『ラブコメ』なるものを、われも一度は書かむと思ひき(仮題)   作:らくべえ09

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試作ラブコメの3話目です
参考のためにご意見・ご感想などよろしくお願いいたします


3話

 

 そして――

 今ノマはおんなじ学校の、おんなじ教室にいるわけで……。

 注目の集まっている中、

 

「えー。字子(あざこ)野真(のま)です」

 ノマは黒板の前でちょっと胸をそらしながら、何となく偉そうな態度でクラスを見回す。

「いきなりですけど、よろしく」

 

 ノマはキヒヒと笑って、

「だいたいの自己紹介はここに書きました。メモするのも写メとるのもご自由に。どうでも良ければ忘れてOKです」

 黒板に書かれた文を指す。

 

 内容は名刺裏とおんなじだ。

 

 この後……ノマは笑顔でまわりに手を振りながら、指定された席へと移動。

 で。そのとなりには――

 

「よろしくねー」

 ノマはまず左の相手に挨拶をして、次に右どなりの相手へと顔を向けた。

 この相手というのが……

 

 う~~~む。

 ノマも色々目立つけど、こいつほどではない……いやいや、こいつが規格外すぎるのだ。

 

 都賀氏(つがし)務津(ムツ)

 長い黒髪と光の加減で時どき紫っぽく見える鋭い瞳。

 でかい背丈。180近いらしい。

 

 背もでかいけど……。

 まあ、とにかく? 色んな部分もデカい我がクラスの顔というか名物というか。

 すごい美人、ではある。

 

 けど。

 ノマのほうも、美人っていうより可愛い系だけど、まあ顔良いんだよな。

 いわゆる美少女?

 

 何か言葉にするとすごいアレだけど。

 ちゃんと見ればアイドルみたいだってのは、嫌でもわかる。

 で、特に注意して見るまでもなく……。

 

 クラスの連中……。

 というか? 当然というか? 男どもは全体的に嬉しがってるな。

 まあ、気持ちはわかるよ。

 

 うん。痛いほどわかる。

 けどなあ……? 俺のほうはつらいものがあるのだ。

 昨日は混乱して、ちょっと――

 

 ちょっとだけ浮足立ったが……。

 こうして、世間様のもとで見れば自分との比較で暗くなる。

 何しろノマは可愛い。

 

 ちょっと話せばすぐわかる。

 そんな()が自分に縁があるかどうかって言えばな。

 何事も、やらずにできるはずもなし。

 

 なーんて前向きに考えてみる?

 その結果、『勘違い野郎』で笑いモノになるのは正直嫌だ。

 中学の頃に経験したし。

 

 いや、小学校だったかも。

 とはいえ、興味ありません、諦めてますってアピール? いやいや、表に出すのもマズいって聞いた。

 すると、アレかね。

 

 笑いモノ覚悟で――

「おいおいおい。曽良、曽良ちゃん? あの()お前んちに住んでるってホントか?」

 横から、となりのヤツが聞いてくる。

 

 どっか流れてるんだ、情報が。

「ま、まあそうだけど。うらやましいか? 悪いな?」

 自慢げに返してやる。

 

 いやいや。

 本音ではけっこう本気で自慢してるとこあるんだな、コレが

 あんな可愛い()と同居って。

 

 絶対うらやましいもんな!

「ふざけんなよ、何でお前にそんなラッキーが……! 裏があるだろ、裏が。白状しろ白状。吐いて楽になれ」

「そりゃ言えないなあ」

 

 てな感じで、だ。

 俺は心にもない、いや、ちょっとはあるけど? とにかくテキトーなことを言ってやった。

 どうせ向こうも半分冗談だしな。

 

 ふう、やれやれ……。

 ……情けない。

 

 

 ***

 

 

「曽良」

 ボーっとしてるとこを、振り返ってみれば、

「あ、先輩」

 

「そんなボケッとしてると危ないぞ」

 俺に注意したのは、最近ちょっと噂になってた御壁(おかべ)先輩だった。

 失恋したって話だよな、確か。

 

「すいません。気をつけます」

「ははは……。俺もひとのことは言えないか。でもそんなのでケガしたらバカらしいしな」

「ど、どうも」

 

 俺が謝りながらも――

 いや、その……先輩こそ大丈夫っすか? と、言いかけるのを我慢してた。

 明らかにやつれてるし

 

 どう見ても、無理してるし。

 やっぱり、アレか? 失恋したとかいう噂は本当か? そのせいか?

「どした?」

 

「なんでもないっす」

 聞かれて思わずそう返したけど、これで良いのか?

 ……やっぱ他の先輩とか言ったほうが?

 

 あー、でも。

 他のみんなも気を使ってるというか、対応に困ってる感じだ。

 どうしたもんかなあ。

 

 

 ・ ・ ・

 

 

「どうしたもんかなあ」

 帰り道――俺は無意識につぶやいていた。

「何がどうしたの?」

 

「うぇっ!?」

 振り返ると、ノマがニマニマした顔でこっちを見ていた。

「え、先に帰ったんじゃ?」

 

「いやー、あちこち見学行っててね」

 うん、あー。そっか、こいつ色んな部に誘われてたんだっけ?

