キヴォトスに転生したけど銃撃戦とか嫌なのでコンビニでバイトする 作:Minus-4
前略。暇。草々。
ねえマジでさ、マジでどうなってんのよ。先生が出張に行ってから今日まで、うちに来たお客さんの人数、冗談抜きで三人とかなんだけど。
一人はユウカちゃんね。そんでもう一人が正義実現委員会のでっけー子で、ラストが風紀委員会の眼鏡っ子ちゃん。
そんだけよ、マジでそんだけ。ユウカちゃん以外は一回しか来てないし、今後来るのかどうかも不明。
新聞の納品も終わってしまったし、米飯もチルドも冷食もお菓子も日用雑貨も雑誌も品出しし終わった。
値引きのシールも貼ったしホットスナックも仕入れたし飲み物の補充も終わったけど、その間お客さんは誰も来なかった。
「……これ、先生いなかったらウチ潰れるんじゃないの?」
思わずそんな言葉が口をついて出る。ぶるぶる、冗談じゃねーっつーの。先生が出張に行くたび、こんな恐怖を味わえというんですか。
ずぞぞ。暇すぎて淹れたインスタントコーヒーを口に含む。にっっが。機械壊れてんじゃないのか。
お茶請け(コーヒーなので『コーヒー請け』とでも呼ぼうか)の鈴カステラに手を伸ばし、ぱくり。苦味と相まって最強の甘みが脳を刺す。最高。
アフタヌーンティーはもう古い。時代はコーヒーブレイクだぜ。苦いのは苦手だけどね、あはは!
「ほれ、ワカちゃんも食べなさいな。どーせ減るもんでもないし」
「どう考えても鈴カステラは食べたら減るものだと思いますよ、キョウカさん」
「細かいことはいーから! ほら座った、ほら食え、ほんで私に構え!」
「……いつもより数倍は適当ですわね──まあ、いいでしょう。流石の
ひゃっほい、ワカちゃんってば話分かるじゃん。いやあ、やっぱり持つべきものはバイト仲間だよ。
しかし、話すっつっても私とワカちゃんの共通の話題ってそんなにないんだよね。せいぜいが先生とか、あとソラすけのこととかだけ。
まあいっか。これだけで10時間くらい潰せる自信あるしな。
「そいやさ、ソラすけと随分仲良くなったのね、ワカちゃん」
「ええ、まあ。なんだか怖がられていたのですけど、バイト中くらいは安心していただかないと、まるで
「外では不良中学生とか脅してたりするんじゃないの?」
「まあ、生意気でしたら」
中学生を脅す怖い先輩じゃねーかよ。
まあ別にバイト中大人しくしてくれてれば何でもいいんだけどさ。
えっ、私? 嫌だなあ、私はそんなことしないよ。突っかかられたらその限りではないけども。
「そういえばですね、キョウカさん、『先生』という単語で思い出したのですが」
「ん? うん」
「
「待って待って待って。ちょっと待って、今なんつった?」
「ブラックマーケットの銀行を襲撃したのですが」
マジで何してんの??
え、つーか、何で?
おい先生コラ、何しとんねんコラ。顔割れてないだろうな。もしそうなってたら一巻の終わりだぞ。
……ふう、一旦落ち着こう。からんころん、からん、ころん……棒付きキャンディを舐め回して何とか精神を統一。
「えっと……流石にあれだよね、ちゃんとそれなりの理由はあるんだよね?」
「もちろん。あのお方が理由もなしにそんな滅茶苦茶をしでかすはずないじゃないですか、
「反応しづらいボケはやめてね」
「とにかく。ちゃんと理由もお話ししますから、落ち着いてくださいな、キョウカさん。つまりは、
「へえ、なるほど。アビドス高校も気の毒だね、まさか自分たちが頑張って返済していたお金が横流しされてたなんて……」
「仕掛けた
まー何となく分かるじゃんか、その辺はさ。
つーか、そうかあ。そんなに大変なことになってんのね、アビドス高校とやらは。確か全校生徒は五人だったっけ。それって学校として成り立ってんのかな?
……しかし、そうなるとだ。ワカちゃんは陰に隠れていたらしいから、実質生徒五人+先生の合計六人で、ブラックマーケットの銀行に喧嘩を売ったってことになる。
ん? ああ、先生には一応『影からお手伝いさせていただきました』って連絡しといたんだ。じゃあそこ二人の連携は取れてたわけね。いやー、抜かりないねえ。
え、なになに、実は
「ねーワカちゃん、ちょいとお聞きしたいんだけど、その──アビドス高校の子たちはさ、
「ええ、
「それマジで言ってる? ブラックマーケットの銀行を無傷でってさ、
「ちゃんと準備をすれば、確かに制圧くらいはできるでしょうけど……あの方々は、特段の準備もなしにソレですからね」
うひゃー、信じられねー。いやいや、流石にそりゃあおかしいでしょう……アビドスで高校生やってるだけあるな。
えっ? なになに……ワカちゃんと私の二人がかりでも勝てなさそうなやつが一人いる?
