…どうもすみませんでした。
とにかく皆さん前回の誤字報告と感想ありがとうございます!!!!
…ユウトが勇者としてこの世界に召喚されてから、もう10年ほどの月日が経っていた。 彼は元々日本と呼ばれる国にいたが、ある日突然、他二人と共にこの世界に勇者として召喚された。 初めは未知の世界に戸惑っていたが、一緒に呼び出された二人の勇者と共に旅をし、助け合い、そして数多くの人々を救っていた。
その中で、彼らはユウトを筆頭にどんどん強くなっていった。 当時の魔王軍幹部では、まるで相手にならなかったと言う。 しかし、その強さが彼らの驕りを生んだ。 無策で魔王に挑んでしまったのだ。
魔王は彼らの想像以上に強大であった。 その結果彼らは完膚なきまでに叩きのめされ、勇者パーティは全滅の危機に陥っていた。 だが、その三人の中で最強であったユウトは、他の二人を逃すため、たった一人で魔王に立ち向かった。
結果、ユウトは魔王の呪いを喰らい、レベルが上がらなくなってしまったのだ。 そして、魔王はそのユウトの未来を嘲笑うかのように見逃し、魔王城から追い出した。
そうして、長い年月が過ぎた現在。 ユウトは強くなっていく周りに追いつけず、やがて周りからの評価は、『最強』から『最弱』へと変わってしまった。
絶望の未来に、ユウトは心を閉ざしてしまった。 もう勇者も世界も、何もかもどうでも良くなっていた。人目につかない所でのうのうと生き、常に死に場所を探していた。 が、ついに目の前に自分より強い魔王軍幹部が現れた。
「あまり調子に乗るなよ…人間!」
まさかいきなり、こんなレベルの魔王軍幹部が現れるとは。 思えば今日は本当に運が無い日だった。 戻りたくない場所には戻ってしまい、自分みたいなのを好いてくる、変なエルフに急に抱き付かれ。変な髪型の戦闘狂に挑まれ。
「こ、こんなの…レベルが…」
後ろのルフェというエルフは幹部の力に戦慄し、青ざめた顔でそう言った。
それを聞いて、自分もそんな思考が持てていたらな、と後悔の記憶を思い出した。『最強』と言う名声に酔い、レベルがまるで違う敵に挑み、そして力も名声も失った過去を。
…一体、何が足りなかったんだろうか。 何を間違えた? …勇気と無謀を、履き違えたのだろうか?
なら、もう間違えない。 間違いたくない。 恐らく目の前の敵は、いや間違いなく、自分よりレベルが高い。 つまり、ここで挑むのは無謀だ。
ユウトは理解した。 自分のやるべき事を、自分の死に場所を…
「…オラ、ワクワクしてきたぞ。」
…しかし、後ろの悟空と言う男は、そう言ってニヤリと笑いながら構えていた。
…何が? これのどこにワクワクするんだ? まさか戦う気か? こいつに負ければ終わりなんだぞ、こいつはバカなのか?
勇気と無謀は違うんだぞ?
眉を顰め、ユウトは悟空の言動に苛立ちを見せ始めていた。
「ん? そうか、お前が魔王様の言っていた、変な力を使うと言う勇者だな? 確か、気…だったか?」
「なんだ? オラの事知ってるんか?」
「な、何でそんな事…やっぱりあの花、魔王の手下だったんだわ!」
あの花とは、恐らく悟空を突き刺していたあの変な花だろう。 情報はすでに行き渡っていたか。…そういえば、悟空は何故、あんな死にかけた体験をしてもヘラヘラ出来るんだろうか?
