その声に目を覚ます。
「カルファ…ここは?」
「おそらく一叶さんが創った異空間かと。」
「は?なんのために?」
「おそらく我が主を逃がすためでしょう。それに、あそこにテーブルが置かれてあります。私は主の回復でエネルギーを大量に消耗しましたので休息を取らせて頂きます。」
「あぁ、戻れ。」
そっか…カルファも、俺の腹部の傷をずっと癒してくれたのか…
それに…
(「あなたならきっと世界一強い、最高の探偵になれるよ。」)
俺が探偵と言うのなら、なってやる。
任せろ、何故か知らないが、今までの中で一番自信が湧く。
意味ね…意味なんてないけど…
探偵。真実を暴き、公平さを重んじ、個人の正義を証明する。
普通は頭が良くなきゃ、よく状況を見れてなきゃ行けないと思う役割かもしれない。だけど俺にとってそれはさほど重要じゃない。
記憶を失い、自分を信じれず、この世界を知らない。
自分の頭が冴えてる確証もないし、何故、一叶が俺を助け、どうしてあんなことを言ったのか分からない。
でも、この身体が呼んでる。
たとえ、記憶を忘れても以前の俺が…
俺は俺を探偵であるべきだと言ってる。
それは比喩なんかじゃない。誰かのためじゃない。
「一叶は、もしかしたら俺とのただ一つの夢を叶えるために会ったのかもしれないな。」
冷静さを忘れるな。適応しろ。
目の前には机。タンス。それと棚。床には何枚もの紙が散らばっている。
俺は目の前の机に歩み寄り、机上を調べた。
「羽根ペンそして日記のようなもの。異空間にいる間に描いたのか?一体何を?」
日記をめくってみた。
「イブキ、あなたが今ここにいるとしたら、私はもうこの世を去っている頃でしょうね。」
待て?一叶はもしかして、俺がここに来ることを想定していたのか?
「私は貴方が目覚めて騒ぎを起こした時からずっと目をつけていた。そして、貴方に対することが少しわかったの。貴方は送遣人(そうけんにん)でこの世界の住人じゃない可能性が高いわ。」
送遣人…?それにこの世界の住人じゃない?
「貴方はスマホという存在を知っている。この世界の住人は全員スマホのことをWORLD door端末と呼ぶのよ。それだけじゃない。この世界は車や列車も空を飛ぶし、みんな、主能力という異能力まで使えるの。送遣人は前居た世界のことを知ってるからここに来た時違和感を覚えたはずよ。」
確かに…この世界に来てからは色々おかしい。まるで意図的に誰かの手によって、記憶を操られ、俺はこの世界に紛れ込んだような。
「私が持っていた貴重品も、全て、棚の中に入れてあるわ。この世界に来る時、何故か持っていたものもあるし持っていなかったのもあるはず。全て調べてくれて構わないわ。
それと私の主能力もう破る方法は身についたわね?私のこの主能力は「異空間」。外部との全てを遮断し、孤立した世界を創り出すの。もちろんこれを描いてられるのは、ガビルドにバレてないからよ。もしバレてたら既に殺されてるわ。それにイブキも私の想定より弱かったら元よりこの空間に連れずに殺して、期待するの諦めてたわ。」
酷いなぁ…まぁいいけど。少なくとも俺の力は一叶に認められた。だから、一叶は俺を最後の希望として託し、ガビルドを倒せる可能性を見越した。
「それに、私はもう、ガビルドの手中にあるのよ。ガビルドに接触し、ガビルドの主能力「支配」を受けると、例え遠距離からでも、自分に服従するように指示できたり、逆らうと遠くからでも分かってしまうもの。」
支配…主能力がない俺にとっては、かなりしんどい戦いになりそうだ。
「話はこれまで、じゃああとは頼んだわよ。」
後は棚などを調べて、自分で推理するしかないのか。
この世界に来る前までの貴重品は棚にあると言ってたな。調べてみよう。
これは一叶が前に使ってたiPhone?
日付は5月9日で止まっている。特に誕生日おめでとう等たくさんメッセージが届いているが…一叶の誕生日は5月9日。そして、圏外になったスマホ…間違いない。一叶はこのタイミングでこの世界に連れて来られた。時刻も0時になったばっか。WORLD doorの世界には、WORLD door端末しか使えないネット回線が通ってるのか?
これは送遣人として、大切な重要が詰まってる。変わりのないスマホだし一応持っておこう。…そういえば、俺は前の世界の私物なんてなかったと思うが。
棚を更に探ると、一通の手紙が入ってあった。
「どれどれ?」
「お姉ちゃんへ、
前にお母さんが、作ってくれた豆腐の味噌汁すごく美味しかったの!また食べたくて、私できるだけ再現してみたから、良かったらこっちに来てよ!私待ってるから。」
その下には小さく赤文字で「ごめんね。私が行けば貴方まで命の危険に晒すことになるわ。」と書いてある。
この赤文字の筆跡…これは一叶の字だ。妹?
