そういえば武器も買わなきゃだよな…さすがに無防備でガビルドに勝てるなんて思ってないし…
「なぁ、武器ってどこで買えるんだ?」
ハヤトは首を傾げながら、
「どっちにするの?」
「どっちって??」
「月組の銃専門店、それから、桜組の剣専門店があるよ。」
なるほど…どっちが使えるんだろう?
俺の武器はエル寄り?それとも花済真より?いやきっと、、
「花済真の店に行こう。」
ハヤトは少し微笑んで、頷いた。
「分かった」
ここか…
って?!
「花済真?!」
花済真はこっちを見て、イブキに軽く手を振った。
「イブキ。もしかして武器でも買いに来たのか?」
「それはそうなんだが…もしかして店主とか?」
「いや少し違うな。エルとかも俺みたいにたまに顔を出すんだ。でも、刀はその人の練度にもよるし、材質にもよる。たまに来て打ち方を教えて貰ってたりするし、俺が教えることもある。こちらが店主の柳さんだ」
40代くらいのいかにも、職人って感じの体つき。手にはたくさんの黒い灰のようなものがこびりついている。かなりの手慣れっぽいな。
「初めまして。君が新人隊長のイブキくんかな?」
俺は軽く一礼して、要件を話した。
「あの武器を買いに来たんですが…短剣ってあったりしますか?」
短剣…この前の花済真との対決で分かった。俺には、力やスピード、あらゆる技術は花済真に負けているものの、総合的なパラメーターで計算すると、勝つことは出来ないかもだが、負けることもない。
バランスタイプと言うべきなのだろうか。
それともう1つ対抗する術、あの隙を絶対与えないハヤブサのような連撃…花済真のような、刀の技術はないし、手数を増やすために短剣のような軽いものが必要だ。
店主は少し悩んでから思いついたように後ろの棚を漁った。
「最初、短剣なんてものは無いと思ったんだが、前に花済真のために作った短剣が2つあってな…」
「俺は短剣よりこういう日本刀の方が向いてるんだ。だから、こういう短いやつは宝の持ち腐れと思ってたが…ちょうどよかったな。」
店主は短剣を2つテーブルの上に置いた。
「翳風の短剣(かざかぜのたんけん)2つでひとつの代物だ。」
イブキは短剣を取り、軽く振ってみた。すると…
とんでもない暴風音を放ち、当たってもないのに、まるで暴風がふいたみたいになった。
「な、なんだこれ?!」
「言ったろ。翳風の短剣。名前の通り、1振りするだけでも強力な風で人が立つのもやっとになるほど。花済真の刀もそうなんだが、花済真が属性魔法の風を使えるわけだ。刀に少し属性魔法を乗せることで上乗せできる。追加効果みたいなもんだな。」
待てよ?属性魔法を刀に乗せてるってことは、花済真があんだけ手数が多かったのは技術はもちろんなんだろうが属性魔法の力もある?
となると想像より手数は多くなるのか?
「てか、これすごく軽い。」
「属性魔法を乗せてる上に、店主の知る限り1番軽量な素材で限りなく鋭い鉄を使ってる。」
なるほどな。
「ところでいくらするんですか?」
「本来ならこのくらいだと500万円くらいするんだが、花済真の仲間さんだし、今回は無料ということで!」
「え?!本当にいいんですか?それじゃあお言葉に甘えて。」
俺は早速短剣を身につけた。
そんな時だった。突然、エルからメールが届く。
「そっか忘れてたけど、このWORLD door端末ってメールとか電話とか通常のスマホと一緒の機能の役割を担ってるもんな。えーと?」
【イブキちゃんへ】
「狐組のリーダーになって早速初めてのお仕事だよ!
まずは毎日訓練するのは当然の義務なんだけど、週に一回だけきつい訓練を仕入れなきゃ行けないんだけど、今日がその日なんだ!でも、まだ初めてでどんな訓練内容にしたらいいか分からないと思うんだ。だから、月組の訓練施設で一緒に合同訓練でもしない?場所は月組の訓練施設なんだけど…まぁみんなに聞けばわかると思うよ!」
かなり無責任なメールだったが…確かに訓練は必要だ。俺も強くなれる機会!これは欠かせない!!
それで、場所か…
後ろを振り返って尋ねた。
「なぁ、聞きたいことがあるんだけど、月組の訓練施設ってどこにあるか分かるか?」
すると、隊員達は、目を輝かせ、一斉に声を揃えた
「「それなら俺が案内します!!」」
うっ、まさかこんなにも俺が人気とは…困ったな全員案内役いらないし…
するとハヤトが仕切ってくれた。
「はいはい、君たち!イブキ隊長に従わないと、嫌われて話せなくなるぞ?」
その瞬間みんなは落ち着いた。
すごいな…てか、俺の周りには、人を支配するようなやつしかいないのか?エルとかハヤトとか…まるで人の感情を手玉に取ってるみたいだな。
俺は少し苦笑いしながらも、
「よし!じゃあランダムで!今回は17番の子に任せてみよう。」
「…私です!」
ん?
