キヴォトスに転生したけど銃撃戦とか嫌なのでコンビニでバイトする 作:Minus-4
説明しよう! コンビニのレジ横で販売している、いわゆる『くじ』と呼ばれる商品は、実は
……小難しすぎて自分でも何言ってるのか分かんねーや。んっとね、つまりは
コンビニくじっていうのは大体65〜80枚前後で構成される。その中でもいわゆる『上位賞』と呼ばれるグッズは、大体の場合多くても10枚前後。
ぶっちゃけちゃうと、店側としてはこの10枚を開始早々引かれることは
そこまでくじが
問題は
ものによっては、場合によっては、
──さて。どうして私がいきなりこんなことを説明し始めたと思う?
シンキングタイムスタート。
はい終了! 考えるまでもねーからな、そんなこと。シンキングタイムは0秒です。
「……どーなるかな、こいつは」
『モモフレンズ』シリーズのくじが本日届きました!
うん。届いたよ、届いちまったのよ。
ちなみにこれ、
からんころん──棒付きキャンディ(サクランボ味)を舐め回しながら、私は視界をレジ中の景品保管用の番重に動かす。
「思えばお前とも長い付き合いだよなあ、とり野郎」
視線の先にはアホ面晒してるバカでけーペロロのぬいぐるみ。全長50cmっつったか? デカすぎなんだよメーカーは自重しろバカ。
こいつ洗い物とかするときめっちゃ邪魔なんだよね。幅取りすぎて動かそうにも動かせないし、本当ならさっさと誰かに持ってかれてほしい。
んでもってさ、こいつのくじめっっちゃ高いのよ。普通高くても800円とかなんだけど、なんかこいつのくじ1,080円すんのね。
いやもうね、バカかと。アホかと。高いからただでさえ売れないのに、上位の賞は全部売り切れた。
……子供たちが掻っ攫ってったよ。なけなしのお小遣い握りしめてやってきた子供たちがさ。A賞あてて飛び跳ねながら喜んでたなあ。微笑ましかった。
「……うふふ。可愛かったなあ、あの子ら。『おねーちゃんありがとう!』って。思い返しても心がほっこりする」
私個人としては、まあそんなもんで嬉しいんだけどね。しかしこの店を(実質的に)管理している身としては、そんな甘ったれたことも言ってられない。
先生のおかげでシャーレに来る生徒たちも増えたから、しょーもねーラバーストラップとか、無駄にデカいだけのポスターとか、どーにか捌けるかと思ったんだけどなあ。見通しが甘かったか。
というのもこいつら──モモフレンズ、ちょうどメジャーとマイナーの中間に位置しているらしいのだ。
ほらあれだ。
言っとくけどだいぶ言葉選んでるぞ。だいぶ言葉選んでるからな。いやまあ、私がこいつの顔を苦手ってだけなんだが。
「……顔さえどーにかしてくれれば……どいつもこいつも、クセが強くてちょっと怖いんだよな」
なんて言えばいいんだろう。
目の焦点が定まってないとこが怖いんだと思う。昔っからそーゆーのは苦手なんだよな、私。
多分だけど、夜道にこいつとばったり
……こんなこと、ファンの前で言ったらボコボコにされるんだろうなあ。このことは心の内側に永久封印しておこう。
「……よしっ、と。とりま二つ目のモモフレくじも設営完了。えーっと、なになに、今回のラストワンは──」
「『
「うっぉわああぁぁぁ!!??」
「あっ、えっと、あはは……すみません、急に後ろから話しかけちゃって。驚かせちゃいましたよね」
いっ、痛い……! 心臓が、心臓が弾け飛ぶかと思った……!
いいかお前、よく聞いとけよお前、私は急に後ろから声をかけられると本当に、本当に心臓が縮み上がるんだからな!?
私はばくばくと脈打つ小さな心臓をなんとか鎮めてから、話しかけてきた客の顔を見る。
……えっ、
「うん、まあ、びっくりはしたけど──ともかく、いらっしゃいませ。
「あ、はい! そうです! えっと……ちなみに、どうしてトリニティに通っていると分かったのでしょう……?」
「んー……なんとなく? ミレニアム感はないし、百鬼夜行連合学院や山海経にしては服が独自のものでもない。レッドウィンター連邦学園の子ならもっと厚着だろうしさ」
あえてゲヘナは省いて話す。
この子が嫌ゲヘナ的思想を持っていた場合、傷つくのは私のほうだからな。
はあ。いやほんと、どーして仲良くできないのかね。からんころん。胸に生じたもやもやを解消するために棒付きキャンディを舐める。
ふう、落ち着く落ち着く。あたしゃこれがないとやってられないよ、なんつって。いやマジなんだけどさ、あはは!
「んで? お嬢ちゃん、一体何をお買い求めで? ちょーど今モモフレのくじを陳列し終わったとこだし、お困りなら手助けも可能だよ」
「ご親切にありがとうございます……! でも大丈夫です、店員さん。お目当てなのはその
「……あら、そうなの。そりゃあいい、お嬢ちゃんが一番乗りだよ」
そう伝えると「ですよね!」と返したお嬢ちゃん。
ふむ。となると初めからこのくじに目を付けて、わざわざトリニティからここまでやってきたということなのか。
いや、つーかあれだろ、この子。
「今日はあれかな、先生のお手伝い?」
「はい、以前お世話になったので、そのお返しというか、恩返しというか……あはは、先生はそう言うと謙遜しますけどね」
「そんじゃ、今後も先生のことをよろしく頼むよ、お嬢ちゃん。ちなみに私は有働キョウカ。先生ともどもよろしくね──ところで、もしよろしければ、お名前伺っても?」
「あ、そうですね!
