その日の夜はほとんど朝になるのも気づかないくらい瞑想をしていた。
この短い間で出来事は想像の斜め上以上。
でも悩んでばかりも仕方が無いので、自分の考えと状況を整理することにした。
まず自分についてだ。
人類、獣類、霊類、神類。そんな数多の種族の中で、俺は神類に所属していた。神類は食事も睡眠も必要ない。それこそ歳は取るみたいだが、不老。つまり、ほとんど人間がめんどくさいと思ったことは基本やらなくてもいいみたいだ。
それに技の覚えも他より優れているらしい。前の世界で言う瞬間移動。身体などをどれだけバラバラにされても、核さえ生きていれば何度でも再生できるらしい。
圧倒的な強さ。膨大な能力数。人智をはるかに超えた存在というわけなんだ。でも…
俺はそっとポッケからWORLD door端末を手に取った。
ランキングも下の下の下。おまけにみんな使える主能力も俺にはない。正確にはこんな表記初めてらしいがな…
「はぁ〜…」
静かな部屋に俺の声が反響して帰ってくるほどだった。
7時間近く瞑想してたわけだし感覚はそりゃ研ぎ澄まされてるか。
そして、この世界はWORLD doorの鍵を手に入れて、叶えたい願いはなんでも叶うと言う。
正直俺には、叶えたい願いなんてない。できることなら、もう戦う理由なんてないだろう。
でも理由はふたつある。エルや花済真が力を貸してほしいと頼んでるのだ。見過ごすのも、人としてどうかと思う。
それにもうひとつは、こないだから寝る時、夢を見るんだ。街中炎の海、そして人々が助けてと喚く夢を。そんな中俺は1人突っ立って傍観している。悪夢みたいな夢を見せられる。でもその後、一人の少女が俺に語りかけてくるんだ。終点の果てで、僕達の未来を創ろう…と、夢の中の俺は、決まって「必ず君を護る」と答えている。
でも確かにその少女は綺麗だった。つぶらな瞳で、まるで建前と本音が同じような声。あそこまで天真爛漫な人は初めて見たかもしれないほど。どうしようもなく好きなほど…
ばかばかしい、たかが夢だ。この世界にいるか分からない人のために俺は戦うのか?今はエルと花済真のために戦おう。
魔王【ガビルド】。
エルから聞いた情報をまとめてみると…
かつて、700年以上前の話。WORLD doorの鍵の存在が世界に知れ渡った。鍵を巡るため、人々は全面戦争を起こした。
「生き残ったものには鍵をくれてやる。夢を叶えるには死力を尽くせ。」
天からは、その声が響いた。
それが【第一次叶絶戦争(だいいちじきょうだつせんそう)】
おかげで今の人口はかなり減った。そしてかつての神類1位は、これ以上の無謀な戦争を止めるためにルールを設けた。これに従わなければ負けとみなす…と。
エルから聞いたが、かつての神類1位は誰か分からないらしい。フードを被り正体を隠していたそうだ。
第一次叶絶戦争で生き残ったガビルド。今では徐々に勢力を上げている。
いや生き残ったというより、封印されたのが正しいだろう。そんな戦争を生き残っておきながら、ランキングが95億位程度なのはおかしい。
だから、今、全盛期の力を取り戻してないやつを止めるしか方法はない。
足音がする。
この音…
俺は後ろを振り向かずに答えた。
「エル…何か用か?」
エルはすぐさま、俺の横に座った。
「もうすっかり人間離れしてるね。邪魔になるかと思ってかなり気配を消してたはずなんだけどな。」
「なぁ、エル」
「ん?」
「俺は何がしたいんだろう。」
エルは少し、顔を天井に向けて、話の続きをした。
「自分のために、何かをすればいいんじゃない?自分に余裕が出来たら、他人を救うといいよ。」
…………
「俺には記憶が無い。小さい頃の無垢な夢も、大人になって現実を見て何かを成し遂げようとする夢も、全部空っぽだ。自分も知らない。叶えたい願いもない。そんな中途半端な心でこの世界を戦い抜く自信なんてない。」
「イブキちゃん…」
「この前あのロボットと戦った時わかった。あいつよりも強いやつがこの世界には億といるんだ…このままじゃ、俺は3人の足を引っ張るだけだ。」
エルは俺の手を優しくそっと掴んで、話した。
「ないなら創りに行けばいいんだよ。」
「え?」
「僕はちょっと人より狙撃が上手いだけに過ぎない。だけど僕にも、同じ銃でも苦手なものはあるよ?例えばショットガンとか?連射系?使えないことは無いけど、僕はスナイパーの方が向いてる。イブキちゃんはこないだの短い期間で炎と雷を会得し、だから、神類の基礎はもうすぐでできあがるんだよ。」
確かに、記憶が戻るにつれ、自分の能力を把握出来つつある。
まさに、【知識は力なり】ってことだ。
エルは立ち上がって、俺の手を引っ張り一緒に立ち上がった。
「それに記憶も、何かを成し遂げていけば、見つかるでしょ?他の誰でもない。エルフマ・イブキの記憶を取り戻す旅にすればいいのさ!」
「ふ、それもそうだな。」
こんな所でクヨクヨしててなんになるんだ。探してやる。
そうだ。きっと…俺は俺を見つけるために。
きっと…
そのために俺はこの世界に来たんだ!!
