『ラブコメ』なるものを、われも一度は書かむと思ひき(仮題) 作:らくべえ09
参考のためにご意見・ご感想などよろしくお願いいたします
そして――
今ノマはおんなじ学校の、おんなじ教室にいるわけで……。
注目の集まっている中、
「えー。
ノマは黒板の前でちょっと胸をそらしながら、何となく偉そうな態度でクラスを見回す。
「いきなりですけど、よろしく」
ノマはキヒヒと笑って、
「だいたいの自己紹介はここに書きました。メモするのも写メとるのもご自由に。どうでも良ければ忘れてOKです」
黒板に書かれた文を指す。
内容は名刺裏とおんなじだ。
この後……ノマは笑顔でまわりに手を振りながら、指定された席へと移動。
で。そのとなりには――
「よろしくねー」
ノマはまず左の相手に挨拶をして、次に右どなりの相手へと顔を向けた。
この相手というのが……
う~~~む。
ノマも色々目立つけど、こいつほどではない……いやいや、こいつが規格外すぎるのだ。
長い黒髪と光の加減で時どき紫っぽく見える鋭い瞳。
でかい背丈。180近いらしい。
背もでかいけど……。
まあ、とにかく? 色んな部分もデカい我がクラスの顔というか名物というか。
すごい美人、ではある。
けど。
ノマのほうも、美人っていうより可愛い系だけど、まあ顔良いんだよな。
いわゆる美少女?
何か言葉にするとすごいアレだけど。
ちゃんと見ればアイドルみたいだってのは、嫌でもわかる。
で、特に注意して見るまでもなく……。
クラスの連中……。
というか? 当然というか? 男どもは全体的に嬉しがってるな。
まあ、気持ちはわかるよ。
うん。痛いほどわかる。
けどなあ……? 俺のほうはつらいものがあるのだ。
昨日は混乱して、ちょっと――
ちょっとだけ浮足立ったが……。
こうして、世間様のもとで見れば自分との比較で暗くなる。
何しろノマは可愛い。
ちょっと話せばすぐわかる。
そんな
何事も、やらずにできるはずもなし。
なーんて前向きに考えてみる?
その結果、『勘違い野郎』で笑いモノになるのは正直嫌だ。
中学の頃に経験したし。
いや、小学校だったかも。
とはいえ、興味ありません、諦めてますってアピール? いやいや、表に出すのもマズいって聞いた。
すると、アレかね。
笑いモノ覚悟で――
「おいおいおい。曽良、曽良ちゃん? あの
横から、となりのヤツが聞いてくる。
どっか流れてるんだ、情報が。
「ま、まあそうだけど。うらやましいか? 悪いな?」
自慢げに返してやる。
いやいや。
本音ではけっこう本気で自慢してるとこあるんだな、コレが
あんな可愛い
絶対うらやましいもんな!
「ふざけんなよ、何でお前にそんなラッキーが……! 裏があるだろ、裏が。白状しろ白状。吐いて楽になれ」
「そりゃ言えないなあ」
てな感じで、だ。
俺は心にもない、いや、ちょっとはあるけど? とにかくテキトーなことを言ってやった。
どうせ向こうも半分冗談だしな。
ふう、やれやれ……。
……情けない。
***
「曽良」
ボーっとしてるとこを、振り返ってみれば、
「あ、先輩」
「そんなボケッとしてると危ないぞ」
俺に注意したのは、最近ちょっと噂になってた
失恋したって話だよな、確か。
「すいません。気をつけます」
「ははは……。俺もひとのことは言えないか。でもそんなのでケガしたらバカらしいしな」
「ど、どうも」
俺が謝りながらも――
いや、その……先輩こそ大丈夫っすか? と、言いかけるのを我慢してた。
明らかにやつれてるし
どう見ても、無理してるし。
やっぱり、アレか? 失恋したとかいう噂は本当か? そのせいか?
「どした?」
「なんでもないっす」
聞かれて思わずそう返したけど、これで良いのか?
……やっぱ他の先輩とか言ったほうが?
あー、でも。
他のみんなも気を使ってるというか、対応に困ってる感じだ。
どうしたもんかなあ。
・ ・ ・
「どうしたもんかなあ」
帰り道――俺は無意識につぶやいていた。
「何がどうしたの?」
「うぇっ!?」
振り返ると、ノマがニマニマした顔でこっちを見ていた。
「え、先に帰ったんじゃ?」
「いやー、あちこち見学行っててね」
うん、あー。そっか、こいつ色んな部に誘われてたんだっけ?
