Vtuberよりも個性ある社員   作:匿名ライダー1号

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 甘いの食べたいby筆者


恩返し

 

 

 昨日の鶏肉をほぐしてお粥の中にぶち込んだものを朝ごはんとして食べながら今日の予定を組み立てる。

 

 朝は仕事場に行き同僚から仕事を奪い取り、昼は今後にあるコラボについて軽く話してからまた同僚から仕事を奪い取り、夜は奪い取った仕事を終わらせてベルさんと話す。夜の予定以外はいつも通りの日常だ。

 

 ベルさんを話し合いに誘う方法は後に考えるとして今は、身支度をしなければならない。

 

 自分は、口に含んだ栄養剤を飲み込みながらいつも通りの身支度を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Twitter(現X)始めました。さっき(三分前)

 

 慣れないスマホ操作に苦戦しながら同僚の助けもあり無事に自分のスマホがネットの海にと接続された。おぼつかない操作のせいで同僚からおじいちゃんかよと言われたので太腿の筋肉の割れ目に杖を突き刺しておいた。悶絶しててワロタ。

 

 なぜTwitterを開通したかといえば、ベルさんに連絡する手段がないからだ。どこかでTwitterとやらで相手にしか見えないメールを送ることが出来ることを思い出したからだ。

 

 他の連絡手段も、LINEの交換などしていなければ配信中かもしれない人の家のピンポンを押せるほど強靭な心など持っていないのだ。

 

 TwitterのDMの送り方がわからないため悶絶し終えた同僚にやり方を聞く。仕事しないとな〜と言っていた同僚に杖をチラつかせればすぐに教えてくれた。便利だなこの杖。

 

 しかし、残念ながらDMを送るには相互フォローという状態にしなければならないらしく今の自分の状態だと誰にもDMを送ることは出来ないと言われた。

 

 先にDMの詳細を調べなかった自分が悪いが遠回りした結果がこれなせいで少し損をした気分だ。

 

 目論見が外れたが落ち込んでいても仕方がないのでTwitterの投稿を見ることにした。

 

 フルカラと検索を入れて調べると1番上に公式が出てきてその下にフルカラに関係する投稿がズラリと並ぶ。画面上の横の線の短さがフルカラの歴史の長さを感じさせる。

 

 公式をフォローしてから下にスワイプしていくと出てくるのはライバーたちのつぶやきと呼ばれる短い文章やファンたちの感想のようなつぶやき。なんか文章ばっかで目が疲れてきたな...

 

 ライバー達をフォローしていくとなんと自分に関する投稿がされていた。内容は『サイクってやつ誰やねん』とのこと。

 

 ただの社員です。仕事をするのが生き甲斐なただの社員です。

 

 返信欄では、『暗躍者』『裏ボスやで』『デスゲームの主催者』『フルカラを裏から操る者』など大喜利のような状態になっていた。ただの社員なのに...

 

 その後は、スマホを見過ぎたことを同僚に注意され慌てて仕事を始めた。スマホって中毒性高いなぁ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ピンポーン』

 

 玄関から呼び鈴が鳴り響く。机の上に置いていた仮面を被り横に置いてある杖を握りしめ玄関へと向かう。

 

 仕事が終わってすぐに時間と来て欲しいとの旨を手紙に書いてドアポストにぶち込んで落ちたおかげか時間通りに来てくれた。

 

「こんにちは」

 

「こんにちわー、今日は入れてくれんですかー?」

 

「はい、これからのことで話し合っていきたいので」

 

「じゃー、お邪魔しまーす。あ、お土産ー」

 

 意外とこの人、礼儀正しいな。

 

 前回、ベルさんから貰ったクッキーを皿に移し替え机に粗茶と共に差し出す。うわ、遠慮なく食い出した。やっぱ礼儀無いな。

 

「それじゃあ、早速ですけど話していきますか。私がベルさんを家に呼んだのは他にありません。今から話し合いをします」

 

「ふぁなひはいー?」

 

 クッキーを口いっぱいに含み首を傾けながらこちらを見るベルさん。流石に説明を欠きすぎた。

 