「まあ、どうでも良い…何故なら今日、貴様らはここで死ぬんだからな!」
すると、ラレッタと言う幹部が両手を空に上げ、背後に大量の火の玉を出現させた。
「いいっ!? 何だあれ!? ルフェの魔法がいっぺえだ!」
「言ってる場合か! 来るぞ!」
「メテオライトファイア!」
幹部はそう唱え、火の玉の弾幕を放った。 このままでは、恐らく背後の二人が巻き込まれる。
「おわわっ!?」
「ちっ…お前ら! 俺の後ろに隠れろ!」
「えっ!? は、はいっ!」
「分かった!」
二人が後ろに隠れた事を確認すると、片手を地面に向けて呪文を唱えた。
「グランドウォールッ!」
すると、巨大な土の壁が現れた。 そこへ無数に降り注ぐ炎の弾が着弾し、攻撃を防いだ。
「た、助かった…」
「サンキュー! ユウト!」
「言ってる場合か! さっさと逃げろ!」
「へ? そりゃねえよ、オラもあいつと
悟空は真剣な眼差しでそう言ってきた。
この期に及んで何言ってる…!? バカか!? 死ぬぞ!? …そう言いたかった。口から出しかけたその言葉を、不思議な安心感が止めていた。
そうしていると、またラレッタが両手を空に掲げた。
「…元最強の勇者って名も伊達じゃないな。」
「だが、いつまで守り続けられるかな!?」
すると、ラレッタが先ほどとは違う、太陽と錯覚する様な巨大な炎の弾を作り上げはじめた…あの魔法は、自分が現役だった時代に無かった魔法だ。
しかし、作り上げるには時間がかかりそうだ。これなら詠唱が出来る。
「やべえっ! でけえのが来るぞ!」
「分かっている! …『我が剣は光子…光子となりて、邪悪を切り裂く光となれ…』」
「『母なる火よ、我らを導く炎よ、強く強く燃え上がり、我らの道を照らす太陽となれ…』」
ユウトとラレッタは、お互いを滅するため、詠唱で魔法の威力を高めていった。増幅していく魔力の光が、二人の身体を照らしている。
「な、なんだあ? 二人してぶつぶつ言い始めたぞ…」
「魔法の詠唱よ。 言葉で魔法の威力を高めてるのよ!」
そして、詠唱によって強大になったその凄まじい魔力を、言葉と共に放った。
「『やがて、我らの道を切り開く眩い光となれっ!』
「『そして、大地を燃やし、命を焼き尽くす太陽となれェッ!』グランドシャインファイア!」
放たれた二つの魔法は、目に見えるほどの強大な力を帯びて飛んでいき、激突した。 その力は大地を揺らし、そして眩く照らしていた。
「すっ、すっげえ…!」
「こ、これが高レベル同士の戦い…!」
「ぐぐぐぐぐっ…!」
「ははは…どうした!」
しかし、ラレッタの魔法が一枚上手だったようだ。 ユウトの魔法を、徐々に押している。
「そんな…ユウト様が押されてる…!」
「く、くそっ…!」
「最強と呼ばれていた勇者も、今となってはこの程度か!」
戦いの優勢に立ち、ラレッタはユウトを嘲笑うかのように高く笑った。
このままでは背後の二人が巻き込まれてしまう。 せめて自分が負けても、二人が逃げられる時間を稼がないと。
状況を悟ったユウトは、後ろの二人へ意識を向けた。
「お、お前ら…俺が奴の魔法を止めている隙に、早く逃げろ!」
幸い、あの幹部は部下を連れていない。 いつでも逃げられる状況のはず。 だが、二人は中々逃げようとしない。
「で、でもユウト様…!」
「良いから逃げろ! 死にたいか!?」
「…死にたくないです。 でも、ユウト様が死ぬよりかは…!」
「何バカなこと言ってんだ!? 自分の命の方が大切だ!! さっさと逃げろ!」
俺の心配なんてしないでくれ。 この世界には、俺よりもっとカッコよくて、もっと強い勇者がたくさんいる。
半ば諦めかのように、心の中でそう呼びかける。 …だが、そんなユウトに対し、悟空が穏やかな笑みを浮かべながら、口を開く。
「…そうは行かねえさ、ユウト。」
「ああ!?」
そう言いながら、火球を止めるユウトの隣に立ち、両手を上下に、そして構えた。
まさか俺を助ける気か? 冗談は良せ。 無謀な事をしようとする悟空に、そう言いたかった……だが、この構えにある謎の既視感に、その言葉はせき止められた。 この既視感はいったいどこから? しかし、その正体は、その記憶は、すぐに思い起こされた。 この異世界で見たわけではない、もっと前の記憶から。 その記憶ある感情は後悔でも、絶望でもない。
ワクワクしたような感情だった。
「か…め…は…め…!」
悟空の顔は昔テレビで見た、アニメの主人公と似ている。 いやそっくりだった。 でも何故? いや、まさか本物なのか…?
