最強以外ありえない   作:てんぞー

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これで3勝

 2勝! 2勝目! 指を持ち上げながら勝利を見せれば会場が沸く。やっぱりこの手のパフォーマンスは大事なんだなぁ、と思う。それはともかく、いい戦いっぷりだったので戦闘が終わった所で中央へと戻り、握手を交わす。

 

「対戦ありがとうございました」

 

「対戦ありがとうございました……負けてしまいましたなぁ」

 

「テツリュウオーが敗北するとは、ぐぬぬぬ……《デモリッション》はズルいのでは??」

 

「マスタースキルの制限内なのでズルくありませーん、使えない方が悪いでーす」

 

「それはそう」

 

「もう打ち解けてる……」

 

「ロールプレイはオンオフが肝心なので」

 

「遊びは相手の理解があって成立するんです柊さん。オフになったら直ぐにオフにしないと不快感を煽るだけなのだ。互いに楽しめてこそのロールプレイですよ」

 

 どう、面白かったでしょ、と兄弟がポーズを取る。俺、コレ結構好きだ。ロールプレイ系のマスターなんてのもいるんだなぁ。駆間にいるマスターはロールプレイじゃなくてガチの狂人ばかりで動きが本物になってしまってるから、ロールプレイじゃないんだよね……。

 

 だけどそうか、こういう趣味優先のコンセプト構築のロールプレイもありなのか。俺もこれなら趣味パでも構築するのは悪くないかもなぁ。

 

 ただし、牧場経営に余裕が出来たらの話だが。現状、メインの育成と素材の育成で余裕はない。もっと稼げるようになったら牧場のスタッフを増やしつつ……という所かもしれない。まあ、駆間市でうちの牧場でバイトしない? って聞けばそこそこ見つかるかもしれないが。

 

 なんて言ったって根の国と幻想図書館への直通ゲートあるし。あの世へと徒歩10秒の職場とか最高じゃん。

 

「じゃ、軽い感想戦に入ろうか」

 

 バトルが終わったのでサクッと感想戦に入ろうとすると相手が先ほどの対戦相手同様に悩むような気配を見せた。

 

「良いのか? アドバイスをして貰っても」

 

「我ら兄弟が次回はメタを手に再戦する可能性もあるが……」

 

「……?」

 

 その言葉に首を傾げる。

 

「対戦ゲームにおいてメタを相互に握るのは基本的な事じゃないか? 環境の変化と流動性はメタの認知と握りによって起こるものだよ。トップメタが変わらない環境が一番成長に乏しく、つまらないんだ。戦闘後の感想戦はそういう停滞を破るものであり、互いに何が弱点で改善点なのかを把握するのは成長の為にも大事なものだよ」

 

 こういえば解るかもしれない。

 

「改善は、弱点が露見して初めて成立するんだ。相手に弱点を伝え、改善され、そして次は此方の弱点を突かれ、メタを用意される。それに対応するように構築に変化が起きる。それが健全な環境というものだよ」

 

「……成程なぁ」

 

「流石駆間出身者は考え方がプロフェッショナルだな……戦いに対する考え方が真摯だ。自分を強くするために周りを強くする必要があるかぁ」

 

 まあ、そう言う訳で感想戦に入りつつ互いのモンスターを蘇生し、ステージの修復を任せつつ控室へと4人で向かう。

 

 テツリュウオーはコンセプトそのものは悪くない。というのも合体モンスターは基礎ステータスが馬鹿高くて、一つ上の世代レベルの強さを発揮する事が出来る。総合的な行動回数が減ったり、対応力が下がる危険性も当然存在するが、それをマスタースキルで補いつつ殴れるなら十分強い。

 

 今回のテツリュウオーが悪かったのは、妨害や打ち消しを可能とする手札や対応手段がなかった事だ。

 

「言い換えちゃえばフルアタって実はそんな強くないんだよね。アタッカーの耐久力ってそんな高くないし、サポ抜きだとハメに対して弱すぎるんだよね。最低限《インタラプト》を握っておかないとハメに入った時に対応出来なくなっちゃうんだよね」

 

 まあ、テツリュウオーに関してはそれが難しいコンセプトだったが。それでも今回は悪くなかった。相手を必殺する為のコンボ搭載してるから広い範囲で対象を取る事が出来た。ただ打ち消しでバフ剥がされたら終わるってのはちょっと弱い。

