最強以外ありえない   作:てんぞー

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結局、全部俺が攻略するハメになると思う

 す、と手があげられる。

 

「はい、そこの人」

 

「暗黒樹海という場所がもう名前からしてまともな場所じゃないのは解るんですけど、確か飛行船でスキルカードを交換できるという話でしたが」

 

 イエース、と答える。

 

 ホワイトボードにきゅっきゅっ、と棒人間と村を描く。そこから繋がる樹海と、その先を黒く塗り潰す。まあ、これで大体の絵は見えるだろう。

 

「暗黒樹海はぶっちゃけると暗黒樹海というフィールドを中心に存在する大型フィールドダンジョンの名称で―――」

 

 黒く塗りつぶしたエリアから線を引いて遺跡の絵や海の絵を追加して行く。

 

「俺が知る限り、ドラゴンズバレーと並んで最大規模のダンジョンになってる。その影響で出現するモンスターの種類やボスの数も豊富……というのはこれらがほぼ全部スキルカードの交換素材になるからだ。ぶっちゃけ、今から交流戦まで時間どれぐらいだっけ?」

 

「半月です」

 

「半月で全部攻略するのは無理。時間が足りなさすぎる。最深部……隠しボスのいるエリアに到達して出て来る頃には時差の関係で1年以上経過するし」

 

「流石に1年も時差のあるダンジョンは初めて聞くな」

 

「それだけデカい、ってことなんだね?」

 

 頷く。暗黒樹海はマジでデカい。特定のモンスターをギミック攻略用に用意しないと進まない、探索系ダンジョンとしての完成形だと言っても良い。報酬として徐々に解禁されるスキルカード交換機能はスキル合成によって生み出されるスキルなどがリストアップされている。

 

 つまり再合体等の手間を抜いて汎用合成スキルを用意出来るのだ。

 

 それ以外にも暗黒樹海では図書館で崩壊した環境に対するメタスキルが用意されている。これによって平等にすべての構築がインフレした。インフレしてクソゲーの押し合いによって更に殺し合いは加速した。プレイヤーの精神状態は概ねおかしかった。ずっと精神状態おかしいよこいつら。

 

 ちなみにドラゴンズバレーがバカクソデカいのは探索範囲がデカいからじゃなくて、純粋に竜王様がデカすぎるからである。尻尾ビンタで国を滅ぼすレベルの巨体だからね。

 

「暗黒樹海は入って直ぐに普通の樹海が広がってる。ここにスキルカードを交換してくれる部族の村がある……えーと、なんだっけ……そうそう、最も古い血の一族だっけ? 世界を生み出した時に生み出された最初の人々の血を引く部族だとかなんとか……その人たちが交換に応じてくれる」

 

 勿論、タダではない。モンスター退治で信用を稼ぐ必要があるし、その為には最初のボスを倒す必要がある。それをクリアするとスキルカード交換が解禁される。

 

「交換できるスキルカードは開拓したエリアや他の高難易度(DLC)ダンジョンに伴って増える。つまり欲しいスキルカードを手に入れる為にはそれに応じた探索をしなければならない。とりあえず俺と東吾がいるから根の国産と図書館産のスキルカードは全部素材で交換できる筈」

 

「それで戦力を増強しよう、という事か」

 

「主に目的は暗黒樹海産のスキルカードだけど」

 

 す、と手があげられるのではい、と指差す。

 

「このダンジョンがスキルカードを交換できるダンジョンだというのは飲み込んだ。どういうスキルカードが交換できるんだ?」

 

「《クリティカルガード》」

 

「効果は?」

 

「味方1体指定3ターン(15秒)ぐらいクリティカル効果を受けないバフ付与」

 

「え、何それ欲しい」

 

「ずっるっ」

 

「OC環境で気持ち良くなってる所にコレをぶっこむのか」

 

 当然だけどメタ抜きで環境は回らないし、メタの回らない環境は対戦してて楽しくない。だから《クリティカルガード》の様なOC構築をメタるスキルは存在する。問題はそれが図書館とは別の場所で手に入る為、この世界での入手難易度が馬鹿高いというだけだ。