「家が隣にあるってことは炎上に繋がることがたくさんあるのでそういうことに関したことを今から話していきたいなと思いまして」

 

「へー?ベルちゃんのこと信用してないんだー?」

 

「いや、何処を見て信用しろと?」

 

「正論で草」

 

 前回のコラボ配信から会議を経由してこの前のマネージャーさんに押し入り未遂事件。少しどころかだいぶ警戒しなければならないと自分は思っているのだが。

 

「私もこんな“ナリ”なので目立つということは自覚しています......そう思ったら社長の車出しを断って病院に行ったのは不味かったかも...」

 

「急に落ち込み出すじゃん、元気だそー?」

 

 今思うと特定されるかもしれないのに不用意に外出るのはダメだったかも...バレてないことを願おう。

 

「ともかく、可能性は限りなく低いですが目立つ私の近くにいるとベルさんが特定される可能性があるので部屋を移し替える又は、可能な限り接触しないのどちらかを選んでください。もちろん何か案があれば言ってくださいね」

 

「...うーん、なんでその二択なの?」

 

「私が考えた結果がこの二つです。この部屋、防音性はちゃんとしていますが万が一があります。もしかすると私の声が配信に入るかもしれないので」

 

「考えすぎじゃーん、そもそもベルちゃん部屋閉じ切って配信するから大丈夫だよー」

 

「まぁ、考えすぎなのは否めませんが。次に思いついたのが第三者からの情報漏洩です。この社宅寮はフルカラ社員以外はいませんがその社員さんは私とベルさんの顔を知っています。もし必要以上に接触が多ければ...まぁ...うん、そういう関係だと噂されその噂が漏れるかもしれませんので」

 

「ピュアだねー」

 

「ともかく!私が炎上して消えるだけならいいんですがベルさんが炎上して消えるのは嫌なんですよ」

 

 しかも恋愛してるって思われて炎上するなんて嫌すぎる。主にベルさんがそんな人だと思われるのが。

 

「考えすぎだよー?昔ならともかく今のファン、一部を除いてそういうことを含めて応援する人たちが多いよー?なんなら自分たちから恋愛に繋げようとする人たちも多いからねー」

 

 てぇてぇていうのやってみたーいと言うベルさん。てぇてぇって何?

 

 よくわからない単語が出たがそれでも不安は拭い得ない。芸能人が隠れて交際していたとテレビで放送されて炎上しているのを見ることが多いせいでベルさんの話を鵜呑みにできない。

 

「逆に聞くけどーなんでそんなに炎上とか恐れるのー?炎上なんてしない方が難しいし」

 

「それは...フルカラのためです。こんな杖付き仮面野郎を長いこと面倒見てくれてるフルカラに恩を返すためです。少しでも炎上を除くことが恩を返すことだと思ってるので」

 

 とりあえず、建前を言っておく。まぁ、嘘じゃ無いけど。

 

「...ふーん、炎上を除くって言ってるけど私がプチ炎上したこと忘れてなーい?ちょっと喋った時から思ってたけどもしかしてサイクさんって社会経験浅い?」

 

 うんわ...見抜かれた...この人意外と目敏い?なんでバレた?

 

「私、実はフルカラ全員の配信を観るんですよ。まぁ、唯一の娯楽が部屋の片隅でスマホを触ることしかなかったので必然でしたが。話を戻しますね、サイクさんの情報が出たのがカナ先輩の配信。そこからビー先輩やニル先輩と立て続けに」

 

「...」

 

「一期生の先輩方...部長が一言もサイクさんのことを話さないんですよ?変わってるものが好きな部長がです。そこから考えれることはサイクさんって二期生が所属したタイミング...二年程前ぐらいにフルカラに入社しました?」

 

「...詳しく言えば一年と半年ほどです」

 

 怖んわ!?なんでそこまで分かるの!?これがカナさんのマネージャーさんが言ってた変な情熱を持った人なのか!?

