『ラブコメ』なるものを、われも一度は書かむと思ひき(仮題) 作:らくべえ09
ヒロインの描き方はこれでいいのかと悩みつつ書いてみました……
「だからな?」
親父は露骨に面倒くさそうな顔をしながら、俺を見る。
「こうして謝ってるだろ」
「いや――謝るとかじゃなくって!」
俺は怒るより泣きたい気分で、目の前の親父と母ちゃんに食ってかかった。
「何なんだよ、同居って!?」
ノマと再会してすぐ――
大き目の段ボール箱が3つほど宅配業者が運んできた。
「じゃあ、玄関あけてくれる?」
ノマは、当然のように言いやがった。
ついついあけてしまうと、ノマは段ボールを一個運びながら、
「ごめーん。残り運んでくれない?」
これまた――
当然のように、妙に明るい笑顔で俺に言ってきやがった。
ふざけんなよ……。
とは思ったけど。
出てけと怒鳴ることも、力づくで追い出すこともできなかった。
そうしたっていいはずだ。
けど……。
もしも? こいつがキャーとでも悲鳴をあげて泣き出したり、騒いだらどうなる。
俺が悪者になるじゃん……。
警察も近所も――
ていうか、世の中全体が女の子のノマを見方するのは確実、ほぼ間違いなく、100%で。
俺の親だって怪しいもんだ。
そうなると。
俺はもう黙ってこいつに従う、少なくともおだやかな態度を取るしかないわけで……って、なんでだよ!
理不尽すぎるだろ、コレ!!
「おーい?」
俺が頭の中で文句を言ってると、台所からノマがひょいっと顔を見せた。
「う、うわっ」
「なに、『うわっ」て。変なの」
ノマはクスクス笑いながら、何かを俺のほうへ見せてきた。
「これ、お土産。ご挨拶の」
見せたのは紙袋。
うす茶色に、ピンクのでっかいロゴの入ったシャレた感じのデザイン。
「これトリセキのチョコ。美味しいよ」
ああ、そういう……。
「これからお世話になるんだし、これくらいはねえ。あ、荷物ありがとうね。コーヒーいれるから、おやつ食べない」
「いや、あの」
何でしきっちゃってるわけ?
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。コーヒーメーカー持ってきてるから。こういうのは好きなんだよねえ」
……そういうことじゃないんだが。
で。
親ふたりがそろって帰ってきたところ、俺は質問と抗議をしたわけだが――
「急でドタバタしてからねー」
母ちゃんのほうはヘラヘラと、
「部屋もあいてたのがあったし? 色々お世話になってたりするひとの紹介だから、断りづらくって。わかるでしょ?」
……わかりたくない。
「あんた、そんなにあの
「……いや。それは。そういうことじゃなくって。いきなりすぎて、わけわかんないだろ。こっちで色々」
「うっかり忘れてたのよ」
「忘れるか、そんなもん!?」
「まあまあ。色々こっち悪いところはあったけど、今さら出ていってくれなんて、無責任はことは言えんのだ。だからまあ、抑えてくれ。な?」
「むぐぐ……」
俺はそれ以上何も言えない。
そりゃ変なヤツで、図々しいとは思うけど……まあ、可愛いし? 話しても、意外に疲れないっていうか、楽しい……かも。
「みなさーん?」
俺が黙ったところに、
「ごはんできたので、台所へど~ぞ。カレーだけですけど」
ノマが顔を見せた。
カレー……。
そういえば、カレーの良い匂いが漂ってきてる……。
ちょうど、腹もすいてた。
「さ、どうぞ」
ノマは、すげー美味そうなカレーを乗せた皿を俺に差し出す。
すげー美味そうである。
「あらー、美味しそうじゃない!」
「サラダとか福神漬けあれば良かったんですけどね。ちょっと急ぎだったから」
「いいのよー、そんなの」
ほめる母ちゃんにノマは、
「キヒヒ。実は私が好きなんですよ、福神漬け。美味しいですから」
「あらまー」
……あらまーじゃねえよ。
俺は、やたらに仲の良い女ふたりに肩を落とす。
「美味いなあ、このカレー」
……親父は満足そうだし。
けど、こんなとこでウジウジモヤモヤしててもしゃーないよな。
俺もカレーを――
「あ、うまっ……」
食った途端、ホントに意識もせず、自然にほめ言葉が出てしまった。
フツーに、美味い。
いや、何ちゅうか、こう。
飛びあがるって感じじゃなくって、毎日食っても飽きないというか。
地味で静かな美味さ?