「話は済んだか?」
気がつくと、ドアのところに花済真が立って待っていた。
「花済真いつからそこに?」
「エルと同時に来たんだ。お前の様子も優れなかったから、心配で見に来たんだ。」
そうだよな。花済真もなんだかんだ俺のことは気にかけてくれてるんだ。
「花済真って俺の事好き?」
剣を携え花済真は俺の手首を引っ張った。
「心配しただけだ。あまり調子に乗るな。」
俺は苦笑いした。
「だが、」
「ん?」
「俺たちはもう信頼出来る仲間だ。肩の力は抜いてくれ。」
「花済真…うん、ありがとう。」
「エル、俺の手首を掴んでくれ」
「ん?どうしたの花済真ちゃん」
「これから村長の所へ行く。だが、前回の時みたいに襲撃されるのは少し面倒だ。だから瞬間移動(シュル)で行こう。」
「なるほどね!」
「イブキもこっちに来い。」
「うん。」
俺とエルは花済真の手を掴んで、花済真は唱えた。
「瞬間移動(シュル)」
花済真の「ついたぞ」という声が聞こえた。
俺はゆっくり目を開ける。
!!
さっきまで俺の家だったところが、拠点のような場所についてる。
ん?あれは…?
俺は歩いて、近づいてみる。
「ハヤト、こんなところでなにをしてるんだ?」
「ん?あぁイブキ来たんだね!」
「そちらの人は?」
ハヤトは手を差し伸ばし、隣にいる老人の紹介をしてくれた。
「こちらはこの村の村長のカムイ村長だよ。村長、彼が昨日話した期待のルーキー、イブキだ。」
村長は早速俺の手を取り、優しく歓迎してくれた。
「おぉ、君がイブキくんかね。どうもカムイ・ユーロルフです。この村の村長をしているものでね、君の噂は花済真くんやエルくんたちからかねがね。」
「どうも。と言ってもさっき瞬間移動で連れられてここがどこだかさえ…」
「ここはこの区域一帯を護る村でもあり、対ガビルド勢力拠点でもある。村長戻りました。」
花済真が説明をしてくれた。
そして、村長はそのまま
「そうだ花済真くん。今イブキくんも加わった。今から会議をしてもいいかね?」
「もちろんです。」
「それでは30分後に会議を行う。イブキくんも同席願えるかな?」
ゆっくり頷いた。
「分かりました。」
村長は軽く礼をして、この場を後にした。
「花済真…少しお願いがあるんだいいかな。」
「いいだろう。話してみろ。」
広いスペースの日光が指す夏の昼…
だが秋になりつつもあるそんな涼しい風がふいている。
「ルールは木刀を地面に落としたら負け。全力の勝負だが、俺も主能力は使わない。」
俺はゆっくりと木刀を握りしめた。
「あぁいつでも準備は出来ている。」
「エルが鳴らす銃の音が開始の合図だ。」
エルは遠くから手を振って大声で話す。
「イブキちゃん〜!花済真ちゃん〜!お互いの全力勝負。属性魔法ありの主能力なし!それと制限時間は15分!それでいいんだよね?」
俺も大声で返した。
「あぁ!エル!お前のタイミングで頼む!」
「じゃあ行くよ〜」
「すぅぅぅ………はぁぁぁぁ…………」
バンッ!!
2人は、一気に足を蹴り上げすぐさま競り合いなった。
「ほう?お前が剣術を使っているところなんて見たことがなかったから、不安だったが余計な心配だったようだな。」
「まだはじまったばかりだ。俺もお前もこんなところで終わらないだろ。」
お互い木刀を弾き、すぐさま花済真は斬り掛かる体勢に入った。
花済真の木刀は俺の右腕。木刀の持ってる手首を的確に狙ってきた。
「属性魔法・風(ソール)。」
俺はすぐさま逆手持ちにし、相殺した。
「属性魔法・炎(たんか)!」
だが1回跳ね返したはずなのに、花済真のスピードは俺を遥かに上回っている。
そして俺がまだ反応できずに花済真に右胸をどつかれてしまった。
「ぐあっ?!」
俺はそのまま遠方に飛ばされ、膝をそのままついてしまった。
「ぐっ…」
花済真はそのまま、イブキの頭上から思いっきり振りかぶる。
「属性魔法・風!」
間一髪何とか木刀を回して、弾く
「炎・雨弾き!」
攻撃の隙を絶対に許すな!
「属性魔法・雷!」
足に属性魔法を乗せた蹴り。もろに腹にいれたぞ!
