タバサの使い魔   作:エクスタシー

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ようやくフーケ編です


◇6

学院に帰ってきて数日がたった。

今日は休日らしく、タバサは部屋で本を読んでいる。

あのあとオスマン校長にまたもやギアスロールを書かせてエルザを私の従者とすることに成功した。エルザを見た途端少し老けた気がするけど。

 

「じゃあタバサ、私も寝るから」

 

それにしても眠い。そもそも吸血鬼は夜行性で、私も例に漏れず昼間は眠い。長年昼間に起きている人間のような生活をしていたので慣れてはいるけど寝れるなら昼間は寝たい。ちなみにエルザはシルフィードの背中にいた時からぐっすり寝ている。

 

 

 

 

「・・・なのよ!恋!」

 

ほとんど寝かけたとき、大きな音がして目が覚めた。誰かが叫んでいるようだ。うるさい。

 

「だから、貴女の使い魔の力が借りたいの!助けて!」

 

ああ、うるさい。流石に黙っていられない。

 

「うるさーい!私が寝てるのに大声出さないで!」

 

そう言いつつ起き上がる。周りを見るとエルザはまだぐっすり寝ているようだ。タバサは本を読んでいる。他にはこの部屋では見慣れない赤い髪。たしかタバサの親友のキュルケだ。

 

「あら?貴女は誰かしら?」

 

「わたしはモア・ファランドール。タバサの使い魔なんかをやってるわ」

 

そう言うとキュルケは考えるように目線を上に向けた。

 

「あ、思い出したわ!ドラゴンの横にいた子ね。貴女もダーリンと同じく使い魔だったのね。私はキュルケよ」

 

そんなことを話しているとタバサは立ち上がり窓を開けて口笛を吹く。シルフィードを呼び寄せるらしい。ところでダーリンって誰だろう。

ほどなくしてシルフィードがやって来て窓のすぐそばに待機する。

 

「貴女の風竜っていつ見ても惚れ惚れするわ」

 

そう言いながらタバサとキュルケはシルフィードの背中に飛び乗る。話している最中に眠気も飛んでしまったので私もついていくことにした。

ホントは飛んでいってもいいのだけれどこの世界にない魔法を使うと宗教がうるさいらしい。・・・どこの世界でも宗教がうるさいのは同じなようだ。

 

 

 

 

 

シルフィードに跨がって30分ほどするとこの国の首都であるトリスタニアにつく。トリスタニアに来た理由はルイズがサイトとお出かけをしたかららしい。声を掛ければいいものを物陰から見る程度でなにもしない。思ったよりヘタレなのか慎重なだけか...。

 

「全く、ルイズはダーリンにあんなボロボロの剣を与えるつもりなのかしら?」

 

サイトはルイズから見た目はともかく結構面白い剣を買ってもらったらしい。詳しくはわからないけどサイトから剣に微量の魔力が流れていっている。

 

「私がもっといいのを買ってダーリンにプレゼントしてあげるわ!」

 

そう言ってルイズたちが出てきた武器屋に入っていくキュルケ。私たちもついていく。

 

「へい、らっしゃい!今日は貴族様がよく来る日だこって。ところで貴族様がこんな古ぼけた店に何の用事で?」

 

店の中は少し埃っぽく綺麗とは言いにくい。しかし剣や槍、ハルバードなんかの武器が沢山ある。

 

「私はプレゼントを買いに来たんだけど、ここにある武器で一番高いのを売ってもらっていいかしら?」

 

「へい!ただいまお持ちいたしやす!」

 

キュルケはサイトに一番高い武器をあげるつもりらしいけど出てきた剣は宝石が散りばめられている見た目が派手なだけのガラクタ。しかも材質は鉛に金メッキというナマクラもいいところだった。もちろん観賞用。キュルケはサイトに剣をあげるんじゃなかったんだろうか。まあ、指摘しないけど。

 

「これが一番高い剣でエキュー金貨で4000新金貨で5000でありやす」

 

「ちょっと高いわね」

 

キュルケが剣を買う横でタバサが私に話しかけてきた。

 

「モアは魔法ではなく武器を持つべき。買うから選んで」

 

「あら?タバサみ何か買うの?じゃあ店主、これも付けて安くしてくれると嬉しいな~」

 

そう言いながらキュルケは台の上に足を乗せる。太ももが大きくはだけて見える。タバサがキュルケには聞こえないように

 

「痴女」

 

と一言言っていた。大賛成である。

 

「へ、へい!では新金貨で3500はどうでしょうか」

 

そう言いながら店主はキュルケの色仕掛けにどはまりしているようだ。

 

「じゃあこれでいい?」

 

私が選んだのは鉄扇。隠しやすく、扱いやすい。リーチは短いけど私には問題ない。値段は新金貨500らしい。価値がどのくらいかわからないけど。

 

「わかった。エルザのは?」

 

「エルザは特に力があるわけでもないし武器の使い方を知っているわけでもないから良いと思うわ」

 

実際エルザが戦うようなことになるとは思えないし、戦ったとしても下手したら負けるからエルザが戦うことはほとんど無いと思う。

 

