キヴォトスに転生したけど銃撃戦とか嫌なのでコンビニでバイトする   作:Minus-4

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Shift.21 コンビニは情報屋じゃないんだから情報なんか売ってるわけないだろ

 

 

 前略。先生がまた出張に行くらしい。場所は百鬼夜行連合学院。ワカちゃんの古巣だね、今日あの子がいなくて良かった。敬具。

 

 

「"というわけで、もし百鬼夜行について知ってることがあったら教えて欲しいなって思って!"」

 

「……別になんでもいいんだけどさ。ちなみに、ワカちゃんには何か聞いてたりしないの?」

 

「"一応聞いてみたんだけど、『古臭い因習村』って言ってたよ。あんまりいい思い出がないのかも……悪いことしたなあ"」

 

「んー、まあ言えてんね、それ。実際どう思ってるのかは別として、つまりは照れ隠しの線はないとして──まあ、()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 つまりつまればつまるところ、百鬼夜行に()()()()()()()()。私が知ってる限り、だけどね。

 

 アビドスみたいにクソ暑いってこともなければ、レッドウィンターみたいにアホほど寒いってこともない。環境が原因で死ぬことはないっつーことね。

 

 ……つーか、こいつ、それくらい自分で調べろよ。前になんも調べないで動いた結果、危うく死にかけたの忘れてないか?

 

 からんころん。さくらんぼ味の棒付きキャンディは、いつもと変わらず甘酸っぱい。

 

 

「"いやあ、自分で調べるより、キョウカの情報の方が頼りになるからさ。この前はありがとう、キョウカ。私は()()()だから、頼らせてほしいんだ!"」

 

「先生、お前それ、私以外に言うなよ……? どうなるか分かんねーぞ」

 

「"えっ? うん、キョウカ以外にこんなこと言えないよ。長い付き合いだし、ほとんど毎日顔も合わせてるし、それに──"」

 

「あーはいはい分かった分かった分かったから! 先生が私をこの上なく信頼してくれてるっつーのは十分伝わったんで、いっぺん黙ってな!!」

 

「"むぐっ……"」

 

 

 照れ隠し混じりに先生の口を封じてやった。右手でな。

 お前ほんとマジで、ワカちゃんとかがいる時に()()やるなよ。死ぬのは私なんだからな。

 

 つーか、そういうのはワカちゃんにやってくれ。私は褒められると照れちまって耳が熱くなるんだわ。

 

 誰得なんだよ、男に褒められて照れちまってる元男とか。

 

 ……ぶぶぶぶぶ。ポケットに入れてるスマホから馬鹿みたいに通知のバイブレーションが。見るのが怖い。多分ワカちゃんからだろこれ。

 

 

「まあとにかく! 百鬼夜行に行くんだったら、特別な準備は必要ないよ。前みたいに大量の水を持ってくなんてこともいらない」

 

「"そうなんだ! 過ごしやすい気候だったら嬉しいなあ"」

 

「ま、私らみてーな連中には過ごしやすいと思うよ? 今の季節なら桜も咲いてるだろうし、ぽかぽか陽気ではるうらら、って感じでしょ」

 

「"へえ、桜! ということはあれだね、お花見ができる!"」

 

「あー、そうじゃんね! 多分時期的には今が満開の頃合いだろうし、ダメ元でワカちゃんとか誘ってみたら?」

 

 

 私がそう提案すると、先生は「そうしてみようかなあ」と言いながら、タブレット端末を取り出した。

 

 メッセージを送信した瞬間に既読が付いたらしく、爆速で「お供させていただきます」との連絡が来たらしい。

 

 それから数秒後。私のスマホが振動する。ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ。多いって。

 

 しょーがねーからアプリを開いて見てみると、数分前にと書かれたスタンプが連打されていた。666回。怖えよ。どこで使うんだそのスタンプ。

 

 そんで今来た方は──わ、()()()()()()()()()()()()()()()()()……? なんでそんなもんがあるんだ。自分で作ったのか? 

 

 趣味が『破壊』のくせして、案外クリエイティビティに溢れているらしい。意外な一面だ。

 

 

「"来るって! でもお花見だけみたい……折角ならお祭りも一緒に回りたかったんだけどな"」

 

「ま、気分じゃないんでしょ。それにほら、あれだ、流石に百鬼夜行ともなると、仮面を外したからって安全には行動できないんじゃない?」

 

「"あー……まあ、しょうがないね。今度また別の場所に行くときは誘ってみようかな"」

 

 

 うんうん、それがいいと思うよ……つーか、それでいい。

 私はワカちゃんの恋路を全面的に応援しているのだ。そのためのバックアップなら、犯罪を除き協力を惜しまないつもりなんだぜ。

 

 しゃららん。髪をかき上げてみる──なんかこれ、癖になっちまってやめられないんだよな。変な癖。

 

 

「"キョウカも来る?"」

 

「なんっでそうなるんだよバカじゃねーのこの朴念仁! 二人で花見くらいしてこいや!!」

 

「"そんなに言う!?"」

 

 

 言うだろーがそりゃあよ! どー考えても二人で行く流れだろーがクソボケが!