 

「後は《エクストラオーダー》とか」

 

「効果は?」

 

「マスタースキルの使用回数+1」

 

「明確にインチキだって解るのが出て来たな」

 

「コイツに渡したくない気持ちとこれを今回握って気持ち良くなりたいって気持ちが今凄い鬩ぎ合ってる……というか当然のようにルール干渉型スキル出て来るのか」

 

 そこはほら、そういうゲームだったし。正直何がある? と言われても交換範囲広すぎて説明するの難しいし細かいの覚えてないんだよね。良く使ったやつしか覚えてないわ。

 

 重要なのはこれを利用すれば図書館環境に対するメタを構築出来るという点だ。

 

「もうちょっと暗黒樹海の話をするけど、大事な話なのでちゃんと聞いててね」

 

 全員が一瞬で黙った。ちょっと気持ち悪いな。

 

「暗黒樹海は探索規模では最大級のダンジョンなんで、今回は探索範囲を入り口付近と暗黒樹海浅層に限る。場合によっては中層も。あそこには徘徊系ボスもいて、一部は深層や遺跡エリアでギミック解除しない限り無敵ってタイプもいる」

 

 コイツらを相手する前提になると流石に地球の半月では全然時間が足りない。なので探索範囲は絞る。

 

「当然、未探索エリアで出現モンスターも全てが最低で100レベルある。罠も殺意マシマシで、ギミックも面倒なのがある。それでもリターンとして、図書館環境に対するメタスキルを握ることができる」

 

 現状、環境への最適化を果たした奴が強い、だがこれはワントップ型の環境で、メタバトルとして見ると不健全で面白くない。だから別の構築でも勝てる環境を導入しないとならない。

 

 それができるのがここだ。

 

「ダンジョン内では俺の言う事を絶対に聞く、その上で遺書を書いて提出するというのならはいはいはいはい、君たちそれどこに隠してた?」

 

 喋ってる途中から皆が遺書を5枚ぐらい取り出しては投げつけてくる。一瞬で俺の前が遺書だらけになる癖に皆次の遺書を取り出してはそれを投げてくる。もういいよ!! そんなにいらないよ!!

 

 なんでそんなに遺書の提出がアグレッシブなんだよ!!

 

「解った! 解った! 行こう! 暗黒樹海!!」

 

 ピクニック確定に歓声が会議室に広がる。

 

「前々から東吾が羨ましかった、1人だけズルい、と」

 

「ははは、これで俺は3箇所目だ。羨ましいか?」

 

「はは、煽りよる」

 

「そこ、バチバチしない。あっちの酒カスみたいに大人しくしてろ」

 

「その酒クズ喉につまみ詰まらせて死にかけてるから大人しいんですよ」

 

「なんでこんな事で死にかけてるんだよ!!!」

 

 マネージャーさん、何時もお疲れさまです。

 

 概ね暗黒樹海を攻略する事で方向性は固まったらしい。

 

 暗黒樹海は大まかに分けて樹海、暗黒樹海、遺跡群、原始海、火山島、そして時のゆりかごでエリアが構成されている。

 

 火山島の中央、火口の内部には世界に光を与えた最初の火種が存在し、その先に進むと時間がさらに歪み、時のゆりかごという時間が生まれ、死んでゆく場所に到着する。

 

 ここは神様が世界を生み出すのに使ったとされる場所であり、ここに暗黒樹海の隠しボス、名も無き破壊神が眠り続けてる。こいつを倒すことが最終的な目的なのだが、難易度的にDLCフル活用が前提なので今の人類では絶対に倒せないだろう。

 

 まあ、そうじゃなくてもテスカトリポカ、ケツァルコアトル、フンババ、アンチマタータイタン、アルティメットキマイラとかわけわからんぐらい強いボスモンスター出てくるし。飽きる事のないダンジョンではあった。

 

「ギミックに特定のモンスターが必要になるけど、そこは俺の方でどうにかするから、皆は戦力の事だけ考えて。あとは誰が向かうのか選出もそっちに任せたい。俺はそういうの得意じゃない」

 

