キヴォトスに転生したけど銃撃戦とか嫌なのでコンビニでバイトする   作:Minus-4

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Shift.19 確かに見た目は怖いかもしれないけど接客とかはちゃんとしてるからそんな怖がんないでよ

 

 

「いらっしゃいませー……あっ」

 

「…………えっ、と──はあ……

 

 

 前略。以前揉めに揉めた子が来客。草々。

 

 うあー……どうすっかなこれ、気まずいぞ。過去一で気まずい。ソラすけがいたら接客任せて私は事務所に籠るのに。

 

 でも今日はワンオペ。向こうさんもどうするべきか分かってないご様子。ったく、しょーがねー、いっちょアイスブレイクと洒落込むか。

 

 

「いっ、いらっしゃい! あー、最近調子どう? 私はぼちぼちってとこかな、あは、あはは……」

 

「……おかげさまで。先生にも少し手助けしてもらって、ようやく立て直せたって感じ」

 

「そっか! そりゃあよかった、その……ほら、前は酷いことしちゃったからさ!」

 

「無理に取り繕わなくていいから。私も──まだちょっと、整理は付いてないし」

 

 

 あ、さいですか。

 そんじゃあ普段通りに行かせてもらうぜ。

 

 いやしかし、こんなところで再会するとは夢にも思わなんだ。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「そんで? 鬼方カヨコ──ここに何しに来た」

 

「何って、先生の手伝いがてら、普通に買い物しに来ただけ。あんたがいるって知ってたら、この店にも入らなかったよ──〈亡霊〉

 

「はっ、そりゃそうだ、三ヶ月前の私を知ってるやつが私と会いたいわけもないだろーぜ……自分で言ってて悲しくなってきた」

 

「……というか、あんたこそなんでこんなところにいる? 答えによっては、買い物しないでさっさと──」

 

「ああ待って待って待って! いや違う、カヨコっちが考えてるようなことはしないから、断じて!」

 

「カヨコっち……?」

 

 

 よーし制止成功。いや危ねえ危ねえ、貴重なお客さんを逃すところだった。いやまあ、さっきまで引くほどお客様いたけどさ。

 

 ほらこっち来なさい。別に取って喰おうってわけじゃねーからさ。つーか、そうするつもりなら()()()()()()()()

 

 信用できないだろうけどさ。ちょっと駄弁ろうや、な?

 

 

「……言っとくけど、今日ここにいるのは私だけだから。それから、アル達の居場所を吐いたりも──」

 

「聞かない聞かない。向こうさんだって私なんかに会いたくないでしょうよ。特にハルカちゃん……だっけ? あの子とかはさ」

 

「いや、それは寧ろ逆。アルがあんたにしてやられた分、68倍返しにしてやるって息巻いてるよ」

 

「……うひゃー、おっかねーのなあの子。いやまあ、身をもって知ってるけど」

 

「当然私も忘れてないから。あんたが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そりゃそうだ、私だって忘れてない──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ……いやまあ、恨んではないけどね? あれはお互い様ってことでなあなあにしとこうや。ねっ?

 

 そっちは断るに断れない仕事。こっちはのっぴきならない私情。だろ? なんなら譲歩してギリ私が悪いってことにしてやってもいいからさ。

 

 それでいいね? はいこの話終わり──っと、最後に一つだけ言わせてもらうがね。

 

 

「ハルカちゃんの土手っ腹にショットガン撃ちまくったのだけは、流石にやりすぎたと思ってる。ごめんなさい」

 

「……私たちも、仕事とはいえ、困窮していたとはいえ──家を爆破されたばっかのあんたに、攻撃して悪かったと思ってる。便利屋を代表して謝るよ。この前は、すみませんでした」

 

「……はいっ! 辛気臭いのやめよっか! せっかくの買い物だ、楽しくやらなきゃ損ってもんでしょ?」

 

 

 ぱんぱん。手を叩いて雰囲気を切り替える。カヨコっちは少し驚いた後、ふっと笑ってから、表情を直した。

 

 はいこれ、お詫びの品ね。当店限定の80%オフクーポン。えっ? うん、全額から8割引きだよ。

 

 あとこれね、便利屋の皆さんにもどうぞ、お詫びの菓子折りです。毒とかは入ってないから安心してお召し上がりください。

 

 

「ちょっと待って。ねえ、これどこでいつ買ったの」

 

