キヴォトスに転生したけど銃撃戦とか嫌なのでコンビニでバイトする 作:Minus-4
シャーレの先生が帰ってきてからさあ、今までの業務が霞むくらい忙しくなってんだけど!!
なんなん、マジでなんなん!? 生徒さんたち! シャーレはこっちじゃないですよ、このビルの上の方ですよ!!
ん? クーポン!? あっ、そうか。私がシャーレにクーポン置いたんだったな。はいはい、25%オフね──ちょっと待って。この長蛇の列、全員あのクーポンのせいで来てんの?
死ぬってマジで。マジで死ぬって。ごめんなさい調子乗ってクーポン刷りすぎました。許してください本当に。
な! ん! で! こういう日に限ってワンオペなんだよおおおお!!!!
からんころん──なんて、そんなふうに棒付きキャンディを舐め回す暇もない。客足が止まるのが先か、私の息の根が止まるのが先かのデスマッチである。
もう、もう、もう!! まだ仕事の半分も終わっちゃいないってのに、どーしてこいつらはこんなにものを買ってくんだよ! クーポンのせいか! じゃあ私のせいだ! あはは!!
ぴっぴっぴ。お会計3,050円になります、ありがとうございます、またお越しくださいませ。いらっしゃいませお預かりしますレジ袋はご利用ですかかしこまりましたクーポンのご利用ですねありがとうございますぴっぴっぴお会計1,782円になりますありがとうございますまたお越しくださいませいらっしゃいませ──
「あっ、あのっ! ちょっといいですか?」
「ん、いかがなさいましたかお客様。お手洗いでしたら入り口から見て左奥の──」
「いえ、そうじゃなくて……
「──……そうじゃん! 試しで応募かけてたの忘れてた!」
「ええ……?」
そうだそうだよそうだった。エンジェル24は基本的に人手不足(うちみたいな所は除く)なので、本部から『単発バイトを活用してね』とお達しが来ていたのだった。
そんで、私はこれを『どーせ人来ないっしょ!』とか抜かしながら、適当に募集をかけて。
そんで偶然応募があったので、当該の日付──つまり今日のこと──は私一人で回そうとしたんだった。結果死にかけてんだけどね。ウケる。
そこまで説明したら、目の前のめっちゃ可愛い
「まあいーや、とにかく今はご覧の通り、猫の手も借りたい状態だからさ! 裏に制服は用意してあるから、それ着たらレジお願いね!」
「あ、はい……本当に先生が言ってた『頼りになる人』ってこの人なのかな……」
聞こえてっからね。つーかさらっと言ったけど、あの子先生と知り合いなのか。
あれか、もしかすると、アビドスの方で知り合った子とか? あり得るねえ、十分にその可能性はある。
ぴぴぴっ。私は長蛇の列を捌いて捌いて捌きに捌いて──結果、お客様ラッシュのピークは過ぎてしまったのか、店内の客の数は8人くらいになった。
……まだ多いとはいえ、結局私一人でほとんどどうにかなっちまったな。さっきまで18人とかいたから。まあ別に何でもいーや。
と、そこで裏から単発バイトの子が登場。いいねえ、うちの制服が似合ってるよ。
「はい、それじゃあよろしくお願いします。実質店長の有働キョウカです」
「今日一日よろしくお願いします、アビドス高校の
「とりあえずレジ打ちはできるんだよね? そんなら、ひとまずはレジ中の仕事をしてもらおっかな」
「了解です!」
黒い猫耳がやたら可愛いセリカちゃんは、そう言ってレジに立った。直後に現れるお客さんの列。
……少し心配だが、とりあえず私はレジ外の仕事をするとしよう。まずはさっき届いてた米飯の品出しからである。
私は事務所からスキャナーを取ってきて、それを検品モードに設定。従業員番号をスキャンして使用を開始する。
……少し発注ミスったかな。こんなにお客さんがくるとは思ってなかったので、これを全部出したところで、棚が寂しいことになりそうだ。
まずはいつも通りにパンから並べよう。菓子パンから惣菜パンまでよりどりみどり。順調に品出しはスタートした。
っと、そうだそうだ、品出しばかりにかまけてもいられない。レジ打ち経験者とはいえ、セリカちゃん一人ではあの量のお客さんを捌き切るのは不可能だろう。
「あの、すいません、
「……えっ? ああ、品出しの手伝いしようとしてくれたの? 大丈夫大丈夫、お客さんがいるうちは、セリカちゃんはひとまずレジ打ちに専念してくれれば──」
「ああ、それならもう終わったので、それで、次は何をすればいいのかなあ、って思って……」
「……マジで?」
「マジです」
うそーん。いやごめんね、正直単発バイトの子がそこまでやれると思ってなかったのよ。
えーっと、それじゃあね、この品出しは私がやるから、セリカちゃんは裏からお菓子持ってきて、補充品出ししてくれる?