 

 ごつんごつん。私は先生の脇腹に軽めのボディブローを入れる。手加減してるから怪我はしない。

 

 

「"うっ……ま、まあ、冗談だよ……キョウカとはまた今度ね"」

 

「えっ、あっ、うん、まあ、それなら……?

 

 

 ……最近遊んでないしな。まあ、それくらいなら許されるか。

 

 うふふ。男同士で遊ぶのなんていつぶりだろーな。いやまあ、今は女なんだけど。

 

 次の休暇いつだっけな。まあいーや、そろそろソラすけにお店を任せても平気な頃合いだろうよ。

 

 

「"それじゃ、私はそろそろ行ってくるよ! あんまり長居しちゃっても悪いしね"」

 

「あっ! てかそうだ、()()()()()()()()()

 

「"えっ? ああ、おこづかい? それくらいなら──"」

 

「ああいや、そういうことじゃなくて……うちはコンビニであって情報屋じゃないんだから、情報じゃなくて、商品を、ね?」

 

「"ああ、なるほど、そういう……"」

 

「つーわけで、はい! こちらお花見シーズン専用和菓子詰め合わせセット! お値段4,000円ぽっきり。どう?」

 

 

 実はレジ裏に忍ばせていたのです、お花見セット。

 世間はお花見シーズンだからね、こーゆー取り組みも売り上げを伸ばす秘訣なのですよ。ふふん。私は胸を張った。

 

 先生は「ほんと、商売が上手だね」なんてことを言いながら笑っている。そうでしょう、そうでしょう。つーかこうでもしないとお店の経営も危うくなりかねないからね。

 

 ちゃらんぽらんで軽薄そうに見えるかもしれないけど、意外と考えてんだぜ、その辺はさ。

 

 

「"うん、それじゃあ買って持ってこうかな。一応聞いておきたいんだけど、これ、賞味期限はいつまで?"」

 

「一週間は余裕で待つから大丈夫。ちゃちゃっと仕事終わらせてさ、ワカちゃんとこれつまみながら話してやんなさいな」

 

「"そうさせてもらうよ──はい、それじゃあお会計お願いします!"」

 

「毎度あり! 本当いつもご贔屓にしてくださってありがとーね、先生!」

 

 

 先生から現金を受け取り、ささっと会計を終わらせる。見たまえこの手捌き。迅速かつ丁寧。模範的なコンビニ店員とはまさしく私のことだな。

 

 レジ袋とは別の紙袋にお花見セットを入れる。あとサービスでレジャーシートもあげちゃう。いいっていいって、こんくらい。どーせ110円だしさ。

 

 

「さて、と。そんじゃこれで準備は完了! 折角の百鬼夜行、楽しんで来なさいな、先生」

 

「"うん、いつも何から何までありがとうね、キョウカ。お土産、絶対買ってくるから!"」

 

 

 先生はそう言って、店から出て行こうとして──自動ドアの前で立ち止まった。

 

 む? どうしたんだろう、何か買い忘れたのかな。そうも思ったが、しかしどうやらそうではなかったらしい。

 

 先生は私に向かって振り返り、一言。

 

 

「"お花見、楽しみにしといてね! それじゃあ、行ってきます!"」

 

 

 ──……あは。

 なあんだ、そんなこと。

 

 それじゃあ私も、返してやるしかないかな。

 

 

 「行ってらっしゃい、先生。お花見、これでも楽しみにしてるんだから、ちゃんと帰ってきてね」

 

 

 聞くなり、笑顔になる先生。

 そうして無駄に高性能な自動ドアから、先生は退店して行った。

 

 ……うふ、うふふ。

 らしくもないって、分かってるけど。

 

 やっぱ「行ってきます」とか、「行ってらっしゃい」とか。

 そういうのが、私は好きみたいだ。

 

 私って、一人じゃないんだな。

 なんとなくだけど、そう思った。

 

 

「……あれ、おかしいな──」

 

 

 からんころん。さくらんぼ味の棒付きキャンディ。

 

 なんだか、いつもよりも甘酸っぱく感じた。

 

 






 たまにはこーゆーの書いてもいいかなって思って書きました。
 バイトの休憩時間で僕は何を書いてるんでしょうか!

 それはそうと、読者の皆様方、いつも評価や感想、ここすきにお気に入り登録など、本当にありがとうござます!
 とっても力になっているので、今後ともご贔屓によろしくお願いします!

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