キヴォトスに転生したけど銃撃戦とか嫌なのでコンビニでバイトする 作:Minus-4
──さて、お昼時である。
何はともあれ、先に言い訳させていただこう。
私としては、ワカちゃんを働かせるのは一週間後からを予定していた。シフトも組まなきゃいけないし、いろんな手続きもあるし。
なんで、今日も私は適当に仕事をこなす予定だった。どーせ客も来ないだろーし、新作のお弁当でも試食しよっかな、とか考えながら。
けどまあ、†〈ゲヘナの亡霊〉†(笑)が、〈災厄の狐〉の行動を予測できるはずも、制御できるはずもなかったよ。
「はあ……無駄だと分かった上で、一応聞いてみるんだけどね、ワカちゃん。
「無理ですね、まったくの不可能というやつですよ、キョウカさん。
「忘れてるわけないじゃん──先生に会うためでしょ? それは別にいーんだけどさ、せめて連絡ちょーだいよ」
「別にいいじゃないですか。キョウカさんの負担も減らせますし、それに仕事にも途轍もない早さで慣れること間違いなしですから」
それっぽいこと言ってっけど、あんた先生に一日でも早く会いたいだけでしょう。バレバレだからね、その建前。
話は変わるが、コンビニの修繕費はきっちり耳を揃えてお振込みいただいた。既に業者に修理を頼んでおいたので、来週には工事が入る。
ふふ、うふふふ……ただでさえ結構新しめの設備が揃っていたというのに、それに加えて壁の改修なんてしてしまったら、もう新規開店みたいなものだろう。
ちなみに飛びまくっている店長には連絡だけしておいた。既読は付いてないので、もうあいつは知らん。二度と関わることもないだろ。
とまあ、直近のイベントはそれくらいか。
いやあ、三人も従業員がいれば、ワンオペなんかしなくても良くなりそうで助かるよ。
「ソラすけもそう思うよね?」
「そんなことよりまず先にどうして〈災厄の狐〉を雇ったのか教えて欲しいんですけど!?」
「あら、そういえばあなたには自己紹介していませんでしたね。
「あっ、ちなみに普通に大犯罪者すぎて、本名呼んでるとことかをお客さんに聞かれて通報されるとヤバいから、呼ぶ時は『ワカちゃん』って呼んだげて」
「何で! そんなリスクを! 抱え込む必要があったんですか!? ヴァルキューレにこんなことがバレたら──」
……ソラすけに何の説明もしてなかったの、今思い出した。
そうなんだよ、ワカちゃんを受け入れたの、冷静に考えたらただただリスクを抱え込んだだけなんだよね。
でもさあ、あんな乙女な部分見せられてよ? やっぱ尊重したいじゃん、あーゆー
まああとは、個人的にちょっとした目論見もあったりする。まあ杞憂で終わればいいんだけど、一応ね。
「まあまあ、落ち着きなさいよソラすけ。ワカちゃんはね、マジで意味分かんないくらい仕事が早い」
「まあ、元々手先は器用ですし。コンビニの仕事内容くらいであれば、三時間もあれば一通りは覚えられます」
「あの、ワカモさ……ワカ、ちゃ、ん……? それだと、私の立つ瀬がなくなっちゃうんですけど」
「ソラさん、あなた中学生でしょう? 私は高校三年生ですし、差があるのは当然です。別に気に病むこともないと思いますけれど」
「意外とマトモなこと言えるんだな……」
「聞こえてますからね」
へいへい、怖い怖い。
つーかそんなことより、マジでワカちゃんは仕事早いんだよな。私まだ何にも教えてないのに、ばぱっと陳列やら何やらを終わらせやがった。
意外とシゴデキなのね、この子。いやまあ、大抵のことは何でもできそうな気配はしてたけども。
ソラすけもいるおかげで、ホットスナックの補充も発注も既に終わっている。いやあ、やっぱ持つべきはバイト仲間だよ、本当に。
「……その、一つだけ聞きたいことがあるんですけど……ワカちゃんは、えっと、どうしてここで働こうと思ったんですか?」
「ああ、そちらについても説明しておきますと、
「──……一目、惚れ……ええっ!? ぅ、じゃあ、じゃあ先生のこと、ワカちゃんは先生のことが好きなんですか!?」
「はい、そういうことです。このワカモ、ビビッと来てしまいまして……見事にハートを撃ち抜かれてしまったのです♡」
「あわ、あわわ、うわぁ……!」
……ソラすけ、
私が中学生の頃もこんな感じだったっけな? いやいや、前は男子だったんだから比較にはならないし。
からんころん。パイナップル味の棒付きキャンディを舐め回す。ふぅん、甘酸っぱいね。私は一人微笑んだ。
つーかね、私はこれで結構心配してたんだ、ソラすけとワカちゃんが仲良くできるのかどうか。
もっと詳しく言うと、ワカちゃんがソラすけに対して、どんな感じの接し方をするのかが、心配で心配で仕方なかった。
が、この調子なら問題なさそうだね。ワカちゃんは破壊の権化と思われがちだけど、そういうところははっきりとメリハリ付けてるらしい。
全然普通の女の子に見える。てか、実際普通の女の子。本人の行動が原因だとはいえ、誤解されてるのがちょっと気に食わなくなってきたよ。
「ワカちゃんワカちゃん、そういえばこれも聞いておきたいんだけどさ、先生に会ったら、まずはどんなこと話したいの?」
「……え? どんなことを、ですか……それはもちろん、
「いきなりそこまで踏み込んだことをお話しすると、ちょっと驚かれそうですけど……」
「私もソラすけに同感かなあ。これから関係を深めていきたいのならさ、開幕十割で思いの丈全ブッパはちょっと重くない?」
「大丈夫です、心配には及びません。このワカモ、こういう時のために会話のパターンを百八個ほど考えてきましたので」
煩悩の数じゃねーか。
いやまあ、こと恋愛においては、煩悩まみれの方がむしろいいのかもしれないけどさ。
いやしかし、一日でかなり準備してきたようだけど……ワカちゃん、ガチで先生が好きなんだなあ。まあ、趣味はいいと思う。
ただ一つ問題があるとすれば、それはワカちゃんが生徒で、先生が大人だってことだ。
仮に、もし仮にワカちゃんが先生に会った時、その場の勢いで告白とかしちゃったらなんかしたとして。先生がそれに応えてしまうようなら……。
私はきっと、先生を
子供を食い物にする大人はカスだ。
だから先生、そこんところよろしく頼むよ。
「あっ、いらっしゃいませー……」
「ああ……! 早くお会いできないかしら、一刻でも早く、この胸の内を明かしたいのに──!」
「……あれ、ごめんワカちゃん、さっきも聞いたんだけどさ、念のためもっかい聞いてもいい?」
「? 何をです?」
「いやほら、
「ですから、ずっと言っているでしょう?
「"呼んだ?"」
瞬間、ワカちゃんの動きが止まった。
そうだよなあ、そうなるよなあ。
そりゃそうだ、私がさっき消しといたんだもん。誰が入ってきたとしても、気づかれにくくなるように。
「…………き、キョウカさん? あの、
「うん、そうだね。ちょうどお昼頃だし、いっつもこの時間に来るから、タイミング良かったかもね。ワカちゃんの後ろにいるのは──」
さて、と。それじゃあワカちゃん、舞台は私がセッティングしてやったからさ。
店をぶっ壊しやがった見返りに、あんたの
アルバイト前に急いで仕上げたので少し短いです。ごめんなさい。
感想など読んでいつも楽しんでいます。評価も本当に飛び跳ねるほど嬉しいです。
本当にいつも読んでくれてありがとうございます。