「ふぅん、ヒフミちゃん、ヒフミっち、フミフミ……ヒフミんってのはどうよ」
「……別に私、将棋は嗜まないので……」
こっちでも通じるのかよ。
じゃない、するってーと、ヒフミちゃんをどうやって呼べばいいものか分からなくなっちまったな。
うーん、うーん……私は小首をこてこてと傾げまくりながら、あれこれあだ名を考えてみる──ダメだ、全然思いつかねーや。
「まあとりあえずミーちゃんでいっか」
「猫ですか!? 私のこと猫ちゃんだと思ってるんですか!?」
「んー……でもそれ以外に思いつかないのよな。逆にミーちゃんはどう呼んでほしいとかある?」
「別に、普通に呼んでいただければそれで──」
「んじゃファウストっつーのはどう?」
「なんで知ってるんですかぁ!?!?」
「なーんて、冗談、冗談…………えっ? マジ?」
「あっ、えっ、と…………あれはその、山よりも深く、海よりも高い理由が──」
テンパリすぎて逆になっちまってるぜ、ヒフミちゃん。
てか、え? いやマジで? 確かにワカちゃんからもらった資料の人物──覆面水着団のファウスト──と服装が似てるな〜とは思ったけど、本物!?
ということは、あれか。
目の前の子、危険人物なのか?
「……その。うちは強盗とか、そーゆーのはお断りでして……」
「違います違うんです違うんですったら! あれは、その、あうぅ……!」
「うそうそ、じょーだんだから安心してよ、ヒフミちゃん。
しゃららん。髪をかき上げながらそう言ってみる。するとヒフミちゃんは露骨に息を吐き、肩の力を抜いた。
うんうん、それでよろしい。焦らせた張本人が言うことではないかもしれないけれど、それでよろしい。
閑話休題。
一息ついたヒフミちゃん(いじったお詫びに飲み物を一本奢らせてもらった)は、ふんすと鼻息を荒げながら話しかけてきた。
「──というわけでですね。私はペロロ様、ひいてはモモフレンズシリーズの大ファンですので、くじを引きにきたというわけです」
「ふぅん……なるほどなるほど。こちらとしては助かるね、マジで基本誰も買ってかないからさ」
「ちなみに、キョウカさんはモモフレンズに興味はないですか? もしあるようでしたら──」
「申し訳ねーけど、私には刺さらなかったなあ。なんつーか、ほら……これ言っていいのか分からないけど、このペロロ……様? 顔が怖くてさ」
ヒフミの顔を伺いながらそんなことを言ってみる──と、彼女は「うーん、そういう人もやはり多いですからね……」と言いながら落胆していた。
ごめんなあ、ヒフミちゃん。本当なら話を合わせて色々駄弁りたいんだけど、なんか本当に怖いんだよね、この鳥。
「おほん……ともかく、です。私はこのモモフレくじを引くためにこのお店に来たので、引いて行きたいと思います」
「いやあ、本当に助かるよヒフミちゃん。さて、と……引くのはモモフレくじ2の方でいい? まだ結構枚数あるけど」
「80枚でしたよね。大丈夫です」
「ああ、うんそう、80枚……ん?」
えっと、今なんか変だったな。
私は「まだ枚数あるけど何枚引く?」ってつもりで聞いたんだが。
今のヒフミちゃんの言い分だと、まるで「80枚全部引く」みたいに捉えられてもおかしくないが。
「って、初代モモフレくじもあるんですね! こっちは残り何枚ですか?」
「えっ? あ、ああ……こっちは残り、35枚だよ。上位の賞が根こそぎ持ってかれちゃって」
「じゃあ
「うん、そうね、合計115枚…………んん??」
待って待って待って。
え、いやそれマジで言ってる?
仮にさ、仮にだよ。115枚全部まとめて買ってくんだとしたら、お会計金額は合計124,200円だぞ?
いち生徒がそんなポンポンと出せていい金額なのか? いや、違うだろ。
……その辺り、トリニティということなのだろうか。いやはや、凄まじく羨ましいぜ……。
「えっ、と……お会計、124,200円だけど、大丈夫……?」
「え? ああ、はい! このために貯金をおろしてきたので、大丈夫です!」
「あ、そう……いや、すっげーな、マジで」
「あっ、いちおうくじの券ももらっていいですか? ダブルチャンスキャンペーンっていうのがあって、そっちでもグッズが手に入るかもしれないので!」
「あ、うん……えっと、一応聞いてみるんだけど、くじのポップとか店内ポスター、このままだと廃棄になるんだけど、欲しかったら」
「本当ですか! ありがとうございます、持って帰って部屋に飾りますね!!」
「そりゃあ、よかった……」
数分後、私から景品を渡されたヒフミちゃんは、小景品をペロロリュックに詰め込み、その他上位賞を持ってきた袋に入れ。
そして、ラストワン賞である「
にこにこほくほくの笑顔で、スキップしながら鼻歌を口ずさみ、エンジェル24を後にしていった。
……最初っから最後まで、恐ろしく可愛かった。
またくじを入荷したら、そんときはよろしくね。
20話です! 長続きしてますね!
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