あぁ、そういえば、うちの隊員の中に一叶と同じ苗字がいた。
姉・党廻 一叶…妹・党廻 結。そして母の家族構成。まさかこんな奇跡的な出会いするなんてな。
一叶は本当は結に会いたかった。だが、ガビルドの支配から逃れることは出来なかった。結も、一叶と会いたかったが敵だと知ってれば絶望しただろう。一叶と俺が戦うことこそ最良の選択肢だった。そして最悪だった。
これは内臓や体の構造?う…こういうのを見るのは苦手だが、今は一刻も争う。見るしかない。
「基本的な体の構造に異変はな……いやちょっと待て?!」
診断書には、心臓が2つ書かれてある。
そして、下の文に異常なし。
「心臓ふたつが正常?そして核もあるけど、核ってこんな形なのか?」
ちっちゃな駒のような形。こんなものが体の中に埋まってるのか?いや、これで正常なら一叶と俺の身体も同じ造りなのか?
「カルファ。」
体の中で会話を続ける。
「はい、我が主。」
「核について、知ってることを全て話してくれ。」
「核。この世界では心臓を意味します。核が壊れれば、人は死ぬ。神類などでどれだけ体を再生しようとも、核さえあれば、再生の精度が良ければ無からでも体を再生できます。ですが、核はその人が持ってないと、自分の存在自体は消えてしまいます。5分、長くても10分も経てば、体は完全に消え、核も同時に消滅します。」
イブキは少し傾げた。
「無から…?てか、心臓を意味するのなら、この世界の2つの心臓は何を意味するんだ?」
「心臓はこの世界では生の心臓と力の心臓があります。正の心臓は自身から見て左側の心臓。これがある事で人の生死を判別したり、回復を増強するための臓器と言えます。右側の心臓は力の心臓。鼓動を意識することによって自身の潜在能力を高めることが出来ます。」
「なるほど。ただ無駄なかざりということではないみたいだね。」
イブキは一叶の診断書と日記に羽根ペンをしながら照らし合わせ、日記をメモとして使い状況を整理する。
「つまりこの世界には、送遣人と呼ばれる。前の世界で暮らしてた人間がいる。今現状で送遣人はかなりいる方だと推測できる。順番に俺と最初人質を取ったあの大男。一叶、そして最後にカルファだ。」
「え?なぜ私もなんですか?」
「少し考えればわかる事だ。お前は核を説明する時、この世界では心臓を意味すると発言した。まるでこの前の世界では心臓という呼びしかなかったかのようにな。」
カルファは少し笑って、説明した。
「さすが、主には敵いませんね。そうです。私も送遣人です。通常、送遣人は人に教えては行けないんです。でもバレた以上仕方ありませんね。」
「教えては行けない?何故だ?」
「送遣人。それはこの世界では処刑対象を意味します。そういう法律がこの世界にはあるからです。ですが主の事は黙っておきますので。」
「いや、不自然すぎないか?送遣人ってだけで処刑対象?もしかして…その法律をつくったのはそいつにとって送遣人が不都合だから?それに、そいつも送遣人の可能性が高いな。」
「もうこうなってしまえば上を叩いていくしかありませんね。」
「あぁ。」
そしてタンスを開いてみた。
「これは…?」
タンスの中には、フード付きの青の無印ロングコート。それと一叶が使っていた棒と、そして1枚の紙切れが置いてある。
「まさか最初にあの豪邸にメモやあれを残したのは一叶かもしれないな。いや筆跡も違ったから別の人か。」
俺はメモをとって呼んでみた。
「イブキ、もう準備はできた?ここから貴方の旅は想像を絶するものになる。でも全てを諦めないで解き明かして。最後の最後まで。」
俺はメモを握りしめ、目を瞑った。
わかった。夢を叶えに行くから見てて。
イブキはロングコートを羽織り、棒を手に取った。
「カルファは?他に調べたいこととかあるか?ここにはもう二度と戻ってこれない。」
「私は主の何倍も記憶力があります。もし忘れたことがあればなんでも聞いてください。」
「わかった。そういえばこの世界で死んだ人間はどうなる?」
「この世界で死んだ人間は二度と会うことができません。例えWORLD doorを使おうとも。そして死んだものは夢を見ると言われています。良い行いをすれば良い夢を。悪い行いをすれば悪い夢を見るという言い伝えもありますね。」
「そうか。残念だ。でも、俺を殺そうとしたんだし一叶は悪い夢かな。」
でも、俺に希望を託してくれた。だったら最初は悪い夢でも最後にはいい夢を見てて欲しいものだな。
「前に一度、爆燦を使って、コツは掴んだ。2回目はそこまで体力を使わなくても行けるだろう。」
悲しくなってくるな。自分にこんな感情(モノ)まだあったんだ。
イブキは炎と雷を融合させ、手元に集中させる。
「爆燦。」
バリアが割れて、元の所へ戻ってきた。
俺の双剣も落ちてるし、一叶が使ってた棒も落ちてる。それに大量の血…一叶のWORLD door端末も落ちてる。
「これまだ起動するかな?」
「起動しても、私達はもう触ることができません。触れば強力な電流が流れ、持つのも苦労するでしょう。」
「でも、重要な手掛かりだ。無理してでも持つ。」
イブキは、手元に雷を大量に張り巡らせて、端末を持った。
「うっ…ずっと持ってるのはきついな。シュル。」
そのまま家に戻り端末を放り捨てた。
「後でカバンかなんかに保管しよう。そうすれば手で持つことも可能だ。」
イブキがふとロングコートのポッケに手を突っ込んだ瞬間なにか入ってることに気づいた。
紙切れとヘアピン?
