いつも読んでくれてありがとうございます! なんか最近評価とか感想とか貰いすぎてて逆に怖いです! 本当にありがとうございます感無量です! これからもよろしくお願いします!

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