最強以外ありえない   作:てんぞー

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エンタァァァテインメントォォォォ!!

「テロリストがなんぼのもんよ!! こっちは人間兵器があるのよ! 神でも邪神でも何でもかかって来なさいッッ!!」

 

「よう言うた!」

 

「えらい!」

 

「その意気です!」

 

「わおん!」

 

『(`・ω・´)b』

 

「でも俺の事を人間兵器扱いするのは止めてね」

 

「黙れ人型理不尽。シンクロプレイヤーキルが出来るものなんて兵器以外の何ものでもないのよ! アンタ、久遠さんに感謝して首輪に繋がれておきなさいよ? 本気で。彼女以外にアンタを御せる生き物は地上にいないと思うから」

 

 一晩ぐっすり眠ったアンナは復活した。悩んでても仕方のない事は仕方ないし、対処できると言っている俺に全部ぶん投げるという事で結論が出たらしい。まあ、正しい選択なのだが。これ、アンナが出来る事は本当に何もないのだ。本当に。

 

 連中の対処、問題は全部此方の領分なのだから。

 

 それでも一晩で精神力を回復して割り切れるようになるのは流石、ブラッド・オブ・柊といった所か。これだけのビッグマウスが出てくるのなら心配はいらないだろう。俺なんかよりもずっとしっかりしている娘だし。寧ろ俺の方が今日はキツイかもしれない。

 

 徹夜したのもそうだが、今日の為にちょっとコンディション調整を昨晩から施している。そのせいで全体的に気分が重い。とはいえ、これで戦闘のパフォーマンスに違いを出す程愚かではない。

 

 俺を容赦なく殺しに行くならまず幻想図書館との繋がりを断つだろう。試練にせよ、ゲームにせよ、チートは先に封じておかないとゲームとして成り立たない。これがあの神父みたいなカスならまだマシなのだが、警備のマスターを操った奴からは遊びの中に殺意を感じた。

 

 あっちは殺す為に遊ぶ、という感じの感情だ。遊んではいるが、遊びがない。

 

 そういう奴は見えてる札はまず潰すだろう。だから図書館は使用できない前提で対処法を考える必要がある。

 

 一晩考え、コンディションを調整して、普通のバトルの準備もして、3日目、最終日が始まる。

 

 ホテルを出て車に乗って会場へと向かう。この時点でドライバーは既に人形にされた人だった。肉体から意志を一切感じない。完全に操り糸によって操作されるマリオネットの様な状態。それが無言で車を会場へと進めている。

 

 まるで逃げ場なんてないと言わんばかりに。

 

 それを態々アンナに教える必要もない。何時も通りの朝を過ごして会場へと到着する。

 

 すれ違う警備のマスターは既に全員陥落している。何時も通りを装いながらもその視線は此方へと真っすぐ、笑顔と共に向けられている。あ、昨日ぼろぼろになったマスターだ。また操作されてる。駄目だな、解除不可デバフっぽいなこれ。これで大体絞れたし最悪の予測が当たったっぽいなこれ。

 

 控室に入るまでの間、ほぼ常に誰かが一緒に居る。いや、見てる。操作されてる誰かが。ただ、その数には常に制限がある。一定数以上の操作が行えない、そんな印象を受ける。

 

 控室に入るとそれを認知出来なかったアンナが振り返ってこちらを見る。

 

「今日はトーナメント形式よ。4回勝てば優勝。覚悟はいい?」

 

「俺は何時でも」

 

 バトルするだけなら何時でも問題はない。こっちのメンタルは多少ボロボロでもパフォーマンスに影響はないし。控室のソファに灯共々座るとモンスター達も運ばれてきて、表では本日の司会が進行する。

 

 少し待ってればトーナメント表が出来上がる。ここまで来るとシードもクソもない。純粋な運と実力の戦いになる。出来上がったトーナメント表を見る。

 