 そりゃ可愛いしなぁ。

 

 女子ともワチャワチャしてたっけ。

「いやー、もうあちこち回ったけどねえ。なかなか良い感じのがなくって。体育会系だと時間に融通がさ……」

「何か忙しいのか?」

 

「ま、色々ね。で、何がどうしたって?」

 ノマは強引に話を戻し、こっちにグイッと首を突き出してくる。

 ヘラヘラしてるの妙に圧が……。

 

「いやあ、何ていうのか」

 困った――先輩のことを話していいものか、どうか?

 別にやましいことがあるわけじゃない。

 

 けど、話しにくいんだよ。

 何だか先輩の、踏みこんじゃいけないとこを踏んじゃうような気がして。

「おや?」

 

「へ?」

 自分から話しかけてきたくせに、ノマは別なほうを向いてる。

 何なんだよ。

 

 そっちを見てみると――

 ちょっと離れた信号の下に、御壁先輩が立っていた。

 しかも、ひとりじゃない。

 

 女の子と何か話してるみたいだ。

 見かけない顔だけど、よその学校か? 制服は着てないけど。

 日焼けしてるし運動部かねえ?

 

 女の子は猫みたいに先輩にじゃれついてる。

 先輩は明らかに困ってるけど、嫌がってる感じはしない。

 仲の良いカップルみたいな――

 

 つーか距離近いし、彼女?

 じゃあ、アレか? 失恋したっての、ガセだったのかなあ。

 遠目だけど先輩は元気な感じだ。

 

「あのふたり、知り合い?」

 ノマは俺の顔を見て、確認するように聞いてきた。

「男のほうは部の先輩だけど」

 

「女の子のほうは、知らないと」

 ノマはやっぱり確認するように、うなずきながら続けてくる。

「知らねーって。初めて見たし」

 

 するとノマは納得したようで、

「そっかそっか。うん。彼女は先輩さんの()()()()と見たね。キヒヒヒ、これは面白いものを見ちゃったのではないかしらん?」

 俺に意味ありげな笑顔。

 

 ステディって、恋人って意味だっけ?

「何だよ、それは。あのなあ、そんなんで先輩からかったりしたら……」

「からかったら?」

 

 からかったら――

 どうなる? 御壁先輩は切れて怒るか? 殴られるか? 

 それはないな。

 

 簡単にキレたりするタイプじゃない。

 人格者ってのかな、よっぽど地雷踏まなきゃ笑って流してくれるひとだし。

「いや悪いだろ」

 

「そうかな?」

「いや、そうなんだよ。すげえ良いひとだし、他の先輩に怒られたりしたらかばってくれるし。ていねいに教えてくれるし」

「ほう。人気者なんだね?」

 

「人気っていうか、まあ俺ら一年はそうだよ」

 御壁先輩、上級生の中だと、そこまで真ん中じゃないんだけど……。

 いてくれると空気が良くなるんだよな。

 

 だから振り返ってみれば――

 様子がおかしかった最近は、部の雰囲気もちょっと暗めだったんだなあ。

「まあ、元気そうでよかったけど」

 

「彼女さんのおかげかもね」

「んー。それだったら本当にいいけどな。部活も楽しくなるし、みんな喜ぶ」

「五馬クンも?」

 

「そりゃ俺だって」

 うなずきかけたところで、俺は言葉が出てこなかった。

 ノマの視線。

 

 普通の顔、普通の表情だ。

 しかし、何だかこう? 素直に御壁先輩がいてくれたら嬉しい……とは言いにくかった。

「まあ、雰囲気良くなるし?」

 

 テキトーに言って、誤魔化した。

「ふーん。そっか、そっか。あの先輩が大好きってわけではないのか。そうですか」

「な、何なんだよ」

 

 コロコロ変わるノマの表情。

 それが、素直に可愛いと思えるもんだから、俺は無性に恥ずかしくなる。

 うう、クソ。情けない。

 

「俺がBL的なアレだったら良かったのか?」

 照れくささから、俺はついしょーもないことを言ってしまった。

 すぐ失言だと思ったのだが、

 

「よしなよ」

 ただ一言――本当に小さめの、静かな一言だった。

 けど、圧がすごかった。

 

 とにかく、今まで以上に強烈な圧。

 ノマはいきなり俺の腕をつかんでドンドン歩き出す。

「お、おい」

 

「悪質な冗談はやめて」

 こっちを振り返るなり、ノマは怒った顔で俺を睨んできた。

「ご、ごめん」

 

「わかれば良しっ」

 謝るに俺にノマはキヒヒと笑って、遠くの見えるスーパーを指さして、

「おかず買って帰ろう。今夜はカニすき鍋だ」

 

「いやカニって」

「だいじょうぶ。今日は好きなものにして良いっておばさんから許可もらってるし」

 かくして。

 俺は荷物持ちをする羽目になった……。

 

 

 

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