ゴブリン編、後編です。
「おい待て! もう村を出る気か!?」
ナラブ村の入り口から、剣を持った一人の青年が村を出ようとしていた。
しかしそれを、村長のラナバが引き止めている。
「ああ。 ここでのんびりしてたら、救える命がどんどん減っていくからな。」
「…そうか。」
「じゃあな、おっさん。」
「…いつでも戻って来ると良い。」
「…」
ラナバの説得は失敗に終わり、青年は村を出て行った。
「もう戻らない。」
「良かったぜ…そんな簡単な方法で。」
「…ほざけぇっ!!」
悟空の一言にエビルフラワーは憤りながら、地面から根を生やして攻撃した。
それを悟空は身体を逸らして回避し、続く二回目の攻撃も跳んで避けた。
「でりゃぁっ!」
「むぅっ!?」
そして気弾を飛ばし、反撃する悟空。 しかしエビルフラワーは、その攻撃を根でガードした。
「ギヒヒヒ…おかしな魔法を使うようですが、残念でしたね…」
「くっそ〜…厄介だな、あの根っこ…」
「悟空! 退いて!」
「へっ?」
「ファイアボールッ!」
悟空が背後を振り返ると、両手を向けたルフェの手のひらから、火の玉のようなものが現れていた。
「燃えなさいっ!」
「おわっ!?」
「なっ!?」
そして、ルフェから火の玉が放たれ、エビルフラワーの顔目掛けて飛んでいった。
「ふんっ!」
「えっ!?」
しかし、ルフェのその攻撃は空振りとなった。 エビルフラワーは自らの身体を地面に潜らせ、魔法を回避してしまった。
「…!」
「ギヒヒ…甘いですね…」
「そ、そんな…」
「気にすんなルヘ! だりゃあっ!」
続けて悟空は、エビルフラワーに攻撃を続けていく。 パンチ、キック、パンチ、気弾。 あらゆる攻撃を仕掛けるが、どれもエビルフラワーの根によって防がれる。
逆に、悟空はエビルフラワーからの攻撃を回避するしか無くなっていた。 おまけにいくつかの攻撃が掠り、ダメージが徐々に蓄積されていく。
「ご、悟空が防戦一方だなんて…」
「…」
しかし、悟空は無謀な攻撃を続けている訳では無かった。 攻撃の中で、悟空は戦いに勝つため思考を巡らせる。
やっぱし、オラの攻撃はこうやって簡単に防ぐのに、さっきのルヘの攻撃は避けてた…って事はたぶん、あいつは火が苦手なんだ。植物だから、燃えんのはやべえって事か。
かめはめ波で攻撃するってのもあるが、今のオラの身体じゃ溜めがいる。 あいつがそんな隙を与えるとは思えねえし、撃てたとしても気弾と同じように防がれるか、避けられる…
(つまり、ルヘの魔法に頼るしかねえって訳か…!)
すると悟空は後退してルフェの隣に立ち、ルフェだけに聞こえる声量で話し始めた。
「ルヘ、さっきの魔法もっかい撃てっか?」
「え? た、多分後5回くらいは…」
「おし…そんじゃ、オラが隙を作る。 そこにルヘがさっきの魔法で、あいつを攻撃してくれ。」
「え!? わ、私が!?」
「何をコソコソと!」
「くっ!」
時間を与えまいと、エビルフラワーは二人に向かって鋭い根を伸ばす。
その根を悟空は横から殴って折り、攻撃を防ぐ。
「おめえが頼りだ! 頼んだぞっ!」
そうして悟空はエビルフラワーに向かっていき、再び戦い始めた。
「そ、そうよ…やるのよルフェ…あなたが、私が…!」
ルフェは震える身体をどうにか止めようとしながら、魔法を撃つ構えを取る。
魔法を放つチャンスは、あの魔物の注意が完全に悟空へ向いた時か、魔物の視界から自分が外れた時。 そのチャンスを逃せば、魔法は二度と当たらないだろう。
自分のために、そのチャンスを作ろうとしてくれている悟空のため、ルフェは息を飲み、覚悟を決めた。
「だりゃりゃりゃりゃりゃっ!」
「何度やっても学習しないですね! 無駄だという事を!」
悟空はエビルフラワーに再び連撃を浴びせるが、やはりことごとく防がれる。 このままでは、隙を作ることすら難しいだろう。