私がそう聞くと、セリカちゃんは元気よく「了解です!」と言って、裏からお菓子がたくさん入ったプラスチックのケースを持ってきた。
……いやしかし、あの人数をこの短時間で捌いたのか。私だってそりゃできるけど、まさか単発バイトの子がそんなことをできるとは夢にも思わなんだ。
さて。ひとまずパンの品出しは終わりっと。そんじゃあ次は、おにぎりやらお弁当やらの品出しに移ろうか。私は番重を持って米飯ケースの前まで移動した。
移動したら、セリカちゃんがまた声をかけてきた。なになに、今度は何よ。お菓子の場所が分からなかったとかだよね? そうだよね?
「いえ、お菓子の補充と、あとついでに日用品の補充も
「…………マジで??」
「マジですってば」
「えっと、それじゃあ……レジ外はいいや、さっきフライドチキンが売り切れちゃったから、それだけ揚げてもらえれば──」
「あっ、一応揚げておきました。お客さんいなくなっちゃったけど……あはは」
「あー、ごめんね、言ってなかったんだけど、お昼過ぎちゃうと揚げ物って意外と売れないのよ。だからフライドチキンだけ揚げてくれればよかったんだけど……でも、ありがとね、助かった!」
「え? はい、チキンが売れ筋ですよね? なので……」
「……ちょっと待って。ねえ、まさか、
そう聞いた瞬間、セリカちゃんはレジ中のフライヤーを指差した。
三秒後。
…………私は、それを聞いてから、立ち上がり、セリカちゃんの顔をまじまじと見る。
突然私が変な挙動をし始めたので、セリカちゃんは困惑しつつも微笑んでいる。そんな彼女の手を、私は突如として
「うわぁっ!? なっ、何ですか、急に……!」
「セリカちゃん、ちょっとお願いがあるんだけどね」
「おっ、お願い!? まあ、聞くだけなら別にいいんですけど……!」
「末長く私と共に働いてくれませんか?」
「ヘッドハンティング!? しかも言葉選び悪すぎない!?」
「頼む、本当に頼む! うちに来てくれたら
「いや、バイトが就けるポストって、バイトリーダーくらいしかないでしょ……」
そこを何とか! 何とかお願いします! セリカちゃんが来てくれればうちの店員が四人になって、私の負担が減らせるの!
ぎゃーぎゃー、ばたばた。ちくしょう、お願いだ、うちに来てくれ。
──なんて、そんなことを望んだのがいけなかったのだろうか。高望みしたから、バチが当たったのだろうか。
直後、お客さんが来店してきた。
そのお客さんは、側から見れば、
私には、そうは見えなかった。
入店した瞬間、その客と私の間だけ、
「あれっ、セリカちゃんじゃん! なーんだ、今日はここでバイトしてたんだ?」
──
「げっ、ホシノ先輩!? 何でこんなところに……!?」
「まーいいじゃん、細かいことはさ? そんなことよりも、そこの店員さん──」
その客と──ホシノと、私の視線が交わる。
橙と、空色の双眸は、まるで鷹のよう。
「うちの後輩に、何か用?」
だから、私はあの時。
まさしく、鷹に睨まれた。
あいも変わらずバイトの休憩中に書きました! 火曜と日曜は多分毎回こうなります!
なんか日刊ランキング11位にいました! あと総合評価5,000超えました! 全部評価や感想をくれたり、お気に入り登録してくれた皆様のおかげです! 僕の語彙では言い表せないくらい感謝してます! 本当にありがとうございます!!