細身の眼鏡をかけた女の子?こんな子も戦うのか?
俺は少し屈んで話しかけてみた。
「君の名前は?」
女の子は緊張しながら名前を名乗った。
「私の名前は、党廻 結(とうかい ゆい)です!」
イブキは微笑んで、そっと頭に手を置いた。
「いい名前だな。頼りにしてるぞ。」
結は喜んで、道案内役をつとめた。
「はい!おまかせください!」
そして目的地に到着した。
「やぁ!イブキちゃん!それにみんな!ようこそ!月組の訓練施設へ!!」
ここが訓練施設?
まるで体育倉庫みたいな…いやそれよりはかなり広いけど、一見普通の建物だな…
中に入ってみると、外見とほぼ同じイメージで、普通の体育館のような床や壁…マットとかもしかれてはいるが、やはり普通だ…
エルはホワイトボードを持ってきて、みんなに話を始めた。
「さてと、今回の訓練はイブキちゃんが、まだ入りたてで慣れていないから、合同訓練にします!そして、訓練内容は基礎体力の向上。最近はずっと武器の命中精度練習ばっかだったからね〜。まずはみんな各自、準備運動を始めててくれるかい?」
隊員たちは、散りばめられ、準備運動を始めた。
その隙にエルはイブキに話しかけた。
「イブキちゃん訓練内容の詳細を補足するね。」
「あぁ」
「まずは隊員たちの訓練…それぞれ腕立て伏せ300回…腹筋300回…それと100段階段を10往復…で最後に各自、3分間の対人をして終わり。」
隊員たちはたしか普通の人類が多いんだっけか?結構ハードな訓練なんだな…
「そして僕たちは、リーダーだから、腕立て腹筋を10000回に、100段階段を5000回往復。最後に僕とイブキちゃんが戦って終わり!」
…???
前言撤回する。悪魔の末裔だ。
「10000?!それに5000往復って数、分かって言ってるのか?!」
エルは少し微笑んで話した。
「うん、これが僕たちのいつもやってるメニューだよ。花済真ちゃんだったら、これくらいこなせなきゃ、ガビルドなんて倒せないぞって言ってると思うよ?」
俺は見誤ってたのか?!ガビルドを倒すためにはこの訓練はたかが普通以下?!
でも、楽して強くなるすべなんてものは当然無いわけだし…やる以外道はないのは確かなんだが…
俺は軽くため息をついてほっぺを思いっきり叩いた。
「やるか!」
「うん!」
隊員たちもみな準備運動を初めて、俺達もみんなで訓練を始めなきゃ行けないってことだ。
少しやってると、やはり疲れてくるし、到底できると思えない。100回でこれだぞ?
エルが腕立てをしながらアドバイスをくれた。
「イブキちゃん。深呼吸をしながら、自信を持って。それから目も閉じてみて?」
って言われても…
101…
あれ??
さっきよりも身体が軽い!
もう無理なんて思ってたのが、できそうに感じる。
「イブキちゃんは記憶喪失って言ってたよね?人の体の構造上、出来ない、無理だってマイナスに思えば思うほど出来なくなっていくんだ。もちろんそれだけでなんでも出来るようになる訳では無いけど。
イブキちゃんは記憶を失って、自分の力の限度や本気をよく知らないんだよ。だからこそ、こういう時は落ち着いてやればできるようになるよ。」
たしかに、目を覚ましてから、銃弾をノールックでキャッチしたり、元から属性魔法を扱える体質だったり、普通の人間なら1秒で花済真に沈められてるはず。
もうちょい…自分の力を知る必要がある!
数時間後一通りの訓練は全て終わった。
やっと終わった……
エルの助言がなかったらもう死んでいたかも、立つのもやっとくらいだ…
あとは対人か?
エルは木でできた薙刀と訓練用のナイフを3本持ってきた。
「イブキちゃんはナイフを2本使うんだったよね?」
「あぁ、そうだけど。」
エルって薙刀とナイフ使うのか?
まぁ何はともあれ…自信過剰に…集中して挑め…
エルは笛を鳴らして合図をかわした。
「じゃあはじめ!!」
エルはそっと深呼吸をして、武器を構えた。
「イブキちゃん行くよ!!」
お手並み拝見だな!!
「来い!!」
エルは薙刀振りかぶった。その時だった。
薙刀の刃は、もう既に俺の首元にあるんだ。前と同じ…花済真の時だってそうだ…
でも今回は花済真と訳が違う!
「おらぁ!」
ナイフを振り思いっきり、薙刀を押し返した。
「やるね。」
体力も構造してるし、同じヘマは2度もしない。もう大丈夫だ。
てか、こいつ!
エルと俺は何度も競り合いになる。
なんかおかしいと思ったら!!
