タバサの使い魔   作:エクスタシー

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お待たせいたしました。前回の投稿から約一年と半年。ようやっと完成です・・・。


◇4

サイトがギーシュと闘った次の日、私とタバサはシルフィードに乗って隣国ガリアのヴェルサルテイル宮殿を目指して飛んでいる。

シルフィードと言うのは私と一緒に喚ばれた風韻竜という種族の幼生らしいわ。タバサ達が使う魔法とは違って先住魔法という地脈等を使って発動させる魔法よ。知能が高くてここの人語を理解し、話せる、私の世界じゃ結構普通の知能を持った昔からいる種族よ。

 

「お姉さまお姉さま」

 

そのシルフィードがタバサを呼ぶ。でもタバサは無視して本を読んでいる。

 

「ねえお姉さま!あの人すごかったですわね!えっと、なんだっけ?ミス・ヴァリエールが呼び出した平民の男の子!名前は忘れたけど」

 

「サイト」

 

「そうサイト!変な名前!変な格好の子!平民なのにメイジをやっつけるなんてすごい!きゅいきゅい!そういえばお姉さま、何の本を読んでいるの?」

 

シルフィードがそういうとタバサは手を伸ばして、本の表紙をシルフィードの前に突きだした。

 

「『ハルケギキアの多種多様な吸血鬼について』ですって?まあ怖い!吸血鬼は太陽の光に弱いだけで人間と見分けがつかないし、先住の魔法は使うし!あ、ここにもういましたわね」

 

「あら?それは挑戦かしら?」

 

そういうとシルフィードはブルブルと震えた。

 

「モアお姉さまは例外よ!きゅいきゅい!モアお姉さまは悪い人を倒してきた良い吸血鬼なんだから!」

 

「まあね。でも世間でいい人ぶっていたのも倒したから結構悪役なのよ」

 

「それでもモアお姉さまは他の吸血鬼とは違うわ!きゅいきゅい!」

 

「ありがたいわね。…ほら、シルフィード。もうすぐ降りるわよ」

 

そういいながら体を変化させる。俺はとある理由によって魔法無しで体を変化させる事ができるのだ。口調も変わるのが欠点だがな。勿論性別も変えれる。今日はタバサが雇った傭兵ということでがっしりとした体型の男性だ。

 

 

 

 

 

「シャルロット様が参られました」

 

「だからあいつのことは"操り人形"って呼べって言ってあるじゃないの!"人形七号"で十分よ!まったく!」

 

「し、失礼しました。七号様、参られました」

 

へえ、七号か。この世界はどうか判らんがラッキーセブンの七をあてるなんてあの一見タバサを嫌っている王女も存外タバサが好きなのかもな。いや、LIKEの方で。

 

「通して」

 

そういわれて俺とタバサは中に入る。すると王女と思わしき人物は口を開けて惚けた顔をしたあと俺を見て元に戻った。

 

「ふぅん、まさかお前が傭兵を雇うとはね。流石の騎士様も恐いのかい?」

 

「違う。彼は私の使い魔。この間契約した」

 

おいおい!何で使い魔だってことバラしてるんだよ!?

 

《貴方を傭兵と思えなかった》

 

そんなことを思っていたらタバサから念話がきた。念話は俺が教えたものだ。何かと便利だからな。

 

「ふん、まあどっちでも良いさね。せいぜい頑張りな、シャルロット」

 

 

 

 

 

王宮を出て目的地に向かう。目的地はサビエラ村という村。その近くの空き地に着陸するとタバサが俺に杖とマントを渡してきた。どうやら俺を囮に吸血鬼をおびきだすらしい。

 

 

 

 

 

サビエラ村につくと村人に色々言われたが全部無視した。村人が次々と襲われているのだから不安になるのも仕方ないだろう。

村長の家は段々畑の一番高いところにあった。

 

「ようこそおいでなさいました、騎士様」

 

「ああ。俺はガリア花壇騎士、アレックスだ。王宮からの勅命でこの村を襲っている吸血鬼とやらを討伐しにきた。早速だが状況を説明してくれないか」

 

俺がそう言うと村長は説明を始めたが内容は報告書とほぼ同じだった。

 

「ふむ、報告書通りだな。村長!この俺が来たからもう大丈夫だ!直ぐに吸血鬼を倒してみせよう!!」

 

「よろしくお願いしますじゃ、騎士様」

 

すると、タバサが念話で命令をしてきた。

 

「ふむ、調査の前に村長の体を改めさせてもらえぬか?なに、一応だ」

 

「……こんな老いぼれですじゃ。恥ずかしいことなど何もありませんわい。存分にお確かめください」

 

そういって村長は裸になる。そしてタバサが身体を改める。恋愛ごとには興味がないのだろうか?

