キヴォトスに転生したけど銃撃戦とか嫌なのでコンビニでバイトする 作:Minus-4
書き直しました。
前とは全然違う話になってます。
百鬼夜行連合学院の一年生ちゃんで、元気いっぱい狐っ娘。耳と尻尾が見るからにもふもふしていて、くすぐり欲をくすぐってくる。だけどセクハラになるので触れない。ちくしょう。
……先生のことを「主殿」と呼んでいるところから想定するに、この子もワカちゃんの対立候補ということになるのかな? いやいや、流石にそれは恋愛脳すぎか。
年頃の女子かっつーの。
……今こういうこと言うと怒られそうね。やっぱ今のナシで。
さて。それで私たちが、現在何をしているのかと言うと、このキョウカちゃん、迷子のイズナちゃんに道案内をして差し上げているのでした。いぇーい、ぱちぱち。
行き先、シャーレの部室。
正直言うと、エレベーター乗るだけで着く。
が、次回以降も迷子にならないように、周辺の立地まで教えてあげている。お節介かもしれないが、私は世話好きの世話焼きなので。
ま、迷子のお客様に道案内をするなんてこと、コンビニではままあるしな。対象年齢は大抵の場合高くなりがちだけど、それでもじーちゃんばーちゃんばっか聞きにくるってわけでもない。
お店はホシノとセリカちゃんに任せた。
あの二人なら、お客さんが何人来ようと捌ききれるだろう。てゆーか、セリカちゃん一人でも店は回るわけだし。
「──ともかくね? 流石に通気口の中を通ってくるっつーのは、誰だって度肝抜かれると思うのよ」
「でも、イズナは忍者なので……通気口を見たら、潜んでみたくなるというか」
「潜まないで……というかそっか、イズナちゃんってば忍者なのか。いいよね忍者、そーいう存在には憧れるよなー」
「キョウカ殿も分かってくれるんですか!?」
「ぅ、うん……」
声でっか。
目ぇキラッキラ。
耳と尻尾が大暴れ。
近い近い近いって。顔と顔とが近すぎるよイズナちゃん。妙な誤解を招きかねねーっつーの。
こんなこと言っても信じてもらえねーだろうけど、私はこれでも中身男だから。そういうことされると照れちゃうぞ。
……ソラすけ?
ソラすけは別腹よ、別腹。
「そうですか、うわあ……! 分かってくれますか、分かってもらえるんですか……!」
「分かるも何も、忍者はかっこいーじゃないの。そんなこと、老若男女問わず自明なことだと思うけどなあ」
「……イズナも、そう思っていました。だけど、あはは……想像よりも、
「でも、
当てずっぽうもいいところだったけど、どうやら私の読みはあながち間違いというわけでもなかった──どころか、イズナちゃんの反応を見る限りは、完全に的を射た発言だったのかもしれない。
からんころん。ソーダ味の棒付きキャンディを舐め回す。しゅわしゅわ。冴え渡ってるぜ、今日の私。
ま、この話はここまでにしておこうか。イズナちゃんはこれからシャーレで先生と会うっつーのに、しんみりさせるのもアレだしさ。
「てかそーだ、イズナっちってばさ」
「はい! イズナっちです!」
順応はやっ。忍者に則って不意打ちを仕掛けたというのに。過去最速で私のあだ名に対応しやがった。
ふぅん、中々やるな、イズナっち。
「イズナっちはさ、つまり忍者なんだよね? となると、いわゆる忍法、というか忍術的なやつも使えるのかなーっとか、そんなことを思うわけよ」
「忍術ですか? もちろん使えますよ! 例えば、こんな感じに──分身の術っ!」
直後、五人に分身するイズナっち──五人に分身!?!?
えっ何それどうやってんの!? 二人ならいざ知らず、五人!? つーかそれ、多重影分身の術じゃん!
あまりの驚愕に目を見開く私。
いや、そりゃそーでしょーよ。目の前でいきなり五人に分身されてみなさいな。開いた口塞がらないって、マジで。
……ただ、そうだな。目を見開いて凝視したおかげか、術のからくりも、何となくは分かってしまった。
言っていいのかな。これ、言っちゃっても大丈夫なやつなのかな。
あっやばい、イズナっちの顔面が赤色通り越して青くなり始めた! ちくしょう背に腹はかえられない、種明かしをして楽にしてあげるしかないか。
「イズナっち? ちょっといい?」
「ひゅっ……はっ、はいっ……! はぁっ……なっ、なんでしょうか、キョウカ殿……っ!」
「めっちゃ速く動いてるだけじゃない?」
「その通りですっ!!」
見破ったり、多重影分身の術。
そのタネは、どうやらイズナっちが全力で動き回り続けることによって、
……マジで言ってる? 忍術ってそうなのか、フィジカルでゴリ押しだったのか。そうならば、私は忍者になれないかもしれない。幼少期の夢が、また一つ音を立てて崩れ去った瞬間だった。
ついに足を止めるイズナっち。額には汗が滲んでいて、肩どころか全身使ってぜえぜえと息をしている始末。誰がそこまで全力でやれって言った。
私か。私か? 私が悪いのか?
まあいーや。とりあえずこれ飲みなさい。コンビニ限定、1リットルのスポドリ。電解質たっぷり。運動後に最適。お値段なんと230円也。わお、前より値上がりしてる!