「1回戦はジャックポット相手かぁ」

 

「確か特殊勝利使いだったわね」

 

 アンナがタブレットから対戦相手のデータを取り出す。

 

「あぁ、《ロトリー》っていう特殊勝利スキルを習得してると戦闘開始時に勝利の番号が表示されるんだ」

 

 《ロトリー》はまず8桁の数字が表示される。

 

 例えば23467789。

 

 戦闘中に《ロトリー》を使うことで抽選が開始し、1から9までの数字がランダムに1つ選ばれる。最初に表示された8桁の数字が揃うと特殊勝利扱いとなってカンストダメージが死ぬまで垂れ流しになる……というのがゲームの仕様だった。

 

 無論このナンバーは被りがある。先程の数列の場合、7を引ければ2枠埋まることになる。そして《ロトリー》で出現するナンバーはランダム、同じ数字が再び現れることもある。

 

 《ロトリー》を回す係はリールを回し続ける都合上、直接的な戦闘力は一切ない。その為《ロトリー》担当で相手の動きを止めたり、相手を倒して進行を食い止めることもできない。

 

 ひたすら耐えるしかないのだ。その為、アグロ型や妨害の多いコントロールに非常に弱く、晩成型のランプに強い。

 

 ……それをサポートの薄いこのランクで4ターンぐらいで平均で完成させてるのだから、神に愛された運の持ち主だというのは間違いがない。

 

 ちなみにギャンブル系は他にもブラックジャックや、花札がある。だが俺はこれで永遠に勝てる気がしないので絶対に触らないことを心に固く誓っている。

 

「ジャックポット相手ならウェルかな。相方は守る方よりも殴れる方が嬉しいかな」

 

「ならルナの出番ね」

 

 チビとは違い、大人っぽさを感じさせる大人しい魔狼は呼びかけに応えて顔を上げると欠伸を漏らし、床に座り込む。その周りをチビがぐるぐる回っている。恥ずかしいから止めなさい。もっと落ち着きを持ってくれ。

 

 ……っ! 普段、皆、俺に対してこんな気持ちで……!?

 

 戦慄してる俺の横でアンナがカードデッキからスキルカードを取り出してスキルの調整を行い、灯はねむねむしていた。控室の中だけを見るならだいぶ平和な光景になっているが、視線を感じるのは確かだった。

 

「そこか」

 

 視線を気配ではなく、命で追う。

 

 指鉄砲を作り構えると、指先に蝶が止まる。

 

「ばん」

 

 視線が消えた。軽く指先を眺め、昨晩よりも濃くなっているのを確認し、手を振るってかき消す。調子は悪くないが、まだ追い込めるか。

 

 ここ最近幸せな日常が続いてたから、少し鈍ってるかも。

 

「まあ……こんな所ね。尊、そっちは?」

 

「俺は調整箇所あんまないからな。問題ない」

 

「そう。じゃあ期待できそうね」

 

 そう言ってこれからに集中するのは余計なことを考えない為でもあるのだろう。アンナも準備を終えたのを見て、しばらくすると連絡が来る。

 

 時間だ。

 

 対戦に呼び出され、控え室を出る。

 

 視線はない。対人前提なら誰であろうと負けることはない自信がある。だがここにいない、という事は別の所で何かをしているということでもある。厄介だな……と、思っている間にモンスターを連れて再びステージの上へ。

 

『さあ! ついに来ました決勝トーナメント! 3日も続いたこの大会もいよいよ強者が揃い終幕に近づく! 第1試合を飾るのはこのペア! 主催者権限を蹴り捨てた破天荒なマスター! そしてそれに振りまわされる可哀想な主催者! デコボコに見えるが、その実力は大会最強とも言われる! 圧倒的なまでの血筋のブランド力! 鴉羽柊ペアだ!!』

 

 爆発する歓声。鼓膜が吹っ飛ぶのでないかと思うほどの音の衝撃。決勝へと向かってボルテージが上がり続ける。

 