「店主~。もうちょっとだけ、ね?お・ね・が・い」

 

「へ、へい!では新金貨で1000!これ以上は下げれねえです!」

 

あのあと何回か押し問答を続けて遂に4分の1にまで下げさせた。キュルケの格好はまるで娼婦のようにはだけている。

 

「わかったわ。それでお願いね。タバサ、行くわよ」

 

「へ?」

 

交渉が終わった途端、金貨の入った袋を台に置き、大胆に机の上に出していた太腿をしまって店を出ていくキュルケ。店主は呆然としているけど色仕掛けにはまった方が悪い。

 

 

 

 

 

そのあと一通りトリスタニアを楽しんでから帰った。帰る頃には日は落ちていて私たちは直接ルイズの部屋に向かった。エルザは念話で呼びかけても起きない。よほど安心したのかもしれない。

 

「これはどういうこと!ツェルプストー!何であんたがこんな剣を渡すのよ!」

 

「あら、ダーリンが欲しそうな剣を買ってきたのよ。文句ある?」

 

現在ルイズとキュルケは言い争い中。サイトはどっちの剣がいいかおろおろしてる。タバサはもちろん気にせず読書中。

 

「うわ、この剣なんかキラキラしてる!すげぇ!」

 

「でしょう?あんなオンボロの剣捨てダーリンはこの剣を使うべきよ」

 

「誰があんたなんかが買ってきた剣を使うのよ!サイト!あんたにはあのしゃべる剣があるでしょ!その剣を離しなさい!」

 

しゃべる剣とはあのボロボロの剣のことで、デルフリンガーというらしい。たまたま近くに置いてあったので色々お話していた。なんでも数千年も昔に作られたらしい。しかし最近はずっと寝てて自分の能力を忘れたらしい。

 

「このままじゃ埒があかないわね、ツェルプストー、決闘で勝負をつけましょう」

 

「いいわよ。ヴァリエール」

 

そう言って二人が杖を相手に向ける。呪文を唱えようとした瞬間タバサが杖を魔法で取り上げた。

 

「ここは室内。決闘は屋外でやるべき」

 

あ、止めはしないんだ。と言うかこの間決闘は禁止されてるって聞いたけどいいのかしら。

 

 

 

 

 

それから外に出たけど決闘で怪我をするのは嫌らしく、サイトをロープで吊るして先に落とした方が勝ち。ということになった。呆れてなにも言えない。

 

「おーい、本気かお前ら」

 

サイトは情けない声を出してる。

 

「ヴァリエール、あなたに先攻を譲るわ。そのくらいはハンデがないとね。使う魔法は自由よ」

 

「わかったわ」

 

ルイズは硬い顔で答える。

 

「ファイヤーボール!」

 

ルイズが魔法を唱えるとサイトの近くの壁が爆発して粉々になった。

殺す気か!とサイトの悲鳴が聞こえる。キュルケは笑い転げているけどあの魔法は私でも防ぎきれるかわからない。ルイズには逆らわない方が賢明かも。

 

「すごいわルイズ!ロープじゃなくて壁を壊すなんて器用ね!あはははは!」

 

そのあとはキュルケがファイヤーボールを唱えて見事サイトを落とした。サイトは落ちる途中でシルフィードに捕まえられてから地面に転がされる。

 

「私の勝ちよ!ヴァリエール!」

 

そう言ったとたん背後から魔力の気配。誰か居たのは知っていたけど魔法を使ったようだ。

振り返るとそこには30mくらいありそうな土ゴーレムが立っていた。そのゴーレムがこちらに歩いてくる。

 

「きゃあああ!なによこれ!」

 

そういってキュルケは逃げていく。サイトも逃げようもするけどロープが絡まってうまく動けないようだ。

 

「何であんた縛られてるのよ!」

 

「お前らが縛ったんだろ!くそ、ルイズ!モア!お前らだけでも逃げろ!」

 

迫り来るゴーレムの足を前に覚悟を決めたらしいサイトは私たちだけでも逃がそうと必死に叫ぶけど、人間の足で逃げれる時間はない。

その時シルフィードが間一髪サイトとルイズを拾い上げた。私はサイトの縄をつかんで一緒に脱出した。

シルフィードが上空まで上がると私たちはタバサの魔法でシルフィードの背中まで移動して上空からゴーレムを見る形になった。

 

「何なのよ一体...」

 

ゴーレムは私たちを無視して学院の壁を殴っている。何回か殴ったところで学院の壁は崩れてゴーレムに乗っていた人影がその穴の中に入っていく。

すぐに出て来たかと思えばそのままゴーレムに乗って森の中に消えていった。

私はあのゴーレムの術者を捕まえる気はないし、タバサも捕まえろとは言ってこないのでそのまま見送ったけどよかったんだろうか。

 

 

 

 

 

翌朝、昨日の騒ぎで朝からガヤガヤとうるさい。話を聞いたところ、昨夜のゴーレムは最近噂になっているフーケという盗賊の仕業らしい。

フーケは宝物庫を壊して『破壊の杖』という宝を盗んでいったらしい。確かに何か大きなケースを持っていた。

私達は第一発見者として他の教師たちと宝物庫にいる。

 