そりゃ可愛いしなぁ。
女子ともワチャワチャしてたっけ。
「いやー、もうあちこち回ったけどねえ。なかなか良い感じのがなくって。体育会系だと時間に融通がさ……」
「何か忙しいのか?」
「ま、色々ね。で、何がどうしたって?」
ノマは強引に話を戻し、こっちにグイッと首を突き出してくる。
ヘラヘラしてるの妙に圧が……。
「いやあ、何ていうのか」
困った――先輩のことを話していいものか、どうか?
別にやましいことがあるわけじゃない。
けど、話しにくいんだよ。
何だか先輩の、踏みこんじゃいけないとこを踏んじゃうような気がして。
「おや?」
「へ?」
自分から話しかけてきたくせに、ノマは別なほうを向いてる。
何なんだよ。
そっちを見てみると――
ちょっと離れた信号の下に、御壁先輩が立っていた。
しかも、ひとりじゃない。
女の子と何か話してるみたいだ。
見かけない顔だけど、よその学校か? 制服は着てないけど。
日焼けしてるし運動部かねえ?
女の子は猫みたいに先輩にじゃれついてる。
先輩は明らかに困ってるけど、嫌がってる感じはしない。
仲の良いカップルみたいな――
つーか距離近いし、彼女?
じゃあ、アレか? 失恋したっての、ガセだったのかなあ。
遠目だけど先輩は元気な感じだ。
「あのふたり、知り合い?」
ノマは俺の顔を見て、確認するように聞いてきた。
「男のほうは部の先輩だけど」
「女の子のほうは、知らないと」
ノマはやっぱり確認するように、うなずきながら続けてくる。
「知らねーって。初めて見たし」
するとノマは納得したようで、
「そっかそっか。うん。彼女は先輩さんの
俺に意味ありげな笑顔。
ステディって、恋人って意味だっけ?
「何だよ、それは。あのなあ、そんなんで先輩からかったりしたら……」
「からかったら?」
からかったら――
どうなる? 御壁先輩は切れて怒るか? 殴られるか?
それはないな。
簡単にキレたりするタイプじゃない。
人格者ってのかな、よっぽど地雷踏まなきゃ笑って流してくれるひとだし。
「いや悪いだろ」
「そうかな?」
「いや、そうなんだよ。すげえ良いひとだし、他の先輩に怒られたりしたらかばってくれるし。ていねいに教えてくれるし」
「ほう。人気者なんだね?」
「人気っていうか、まあ俺ら一年はそうだよ」
御壁先輩、上級生の中だと、そこまで真ん中じゃないんだけど……。
いてくれると空気が良くなるんだよな。
だから振り返ってみれば――
様子がおかしかった最近は、部の雰囲気もちょっと暗めだったんだなあ。
「まあ、元気そうでよかったけど」
「彼女さんのおかげかもね」
「んー。それだったら本当にいいけどな。部活も楽しくなるし、みんな喜ぶ」
「五馬クンも?」
「そりゃ俺だって」
うなずきかけたところで、俺は言葉が出てこなかった。
ノマの視線。
普通の顔、普通の表情だ。
しかし、何だかこう? 素直に御壁先輩がいてくれたら嬉しい……とは言いにくかった。
「まあ、雰囲気良くなるし?」
テキトーに言って、誤魔化した。
「ふーん。そっか、そっか。あの先輩が大好きってわけではないのか。そうですか」
「な、何なんだよ」
コロコロ変わるノマの表情。
それが、素直に可愛いと思えるもんだから、俺は無性に恥ずかしくなる。
うう、クソ。情けない。
「俺がBL的なアレだったら良かったのか?」
照れくささから、俺はついしょーもないことを言ってしまった。
すぐ失言だと思ったのだが、
「よしなよ」
ただ一言――本当に小さめの、静かな一言だった。
けど、圧がすごかった。
とにかく、今まで以上に強烈な圧。
ノマはいきなり俺の腕をつかんでドンドン歩き出す。
「お、おい」
「悪質な冗談はやめて」
こっちを振り返るなり、ノマは怒った顔で俺を睨んできた。
「ご、ごめん」
「わかれば良しっ」
謝るに俺にノマはキヒヒと笑って、遠くの見えるスーパーを指さして、
「おかず買って帰ろう。今夜はカニすき鍋だ」
「いやカニって」
「だいじょうぶ。今日は好きなものにして良いっておばさんから許可もらってるし」
かくして。
俺は荷物持ちをする羽目になった……。