いやいや、冗談でしょ。ゲヘナの
……マジなの? しかも
とか、そんなこと考えてたら。ぴろりん。ワカちゃんの携帯にモモトークの通知。珍しいね。
お相手は大方の予想の通りに先生。ワカちゃん、ストップストップ。外でしちゃいけない顔してるよ。
「なになに、なんて書いてあったの? あれか、デートのお誘いとか? なんつって」
「……まあ、捉え方によってはデートとして言いがかりを付けることももしかしたら可能なのかもしれません」
「そこまでしないとデートって言えないならそれは間違いなくデートではなくない?」
「黙りなさい。男性と女性が双方同意のもと、予定を立てて行動するのであればそれは
無理があるって。
つーかワカちゃん、その表情を見るに、絶対デートみたいな朗らかな行事のお誘いではないよね。
そうだな、どっちかっつーと、その表情は──〈
なるほどねえ。先生、結構大ごとに巻き込まれてるんだろーな。そんで、戦力として猫の手も借りたい──狐の手も借りたい、とそう言うべきか──状況に追い込まれてるってわけだ。
「……キョウカさん、しばらくの間、お暇をいただいてもよろしいでしょうか?」
「オッケー。どーせ客なんか来ないしさ、私一人でももーまんたいよ。てか、どーする? 有給使う?」
「いえ、結構ですわ。この程度のことに貴重な有給を消費したくありませんから」
「分かるわー。有給ってしょーもねー用事で使うとすごい損した気分になるんだよね──ま、いーや。気が変わったら15日までに言ってね」
うちは給料に関しては15日締めの25日払い(25日が土日であった場合は日付に関わらず直前の金曜日払い)である。なんで、有給申請はできれば15日までにしてほしいのよね。
ちなみにうちは『休むんだったら代わりの人探してね、見つけられなかったら出勤してね』みたいなことはやってない。あれシンプルにダルくてウザいだけだしな。法律違反らしいし。
つーか、今更なんだけどさ。何で
「……そんなに膨れられても、先生との逢瀬の時間は邪魔させませんからね」
「むう。つーか逢瀬て、ワカちゃんお前、もう恋人気分なのかよ……」
「別に良いではありませんか。勝手に恋人気分で楽しむくらいは」
「その辺の分別はちゃんと付いてるとこ、マジでメリハリ付けるの上手すぎて尊敬してるよ」
「それ、全然褒め言葉に聞こえないですからね?」
ワカちゃんにじとっと変な目で見られた。
何もさ、そんな目で見なくたっていーじゃん。私は暇なの、刺激が欲しいの!
あっ、てかさてかさ、ワカちゃんはこれから先生と何しに行くの? 銀行強盗の次はやっぱあれか、無法地帯であるブラックマーケットの実質的な支配とかかな?
「……そんなに気になるなら、一緒に行きますか? キョウカさんも助けに来たとなれば、先生もきっと喜びます」
「んー……でもそーなるとさ、ソラすけがワンオペじゃん? ちょっとまだ、それは可哀想かなーって……」
「キョウカさん、前々から思っていたのですが、あなたはソラさんに対して過保護すぎです。あの子はあなたがそこまでして守らなければいけないほど、弱い子ではありませんよ?」
何せ、あの〈災厄の狐〉と一緒に仕事ができるほどなのですから。ワカちゃんはそう言って、随分と楽しそうに笑った。
どうなんだろうか。あのワカちゃんがそこまで言うってことは、私も少しくらいは気を抜いてもいいんだろうか。
……多分、平気なんだろうな。
「ま、そりゃそうだ。ソラすけは私が思ってるよりも、だいぶ強い子なんだろう──で、だ。結局ワカちゃん、先生は一体何しよーとしてるのの?」
「カイザーコーポレーションと
「──……はあ!?」
「どうします? 一緒に来ます?」
「誰が行くかぁ!!」
いや別に、行ってもいいんだけどさ。
なんかカイザーって、後々になってから圧力とかかけてきそうで嫌だ。
このお店潰されても困るし、今回はパスで。そう伝えると、ワカちゃんはつまらなそうな、残念そうな顔をした。
いや、こっちから聞いといてマジでごめんね。
また今度、普通の遊びにでも誘ってよ。
……はあ。相手がカイザーでさえなければなあ……。
昨日「評価人数100人ですヤッター!」って騒いだらなんか今度は1日で150人になりました。もう何が何だか分かりません。本当にありがとうございます!!
ちなみに今回も例の如くバイトの休憩時間で書いたので短いです!! いっつもごめん!! 感想とか評価とか、お気に入り登録とかここすきとか、全部見てます! いっつも呼んでくれてありがとう!!