キヴォトスに転生したけど銃撃戦とか嫌なのでコンビニでバイトする 作:Minus-4
先生が百鬼夜行から帰ってきた。
聞いた話によると、お祭り運営委員会とかいう、もう何から何まで愉快そうな連中やら、修行部とかいうそれって部活なの? みたいな子たちと一緒に、お祭りの開催を妨害する連中をボコボコにしてきたらしい。
……事件に巻き込まれなきゃ気が済まねーのか? この大人は。いっつも何かしらの事件に一枚噛んでるよな。
ちなみに。百鬼夜行のお祭り──
なんだっけ、名前。先生とお花見に行った時に聞いたんだけど、忘れちまったな。なんかこう、独眼竜みたいな名前だった気がするんだけど。
ああ、そうだそうだ、お花見で思い出した。
結局ワカちゃんと先生はお花見に行ったらしいんだけど、途中で雨に降られたらしくて。なんか近くにあった小屋に駆け込んだらしいよ。
……これさあ、わざわざ指摘はしなかったけどさ。
ワカちゃん、ぜってー
まあ、ともかくそういうわけで。それでいい雰囲気になった──みたいなことはぜーんぜんありませんでしたとさ!
うんうん、それでこそ先生だよな。ワカちゃんのためにも、一年後にはその朴念仁が治ってますように。
……ん? ああ、私のお花見?
結局ソラすけ連れてったよ。いや、だってさ、なんかソラすけもお花見とか行きたいだろうし。
いや、ちゃうんすよ。ほらあれだ、やっぱお花見とかそういう宴会って大人数の方が楽しいだろうし? 今更タイマンっつーのも? なんか小っ恥ずかしいっつーか?
ワカちゃんにそれで睨まれても嫌だしねえ。二人っきりでお花見とか、あの子多分三日は口きいてくれなくなるって。分かんないけど。
「……とまあ、そんな感じです、ハイ。セリカちゃん、感想プリーズ」
「キョウカ先輩、その見た目で奥手なの、ギャップ萌え狙いなの?」
「ちっげぇわ! 私はソラすけのことも考えて……!」
「はいはい、分かったわよ……ホシノ先輩はどう思う?」
「うーん、キョウカちゃんってば意外とヘタレだな〜って!」
「……黙れバカホシノ」
「黙らないよ〜、ヘタレのキョウカちゃん」
「てめえ……」
そういうわけで(どういうわけで?)、今日は珍しく三人体制だ。私、セリカちゃん、そしてバカホシノ。手には水分補給用のペットボトルを持っている。
ソラすけとワカちゃんはお休み。
だけどちょっと今日は色々と事務の作業しなきゃいけないことがあって、単発バイトの募集を二人分かけたんだよね。
したら、この二人が来た。幸い二人とも仕事はめちゃめちゃできるから、発注やら勤務時間の調整やらなんやらは既に終わっている。助かったぜ。
……んだもんで、今はお昼すぎでお客さんも少ないもんだから、三人でガールズトークに興じてるって感じ。
先生の馬鹿野郎が先日のお花見の件をうっかり漏らしたらしく、質問責めにあっていたところなのです。
二人と一緒に働くのはこれが初めてではない。以前知り合った時から、何度かヘルプに入ってもらっている。
セリカちゃんには「キョウカちゃんって呼んで!」って言ってるんだけど、ずーっとキョウカ先輩って呼ばれている。むう。
「つーかバカホシノ、お前はなんでうちにバイトしに来てんだ。セリカちゃん一人で十分うちの店は回るっつーのによ」
「だってここ時給いいんだもん。それにセリカちゃんの働きぶりも近くで見られるし、ヘタレのキョウカちゃんにも会いに来れるし!」
「はあ!? 友達にでもなったつもりかよ!」
「……えっ? あ、もしかして、またおじさん、早とちりしちゃった……?」
「ぅ……な、なんだよ、何が言いたいんだよ」
「うへ、うへへ……ごめんね、キョウカちゃん。同年代の子とこんな風に話したの、おじさん初めてだったから……」
「いや、その、えっと……」
まずい、ミスったかも。
私の眼前にいるバカホシノは、見るからに落ち込んでいて、少しずつ猫背になっている。
やばい、やばいやばいやばい、言いすぎたかも。ちょっと待ってマジで、そんなに傷つくと思ってなかったんだって。初めて会った時みたいに言い返せって、な?
から、から、ころろろろろろろ。焦りのあまり咥えている棒付きキャンディが上手く舐められない。
なあちょっと、ごめんって、ほんとごめん。いや私もさ、これで案外ホシノと会えるのは楽しみなんだよ、ほらあれだ、ライバルっつーか、友達っつーか、そんな感じだと思ってるって。
そんな感じのことを言いながら、ホシノの肩を揺さぶる私。しかしホシノは肩を振るわせて息を漏らし始めたので、むしろこの行動は逆効果だったらしい。
やばい。私、友達に暴言吐いて泣かせたのか?