「…なら、こいつはどうだっ! だだだだだだだだっ!」
「なっ!?」
すると悟空は、気弾を連続で放ち始めた。 エビルフラワーはその攻撃を、何本もの根で防ぐ。
「小癪な…何をやっても無駄だと…」
「へへ…」
しかし、その攻撃は一つのチャンスを作った。
気弾の爆発で出来た煙によって、エビルフラワーの視界は塞がっている、このチャンスが。
「今…! ファイアボール!」
そうしてエビルフラワーに向けて、ルフェは火の玉を放つ。
「ん…? 何!?」
「当たれぇーっ!」
「う、うおおおっ!!」
火の玉は飛んでいき、エビルフラワーの目前まで迫る。 誰もがこのまま当たると思った、その瞬間だった。
…だが。
「はぁっ!」
「あっ!?」
「そ、そんな…!?」
エビルフラワーは寸前のところで身体を逸らし、火の玉を回避してしまった。
ルフェの顔に、絶望の色が現れ始める。
「おのれ…エルフの小娘が…」
「あ、あぁ…」
「…まだだっ! こっちを見ろ!」
「何?」
「目ぇ瞑ってろルフェ!」
「っ!?」
悟空の声を聞き、ルフェが瞳を閉じた次の瞬間、悟空は両手を額の上に構え、技の名を叫んだ。
「太陽拳ッ!!」
「!!」
太陽拳。 気の力で人工的に作る光によって、相手の視界を奪う技。 そうして悟空の額から放たれた光が、エビルフラワーの眼球を、薄暗い洞窟の中を照らした。
突如放たれた眩い光に、エビルフラワーは思わず目を開く。
「ど、どうだ…」
「……ギヒヒ…」
「あっ!?」
…だが、エビルフラワーはまるで怯む様子が無く、それどころか余裕の笑いをしてみせた。
「何かしたようですが、私には全くの無駄だったようですね?」
「ち、ちくしょう…」
「逆に…先ほどより元気が湧いてきますよぉっ!」
植物であるエビルフラワーには、太陽拳は無意味どころか逆効果だった。
エビルフラワーは悟空の腹を目掛けて、先ほどよりスピードがアップした根を生やして攻撃した。
「がはっ…!?」
「まだまだ行きますよぉっ!」
そして、悟空の足に根を巻きつけ、痛ぶるように何度も地面に打ちつけた。
「うぎゃあああっ!!」
「ど、どうしよう…このままじゃ…このままじゃ悟空が…」
「ギヒヒ…そうだ!」
エビルフラワーは一度、悟空に対して攻撃の手を止めた。 かと思うと、悟空を根で拘束した。
「最後に見せてあげますよ! お仲間が目の前で死ぬ場面をね!」
「なっ!? に、逃げろルフェッ!」
「えっ?」
すると地面から根が生え、ルフェの手足を拘束した。
「ッ…!」
「ギヒャヒャヒャ!! このまま手足を引きちぎってやりますよおっ!」
「や、やめろーっ!!」
自分のために必死に叫ぶ悟空を見ながら、ルフェは歯を食いしばりながら目を瞑った。
…私は、何のために里を出たのだろうか。 私の人生は、冒険者として名を上げる事も出来ず、この誰も知らない洞窟の中で、折角助けてもらった恩人の何の役にも立たず、憧れの勇者、ユウト様とも会えず、ひっそりと死んでいくだけなのだろうか。
悔しさに、ルフェは涙を流した。 …しかし、『お前が頼りだ!』という悟空の言葉が想起された。すると、ルフェの心に火が灯り始めた。
…このままで終わりたくない。 まだ何か、何かあるはずだ。こんな私を頼ってくれる人のためにも…憧れの人に会うためにも…
「小娘! 最後に言い残すことは?」
「……負けて…」
「んん?」
「…負けて! たまるかっ!」
ルフェは、片手から火の玉を出した。
「なっ!?」
「燃えなさいっ! 私と共にっ!」
ルフェは唯一動く手の関節を動かし、そして地面から生える根に向かって、火の玉を飛ばした。
火の玉は根に当たり、そして炎が燃え広がった。
「ぎゃあああああああっ!?」
炎は地面に伸びる根にも伝わっていき、やがてエビルフラワーの体にも燃え移った。 エビルフラワーは炎により、もがき苦しみはじめた。