調べ終わるとタバサは無言で頭を下げた。

 

「疑いは晴れましたかの。では騎士様、よろしくお願いしますじゃ」

 

そして村長と分かれ、俺達は村の宿に泊まった。俺は部屋に戻ると元の姿になる。

 

「…なにか分かった?」

 

タバサが聞いてくる。

 

「ええ。最初に出迎えた村人の中に一人だけ人じゃないのがいたわ。姿は見えなかったけど多分あれがタバサのいう屍人鬼《グール》ね。吸血鬼はわからなかったわ」

 

「明日、町を見回る。……今日も血を吸うの?」

 

「え?タバサが嫌なら私はいいけど…。どっちでも良いわよ?」

 

「…………良い///」

 

タバサの許可が出たのでベッドに横になり血を吸う。しかし、タバサは血を吸われるとすぐに寝てしまった。

そして自分は昼間にあれだけメイジだと言ったのだから吸血鬼は引っ掛かって部屋に来るだろうと思い、寝るときには男になって寝ることにした。…………起きたときにタバサに間違えられないといいが。

 

 

 

 

 

翌朝、まだ太陽が登ってない時間、部屋に何者かが侵入してきた。しかも魔力が人間の比ではない。今回の獲物、吸血鬼だ。俺は気づいてないかのようにそのままねたふりをする。吸血鬼は俺のすぐ近くまで来たが結局何もせずに部屋を出ていった。どうやら様子を見に来ただけのようだ。

 

その日、俺達は調査始めに犠牲者の家を回った。吸血鬼《あいつら》は若い女の血を好むロリコンだ。犠牲者も前回の騎士を除いて全員15歳以下の女だった。

犠牲になった部屋の状態は全て密室。しかし、吸血鬼は一切の音をたてずに人間の血を吸い付くし、犠牲者を増やしていく。

扉や窓を釘で塞いだり、同居人が一晩中見張っていたりしても、直ぐに寝てしまうらしい。

多分先住魔法という魔法だろう。この世界では人間はマナ、それ以外の種族は地脈を使う魔法を使うらしいからな。ちなみにオドは誰も使っていないようだ。勿体ない。

 

「吸血鬼というのは血を吸わないと生きてはいけない。だからいくら自分が傷付こうとも、必死になって血を吸う。この部屋で言うなら…あそこだな」

 

俺はタバサと一緒に煙突を見る。詳しく調べてみると微かに気配が感じられた。

 

「やはりここのようだ。この大きさだと子供か…老人だな。家主よ、最近引っ越してきた子供か老人はいないか?」

 

「は、はい。そういえば村の外れに占い師が療養の為に引っ越してきましたが…」

 

「ふむ。怪しいな。タバサ、行くぞ」

 

「わかりました」

 

 

 

 

 

外に出ると村人達が鍬や斧などを持って歩いていた。

 

俺達はその村人達に付いていくことにした。

 

村人達が向かっていたのは村外れにあるあばら家だった。ここがさっき家主が言っていた占い師の家だろう。

村人達はその家を取り囲み、口々にわめいている。

 

「出てきやがれ!吸血鬼ッ!!」

 

「吸血鬼だと?」

 

怪しいとは思うが決めつけるのは早急だろう。何故なら証拠が全くない。吸血鬼かどうかが分かる魔法でもあれば別(以外とあるかもしれない)だが。

するとあばら家の中から40歳くらいの男が出てきた。

って、あの男は屍人鬼《グール》か。……だが近くに吸血鬼の存在は感じ取れないな。と言うことは占い師の老人は吸血鬼ではないか。となると怪しいのは子供か。

 

「誰が吸血鬼だ!変なこと言うんじゃねえ!」

 

「アレキサンドル!テメェが一番怪しいんだよ!余所者がっ!早く吸血鬼を出しやがれ!!」

 