「全く、衛兵どもは何をしていたんだ!やはり衛兵と言えど平民。あてには出来ませんな!」

 

「そういえば昨日の宿直はミス・シュヴルーズではなかったですかな?」

 

「ミス・シュヴルーズ!貴女はなにをやっていたのですか!?」

 

「も、申し訳ありません。お腹の調子が悪くて寝ていたのです...」

 

なんとまあ、弱いものイジメが好きな貴族達だ。世界が変わっても貴族の性格は変わらないらしい。

 

「これこれ、あまり女性を苛めるものではない。儂らは誰一人として宿直を真面目にしたことが無かったのじゃ。それにまさかフーケが学院の宝物庫を狙うなど誰も思わんかった」

 

オスマンが一言いうと貴族たちが急に静かになり下を向く。シュヴルーズと言われてた女性だけはオスマンを尊敬の眼差しで見ているが。

 

「ですがオールド・オスマン。これからどうするので?」

 

「ふむ、犯行の現場を見ていたのは君たちじゃったな。詳しく教えたまえ」

 

オスマンが私達にそう言うとルイズが前に出て犯行の一部始終を話す。

 

「突然、大きなゴーレムが出て来てここの壁を破壊したんです。そのあとゴーレムに乗っていた人が何かを持ち出してそのまま森に消えてしまいました」

 

「ふむ、手掛かり無しか。困ったのう」

 

その時、宝物庫の扉が開き誰かが入ってくる。確かオスマンの秘書だったはずだ。

 

「皆さん、お待たせ致しました」

 

「ミス・ロングビル!何をしていたのですか!フーケが現れて大惨事だと言うのに貴女は!」

 

すかさず貴族が大きな声をあげる。

 

「申し訳ありません!しかし、わたしは今までとある調査をしていたのです」

 

しかし、この人昨日のフーケと同じ魔力の気配がする。ここまで似てるとなると双子か同一人物しかいないだろう。どちらにせよこの事件に深い関わりがありそうだ。

 

「ほう?調査とな」

 

「はい。調査の結果、フーケのアジトを発見致しました。ここから馬車で四時間ほどの所ですわ」

 

「ふーむ。その情報は信用できるのかね?」

 

「近くの農民に聞き回った結果、森の奥の小屋にフーケらしき黒いフードを被った人物が入っていったそうですわ」

 

「黒いフード!!それはフーケに間違いないですぞ!オールド・オスマン、今すぐ王室に報告して兵を向けてもらいましょう!」

 

「バカモノ!王室に報告してる間にフーケは逃げてしまうわ!これは魔法学院の名誉もかかっておるのじゃ。当然、儂らで解決するしかあるまい。我こそはフーケを捕まえて見せる!と思うものは杖を掲げよ」

 

オスマンはそうハッパをかけるが誰も杖をあげない。保身が一番のようだ。

 

「おや?誰も杖を掲げないのかね。成功すればシュヴァリエや精霊勲章を貰えるのじゃぞ?」

 

すると、ルイズ、キュルケ、タバサが杖をあげた。

 

「ミス・ルイズ!貴女は生徒ではないですか!それにミス・キュルケにミス・タバサも!」

 

「だって、誰もあげないじゃないですか!」

 

「ヴァリエールには負けられませんわ」

 

「二人が心配」

 

そんな三人を見て他の教師は口々に何かを言うが誰も杖はあげない。貴族はどこの世界でも我が身が一番可愛いらしい。

 

「ふむ、ではこの3人に任せるとするかのう」

 

「わたしは反対ですわ、オールド・オスマン!あの3人はまだ子供で、さらに生徒なんですよ?」

 

「ふむ?では君が代わりに行くかの、ミス・シュヴルーズ?」

 

「あ、い、いえ。わたしは頭痛が酷いので...」

 

「彼女達は敵の姿を見ておる。その上、ミス・タバサはシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いておるぞ」

 

「ホントなの?タバサ」

 

シュヴァリエと言うのがどのくらいすごいのか分からないけど他の人が驚くくらいには凄いらしい。

 

「さらに、ミス・ツェルプストーは多くの軍人を輩出した家系で、彼女自身も火のトライアングルと優秀じゃ」

 

キュルケは得意気に髪をかきあげた。

 

「えー、そして、ミス・ヴァリエールは数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール公爵家の三女であり、その、勉学は大変よい成績を出しており、えー、あ!その使い魔は平民でありながらグラモン元帥の息子と決闘して勝ったという噂じゃ」

 

ルイズは胸を張りながら、ん?と疑問に思っている。

 

「この3人に勝てると思うものは前に一歩出よ!」

 

オスマンがそう言うと教師は全員一歩下がる。まるで示し合わせたかのようだ。オスマンはため息を吐いてから、

 

「それでは馬車を用意しよう」

 

と言った。




語尾や口調が安定しないのはご愛嬌。補完してくれるとありがたいです。

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