そのおかげで根を維持出来ず、悟空とルフェの拘束が解かれる。
「へへ…やったな! ルフェ!」
「いやあああっ!! 熱い熱い熱いっ!」
悟空はルフェの成功を祝おうとするが、しかし炎は、ルフェの上着にも燃え移っていた。
「いっ!? で、でえじょうぶか!?」
「全然大丈夫じゃないわ! もうっ!」
ルフェは着ていた上着を脱ぎ捨て、なんとか火だるまにならずに済んだ。 上着は灰となり、地面に黒いシミとして残った。
「あちゃー、服が無くなっちまったな。」
「良いのよ。 服の一つぐらい、安い代償よ。」
不敵な笑みを浮かべながらルフェは、地面の黒いシミから、燃え苦しむエビルフラワーへ視線を移す。
「ああっ…っあああぁぁ!! おノれ! おのレ ニンゲンッ!!」
「さ、トドメ刺しちゃいなさい! 悟空!」
「いいんか?」
「ええ。 あなたのカッコいいとこ、見せてもらうわ!」
「へへ…じゃ、遠慮なく!」
ルフェの言葉通りに、悟空は姿勢を変え、トドメに入る。
腰の右で両手を上下で合わせると、青色のエネルギーが溜まり始めた。
「か…」
「ヒッ!? な、何だその魔法は?」
エネルギーはどんどんと光を強め、炎で赤く燃える洞窟内を、青色に染め上げた。
「待ってくれ! 捕えていた人間共は返…」
「め…」
エビルフラワーの言葉に聞く耳を持つ事は無く、光はさらに大きさを増していく。
「は…」
そして光はまるで、青く小さな太陽となり…
「め…」
「あ…やだっ! 死、死にたくない…死にたくないぃっ!」
「報いを受けなさいっ! この化け花!」
ありったけ溜まったエネルギーの塊を、悟空はエビルフラワーに突き出して放出した!
「波ァァァァァァッ!!」
エネルギーは力強く飛んでいき、エビルフラワーを飲み込むほどの大きさで迫って行った。
「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッ!!」
そうしてエビルフラワーを巻き込み、洞窟をぶち抜き、森を抜け、果ては光る雲を突き抜けた。
伸びていくこの一筋の青い光は、彼がやがて出会うであろう強者たち、仲間達、そして、彼の
「うは〜、なんすかねあれ…どっかの勇者が暴れてるのかな?」
「…」
「兄貴、どうしました?」
「何でもない。 さっさと王都とやらに連れて行け。」
「へいへい! さっさと行きましょう! 兄貴!」
「…」
その勇者は歩いていく仲間の後ろで振り返り、空を見上げると、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
この世界で待つ、ライバルとの新たな戦いに思いを馳せて。
「…フッ。 待っているぞ、カカロット!」
「ハァッ…ハァッ…ハァッ…」
「…やったわね、悟空。」
力を出しきり、疲労した悟空に、ルフェは拳を突き出す。
「…! へへっ、ああ!」
悟空も拳を突き出し、ルフェと悟空は戦いの勝利を祝うのだった。
「それにしても、今の攻撃凄かったわね! あれって何なの?」
「あれはかめはめ波っちゅう、オラの師匠の、亀仙人ってじっちゃんが教えてくれた技だ!」
「悟空の師匠が!? ば、馬鹿みたいに強いあなたを鍛えた人って、どんだけ凄い人なのよ…」
「へへ…」
自分の師匠を褒められ、どこか嬉しく感じた悟空は穏やかな笑みを浮かべた。
「でも凄いと言っちゃ、ルヘも凄かったぞ!」
「えっ、私が? 私は何も…」
「だっておめえ、自分と一緒にあいつを燃やそうとしてたじゃねえか! まさかあんな危ねえこと出来るなんて、やるなぁ!」
「…」
必死に勇気を出して行動したものだったが、思えば馬鹿な行動をしたと思っていた。 しかし悟空からそれを褒められ、思わぬ言葉を送られたルフェはハッとした後、喜びに満ちた笑顔で返した。
「勇者様と…あなたと共に旅をするんだから。 これくらいの勇気は持ってて当然よ。」