「吸血鬼なんかいるわけねぇだろうが!」

 

「いんだろうが!昼ってのにベッドから出てこねぇババアがよぉ!!」

 

「おっかぁ捕めぇて吸血鬼たぁどいうこったよ!!病で寝てるだけだってんだろうがっ!!」

 

「えぇからさっさと連れてこい!俺たちゃが確かめてやっからよぉ!!」

 

「んだぁ!!日んの光さ当てたら皮膚が焼けちまうから出てこんのだろぉ!!」

 

「だから病だっちゅうてんだろ!!」

 

村人はそういうアレキサンドルを押し退けて家の中に入っていこうとした。しかし、アレキサンドルがその前に立ち塞がる。

 

「んだぁ!アレキサンドル!テンメェやろうってんのか!!」

 

「いい加減にしろっちゅうてんだよ!!」

 

そういって揉み合いになりそうになったところを見計らって俺が入っていく。

 

「貴族の目の前で殴り会いとは良い度胸だな」

 

「ひっ!!す、すいやせんでさぁ!俺たちは決して殴り合いなど…」

 

「言い訳はよい。今からこのいえの老人はこの偉大なる貴族が調べるから黙って見ていろ」

 

「か、かしこまりました!!」

 

俺は反対を向く。

 

「貴様はアレキサンドルとか言ったな」

 

「は、はい。ど、どうぞ、貴族様。おっかぁの無実を照明してくだせぇ」

 

「ふん。貴様が言わなくともその老婆を魔法で太陽に当てれば分かることよ」

 

そういって家の中に入っていく。

 

後に、その事の一端を見ていた者はこう語った。

 

 

 

「(目隠し&変声)今までの吸血鬼に対する不安や恐怖が限界を越えていた私を含めた村人達は、その貴族様の一言だけで落ち着いたというか…。とにかくこんなことをしても無駄だと言うことに気がついたんです。このとき私は何故、貴族様が平民と格が違うのかというのを思い知りました」

 

吸血鬼事件が解決したあと、その村の食料生産率が10%上がったらしい。

 

 

 

家の中は一部屋しかない。土間があり、その奥に粗末なベッドが二つあるだけだった。

 

「お、おっかぁは病で体を動かせないんです」

 

なるほど。たしか筋萎縮性側索硬化症《きんいしゅくせいそくさくこうかしょう》と言ったな。始めに手足が動かなくなり、最終的には呼吸すら出来なくなって死ぬという病気だ。確か元の世界では難病に指定されていたな。

 

「ふむ。この老婆は吸血鬼ではないな。俺の系統は水だから直ぐに分かる。アレキサンドルよ、この老婆を治療するが良いか?」

 

「あ、ありがたき幸せ!」

 

俺は符を取り出す。今回使うのは極東の呪術だ。またの名を陰陽術ともいう。俺は符が無くても使用できるが符があった方が細かい事を設定しなくて良いし、呪文も短くて住む。

 

「伊吹戸主《いぶきどぬし》よ我に力を与へ、この者を癒せ」

 

俺がそう言うと、老婆の体が光に包まれた。光が消えると老婆の顔色が良くなる。

 

「うっ……!!ア、アレキサンドル………」

 

無事病気は完治したようだ。

 

「おっかぁ!大丈夫か!」

 

「ええ、大丈夫じゃ。貴族様、ありがとうございますじゃ。ワシの病を治してくれるなど」

 

「よい。これは俺の趣味のようなものだ。金は取らん」

 

「おお、ありがとうございます!ありがとうございます!」

 

ちなみに本人は気づいてないだろうがアレキサンドルも屍人鬼から人間に治しておいた。

死んでいるので人間に戻したわけではないが、人間のように歳をとり食物から栄養を取る屍人鬼に設定しただけだ。吸血鬼とのパスも完全に遮断した。

って、こんなことをしていたら悪の大魔法使いも年貢の納め時だな。まあ、今は人間の使い魔にまで成り下がっているが。

 

「では表の村人に伝えておけ。俺がこの町にいる間はこの家を襲うことは禁止とする、とな。あの老婆もじきに良くなる」

 

「か、かしこまりました!」

 

そういって俺の横を通りすぎていくアレキサンドルの目には光り輝くものが付いていた…。

 




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