『対するは! なんと逆田からの刺客!! 最強のギャンブラー達! あらゆる事をギャンブルで決めてきた生粋のギャンカス共! 今日も勝利を運否天賦に任せる! マイケル・ゴールドマンとステイシー・フォースナー!』

 

 反対側からファーコート姿の男とバニースーツ姿の女がやってきた。ステージに上がるとバニーガールがポールダンスのような動きで男を中心にくるりと周り、それから男が片手を掲げた。

 

「エンタァァァテインメントォォォォ!!」

 

 サイコロとコインが投げられた。

 

 ランダムに、法則性はなく、イカサマもない。

 

 男の手から離れたサイコロはすべて6で止まり、コインも全て表でも裏でもなく、垂直にステージの上に立った。パフォーマンスを終えて両腕を大きく広げた。

 

「Let's say?」

 

 エンターテイメントの声が会場に響き渡る。一気にクライマックスと言わんばかりに盛り上がる。二人の背後からリールが一つしかないローラー付きのスロットマシンと、青肌、角の生えた悪魔のディーラー型のモンスターがやってくる。

 

 うーん、悔しいけどパフォーマンスが上手。普通に見てて面白かった。俺も拍手すると優雅に礼をされた。

 

 中央に進み、握手する。

 

「大会に特殊勝利持ち込むとか面白いなアンタ」

 

 俺の言葉に嬉しそうにマイケルが答える。

 

「エンターテイメントというのはそういうもんだろう? バトルとはパーティーだぜ、楽しくやれなきゃ意味がない。そして俺もアンタも勝つ事には本気で、その為に詰め込めることは詰め込んできた。勝負しよう、駆間の刺客。南北の魔都でどちらが上か見せつけてやろう」

 

 北の駆間!

 

 南の逆田!

 

 それは日本の南北に存在する魔都の名前! ダンジョン活性域に建てられた日本の2大魔境! 日本中のキチガイが集まるバトルジャンキーの聖地!

 

 一度でも、この業界に踏み込んだ事のある人間なら考えた事がある!

 

 駆間と逆田! 果たして、どっちが上なのか……!

 

 握手してお互いの戦意を確認し合い、中央を離れる―――所で観客席に目が行った。

 

 神父がいた。

 

 しかも自作応援うちわ持ってた。

 

 そっと見なかった事にしてステージ端に戻り、向き直る。

 

『逆田か! 駆間か! Cランク最強のマスターはどっちか! もしかしてそれをこの大会で見る事が出来るかもしれない! いよいよ温まって来たぞ!』

 

 反対側に戻った所でマイケルがポーズを取る。

 

「Ok! DJ! ミュージックスタートだっ!」

 

 BGMジャックが開始された。ディスコで聞くような音楽が会場内に溢れだす。それ、やっていい事なんだ……というちょっとした感動を覚えつつモンスター達が戦闘の準備を整えた。そして戦闘開始前、映像が、ビジョンが更にジャックされる。

 

「本日のラッキーナンバーは……ヘイ、カモン!」

 

 ドラムロール。スロットマシンのリールが回る。それに合わせてジャックされた映像にスロットの番号が映し出される。1桁目からランダムな数字が表示されて行く。

 

「1桁目は7! 2桁目も7! 3桁目も当然7! 4桁! 5桁! 6桁! 7桁目も7! そして……Oh、8桁目は6! 惜しい! ジャックポットまで後少しだったのに!」

 

 くるっとターンを決めて此方を指差す。

 

「本日のラッキーナンバーは77777776! さあ、俺がこのナンバーを完成させる前に勝てるかな!?」

 

 キラン、と歯を輝かせスマイル。それを見てアンナと視線を合わせ、頷いて深呼吸。

 

 いっせーの、せっ。

 

「ざけんなっ!! イカサマ止めろぉおおおお―――!!!」

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