エルの薙刀を宙にあげたが、すぐさまナイフを持ち替え俺を吹き飛ばした。
音が全くないんだ!!
走る時も…武器を振るう時でさえ、エルの物音が全くない!
すごく静かで動きが滑らか…
その上、まるで薙刀が曲がって見える…素材はただの木材のはずなのに!!
だけど!
訓練して基礎体力がついてる…自信を持って集中しろ。
俺は目をゆっくり閉じた…
やっぱこうして見るとエルの音がほんとに無い…どれだけ探っても小さな音さえ見つからない。隊員たちの足を踏み込む音…隊員たちの木刀が交わる音…それだけ…
でも…匂いや触覚までは消せねぇな…エル!
エルの攻撃を目を瞑ったまま、弾いた。
(イブキちゃんはやっぱり、五感が人より優れてる。そこに関しては恐らく僕や花済真以上。それと攻守、共に基準以上だ。そして何より…イブキちゃんの強みはカウンターの上手さにある…
あえて攻撃をもらい、防いだり避けたりして、相手の隙を作る。その間にもう片方で攻撃を仕掛けてくる。
かなり乱暴なやり方とは言えどだよ?それでもそれを凌ぐ防御力や方法はある。しかもやられたらそれはそれで嫌だしね)
イブキは目を開いて、左手でエルの薙刀を抑え、右手でエルのナイフを抑えた。
エルはそのまま話しかけた。
「どうするんだい??それじゃ、両手が塞がってるよ?攻撃しなきゃ意味ないだろ?」
イブキは笑って、答えた。
「どうかな??」
イブキは左手を一瞬押し戻し、思いっきり押しのけた。そして、左手のナイフを思いっきり腹に突き出した。
(やっぱりカウンターがはやい!!)
「はぁぁぁぁぁ!!」
俺のナイフはあと一歩届かず、手首の部分を膝で受けられた。
「うっそ…だろ?!」
「まだまだだね〜イブキちゃん〜」
もちろん薙刀を押したのは一瞬だ。つまりエルの右手はもう解放状態。
頭を軽く小突かれ、俺はそのまま地面に伏せた。
くっ、また負けた…やっぱ現役の隊長…さすがに強いな。
エルは布で汗を拭った。
(危なかった…まさかイブキちゃんがここまで成長してるなんて思いもしなかった…これなら思ったよりも早く僕たちを超すかもしれない。)
イブキは立ち上がってエルと握手を交わした。
「ありがとうな。みんなもありがとう!それじゃあ今日は解散だ!」
もう7時か…
エルは俺の腕を掴んで話しかけた。
「ねぇイブキちゃん?少しお願い頼んでもいい?」
「ん?」
「できたよ。ほら、オムライス。久々に作ったから、形はあれだけど…味は保証する!」
「さすがイブキちゃんだね。」
前に俺がパンケーキを放置したままだったから…それの匂いを嗅ぎつけたんだろう…料理を作って欲しいなんて。
神類には食事は必要ない…それでも…味覚とかはあるし、なにより
「美味しいか?」
「うん!すっごく美味しい!!」
こういうことをしてもらえば誰でも嬉しいはずだ。
ー数分前ー
「イブキちゃんの料理前から食べてみたいと思ってたんだ!それに僕もずっと一人で寝てるわけだし、今日はイブキちゃん家泊まってもいい?」
「え?それは…別に大丈夫なんだがハヤトに連絡取ってみないと…」
元はと言えばあの家というよりは豪邸だが…まぁ手配してくれたのもハヤトだし…メッセージ打ってみるか。
『今日エルを泊めても大丈夫か?』
送信…
通知がなった。早すぎだろ。
OKというスタンプが返ってきた。
まぁそれなら、
「エル〜大丈夫だってさ。」
「ほんと?!何年も前からずっと一人で寝てたし、花済真ちゃんに頼んでも毎回断られちゃうからさ…はは…」
そっか…エルも花済真も…ガビルドのせいで家族を失って…その上…
くっ…絶対許す訳にはいかないな…
エルは美味しそうに、オムライスを食べている。
そりゃ他人事かもしれないし、俺が関与すべきことでもない。でも、俺の友達の幸せを奪うなんてことは許す訳には行かないんだ。
そういえばエルって何歳なんだ??
僕?実はこう見えても25なんだよ?
え?そうは見えないけど。
僕は属性魔法の水が使えるのと壁に隠れている敵がいても、見えるようになってるんだ。その代わり代償として少しだけ行動とか少し幼稚な部分になるんだけどね?
やっぱり色々あるんだな。まだまだこの世界は謎だらけだ。
イブキちゃんも記憶喪失とは言うけど、自分の名前とかは覚えてたもんね?
それだけじゃない。前世はもっと平和で普通に暮らしてた記憶とかもちょくちょくある。スマホを片手に、作業したりだとか?
スマ…ホ?
(いや嘘だろ??)
次回!第1節 1章 6話 勇気と自信を持ち逃げることなく!
お楽しみに!