キヴォトスに転生したけど銃撃戦とか嫌なのでコンビニでバイトする 作:Minus-4
「"──ということで、今からアビドスってとこまで出張に行くことにしたんだ"」
平日の昼下がり。いつものように店へとやってきた先生は、そんなことを笑顔で語った。
へー、アビドス! 流石の私でも知ってるよ、あれでしょあの砂漠。基本的になーんもないとこ。高校だけはあるらしいけど。
先生知ってる? あそこってすっごく評判のいいラーメン屋あるらしくてさ、いつか行ってみたいんだよねえ。
とか言ってたら、先生は「それじゃあ、今度一緒に行ってみる?」とか抜かしやがった。へいへい、そーゆーのはワカちゃんを誘ったげてね。
……ワカちゃん、ラーメンとか食べるんだろうか。
ものすごい偏見だけど、毎日とんでもなく雅な和食とか食べてそうだよね、あの子。
「てか聞いてよせんせー。私この前ひっさびさのオフだったから、ソラすけとワカちゃんの二人にこの店任せてたわけね?」
「"あー、この前二人でお店を回してたのはそういうことだったんだ"」
「そーゆーわけなのよ。でさ、そしたらあの二人、なんかすごい仲良くなってたのね!? なになに、何があったの!? 気になって仕事が手に付かないわけ!」
「"あはは! でも、キョウカのことだから今日の分の仕事はとっくに終わらせてるんでしょ?"」
「そりゃもちろん、プロなんでね。今日はあとはレジ閉めるくらいしかやることないよ。だからつまり、夜まで暇! 今日も今日とてワンオペだしねー」
「"シフトの組み方を見直した方がいいと思うよ……"」
黙らっしゃい。あんまお客さん来ないからさ、人件費とかできるだけ削りたいのよ。私一人でどーにかできる範囲なら処理したいしね。
からんころん。棒付きキャンディのコーラ味を口の中で舐め回す。そうしている間に、先生は色々と買い物かごに入れて持ってきた。
……えーっと?
横巻きのおにぎりでしょ、チョコスティックパンでしょ、コーヒーでしょ……おい、こいつまさか、ピクニックにでも行くつもりなのか?
「先生、出張っていつから行くんだっけ」
「"えっ? さっきも言った通り、
「アビドスがどんなところか、知ってる?」
「"行けば分かるかなーって!"」
「先生、私とあなたの仲だから、言葉を選ばず言わせてもらうんだけどね?」
「"う、うん……?"」
「出張ってつまり、先生の中では『
「"全然そんなことないよ!?"」
説得力ねーよ。
いやマジで、こんな装備で大丈夫だとでも思ってるのか? 干からびたミイラになりたいなら止めないけどさ。
はああ……本当にこの
先生、ちょっとこっち来い。ほら早く! これから出張に行くんだろ、困ってる生徒を助けに、手助けしに行くんだろ? しょうがないからこの私が、手助けの手助けをしてやる。
私は先生を無理やりバックルーム──つまりは事務所──まで引き摺り込んだ。力弱すぎだぞ、そんなんで襲われた時対処できるのか、先生。
まあいい、とりあえず座んなよ。整理したばかりなので清潔だ、安心して椅子に腰掛けていーからね。
「"き、キョウカ……?"」
「まず先生。第一に知っておいて欲しいことなんだけどね、アビドスって
「"そうなの!?"」
「出張先の様子くらい事前に調べとけよ! まあいい、とにかくアビドスってそんな調子なもんだからさ、とにかくクソ暑いのね?」
「"……それじゃあ、このコーヒーは──"」
「大失敗もいーとこだよ。さっきも言った通り、干からびて死にたいんだったらそのパンとコーヒー売ったげるけど、どうする?」
「"ちょーっと、やっぱ別の商品にしようかなー……"」
よろしい、英断だよ、先生。
いやマジで、先生に死なれたりしたら普通に悲しいからね。ソラすけも泣くと思うよ。あとワカちゃん暴走しそうだから、マジ気をつけてね。
はい、そんじゃーこのコーヒーとパンは没収。あー、後で戻しとくからその辺置いといていーよ。はい、ありがと。
ついでに飴あげるね。うん、餞別だよ。今生の別れになるだろうしね。うん、冗談。あはは! 先生、すごい顔!