「ぐっ!」
花済真は遠方まで飛ばされた。
だが、どうする?花済真が強いのは知っていたけど、まさかこれほどまでとは…それにあの感じ主能力を使ってないのはもちろんだが、まだ本気じゃないはずだ。花済真の刀の使い方…すごい綺麗だ。最初の時から刀を弾いてもとんでもない速度で刀を持ち替えては次の対応に反応できる。それに戦闘経験も豊富だ。的確に俺の急所を狙って、くる。速戦即決のスピードタイプ。だが、技も力も知識も劣ることの無いバランスも兼ね備えてる…流れるあの剣まるで降り注ぐ桜のような感覚。
これが…対ガビルド組織、桜組隊長…末遷花済真!
「イブキ、もう降参か?」
「花済真だって、俺は全力でこいと言ったはずだぞ。」
花済真は少し呆れてため息をついたあと話した。
「少しは優しくしてやろうと思ったのに。」
そうすると、花済真はすぐさま、花済真は剣を構えた。
「瞬間移動」
俺のすぐ横首の所には、もう木刀が!
瞬間移動(シュル)それは、会得難易度も難しく、その上MPを大量に消費する技…頭の中で行き先さえ決まれば、どこでもいつでもすぐさま移動できる。しかも、瞬間移動をされた側は、絶対に移動先の場所を知る術はない。
「降参だ。」
ピタッと木刀は止まった。
花済真は少し笑った。
「イブキこそ、俺に7割をも出させたやつはお前が初めてだ。」
「あ、やっぱりお前、最後にも本気出せって言っておきながら、あれも本気じゃなかったな?」
「お前を傷つけるつもりは微塵もなかったからな。」
俺は少し拗ねながらも、花済真と握手をして試合を終わらした。
それから会議が始まるまで、俺たちは待機をした。
そして…
村長が来て、そのままゆっくりと腰をおろし、話を始めた。
「今日皆を呼んだのは、他でもない。襲撃の件とイブキくんの件に関してだ。」
花済真が話の詳細を話した。
「襲撃の件は俺から説明します。昨日、会議が中断された理由それは行く途中に魔王ガビルドの四天王の1人「ガータズ」に出会し(でくわし)、苦戦を強いられましたが、エルフマ・ハヤトの助けによって、四天王の1人を討伐することに成功しました。」
昨日のあのロボットの事か…四天王…魔王と呼ばれる者には必須の存在。
だけど、どこかで聞いたことがある。
最初の敵はその四天王の中でも最弱らしい。てことはこれより強いやつはもちろんってことか。
エルも花済真もハヤトもまだ本気を出してなかった。俺ももっと強くならないと。
「それと、先日、パトロールの途中に人類を凌駕した存在を発見しました。それがここにいるイブキです。」
花済真はこっちに来て近くで囁いた。
「自身の紹介はしてほしい。」
「あぁ。」
俺はその場で立ち上がり自己紹介を始めた。
「みなさん。俺の名前は、エルフマ・イブキです。ハヤトの義弟で、記憶喪失で目を覚まし、今は神類として、そして、ガビルドを倒すためにこの場にいます。今はまだ未熟ですが必ず力になることを誓います。」
紹介を終えると、エルが小声で話しかけてきた。
「イブキちゃんって、こういう所は意外としっかりしてるんだね?」
イブキは思いっきりエルの足を踏んだ。
「いっ?!」
「…余計なお世話だ。」
村長は心配そうに、こちらを見た。
「どうかしたかね?」
「いえ、エルくんが、こないだので動いて筋肉痛みたいで。」
「そうか…エルくんこれから厳しい戦いになるかもしれない。鍛錬も欠かさずにしてくれると嬉しい。」
「あはは…そうですね…」
村長はそのまま話を続けた。
「それとイブキくんを新たな勢力としてつけようと思うのだが。ちょっと前に、狐組のリーダーが、居なくなってしまってね。代わりにイブキくんを狐組のリーダーにしようと思う。」
「俺でいいのですか?」
「あぁ実力も兼ね備えてる。構わない。」
「分かりました。ハヤトもついてきてくれるか?」
ハヤトはニコッと笑って、
「もちろん。僕は副リーダーってとこかな?」
村長は席を立ち上がった。
「それでは、今の戦力をまとめよう。桜組。リーダー 末遷花済真、隊員361名。月組。リーダー エル・コーラス、隊員342名。狐組。リーダー エルフマ・イブキ、隊員357名。以上1063名。魔王ガビルドを必ず打ち倒そう!」
その場の全員は声を揃えた。
「押忍!!!」
そういえば僕達ってあまり雑談って言うようなことはしたことないよね?
あまりエルと喋ることは無いからな。ガビルドを滅殺するためなら、特訓を繰り返してた。だが、イブキ同様、お前は肩を預けられる仲間であり、互いを高め合うライバルという認識だ。
花済真ちゃんは昔からかなり優しいよね〜一見冷たいけど…あ、もしかしてツンデレってやつ?
なわけあるか。
そういえば花済真ちゃんは実はこう見えて、鮭と枝豆を乗せたご飯が大好きなんだよ!冷たい花済真ちゃんもこれさえあげれば、話してくれるかもね!
そこはノーコメントにしておく。
それじゃ花済真ちゃん声揃えて!!
次回!第1節 1章 5話 必勝法
お楽しみに!