「お、お前…!」
そう考えると、また一つの記憶を想起した。 それは魔王に負けたばかりで、一人であてもなく世界を彷徨っていた頃の記憶。
何故この時の記憶が? そう思ったが、すると、ある事をまた思い出した。 焚き火の前で俯きながら、絶望の現実に泣き、彼は助けを求めるような言葉を呟いていた。
その時に思い浮かべていたのは、特徴的な髪型の、強くて明るくて、そして優しくて、大好きだったあの
『孫悟空』の顔だった。
「波ァッ!!」
悟空は言葉と共に気を溜めると、両手を突き出してそれを放ち、ユウトの魔法と共に、ラレッタの魔法を受け止めた。
「…お、おい! 待て! レベル15のお前がいくらやっても…」
「へへっ…そんなの、やってみなきゃ分かんねえさ。」
「分かるんだよ!! そのための
「いいや、分かんねえ……レベルとか…戦闘力じゃ…分かんねえから面白えんだ、戦いってのは!」
「はぁっ!?」
ユウトの言葉通り、かめはめ波が加わっても対して状況は変わらなかった。 さっきと変わらず迫り来る巨大な炎の玉が、こちらへ向かってくる。
だが、それでも悟空の笑みは消えなかった。
「ははははっ! これで勇者二人は同時に死に、私はその功績を讃えられる!」
「へへっ…どうかな?」
「はぁ?何だと?」
同じく隣で技を放っているユウトに向かって、悟空は語りかける。
「なあユウト!」
「あ…?」
「さっき見せようとした技! まだ見せれてなかったよな!」
「な、何言って…」
「…今、見せてやらぁっ!」
すると、悟空の周りに白い炎が現れ、その炎はどんどん赤くなっていった。
「はあぁぁぁぁぁぁっ…!」
「な、何だ!?」
それと同時に、かめはめ波の力も強まっていき、その変化にいち早くラレッタが気付く。
やがて悟空が纏う炎が完全に赤くなると、悟空はその技の名前を
「界王拳…3倍だぁぁぁぁっ!!」
『界王拳』。 そう叫んだ瞬間、かめはめ波がより大きい光線となり、ユウトの魔法と共にラレッタの魔法を吹き飛ばした。
「なぁっ!?」
ラレッタは跳ね返され、飛んできた魔法をギリギリのところで回避した。 意表を突かれ、頭に血管が浮き出始めたラレッタは、ギロリと睨むように悟空たちの方を向いた。
「何を…一体、何を…!」
悟空の姿を再び見ると、その身体は赤色に光っていた。 身体からは熱気のようなものが吹き、周りの大気を震わしている。
悟空はラレッタがこちらを睨んでいる事に気付くと、ラレッタと戦える戦力であるユウトの方へ声を掛ける。
「この状態はあまり保てねえ…ユウト! 行けっか!?」
悟空はそう言って振り向き、ユウトの顔を見た。 だが、ユウトの顔を見た悟空は頭を傾げた。
「…ユウト、大丈夫か? 何で泣いてんだ?」
「…何でもない。 ああ、いつでも行けるぞ。」
「おし! じゃあ…行くか!」
ユウトは目を拭き、目の前の強敵に向けて、剣を構えた。
悟空は絶対にこの戦いに勝つために、敵へ構えを取った。
そして二人は、まだ見ぬ
「頑張って…悟空、ユウト様!」
「おうっ!」
ルフェの声援に、悟空は応え、ユウトと共にラレッタへ向かっていく。
それに対し、ラレッタは迎撃の態勢を取る。
「身体の色が変わったぐらいで…良い気になるなぁっ! メテオライトファイア!」
怒号を交らせながらラレッタは再び呪文を唱え、迫り来る悟空とユウトに向けて大量の火の玉を浴びせた。
「「うおおおおおおおおっ!!」」
その火の玉を上回る速度で二人は回避し、一気にラレッタへ迫った。
「なっ!?」
「でりゃあっ!」
悟空は気を纏いながら、拳をラレッタに振るう。 しかし、ラレッタは後退してそれを回避。
「はぁっ!!」
「くっ! マジックガードッ!」
その回避した先に、ユウトの剣が迫る。 ラレッタは咄嗟に魔法でシールドを出し、それを防ぐ。
だが、すぐ横には急加速した悟空の拳が迫っていた。
「あっ!? ま、マジックガー…」
「だりゃぁっ!!」
「がはっ!?」
しかし、詠唱は間に合わず、拳を鎧の顔に受けてしまう。
「畳みかけっぞ、ユウト!」
「ああっ!」
「「うおおおおおおおっ!!」」
その好機を逃さず、一撃、また一撃とどんどん攻撃を入れていき、その攻撃はどんどん加速していった。
「「だあああっ!!」」
そして、二人は同時に攻撃し、ラレッタを吹き飛ばした。 ラレッタは地面にズザザ…と足で勢いを殺して止まると、また二人を睨んだ。
「はぁっ…はぁっ…お、おのれ…」
「トドメだっ!」
「
「こんな所で…負ける訳にはぁっ!!」
満身創痍のラレッタに、悟空とユウトは力を溜め始める。
このままでは負ける。 自分にそう思わせた想像以上の力を見せ始めた二人の連携に、ラレッタは今放てる最大級の魔法の詠唱を始めた。
「か…」
「『我らを導く恵みの光よ、大地を照らし、闇を裂き、我らの道を切り開く力を、我が剣に!』」
「め…」
「『万象を焼き尽くす母なる炎よ、我に立ち塞がる障壁を焼き払い、大地を燃やし尽くす炎を我が手に!』」
「は…」
「行けーっ!! 悟空! ユウト様ーっ!!」
「め…!」
そして三人は、全ての力を込め、全力の一撃を放った!