「さて。そんじゃー本題に入ろっか。先生、アビドスは砂漠地帯だって言ったじゃん?」
「"うん、だからすごく暑いとも言ってたよね"」
「そーそー。だからつまりそーゆーわけで、向こうにはまともなお店なんてほとんどないのよ」
「"……あれ? でもさっき、美味しいラーメン屋ならあるって──"」
「それなんだけどね、
「"……つまりそれは、裏を返せば、
一概にそうとも言えないけど、まーそれもあるでしょうね。ま、だからこそあのお店(柴関ラーメンというらしい)はめちゃめちゃクチコミ評価が高いんだろうけど。
とにかく、私が何を言いたいかっつーと、
一応商店街があるにはあるけど、そこだってシャッター街。だからそもそも『最悪
だから、つまり先生。
こーゆーことを言いたいわけですよ。
「飲み物買ってくならうちでたんまり買ってくといーよ!」
「"……最初っから、
「そーゆーこと! はっはっは、どう? 私もなかなか商売上手っしょ」
「"本当にね!"」
そうでしょうそうでしょう。私はにんまりと笑いつつ、椅子から立ち上がって、冷蔵庫の中から1ℓのスポーツドリンクを12本持ってきた。ついでに私のリュックも回収する。
さて先生、それじゃーレジに戻ろっか。ほらほら、早く早く。こうしている間にも、先生の助けを待つ生徒たちが苦しみ喘いでいるよ。
再びレジ中へ。レジに番号を入れて責任者登録。よし、これでレジが使えるようになりました、と。
ぴっ、ぴっ……私はレジにスポドリを
「お会計、923円になりまーす」
「"あれ、キョウカ? もう6本、打ち忘れてる気がするんだけど"」
「いやそう思うじゃん? でもこれね、今キャンペーンやっててさ。スポドリ一本買うと、
「"それ、採算取れるの……?"」
取れる取れる。飲み物って結構稼げるのよ。不思議だよね。
あっ、てかクーポン使う? 使わないの? 変なの。まーいーや、そんならこのまま売っちゃうね。
先生がクレジットカードを取り出し、それをタッチして決済。いいねえ、大人のカードは凄いねえ。
決済が完了した後、続いてレシートが出てくる。うぃーーーーーーーーーーーーーーーん。長い長い、長いって。おもろ。
「そんじゃ、このまま続きも打っちゃうよ……これで6本。そんで、こっからレシートの下にあるクーポンも読み込んじゃえば──はい! これで6本
「"いやあ、無料っていい文化だよね……って、そういえばレジ袋買ってなかったや。売ってもらえる?"」
「あー、いーよいーよそんなの。ほら、私のリュック貸したげるからさ、これに入れて持ってったげて!」
私はおもむろにリュックを取り出し、そこへ丁寧にスポドリ12本をぶち込んだ。総重量12kg。まあ軽いっしょ。
はいどーぞ先生、これ持ってっていーからね。全然可愛くない機能性抜群のリュックだから、これなら生徒に見られても恥ずかしくないっしょ?
遠慮しないで、ほらほら、さっさと背負った! うん、いいね。似合ってるよ、先生。
「"うおっ、重……ふう。いやあ、何から何まで、本当にありがとね、キョウカ……"」
「いいってことよ。じゃー先生、お土産期待してるからね!」
「"はいはい、いいもの買ってくるよ。それじゃ、行ってきます!"」
「うーい、いってらっしゃーい」
別れの挨拶を交わし、先生はアビドスへと向かっていった。ウィーン。ほんと無駄に高性能だなこのドア。
……はあ、出張かあ。
しばらく暇になるなあ。
さっさと帰ってこなかったら承知しないぜ、先生。
なんか昨日一瞬だけランキングの13位とかにいました! あと評価人数100人ですよ! 感謝しかありません! みんなありがとうございます!! 感謝しかないです本当に!!