「おかわりもいいぞ!」
俺の反応に、ノマは勝ち誇ったように言ってきた。
「あ、おかわり」
「いいねー、素直で」
ノマは俺の皿を受け取りながらキヒヒヒと笑った。
こいつの笑いかた、独特だな?
で――
要するに、ノマは色々あってひとりになってしまい、適当な保護者もいない。
そこで俺の親が選ばれたらしい。
ややこしいところを省くと……。
どっちも役所勤めで社会的信用? も大きい、我が両親を適任だったとか。
……そうなのか?
まあ、こういうとで――
ノマは親の残した財産がそれなりにあるから、変な相手には任せられないらしい。
「信用あるんだな……?」
話を聞くと……。
自分の親がけっこうすごいというか、評価されてるってことを知った。
人徳ってやつ?
けどなあ。
「他のところじゃダメだったのか? だって、うち俺だっているし。女の子が
……」
俺の疑問に、
「あんた変なことする気?」
母ちゃんは咎めるように睨んできやがった。
「せ、世間体の話だろ」
「何がセケンテイよ、半人前の分際で」
だって変な噂とかたつかもしれないし、ここわりと田舎だし? してもないことでゴチャゴチャ言われたくないし?
「別にいいですよ」
横からノマはヘラヘラしながら、
「変なことってよくわからないけど、でもまあ五馬クンなら大丈夫かなあって」
どういう意味だ、それは。
「ホントにやったら叩き出すからね!」
母ちゃんは半分笑って、半分おどすような顔で宣言してきやがった。
ふざけんなよ。
「それはいけない」
突然――ノマはいきなりものすごい強い感じで言ってきた。
何か、雰囲気が違う。
フツーにしゃべってるのに。
怒鳴るとか大声出すとか、そういうのはまったくないんだけど。
すごい圧だった。
「五馬クンがいないと寂しいです」
ノマはすぐに雰囲気を戻して、キヒヒと笑いながら俺を見た。
「まあ、良かったじゃない!」
母ちゃんはひとり満足そうだ。
「まあお前も高校生だし、それくらいの分別、判断はできるだろ。できなくっても、最低限節度を持てってことだな」
親父は他人事みたいだ。
はあ……。
その夜――俺はひどく疲れた気分で布団に入った。
いきなり女の子と同居って。
何だよ、アニメかよ?
わけわかんねえ状態にもうクタクタで、ボーッとなる。
寝るんだからいいのか、別に。
それに……。
疲れてるけど、やな疲れ方じゃないっていうか?
じっくり体動かした後みたいな。
さわやかな? 疲れだった。
何だよ、さわやかな疲れって……。けど、コレ朝起きたら全部夢でしたってことは……ありそうだな、うん。
あんな可愛い子が同居って……。
都合よすぎるもんなあ。
けど――夢なんだったら、もうちょっとこう色々? 自由に? 絶対できないような? 夢だし? 妄想みたいなもんだし?
…………寝よ。
………。
…………………………ん? あれ。
気づくと、真っ暗な部屋に人影?
いやでも、ずいぶんハッキリと。
ああ、そっか。夢か。何だよ……って、おい……。ノマ?
何かこっち見てるし。
雰囲気違うな……。
夢だからか? 夢ならさあ、もうちょいこう……。
え、眼ぇ怖っ!?
何なんだよ、ひとのおでこ……。
あ、柔らかいしあったかいし……夢でもこんなん感じるのか?
でも目つき、どっか見たような……。
朝になって。
変な夢見た気がするけど、よく思い出せない。
所詮夢だし、どうでも……。
考えながら下に降りると、
「やー、おはよう。今日から一緒の学校だね、知ってた?」
「え?」
パジャマ姿のノマ。
カニのマークが入ったそのパジャマは、クソダサいけどノマが着るとえらく可愛い……。
いや、それよりも?
おんなじ、学校?
そうだっけ? 高校とか市内にもけっこうあったような?