「ひひっ、そっか!」
顔を合わせて笑い合う二人。 日の光が、二人の間に差し込んでいた。
だが突然、そこへ小さい子供が走るような足音が響いてきた。
「! ご、ゴブリン!?」
「らしいな…気ぃつけろ! ルフェ!」
二人は光っていない方の穴を睨み、構えた。
すると、穴から一匹のゴブリンが汗をかきながら現れた。
「アッ! ニンゲンッ!」
「ふぁっ! ファイアボー…」
現れたゴブリンに対し、ルフェは呪文を唱えて出した炎の玉を向けた。
「ワァッ!? マ、マッテクレ!」
「ちょっと待てルヘ! あいつ言葉喋ってっぞ!」
「えっ? そうなの? じゃあ…」
ゴブリンたちが正気に戻った事を知ったルフェが、出した炎の玉を消し、悟空と共に構えを解くと、ゴブリンはホッとして息を吐いた。
「タ、タスカッタ…」
「で? 何の用よ、あなた?」
「ジ、自由ニ動ケルヨウニナッタカラ、アノ化ケモノノ死ニガオヲミテヤロウト…」
「…背後から不意打ちしようとしたんじゃなくて?」
「ソ、ソンナコトシナイデスヨ! ヤダナァ…」
「なあ、ここで捕まってる村人のみんなは無事か?」
「エッ? ア、アア無事デスヨ! イマハココノ牢屋ニ捕エラレテマス!」
「じゃあその人達、ここへ連れてきてくれる?」
「モ、モチロン!」
ゴブリンたちは、『アンナバケモノヲ殺シタ奴等ニ逆ラッタラ、殺サレル…ミンナ、殺サレル…!』とビビりながらも、捕えられていた人達を連れてきた。
「コイツラデ全員デス。」
「あんがとな! やっぱおめえら良い奴だな〜!」
「ハ、ハハハ…」
「私たちにビビってるだけだと思うけどね…みんな気を失ってるけど、何かした?」
「ナ、ナニモシテナイデスヨ、奥サマ!」
「ふーん…まあ良いわ。 さあ、早くこの人達を村まで連れていきましょ、悟空!」
「おう!」
「あなたたちも手伝いなさい! でないとぶっ飛ばすわよ! 悟空が!」
「ヒッ!? ハ、ハイッ!」
ゴブリン達にも脅しとも言えるやり方で協力を仰いだルフェは、倒れ込んだ村人の一人へ手を伸ばした。
「…キキッ!」
すると、後ろから聞こえるはずの無い声が響いた。
「ッ! ルフェ、危ねえっ!!」
「へっ?」
咄嗟に悟空は、ルフェを突き飛ばした。
その悟空の胸を、黒く鋭い根が突き刺した。
「がっ…!」
「ダ…旦那サマッ!!」
「えっ…嘘…なんで…?」
「ギヒャヒャヒャ! ざ、ざまあみろぉっ!!」
理解が追いつかず、突き刺された胸から血を流す悟空を見続けるルフェ。 そんなはずはない、生きているはずがないと、おそるおそる背後を見た。
そこには倒したはずのエビルフラワーが、日光を背にして現れていた。
そのエビルフラワーを見ると、ゴブリン達は一目散に逃げ出した。
「ウワァァッ! ニゲロォォッ!」
「な、何で…生きてやがんだ…」
「ギヒヒヒ…危なかったですよ…もうちょっとの所で消し飛ぶ所でした…」
「危なかった…? あの攻撃で…? な、何を…何をしたのよ!?」
「何もしていませんよ。 ただ耐えただけです。 ギリギリ、ね…」
「は、はは…ふざけてんじゃ…無いわよ…」
そんな訳がない。 何か見落としただけのはずだ。 ただ一歩足りなかっただけなんて…自分たちの実力が足りなかっただけなんて、そんなはずが無い。
そう言い聞かせながらも、ルフェの目には絶望の涙が浮かんでいた。
「ふう…日光のおかげでだいぶ力が戻ってきました。 では、貴様らをここで消すとしましょう!!」
上手くいくと思ったのに。 私が認められる日が来たのに。
絶望に打ちひしがれるルフェと悟空へ、何本もの根が伸びていく。
「ギャヒャヒャヒャヒャヒャッ! 死ねええっ!」
二人を悪魔のように笑い、串刺しにしようとするエビルフラワー。
その笑うエビルフラワーの顔は、突如真っ二つに裂けた。
「え…っ」