「んぐ、ごくっ……ぷはーっ!! 助かりましたキョウカ殿、かたじけないです!」
「あはは、元をただせば私が原因だしさ。遠慮せず、ごくごく行っちゃいなさい……あーでも、汗はどーしよっか。これから先生に会うってのに」
「……シャーレにシャワー室って、ありましたっけ……」
「あるにはあるけど……先生にバレずにシャワー室に入るのは至難の技だぜ? まーいざとなれば、私が囮役を買って出るけど」
「──囮役、ですか。それならば、イズナの方でどうにかできるかもしれません!」
なにっ、それは本当か、イズナっち。
ん、耳を貸せばいいの? おっけー、ちょいと話してみなさい……うへぁ、くすぐったい。てかすげー桜のいい匂いする。どうなってんだこの子。
ふむ、ふむふむ。変わり身の術──つまりは身代わりの術──が使えると、そういうことなのね。なるほどなるほど。それはアレかな、フィジカルでゴリ押す系の術? あ、違うのね、いーじゃんいーじゃん。
「となると、身代わりとして何を使うわけ? やっぱ等身大の人形とか?」
「それはですね──じゃん! こちらの
「これで行けるかなあ?」
「はい! 行けます!」
「本当に行けるかなあ!?」
「絶対に! 行けます!!」
どっから来るんだその自信はよ。
つーか、イズナっちがたった今取り出したキツネのぬいぐるみ、手作りなの? それにしちゃあ随分と出来がいいじゃないの。
ベースは白。狐の面のように朱色(どちらかというと臙脂色か)で彩られていて、とってもかわいらしい。毎日抱いて寝たい。一家に一つあるべき。
手作り。
手作り、ねえ……。
「……イズナっち。これ、
「えっ? 在庫、ですか? うーん……この前108個作ったので、主殿に見てもらうため、持ってきましたけど──」
「……えっ? 今持ってるの? 108個」
「はい! ほら、こんな感じで!」
そう言うやいなや、イズナっちの羽織から続々飛び出す手作りキツネぬいぐるみ。
うわっ。うわわっ。まだ出る? これいつまで出る!? てゆーかなんでそんなに持ち歩けるの!? 普通に怖いんだけど!
これあれか、もしかして突っ込んじゃいけないやつか。時空の歪みとか、そういう感じのやつか。
「いいえ、キョウカ殿! これもれっきとした忍術です!」
「えっ、そうなの!? いやあ、私の想像よりも便利なのね、忍術って。これはなんて名前の術なの?」
「これはすっきり収納の術といいます」
「生活のコツじゃねーかよ」
なんでいきなりコンビニに置いてある主婦層向け雑誌の『生活のお役立ち情報コーナー』に載ってそうな名前になるんだ。もっとこう、かっこよくあってくれ。
じゃない。そんなことは今はどうでもいいんだ。
私が聞きたいのは、ぬいぐるみの出所ではなくて、シンプルに
つまりは、
「イズナっち。このぬいぐるみさ、一体作るのに大体何時間くらいかかる?」
「時間ですか? えーっと、大体20分くらいで三体です」
「速すぎるだろ……まーいーや。つまりだねイズナっち──このぬいぐるみ、うちの店に卸してみない? ということなんだけど」
「卸すというと、つまり
「そゆこと。そうだなあ、一体あたり……税込で2,750円。どうよ?」
普通こういった契約は地域の農家さんとかとやるものなんだけど、しかしこのぬいぐるみ、中々の可能性を秘めていそうである。
それに、あれだ。ヒフミちゃんには悪いけど、個人的にペロロよりこっちの方が好みだし。
そんなわけで、私は取引を持ちかけているわけである。当然取り分はイズナっちの方が多くなるように調整するからさ。一時間に二体売れれば、最低賃金の二倍弱はくだらねー時給になると思うぜ。
「当然、負担が大きいようならば全然断ってもらってもいいんだけど──」
「いえ、他ならぬキョウカ殿の頼みですから! 是非ともお受けしたいです!」
「──おっしゃ、それじゃー決まり! 仔細は今度また、シャーレのカフェ辺りで話そーね……っと。連絡用にモモトーク交換しとく?」
「はいっ! 是非是非! キョウカ殿には先ほど迷惑をかけてしまいましたから、これくらいはお安い御用です!」
別にわざとじゃないならもう気にしなくてもいいのになあ……とも思ったものの、しかしそれを否定するのも、なんだか違うよな。
ともかく。奇妙奇天烈な出会い方だったが、私はまたしても出会いに恵まれたということらしい。いやあ、つくづく私は運がいい。
からんころん。小さくなってきたソーダ味の棒付きキャンディを舐め回す。うーん、いいねえ。後味さっぱり、新しい友人、最高の昼下がり!
「じゃ、イズナっち。シャワー室はシャーレ部室を経由して奥の方にあるから、頑張りな」
「はいっ! イズナ、忍者の忍者らしいところを先生にお見せできるよう、頑張ります! それでは、道案内ありがとうございました、キョウカ殿!」
とまあ、そんな感じで、私たちは別れ、私はエンジェル24に戻り、イズナっちはシャーレの部室にこそこそと入っていった──っと、
相手は……なーんだ、イズナっちか。またワカちゃんが女の勘を発動させたのかと思った。というか、なんだろう。トークルームが消えないようにスタンプでも送ってきたのかな。
えーっと、なになに? 内容は……「一瞬でバレてしまいました……」という文言と、狐が泣いているスタンプ。
……まだまだ、上忍までの道は長いようだね、イズナっち。
きみならいずれ、先生に気取られず、後ろに立つこともできるようになるだろうから、頑張って。
それよりも、この場合はイズナっちに一瞬で気付いた、先生の方を褒めるべきだよなあ──とか、そんなことを考えつつ、私はお店へ戻っていった。
久々に息抜きで更新。
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