『ラブコメ』なるものを、われも一度は書かむと思ひき(仮題)   作:らくべえ09

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ジャンルだけではなく他の作品と文体もちょっと変えてみました
初挑戦のジャンルなのでご意見・ご感想をいただけると幸いです


ひとの書く『ラブコメ』なるものを、われも一度は書かむと思ひき(仮題)

 

「え。あれ。……え?」

 自宅の前で、俺は思わず立ち止まった。

 誰か玄関の前でウロウロしてる

 

「ありゃ」

 ウロウロしてたヤツは、くるっとこっちを振り返って、

「ここ――君のうち?」

 

 と。

 首をちょっとかしげながらソイツは言う。

「そうだけど……。いや」

 

 っていうか。

 栗色の長い髪。丸っこい目。黒目大きい……。

 知らない女の子がそこにいる。

 

 いや。

 知らないっていうのは、ちょっと違って――

 顔は知ってるんだけど。

 

 その()はちょっとうなずき、

「ああ。そっか、そっか。じゃ君が()()()()()だ。曽良(そら)五馬(いつま)くん」

 ズンズンと近づいてきた。

 

「いえ、ちょ……」

 圧力。ともかくすごい圧力だった。圧力オブ圧力?

 背もフツーで、俺より小さい。

 

 だけど妙に迫力があった。

 顔は、顔は…………。まあ、うん。可愛い。それはハッキリ言える。

 何というか、美少女。

 

「私は、〝あざこ・のま〟。よろしく」

 その()はちょっと敬礼? みたいなポーズをとって、

「ちなみに、こういうモノです」

 

 いきなり、名刺を差し出してきた。

字子(あざこ) 野真(のま) Noma Azako **高等学校。1年*組』

「……えーと」

 

 これは、どういうギャグだ?

「裏には私の趣味も書いているからヨロシク」

「ヨロシクって……」

 

 見てみれば、確かに――

『酉年。蟹座。趣味。蟹キャラグッズ集め。小物から服、オモチャ。フィギュアなど色々。好きな食べ物。コーヒー。チョコレート。甲殻類(特に蟹)。カニちゃんじるしのオレンジサイダー』

「あー……、カニ好きなんだ?」

 

「うん、そう」

 女の子――字子(あざこ)野真(のま)はうなずいて、

「五馬クンは何が好きかな?」

 

「え?」

「食べ物とか趣味とか、色々あるでしょ?」

「いや……。なんで?」

 

 何でいきなり。

 というかも、まず第一に……。こう色々あるんだが。

 お前、どこの誰だよ?

 

 あ。

 名前は今わかったのか。

 アザコ・ノマ。

 

 いや、そもそも……。

 その()と会ったのって――……

 

 

        *

 

 

 ギョロリ。

 感覚としては、そんなだった――と、思う。

 あちこち見たけど、何もない。

 

 何なんだよ。

 ここしばらく、変な視線というか気配を感じる……ような?

 大きな目玉で後ろにいる?

 

 まあ、そんなのないわな。

 いつもの帰り道で頭を掻きつつ歩く。

 今日も部活は早く終わった。

 

 どこにでもある地方。

 今年からそこの地元高校に通う一般学生。 

 それが俺。名前は曽良五馬。

 

 高校にも慣れてちょっとだれてきた。

 入部したバスケ部はダラダラしてて、基本5時には終わる。

 ささっと初めて、ささっと終わるのだ。

 

 いや違うか?

 むしろよけーなことをせずに、さっさと練習して終わるんだな。

 ま、それはいいや。

 

 高校生活はまあ、フツー。

 特に良いことも悪いこともなくって、ドキドキハラハラもなし。

 彼女が欲しい、くらいは思ってるど。

 

 それもなあ?

 必死になって欲しいとか、作りたいというレベルでもなし。

 いたらいたで楽しい反面……。

 

「しんどいこともありそうだよなー」

 てなことを、高校入ってからできた友達と話したり。

「そうか?」

 

「らしい。いや、俺も知らんけどな」

「何だよそれ。経験者みたいなこと言って。マンガとかアニメの話か?」

 俺が言うと、

 

「違う、そうやない」

 と、入路(いりみち)真人(まひと)は大げさに首を振って上を見た。

 天井? いや、上の階?