「っ!?」
「な、なんだ?」
真っ二つに裂けたエビルフラワーは地面に落ち、エビルフラワーと共にその根は消滅していく。
「おめえは…?」
「…ん? お前ら、ゴブリン退治に行ってたんじゃ無いのか?」
エビルフラワーがかつていた場所には、剣を持った青年が立っていた。
「助かっ…た…?」
「あ。」
「あっ! ルヘっ!」
一安心したルフェは、疲れからか気を失って倒れた。
「…ルフェ。」
…誰の声だろうか。 どこか懐かしくも、愛おしいような。
最近は、よくこの夢を見る。 人間の男が、自分と共に歩いている夢だ。
「おい、ルフェ。」
しかし、自分はこの人間の男を知らない。 知らないはずだが、一体…
「起きろ! ルヘ!」
「わぁっ!?」
知らない男の声は突如悟空の声へと変わり、ルフェはその声で飛び起きた。
「随分うなされてたなー、でえじょうぶか?」
「へっ!? え、えぇ…」
「なら良いや! 飯出来たから、こっち来てくれ! こいつがいっぺえ魚くれたんだ!」
そう誘う悟空の隣には、先ほどエビルフラワーを切った青年が、悟空と共に焚き火で魚を焼いていた。
ルフェは焚き火の前へ来ると。青年の隣に座った。
「あなたはさっきの…」
「さっきは悪かったな。 ボスを横取りして。」
「ぜ、全然大丈夫よ! おかげで助かったわ!」
「ああ、なんならこっちは助かってばっかだぞ! 傷が治るすげえ薬もくれたしさ、逆に恩返ししてえくれぇだ!」
「そうか、なら良かった。」
すると青年は立ち上がり、置いていた剣を持ってその場を去ろうとした。
「ま、待って! もう行くの?」
「村人たちはゴブリン共に村へ送らせたし、お前らの手当てもした。 もうここに用は無いし、俺には別の用事があるんでな。 ここでお別れだ。」
「そっか…今日はあんがとな! また会おうぜ!」
「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!」
ニカッと笑いながら、悟空は青年に手を振って見送るが、ルフェは逆に引き止めた。
何故だか知らないが、この青年には、夢に出てきた人間と同じような安心感がある。 せめて、名前だけでも知っておきたい。
「あなた…名前は…?」
「…ユウトだ。」
「…そう。また、会いましょう。」
ユウトは悟空達に背を向け、その場から去った。
ユウト…出来れば、また出会いたい。 そう思いながら、ルフェは悟空と共に青年を見送っ……ユウト?
「じゃあなユウトーっ! 今度会った時は、オラと手合わせしてくれーっ!」
「ユウト…え? ユウト? ユウト様?」
この場に出てくるはずの無い存在の名前に、ルフェは錯乱する。 そう、ユウトとはルフェが憧れた、最強と呼ばれた勇者の名だった。
「…ん?」
悟空とルフェと別れたユウトは、森の中を歩いていた。
しかし、その別れた二人がいるはずの背後から、何かが走ってくる足音がする。 ユウトは振り返った。
「なん…おわっ!?」
「ユウト様! ユウト様ぁーっ!」
すると、先ほど別れたはずのエルフが、こちらに抱きついてきた。
「な、何だお前! 離れろこのっ!」
ユウトは訳も分からず、抱きついてきたルフェを引き剥がそうとする。
「まさか、まさかこんなとこで会えるなんてーっ!」
「くそっ! 何だこのエルフっ!」
「る、ルヘってあんな奴だったんか…ちょっと意外だぞ。」
その場には走っていったルフェを追いかけて、着いてきていた悟空もいた。
「おいそこの! 見てないでこいつを離せ!」
「お、おう! 分かった!」
悟空はとてつもない力でユウトに抱きつくルフェを、なんとか引き剥がした。
戦いの後に生まれたこの新たな出会いは、はたしてどんな冒険を生むのだろうか…?
この小説は、話数を重ねるごとに文字量が増す…その意味が分かるな…?
書きたい事詰め込みすぎてなんか勝手に増えていっちゃう。