「了解した。参加メンバーは此方で決めよう……それで、この暗黒樹海はどこにあるんだい?」

 

 仮面の言葉に答える。

 

「アマゾンの奥ら辺」

 

「はい、解散」

 

「どうやってこの差を埋めるかなぁ……」

 

「やっぱ分析してメタをなんとか構築するしかないのでは?」

 

 皆急にワクワクが失せた顔になってしまった。もう怒ったぞ。懐からスマホを取り出して、スピーカーモードで通話する。

 

「もしもし、館長?」

 

『やあ、尊くん。今日はどうしたんだい? 今はアメリカだろう? なにか家に忘れたのかい?』

 

「今日本チームで暗黒樹海行こうぜって話をしてるんだけど」

 

『え、行くのかい!? 暗黒樹海に? 本当に? 行くなら入り口までなら道を繋げるよ! いやぁ、現れたのはいいけど全く見つからないし、攻略されないで困ってたんだよね!』

 

 暗黒樹海行くよ、という話をすると滅茶苦茶嬉しそうに館長が協力を約束してくれる。まあ、ダンジョンって人類を滅びの女神と戦えるようにする為の施設だしな。

 

 攻略されずに放置されてるのが一番キツイのでは?

 

 ともあれ。

 

「移動の問題はこれで解決だな?」

 

 ドヤ顔浮かべてると修三さんに落ち着けと手をひらひらされたので深呼吸して気分を落ち着ける。

 

「これで、フカシでも何でもなく本気で暗黒樹海に行けるというのは伝わったと思う」

 

 全員を見渡して、視線が向けられているのを自覚してから続ける。

 

「高難易度ダンジョンを戦争の火種とか、外交問題に発展するかもしれないと思っている人もいると思う。だけど、実際の所人類にそういう事で争ってる暇はない」

 

「滅びの女神だね?」

 

「アレは……勝てる勝てないの領域になかった。俺やアーサーですら戦うというステージには立てなかった」

 

 仮面の言葉に答える東吾が前の事を思い出しながら呟く。

 

「根の国や図書館、暗黒樹海の様な高難易度ダンジョンは奴に対抗出来る戦力を、人を育てるための施設でもあるんだ。これぐらいクリア出来なきゃ奴とはそもそも戦いにならない」

 

 魂を鍛え、前に立つ資格を得ないとならない。

 

 正直、凄く悩んでるところはある。

 

 高難易度ダンジョンを全部教えたほうが世のためになるんじゃないか、と。

 

 でも今の人類にこのダンジョンの重みを受け入れて共有する事なんて不可能だろう、というのが結論になる。だって根の国は日本が、図書館はヨーロッパが独占している形に近い。世界で分け合ってランカーを育てる事なんて不可能だ。

 

 だったら一番アイツの殺し方を解ってる俺が主導して殺す準備を整えるのが一番になる。

 

 結局、全部俺が攻略するハメになると思う。

 

「今回攻略するのは浅層、深層と比べればまだまだ安全な範囲になる。それでも出現するモンスターは100だし、100を超える奴もいる。そういう危険はある場所だけど、確実に良いリターンが待っている。ここを攻略して、日本チームを強化する」

 

「ついでに庭にショートカットを作る?」

 

「作る」

 

 開通したらまた牧場がカオスになりそうですね。

 

 暗黒樹海のプレゼンを終えて、全体で意見を聞いてこの案を通すかどうかを改めて話し合い、反論する者はいないのでこれで暗黒樹海行きが決定する。浅層範囲であればピクニック感覚で行ける筈だし、十分余裕をもって攻略が出来る。

 

 これで日本代表チームの行動が決まった所でさて、と修三さんがスマホを此方に渡してくる。

 

「尊くん、君の知恵と判断力には驚かされるけど、君は自分がまだ子供だという事を忘れているね」

 

『もしもし尊? 少し話し合おうかしら?』

 

「危ない所に行くのならまずはご両親に連絡を入れて許可を貰おうね」

 

 おっしゃる通りです……。

 

 日本代表チーム全員で団結して挑む最初の戦い(説得)が始まる。

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