 

 俺がつられて天井を見ると、

「いや上級生の話。2年の先輩。おんなじ部の先輩でな、どーしても話とか聞くことになるんや。本人も近くで見とるし」

「ああ、そういう」

 

 真人の言葉に、俺は納得。

 そこまで言って後、真人は急に黙り込んで特徴的な三白眼を動かしていた。

「なんだよ?」

 

「んー。いやちょっとな」

「何なんだよ」

 それから、特に何もなく――

 

 

 学校が終わって――

 駅から家まで歩いてる途中……だった。

 変なモンを見た。

 

 自販機の前。

 女の子がひとり、モゾモゾとじれったそうにしていた。

 その子は目ざとく俺を見つけ、

 

「あー、キミキミ」

 ひどくなれなれしいというか、図々しい感じの態度で、

「小銭持ってない? 200円くらい」

 

「え。あー……」

 つまり、飲み物を買いたいから金を出してくれ、と。

「ちょっと向こうに、コンビニ」

 

「あー、ダメダメ」

俺が言い切る前に、女の子はやっぱり図々しい感じで手を振りながら、

「わたし、これが飲みたいんだよ」

 

『カニちゃんじるしのオレンジサイダー』

見たことも聞いたこともないメーカーの、見たことも聞いたこともない炭酸飲料。

 というか?

 

 いちいち自販機なんか見ないし。

 割高だし、品ぞろえもまー微妙で飲みたい気持ちにはならない。

「だけど今小銭がさ」

 

 と。

 その()は片手で拝む仕草をして、俺にウィンクしてきた。

「……別に、いいけど」

 

 ああ、情けない。

 女子に免疫ないの悪いんだか、こんなんで流されて……。

 笑いのネタだ、コレ。

 

 自分でもわかっちゃいたけど。

「……ほら、おつりは返せよ? 言いたくないけど、そんなに金持ってないんだ」

「ありがと!」

 

 その()はパッと――

 俺の渡した500円玉を取ると、自販機に入れて――

 ポチ、ポチと――

 

「あ、ちょ」

 その()はすばやく()()()()()()()()を2本買いやがった。

「感謝! はい、これ」

 

「はいこれって……」

「いやー。君にもぜひカニちゃんサイダーのおいしさを知ってほしいな。で、ファンになってほしい」

 俺は、受け取るしかなかった。

 

 ああ、情けない……!

「ささ。遠慮しないで、グーッといこう! おいしくなかったら謝るから。ね?」

「金出したの、俺じゃん」

 

「はい、かんぱい」

 女の子はかたちのいいおでこを軽く突き出して、俺の缶に自分の缶をコツンと当てる。

「……なんなんだよ」

 

 完全に振り回されてる。

 我ながら嫌でも自覚したけど、無理に切り上げたり無視して歩き出す……とか。

 それは、無理だった。

 

 ……可愛いよな。

 一見わかりにくいけど、ものすごく可愛い。

 下手すればアイドルや女優より。

 

 いやいや。

 さすがに、それは言い過ぎか? 言い過ぎじゃないか? いや、やっぱり……。だが、しかし……。

 俺は半分無意識でサイダーを飲んだ。

 

「あ、美味い……」

 ひと口飲んだ途端思わず、素直なほめ言葉が出てきて自分でも驚いた。

 飛び上がるとか、泣き出すとか。

 

 そういう感じじゃないけど……。

「普通に美味い。いや普通なんだけど、他とは違うっていうか。他にないっていうか……?」

「うん。()()になる味だよね」

 

 女の子は嬉しそうにうなずくと――

 ゴクリ、ゴクリとものすごい、本気で美味しそうな顔でサイダーを飲んでいく。

 ううっ。

 

 動いてくその()の喉。

 その動きに、いや、彼女全部の動きとか、声とか……とにかく、全部が……可愛い。

 ……ダメだ、ダメだ。

 

 俺が首を振りかけてると、

「きみさ? この近所に住んでる? それか友達とかがいるとか、そういう?」

「え。いや、近所だけど……」

 

「そっか。()()()!」

 ひとりで勝手に言ってから、ひらひら手を振りながら彼女は走っていった。

「な、なんだよ。あいつ……」

 

 

        *

 

 

 それが、ついさっきのこと。

「あ、あのお前……いったい、何? 何でうちにいるんだよ? おい、まさか」

「別につけたわけじゃないよ」

 

 その()――ノマは首を振り、

「お父さんお母さんから、話聞いてない? 私、今日からここに住むんだよ。つまりは、君との同居」

 トンデモナイことを言いだした。

 

「はああああ!??」

 俺が驚いていると、ノマはポンとなれなれしい感じで肩を叩き、

「てなわけで。ヨロシク! キヒヒ」

 

 

 

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