そんな、そんなあ。なんて酷いやつなんだ、私。
あっ、まずいかも。
私も泣きそうだ。
「う、ふぐっ、うぅ……」
「あわ、あわわわ、どっ、セリカちゃん、どうしよう、どうしよう……?」
「……キョウカ先輩。ホシノ先輩のそれ、
「──は?」
「……う、ふっ──ふふ、くっ、はは、あははははは!! 引っ掛かった〜!!」
「は?」
「ひっ、ひひ、ひー! 焦ってる時のキョウカちゃん、まさかそんなに可愛い反応してくれるなんて……!」
は?
えっ、いや……え?
「強気な普段のキョウカちゃんも張り合いがあっていいけど、弱気なキョウカちゃん、めっちゃ可愛らしかったよ〜」
「て、てめえ……」
「普段からあんなかんじで素直なら、もっと可愛がれるのになあ〜」
「…………」
「じゃ、今回の口喧嘩は私の勝ちだね。キョウカちゃん、残念でした!」
「てめえこのチビガキ!! もう頭来た表出ろこの野郎!!」
「ちっ、チビガキ!? ちょっと、それは看過できないよ!」
うるせえ黙れクソボケでアホガキのバカチビホシノ! お前なあ、やっていいこととやっちゃいけないことがあんだろうが!
業務中だろーがなんだろうが知ったこっちゃねえ、お前とはいずれ白黒付けなきゃいけないと思ってたんだ、それが今日この時だったっつーだけのこと!!
おら表出ろこの野郎、髪色真っピンクの親バカ、心配性のガキ! ずるずる、私は棒付きキャンディを噛み砕きながら、チビホシノの首根っこを引っ掴んで店の外に出ようとした。
「二人とも、お客さんが来るかもしれないのにしょうもないことで喧嘩しないでくれない!?」
「っす。ごめんなさいでした」
「ごめんね? ちょっとやりすぎたかも」
「……急に仲直りされると、それはそれで反応に困るんだけど!」
んなこと言われても。
ほらあれだ、私たちも落とし所を探ってたのよ。なんか流れ的に喧嘩しといた方がいいのかなーって感じでさ。
ただ、なんかあのままなあなあにするのも、ねえ? バカホシノと私は顔を見合わせて、同時に頷いた。セリカちゃんの冷たい視線が痛いぜ。ウォークインで飲み物補充してる時より冷たい。
つまりはさ、冗談だって、冗談冗談──冗談に見えなかった? それは本当にごめん。
「ただまあ、友達だと思われてるのは本当に意外だったな。ほら、初対面の印象がお互い最悪だから、てっきり嫌われてるもんだと」
「うへ……キョウカちゃん、おじさんのことを何だと思ってるのかな。嫌いな人がいるところにわざわざ行く人がいると思う?」
「なんかそういうことやりそうじゃん、お前。『
「……セリカちゃん! キョウカちゃんに一言、びしっと言ってあげて! 私はそんなことする人じゃないって──」
「…………まあ、まず間違いなくやるわね」
「それ見ろやるんじゃねーかよ!!」
「セリカちゃん!? 先輩の尊厳くらい守ってよ!?」
「だーもう、大きい声出さないでってば! 今この瞬間も、お客さんが入ってくるかもしれないのに……!」
わいわいがやがや、やいのやいの、ぎゃーぎゃー。いくらお客様がいないからって、この騒ぎ方はどうなんだってくらい大きな声で騒ぐ私たち。
確かにセリカちゃんの言うことはもっともだ。しょーがねー、バカホシノの言うことなんざひとっつも気にしてねーけど、ここはセリカちゃんの顔を立てて、ひとまずおしまいにしてやってもいい。
同時にバカホシノも同じことを思ったのだろう。先ほど同様、私たち二人は顔を見合わせて頷いた。
セリカちゃんは「そういうところはそっくりなのに、何ですぐ喧嘩になるのよ……」と言いながら、耳をぺしょっと落ち込ませた。
ごめんねセリカちゃん。
多分バカホシノもそうなんだと思うんだけど、思いっきり言い合える関係って、それはそれで楽しいのよ。
──とか。そんなことを考えていたタイミングで。
「…………え? 何、いきなり──」
呆気に取られるセリカちゃん。当然それは、私とホシノも同じこと。
なんだ、老朽化でもしていたのか? いや違う、この前改修工事を入れたばっかりだ。日々の設備点検にも不備はなかった。
それじゃあ、なんだ? 原因はなんだ。小動物か? いや、それもない。何でか知らんが小動物は私に寄りたがらない。だからこのコンビニにはコバエやらネズミやらは来たことがないのだが。