「昨日D.U.の百貨店で買ってきたんだよね。ちょっと思うところあって……つーか、便利屋の皆さんに謝りたくなって」

 

「なんというか……タイミングいいんだね、あんた」

 

「あんたじゃなくてさ、キョウカって呼んでちょーだいな。つーかもう良くない? お互い関わらないって話は立ち消えで」

 

「ダメ。私の一存で決められることでもないし、まして取り消せることでもない──一度話を持ち帰って、便利屋全員で話し合ってからじゃないと」

 

「……それさあ、ハルカちゃんを説得できなくない?」

 

「アル次第だよ、そんなの。この菓子折りだって、正直なところ受け取ろうか迷ってるくらいだし」

 

 

 まあ、そりゃそうだよなあ。今こうして面と向かって話せること自体が奇跡みたいなものなんだから。

 

 本当恨むぜ、怒りに任せて暴れに暴れた三ヶ月前の私。

 なんつってももう遅いけどな。自分の行動には責任を持たないとね。

 

 

「まあいーや。それは渡すも渡さぬもカヨコっちに委ねるよ。私が信用できないなら──ま、食わないで捨てちまいな」

 

「……食べ物を捨てるの、ちょっと心理的なハードルが高いんだけど」

 

「んじゃー私に送り返してくれればいーよ。基本毎日このコンビニにいるし、顔も合わせたくないなら昼の間に私の家に置いといてくれれば」

 

「それじゃあ、最悪の場合はそうさせてもらうから。それでいい?」

 

「もちろん。今更信用してもらえるとも思っちゃいないからねこちとら。悲しいけどさ」

 

 

 先生に間を取り持ってもらうっつー案もあるにはあるんだけど、それにしたって先生の負担を無駄に増やすだけだし。

 

 ただでさえ当店をご贔屓にしてくださっているのに、これ以上の迷惑をかけちゃうのは、私の望むところではない。

 

 私はその辺り弁えているつもりだ。

 

 

「そんで、何買ってく? 私のイチオシはついさっき入荷したばっかの米飯とお菓子だけど」

 

「お昼ご飯はもう食べちゃったし、今から帰るとこだから、飲み物とお菓子だけ買ってくよ。どれくらい浪費してほしい?」

 

「別に迷惑料なんざ求めてないからさ、好きなものを好きなだけ買ってってよ。そのための8割引きクーポンだし」

 

「……ちなみにこれ、先生の机に置いてあったクーポンと併用はできるの? まあ、流石にできないだろうけど──」

 

「今回限り可としましょうかね。仲直りの印だと思って使っておくんなまし。ひゃっほう、実質9割引きだぜ。よかったねカヨコっち」

 

「この店いつか潰れるんじゃないの……?」

 

 

 流石に毎回9割引きにしてるわけじゃないから平気だって。ご心配には及びませんとも。

 

 ほれほれ、行ってきなさい。買い物カゴいっぱいに商品詰めてきな。甘いもんばっか食うなよ!

 

 ……いやしかし、自分でも驚くほど()()だ。三ヶ月前の怒りは、ほとんど立ち消えちまったんだろうね。よきかな、よきかな。

 

 これが鬼怒川カスミとか下倉メグならこうは行かなかっただろうな──いや、どうなんだろう? 今なら案外、普通に割り切れるのかもしれないな。

 

 からんころん。私は乾いた口の中に棒付きキャンディをぶち込んだ。うーん、いい酸味だ、目が覚める。

 

 とか、そんな風に安っぽい味を堪能していたタイミングで、カヨコっちが買い物カゴいっぱいに水とかカップ麺を入れて帰ってきた。

 

 

「……えっと、カヨコっち? つかぬことをお伺いするんですけど、今どこにお住まいで?」

 

「……言うと思う? 言ったら私たちの居所が──」

 

「いやそーゆーのじゃなくてさ、マジで聞いてんだぜ、私は。つまりあんたら便利屋68は、()()()()()()()()()()()()()、と。そう聞いてるわけだ」

 

「──別に、()()()()()()()()()

 

 

 目を伏せながら放たれたその一言を聞いた瞬間、私はレジカウンターを飛び越え、カヨコっちに肉薄した。

 

 すぐさま拳銃に手をかけようとするカヨコっち。そりゃそうだ、誰だって()()()()()と思うだろうよ。

 

 でも違うんだな、これが。

 私はカヨコっちの持っている買い物カゴを強奪し、すぐさまレジに商品を通しまくった。

 

 ぴっぴっぴ! 凄まじい速さで加算されていく会計料金。カヨコっちが呆気に取られている隙に、私はレジ外から客層ボタンを連打!