「『
「『グランドメテオボンバー』ッ!」
「波ァァァァァァァァァァァァッ!!」
草原の緑を変色させるほど輝く凄まじい光と共に、それらの技は三人の全力を以って放たれた。
悟空が放ったかめはめ波、ユウトが放った
「んぎぎぎぎぎぎぎぎっ…!」
「ぐっ…おおおおおおおおっ!!」
戦況は互角。 激突する光線と炎球は、その間の位置を大きく揺らしていた。
だが、その競り合いもすぐに終わる事となる。
「そ、その程度か勇者共…! その程度で…私が負けるか!」
ラレッタはトドメとばかりに、魔法はさらに力を込めようとする。 …が。
「ファイアボールっ!」
「がっ!?」
ラレッタの横顔に、突然火球が衝突する。 そのせいで、魔法の威力を上げる事に失敗した。 強く苛立ちながら、ラレッタは火球が飛んできた横を見る。
「べーっ!」
「お、おのれ…!」
見たのは、舌を出してラレッタを小馬鹿にしていたルフェだった。 そのルフェの魔法によって与えられた僅かな隙が、この戦いの勝敗を決めた。
「今よ! 二人共っ!」
「行くぞ…悟空っ!」
「界王拳…4倍だぁぁぁぁぁっ!!」
その叫びが大地に響き、一線の光が大きさを増した。 その光は炎の玉を貫き、ラレッタへ迫っていく。
「なっ!?」
光は、ラレッタをその身に包む鎧ごと包んでいき、大地を削りながら遙か彼方へと飛ばしていった。
「こ、こんな…こんなところでええっ!! ああああああっ!!」
その叫びが消えると、大地を削っていた光は消え、残ったのは息を切らしながら立つ悟空とユウト、そしてその二人に駆け寄るルフェだった。
「か…勝った…?」
「へへっ…ああ! オラ達の…勝ちだ!」
「悟空! ユウト様っ!」
ルフェは走りながら、疲れ果てたユウトへダイブしていった。
「おまっ…ばっ!?」
そのまま抱きつき、ユウトは地面に押し倒される。
「ルへ! さっきはあんがとな! おかげで助かったぞ!」
「大した事はしてないわよ。 …ただ、何もしてない自分が我慢できなくて、ちょっかいかけただけ。」
「それでも、そのおかげでオラ達が勝てたんだ。 ルヘにはすげえ感謝してっぞ!」
「…そう。 ありがと!」
「なあ…そう会話してる余裕があるなら俺から離れろよ…」
「あ! ごめんなさい…」
ルフェが離れると、ユウトは身体を起こし、そして悟空に顔を向けた。
「ユウトもありがとな! おめえがいなかったら、オラ達ここで終わってたかもしんねえ。」
「いや、良い。 それは俺も同じだったから……なあ、悟空。」
「ん? なんだ?」
「その…さっきは…ごめん。」
「さっきって? おめえなんかしてたか?」
「なっ…!?」
ユウトは、ラレッタが来る前の悟空に対する言動を謝罪したつもりだった。 だが悟空はその事を大して気にしていなかったのか、記憶から抜け落ちていた。
「あ、あれだ…ラレッタ…あの敵が来る前の、お前への態度だよ。」
「…? ああ、あん時か! ま、気にすんな。 無理言って挑んだんはオラだからな。」
「…ありがとう。」
「おう! …ところでさ、さっきまで街に向かってたけんど、おめえらはどうする? このまま向かうか?」
そう悟空は提案するが、さすがにこの体力を使い果たした状態で、街に行くなんて事は出来ないと理解していた。 故に、返答も予想はつく。
「…いいや、今日は疲れた。 日も暮れるし、今日は休もう。」
「ユウト様がそう言うなら、私もそうするわ。」
「ははっ、そうだな! そうすっか!」
いつの間にか、夕陽が三人を照らしていた。 戦いに勝利し、絆を深めた三人を、まるで祝福するかのように。
一方その頃、カノスバ街付近の洞窟にて…
豪勢な鎧に身を包んだ男が、巨大な獣のような魔物の前に立っていた。
「ギャオオオオッ!?」
「…まあ、こんなものか。」
男は魔物を一撃で下し、余裕の笑みを浮かべながら、倒された魔物の死体を見下ろした。
そんな男へ、数人の女が駆け寄っていく。
「さすが勇者様!」
「あんな魔物を一撃で倒すなんて!」
「……ま、僕にかかれば、ね…」
「ふふっ、さすがにその実力は伊達じゃないわね。
…最強の勇者、ミネハラ。」
これにて0章終了です。 あれ…? ミネハラって『巧戦の』って名前じゃなかった…?
果たして次の第1章ではどんな戦いが待ち受けているのか? と言いたい所ですが、それに移る前に一回ベジータ視点のお話を挟みます。 とにかくお楽しみに!!!