 

 こう見るとやっぱアレだな。

 

 《ディストーション》酷いわ。ディスペル付き魔法攻撃、やっぱ許されちゃいけないだろアレ。攻撃と打ち消しが同時に出来るの邪悪以外の何物でもないよ。

 

 こんな風に鉄兄弟に軽い感想戦で改善点を話し終えたら控室に到着し、マスターズルールに従って次のモンスターを選出、少しだけ待機してから3試合目の為に再びステージへと向かう。

 

 1戦目はフラメア。

 

 2戦目はチビ。

 

 じゃあ3戦目は誰を軸にする? またチビ? それともフラメアに戻る? いいや、それじゃつまらない。控室で話し合って選出を終え、再びステージへと戻る。

 

 横に連れるモンスターは当然、スタメン起用するモンスター。

 

『さあ、ステージにこの二人が帰って来た! ここまで連戦連勝! 危ない所を見せたように思えて実は計算された戦闘を見せる鴉羽柊ペアだ! その横に連れているのはロックトータスと……これはもしや!?』

 

『今では僅かに国内で見られる死神種のモンスターですね。国外では取得条件が原因で作成できない為、ほぼ日本専用というのが正しいですな。出身地の駆間ではなぜか採用するマスターが出現しているのが不思議ですね……どうやって手に入れてるんでしょう……』

 

『さあ、今度も華麗な勝負を見せてくれるか鴉羽柊ペア! 3戦すべて違うモンスターを選ぶ自信と実力っぷりを見せてくれ!』

 

 ウェルギリウスを採用する。3戦すべて違うモンスターを起用する。これで本戦になってもどの構築で挑んでくるか読まれなくなるだろう。それに、同じ構築を握るより切り替えて行く方が楽しいし、飽きない。

 

 ステージの反対側には既に対戦相手が2人揃っている。中央に出て握手の為に近寄ろうとするが、相手は寄ってこない。軽く手を振ってこんにちわアピールしてみるが、睨むだけでガン無視される、ちょっと悲しい。

 

「ま、そういう事もあるわ。誰もが礼儀正しいという訳じゃないわ尊。寧ろこれまでの民度が良すぎたのよ」

 

「そうかもな……対戦よろしくお願いします」

 

 ……返答はない。慣れ合う気はない、という事なのだろうか。敵だからこそ敬意を持つべきだと思うんだけどなぁ。その方がカッコいいし。戦闘前の交流もなしだと言うのなら仕方がない。下がり、定位置についてウェルギリウスを待機させる。

 

 ぷらんぷらんと空洞の中身を揺らす死神が影からデスサイスを取り出し……仕舞った。そうだね、お前物理攻撃を持たないからそれ飾りだもんな。戦闘で演出以外には使わないもんな、それ。でも物理型死神ってかなりのエアプビルドだよ。

 

 アンナの指揮するモンスターも何時でも対応できるように待機し、睨み合う事数秒。何時も通りの戦闘開始を待つ時間―――それが過ぎ去り、開始の合図が入る。

 

『試合……開始ッッ!!』

 

 開始と同時に相手のモンスターが飛び出す。

 

 棍棒を握ったオーガは物理攻撃力に優れたモンスターだ。それが2体、典型的な物理アグロ型の構築だ。ウェルギリウスを庇うように岩亀が前に出て、その姿の後ろにウェルギリウスを隠す。

 

 だがあらゆるアクションよりも早く、領域が展開される。

 

 大量の鳥居。咲き乱れる花。舞う告死蝶。彷徨う死の概念。

 

 根の国への扉が開かれ、命を冥府へと誘う。

 

 今日は大会だから派手めな玩具(根の国)、持って来たよ!!!

 

 死神に呼応し《根の国》が開かれた!

 あらゆる生命が死へと誘われる……。

 オーガAは《渾身撃》を繰り出した!

 ウェルギリウスの《パーフェクトキャンセラー》!

 《渾身撃》は無効化された!

 《去り行く過去》によりオーガAは忘却した!

 不運に《削れる運命》! オーガAの命が1割削れた!

 《ミスチーフ》! 運悪く攻撃が1段階下がった!

 不運に《削れる運命》! オーガAの命が1割削れた!