 

 お会計──5,600円也! 私はすぐさま現金を投入して液晶のOKボタンを連打!

 

 

「なっ、ちょっと、何して──!」

 

「何って、見りゃ分かるでしょうよ、()()()()()()()()。クーポンは次の機会に取っときな」

 

「それは分かってる! 私が言いたいのはそういうことじゃなくて、()()()()()()()()()ってことを」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 そう言うと同時に、今度こそ固まるカヨコっち。そして完了するお会計。

 

 いいか、カヨコっち、良く聞いとけよ。

 私は、ほんの少しでも知り合った可愛い子が、無駄に苦境に立たされるのが嫌いなんだよ。

 

 

「これを買うつもりだった分の金は貯めとけ。そんで、さっさと屋根のあるところで暮らしなさいな。オッケー?」

 

「……どうして、あんたはそこまで──」

 

「あんたじゃなくてキョウカって呼んでよ。ま、そーだな……あれだ。私は私という人間が誤解されたままなのが我慢ならんのよ」

 

「──は、はは。なに、それ……自己中にも程があるよ、キョウカ」

 

「おっ。早速私のことが誤解なく伝わってるようで何より。いーか、覚えとけよカヨコっち。私はこれで、意外と常識あるんだぜ」

 

 

 しゃららん。髪をかき上げてキザっぽくそう言ってみる。カヨコっちは「どの口が」と言って、ほんの少しだけ口角を上げた。

 

 ……今になって、少し恥ずかしくなってきた。いくらなんでも格好つけすぎじゃんね、私。

 

 あうう。耳が紅くなっているのを感じる。あっつい、暑すぎる。冷房が効いてないのかもと思ったけど、確認したら25℃だった。クソが。

 

 

「……意外と顔に出るんだね、〈亡霊〉さん。あの時とは全然違って」

 

「やめろやめろほじくり返すな! あの時の私は黒歴史なんだからな!」

 

「ふふ、あっそう。これはいいね、こんなところで弱点を見つけられるだなんて、望外だった」

 

「……それも。誤解なく伝わってるようで、何よりだよ」

 

 

 レジカウンターに突っ伏しながら、紅潮した顔面のまま、私がそう言って。

 

 それを聞いたカヨコっちが「じゃあ、もうそろそろ行くから。今度また会ったら──なんでもない」と言いながら、(きびす)を返し。

 

 そしてコンビニの出口まで歩みを進めて、無駄に高性能な自動ドアがウィーンと音を立てながら開き切り。

 

 そこで、カヨコっちは一度振り返って。

 私に向かって、こう言った。

 

 

「ありがとう、キョウカ。この恩は、必ず返す」

 

 

 それから数秒後、コンビニを後にしたカヨコっちの姿は、完全に見えなくなり。

 

 そして、私とカヨコっちの邂逅は、終わった。

 

 

 

 

 

 ──ちなみに、後日談。

 

 私がワカちゃんとシフトを交代し、久しぶりに廃墟同然な家に帰ると、ぼろぼろがたがたのベッドの上に、一枚の紙と、それから写真が置かれていた。

 

 一体なんだろう、何者から送られてきたのだろう──私は色々な可能性に考えを巡らせながら、その紙を手に取り。

 

 そして、ぺらりとめくった。

 すると、そこには──

 

 

「……は、はは。そっか、うん、そりゃあ……よかった」

 

 

 ──『便利屋68特別優待券』。そう書かれた紙切れ一枚。

 そして、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 特別優待券の有効期限、()()()

 効果、()()()()()()()()()()()()()()

 

 私はそれを、財布の中に大事にしまい込んだ。

 

 






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 投票してくださった方々、感想を送ってくださる皆様方、ここすきしていただいた諸兄の方々、お気に入り登録してくださった人達、そして読者の皆々様には感謝してもし切れません! 何度目かわかりませんが、本当にありがとうございます!!

 あと最近気づいたんですけど、なんか月間ランキングも21位とかだったらしいです! もうよくわかりません!

 あとあと、Xの方でなんかAI動画的なのでキョウカちゃんを作ってくれてる人がいました! 最近のAIって凄いっすね!

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