何故、何故、何故──棒付きキャンディを舐め回そうとして、ついさっきそれを噛み砕いてしまっていたことに気がついた。
がさごそ。ポケットから新たな棒付きキャンディを取り出し、その包装を剥こうとした──ところで。
通気口の中から。
いきなり、
和装──百鬼夜行の奴か。
獣耳──正確には狐耳だ。
武装──これ見よがしに。
それにしても、身軽な身のこなしだなあ。
太ももに巻いてるのは、ありゃクナイか。
へえ、そう。
私はそいつが着地した瞬間、ポケットから取り出した棒付きキャンディをぶん投げて、額のど真ん中にぶち当てた。
──と、同時に横目でホシノを確認すると、どうやら彼女も手に持っていたペットボトルを投擲した後らしい。忍者強盗の鳩尾に命中していた。
「ぁいたあっ!?」
突然の衝撃にのけぞる忍者強盗。
それを見た私は即座に愛銃を手に取り、忍者強盗に飛びかかる。同時にレジ裏の防犯シールドと愛銃を持ったホシノが、とどめと言わんばかりに忍者強盗を地面に押し付けた。
当然ながら、姿勢が崩れている忍者強盗はたまらず床に倒れる。すかさず忍者強盗に馬乗りになるホシノ。手にはショットガンを構えていて、銃口は胴体に向いていて、その間に空間は存在していない。
私は横から忍者強盗の首筋に手を添え、顔面をずいっとそいつに近づけて凝視している。何が起こったか分かっていなそうな忍者強盗だが、段々と事態は飲み込めてきたらしい。
「おい、テメェ何をどういうつもりでやって来たのかは知らねーけどよ、今謝れば許してやる」
「えっ!? は、はいぃ……?」
「……すっとぼけても無駄だよ、忍者ちゃん。お店に入るだけなら普通にそこの自動ドアから入ってくればいいのにさ? わざわざ天井裏からの入店なんて──」
「やましいことがありますって言ってるようなもんだろ、なあ、おい」
「なっ、えぇっ!?」
少し指の力を強めてやる。たったそれだけの動きで、忍者強盗は私がどんな行動を取ろうとしているのか理解したらしく、顔色を蒼白に染めた。
さあ言え、何しに来た。謝れ、今すぐ謝れ。
天井裏から侵入してきた時点で、何か企んでるってことは分かってるんだ。
しかし忍者強盗は唇をわなわなと震わせるだけで、こちらの質問には答えようとしない。
痺れを切らしたのか、ホシノがわざとらしくショットガンのリロードを行う。ますます青白くなる強盗の顔色。
指を五本立ててやる。何が何だか分からないといった表情の忍者強盗。しかし次に私が放った一言を聞いた瞬間、その身をぶるりと震わせた。
「ごーぉ」
「──ッ!」
私は指を一本折りたたんだ。
「よぉーん」
「いや、ちょっと、待ってくださ──」
私は指を一本折りたたんだ。
「さぁーん」
「待ってください! きっと何か、誤解が」
私は指を一本折りたたんだ。
「にーぃ」
「誤解があります! だからちょっと、待って」
私は指を一本折りたたんだ。
「いーち」
……まだ答えないか。
じゃ、しょうがない。
私は指を一本折りたたんだ。
「ぜ」
「うわああぁぁぁごめんなさいぃぃ!!
「ろ……って──」
「ええ……? いやいや、いくら何でも、その言い訳は無理があるんじゃ」
「本当なんです! 本当なんです! 信じてください、イズナはもう自分に嘘をつかないと誓ったばかりなので! うぅ……
…………忍者強盗改め、イズナちゃんとやらは、手足をわたわたと動かしながら、目に涙を浮かべてそう言った。
なんか、うん、そうだな。
マジで、疑ってごめん。
最近くっそ忙しくて全然書けてなくて申し訳ないです!
申し訳なくなってる間に、気づいたら9評価が150個になってました! しかも総合評価も7,000が近いです!
これも全て読者の皆様方が、いつも評価や感想、ここすきにお気に入り登録などをしてくれているおかげです!
いつも本当にありがとうございます! これからも何卒よろしくお願いします!
【追記】
Shift.23とShift.24なのですが、書いたはいいんですけど内容があまりにも粗雑かつ、個人的にあまり面白いとも思えないものだったので、当該のエピソードを削除して書き直すことにしました。
書き上がり次第、再びイズナ回の続きを投稿していくという形を取らせていただきます。感想やここすき等を残してくださった皆様、また読者の方々にはご迷惑をおかけしますが、何卒よろしくお願いします。