 オーガBは《渾身撃》を構えた!

 オーガBは《フルパワーアタック》を構えた!

 ウェルギリウスの《インタラプト》!

 《フルパワーアタック》は打ち消された!

 《去り行く過去》によりオーガBは忘却した!

 不運に《削れる運命》! オーガBの命が1割削れた!

 《ミスチーフ》! 運悪く防御が1段階下がった!

 不運に《削れる運命》! オーガBの命が1割削れた!

 

 一瞬でレシートみたいなログが俺とアンナの脳内を駆け巡る。《渾身撃》を叩き込もうとしたオーガAはそれを打ち消され、忘却によってメイン行動でのスキルが使えなくなり、行動キャンセルによって棒立ちになる。

 

 オーガBも《フルパワーアタック》というオートスキルが無効化された影響で忘却を受けて、忘却の効果で《渾身撃》が使えなくなり棒立ちになる。唐突に何も出来なくなったオーガブラザーズがステージの上で棒立ちになる。

 

「えっぐ」

 

 アンナの引き気味の発言が出て来る。やあ、パーミッションを見るのは初めてかい? 相手に何もさせずに封殺するのがパーミッションの醍醐味だよ。ちゃんと見ていくんだよ、相手が何も出来ずに死んでゆく姿を……だからフルアタはダメだって言ったのに。

 

「動け! おい、動け! どうしたって言うんだよ!!」

 

「何でもいいから動け! 殴るんだ!!」

 

 オーガAの攻撃!

 ロックトータスはウェルギリウスを庇った!

 オーガBの攻撃!

 ロックトータスはウェルギリウスを庇った!

 ロックトータスは身を守っている!

 《集気法》で体力が回復した!

 ウェルギリウスの《絶望の足音》!

 オーガAは絶望状態に陥った!

 不運に《削れる運命》! オーガAの命が1割削れた!

 《ミスチーフ》! 運悪く素早さが1段階下がった!

 不運に《削れる運命》! オーガAの命が1割削れた!

 

「これで主動作補助動作全部消えたね」

 

「えっぐ」

 

 どうしてベール持ってないんですか? 《瞬間回復》は? 《シェイクオフ》は? デバフ対策ない感じっすか? 《深呼吸》は比較的入れやすいスキルだよ? どう? ある? ない感じ? 開始前握手拒否でイキったのにこんなもん? そっかぁ。

 

 オーガAの攻撃!

 ロックトータスはウェルギリウスを庇った!

 オーガBの攻撃!

 ロックトータスはウェルギリウスを庇った!

 ロックトータスは身を守っている!

 《集気法》で体力が回復した!

 ウェルギリウスの《絶望の足音》!

 オーガBは絶望状態に陥った!

 不運に《削れる運命》! オーガBの命が1割削れた!

 《ミスチーフ》! 運悪く魔力が1段階下がった!

 不運に《削れる運命》! オーガBの命が1割削れた!

 

「動け! どうしたんだよ! 動けよ!!」

 

「あっちの死神から叩き潰すんだよ! どうしたって言うんだよ!?」

 

 オーガAの攻撃!

 ロックトータスはウェルギリウスを庇った!

 オーガBの攻撃!

 ロックトータスはウェルギリウスを庇った!

 ロックトータスは身を守っている!

 《集気法》で体力が回復した!

 ウェルギリウスの《宵の風》!

 オーガAの最大HPが下がった!

 オーガBの最大HPが下がった!

 不運に《削れる運命》! オーガ達の命が1割削れた!

 《ミスチーフ》! 運悪く防御と攻撃が1段階下がった!

 不運に《削れる運命》! オーガ達の命が1割削れた!