「まだ早いかもしれないけど、
誕生日おめでとうイブキ。
あたしが使ってたヘアピンだけど、使う機会がなかなか無くて。でもすごい綺麗でしょ?良かったら使ってみて?
誕生日プレゼントこんなんだけど、気に入ってくれるとうれし
いな。 一叶より」
金色の三角のヘアピンたしかに綺麗だ…髪がもう少し伸びたら使ってみようかな。今はしまっておこう。今日は疲れたし、もう寝ようかな。寝る必要はなくとも、寝ればマナは回復するし、寝て損は今のところないな。
俺はベットに寝転がって、そのまま眠りについた。
そして後日…
「はーい?って、イブキ隊長?!すすすすみませんまだ起きたばっかりで、身だしなみが整ってなくて!」
「気にしなくていい。それより大事な話をしに来たんだ。家に上がってもいいか?」
「え?いいですけど…いやいいんですか?」
俺はそのまま家に上がった。
イブキは水筒を取り出し、カップに注いだ。
「まずはこれを飲んでみてくれないか?」
「え?味噌汁ですか?それに豆腐のすごい美味しそうですけど、じゃあいただきます…」
「味は君のお母さんみたいな味噌汁じゃないかもしれない。でも、お気に召してくれたなら、嬉しい。」
「え、なぜそれを…?」
イブキは深刻そうな顔をした。
「君のお姉さん。党廻 一叶は先日、殺害された。」
「え、」
結は現実を受け止められなかったのか。そのまま、カップを落とした。
「彼女は、ガビルドに支配されていて、俺を助けてくれた。でもその俺は何もすることが出来なかった。俺は正直君に見せる顔さえないと思ってる。ほんとうに申し訳ない。」
「い、いえ、イブキさんは何も悪くないです…むしろ、姉のことを教えていただきありがとうございます…」
「調べたら遺書と、君に渡すべきものがあった。」
イブキは遺書を差し出した。
結はしっかり丁寧に呼んでいることがわかった。そして最後になる頃にはもう泣き崩れてしまった。俺はゆっくりと目を閉じてできるだけ彼女の顔を見ないようにした。
「す、すみません…こんなんで…」
「俺から伝えることは伝えた。せめて、一叶の顔を君にもう一度見せることが出来れば良かったのだが。粉々で肉片も骨も残ってなかった。」
俺は扉を開けて、その場を後にしようとした時。
「あのイブキさん…」
「ん?何かほかにもあったかい?」
「遺品として、私に送ってくれたんですが、この指輪イブキさんがつけててくれませんか?」
「え?いや、さすがに申し訳ないよ。それは結の分だ…何も関係ない俺なんか持っても…」
「この指輪は私と、姉の分で世界にひとつずつだけなんです。くっつけると磁石が反応して、くっつくんです。小さい頃よく迷子になってた私に絶対に手を離さないようにと、姉がくれたものなんです。姉の意思を引き継いで、ガビルドを打ち倒してくれると思って、お願いします。」
イブキは少し考え込んだが、
「そこまで言われたら受け取らない方が無礼だろ。わかった。肌身離さず持っておく。」
今度こそ出ようとした時、1人の人が走ってこちらに向かってきた。
「大変ですイブキさん!!」
「えーと君は…エルの隊員の人?どうしたんだ、そんなに慌てて…」
「エルさん、花済真さん、2人とも音信不通になりました!!」
「なんだって?!!」
そういえば結は、味噌汁好きなんだな。
はい!特にお母さんが作る味噌汁が大好きで!
良かったらレシピとかあったら今度また再現させてくれないか?
もちろんです!
よし連絡先交換しておこうか。
え?本当にいいんですか?!
そんなに驚くのか?
イブキさん期待の新人。女性陣だけじゃなくて、男性も結構イブキさんのファン多いんですよ?エルさん花済真さんにもそういうファンはいます!
そ、そうなのか…
そういえばイブキさんは好きな食べ物なんですか?
俺はパスタやピザやワインが好きかな?
意外にイタリアンなんですね?
よく小さい頃お母さんが連れてってくれてた記憶がある。
次回!第1節 1章 9話 傷の跡
逆にイブキさんは苦手なものは?
…ピーマンと小魚だ……