 

「人それぞれかもしれませんけど一年とちょっとじゃサイクさんの言う“長いこと”に入らないんじゃ無いのー?そこんとこどー?」

 

 皿の上に置かれている数少ないクッキーを手に取り口に含むベルさん。雰囲気は刑事ドラマみたいだ。犯人の気分ってこんな感じなんだ...

 

 ゲロっちゃった方が楽だよー?と清々しいほどに綺麗な笑顔でこちらを見つめるベルさん。ゲロるか...

 

「確かに一年とちょっとでは“長いこと”に含まれないと自分でも思います。ですが、恩を返す事には変わりありません。あの人が作った会社で働くことが私にできる唯一の恩返しですので」

 

「...もしかして社長?」

 

「そうです、自分みたいなまともに働くどころか人に迷惑をかけるような身体なのに面倒を見てくれる社長に恩を返すためにフルカラで働き始めました」

 

「あの日、初めて会ったはずの他人の自分を迎え入れてくれた恩を返すため。こんな自分の面倒を見てくれることの恩を返すため。たくさんの迷惑をかけた社長に恩を返すため。そんなたくさんの恩を返すために」

 

「俺はフルカラで働いています」

 

 俺がフルカラで働く理由を吐露する。叔父さんにも話したことが...いや恩を返したいって言って話してたわ。じゃあ、ベルさんが2人目か。

 

「...これが私がフルカラに恩を...迷惑をかけたくない理由です。嫌ってもらって大丈夫ですよ、ベルさんの心配じゃなくてフルカラへの...社長に恩を返すために炎上を回避しようとしてたんで」

 

 別に嫌われている事には慣れている。高校の時とかノリ悪くて結構嫌われてたし。

 

 話し終えて数秒経つとベルさんが立ち上がる。まぁ、嫌いな人と一緒に居たくないもんな。部屋に帰るのだろう。

 

 何も言わずに玄関のドアが開く音を聞こうとすると隣の椅子が引かれてそこにベルさんが座った。なんで位置変えた?しかもなんで隣?

 

「...帰らないんですか?」

 

「いやー?マネッネにプチ炎上の件で土下座する勢いで謝罪するぐらいに反省できる人を嫌いにはなりませーん」

 

 皿の上に残った最後のクッキーを口に放り込んで咀嚼するベルさん。そのお茶、俺の...

 

「ぷはー!その程度じゃベルちゃんの好感度は下がりませーん、私の親ぐらいじゃないと失望しないから安心してもろて」

 

 ...なんか闇が深そうな単語が聞こえたが一旦無視しよう。

 

「ていうか、私も社長に住むところとか配信っていう仕事貰ったから自分も恩を返さないといけないんだよねー」

 

 あとは分かるよね?という視線がこっちに向けられる。

 

「だから協力しよ、私もサイクさんも社長に恩があってその恩を返したい同士。ベルちゃんとサイクさんなら一緒に頑張れるよ」

 

 ね?とこちらに笑いかけるベルさん。これじゃあ共犯者じゃなくて協力者だな。

 

「こちらこそお願いします」

 

 まぁ、そっちの方がいいけども。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 恩返ししたい同士、仲良くなったので自分のこれまでを話す事にした。

 

 ベルさんは親が酒カス・ヤニカス・パチカスのモンスターペアレントを超えた魔物が住む家から独り立ちするためにここに応募したとのこと。

 

 家で副流煙を吸わないように部屋の片隅でうずくまってる時の娯楽がフルカラの配信らしく親という現実から目を逸らすために四六時中見ていたとのこと。

 

 この話を聞いた感想...重すぎん???壮絶すぎる人生すぎん???高校は卒業したらしいがそれまでそんな家庭環境で生きてたってこと???

 

 重すぎん?とベルさんに伝えると、

 

『いや、サイクさんの人生には負けるよ?ベルちゃんの人生より過酷じゃん。不幸すぎん?初めて不幸自慢で負けたー』

 

 と言われた。不幸に勝ち負けなんてあるのか?

 

 






 実は兄がインフルかかったんで弟のワイが書きました。上手く書けたやろ。多分。

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