 

 地獄みたいな絵図が出来上がる。

 

 最大体力が削れて絶望忘却状態に陥ったオーガたちはもはや通常攻撃しか出来ず、恐怖におびえた表情のまま、足を恐怖に震わせつつ必死に棍棒を振るっているが、攻撃が下がっているのでロックトータスをぺちぺち叩いている。だが攻撃力が足りず、全然ダメージにならず、装甲に弾かれて全回復されている。

 

 その奥からゆっくりとデバフを連射するウェルギリウスがノーダメージのまま、相手の行動を全て無力化しながらデバフ重ねによる割合ダメージだけを与えている。これまでのファストゲームに比べればかなりスローテンポな試合になっている。

 

 だがこの結果がどうなるかは、忘却が回復されなかった時点で見えている。

 

 ウェルギリウスのデバフを受けて《削れる運命》が発動し、割合ダメージが刺さる。それが一定以下のラインになった事で根の国の効果が発動する。

 

 虚空を漂う死神の幻影が鎌を振り下ろし、その命を刈り取った。漸く死ねた。恐怖と絶望と忘我から解放されたオーガたちが死の瞬間、安らかな表情を浮かべながら無傷のまま死亡した。

 

「ちょっと物足りないが、これで3勝」

 

 パーミッション。それは相手の行動を阻害、打ち消し、妨害し、行動させずに相手を削り殺す妨害特化の構築。

 

 相手の完全封殺に成功した試合は最高に気持ちが良い。

 

 反面、これ食らった相手は凄く嫌な気分になるので、試合が終わったらちゃんと挨拶と和解をしよう。

 

 基本的にちゃんと試合さえすれば会場って盛り上がるんだなぁ、と歓声を浴びながら思いつつステージ中央へ、反対側のマスターたちと交流する為に近づくと、走って寄って来た相手はモンスターを蘇生すると、その腕を引っ張って下がる。

 

「チ、やっぱ金を使ってモンスター揃える所には勝てないかー。いいよなぁ、実家が太い所は! どうせこの大会も出来レースだろ。楽しかっただろ? 好きなだけ強さを見せつけられて」

 

 けっ、と毒づくとそのまま去って行く。まさしく負け犬の遠吠え。しかし聞いてる方は気分が良くない。肩を揺らしてどーしたもんか、とポーズを取る。

 

「気にしなくて良いわよ、尊。上に行けば行くほどこの手の妬みひがみは増えるわ。相手のレベルも……さっきの2戦が異常なだけで、これが基本的なラインよ。まあ……本戦や決勝周りは相応のレベルのマスターだけが残ると思うけど」

 

「それなら良いんだけど」

 

 悲しいなぁ。強さを見せつけて楽しいか? という話をしたらまあ、かなり楽しいですとしか答えられないんだけど。それでもこう、ストレートに毒を吐かれるのは気分が楽しくない。

 

 勝ち負けが出るゲームである以上、敗者が惨めな思いをするのは当然の事でもある。対人ゲーム……PvP系統はだからこそ人を選ぶと良く言われる。逆に相手の嫌がる事をして気持ち良くなれる奴はカスの才能があるし、負けてもへこたれず殺してやるという殺意ゲージが溜まって行く。

 

「へい」

 

 手を軽く振ったらステージ横からマイクを投げ渡された。

 

 タップタップ。音が入るのを確認し、全体を見渡すように一回転する。

 

「さあ、見たな! 俺の力を! 俺の実力を! 先に言っておこう! 俺は柊本家からは絶縁してる! クソみたいに腐った家督には興味がない! だからウチは少し前まで一般家庭だった! クソみたいなジジイの遺言で土地を押し付けられるまではな」

 

 静まり返る会場の中、自分の声を届ける。

 

「そうだ! 少し前まで俺もそこにいた! そこで座っているアンタだ! アンタの様などこにでもいる誰かだった! だけど人生で、ステージに上がらなきゃならない時が来る! 俺はステージに上がった! じゃあアンタはどうだ! そこのアンタは? スポットライトがそっちに行ったぞ! 上がるチャンスが出来た! なのにそのままでいるのか?」

 

 たんたん、と音を鳴らすように足元を踏む。

 

「俺はここに立った。次はアンタだ。Cランクで誰が一番強いのか決めようぜ」

 

 爆発する歓声の中、マイクを投げ返してステージを降りて行く。

 

「アンタ、前世革命家か何か?」

 

「人をカルマ値の低いキャラに仕立て上げようとするの止めてくれない? ちょっと人の心が解るだけの一般人だよ」

 

 盛り上がるステージに予選の試合を一気に始めるアナウンスが入る。これからこの会場の各所で何個ものバトルが同時進行する。そしてその大半は……残念ながら先ほどのマスターのレベルだろう。だがそういうのを踏み台にして上がって来る連中はいる。間違いなく。

 

 そういう連中との相手を楽しみに、ステージを去る。

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