最強以外ありえない   作:てんぞー

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これは楽しいな

 1回死にかけつつ何とか久遠の必殺から復帰し、ゲートを抜ける。

 

 図書館から暗黒樹海へ、直接ゲートを通り抜けて現地へと到着する。アマゾンに足を踏み入れると密入国になってしまうが、図書館経由で直接暗黒樹海の中に直接飛び込めばそこはダンジョンからダンジョンの移動なので国境は関係がない。

 

 ついでにショートカットをアマゾンで発見する前に作成してウチの牧場に設置すればウチの牧場に生えてきたダンジョン扱いできる。そうだね、欺瞞だね。でも言ったもん勝ちなのだ。これには日本の偉い人もにっこり。

 

「主、足元にお気を付けて」

 

「ありがとう、何時の間にか付いて来てたシェイナ」

 

 ゲートを抜けると付いてきたシェイナが片手を差し出して転ばないようにしてくれる。よく見れば足元は大地の上ではなく、巨大な木の根の上だというのが解る。

 

 辺りには大量の木々が生えている。樹海という名が相応しい程に。問題があるとすればその1つ1つが高層ビルを超えるサイズをしており、今乗っている木の根なんて高速道路よりも広いという事だ。そしてこれがまだ暗黒樹海の入り口部分でしかなく、まだまだ“暗黒”の部分に踏み込んですらいないという事実だ。

 

 そう、これが暗黒樹海というDLCダンジョンの表層部分、樹海エリアだ。

 

「マスター、大丈夫ですか? ……うん、酸素調整はちゃんと出来てるみたいですね。この感じなら永続も問題なさそうです」

 

「ありがとう、フラメア」

 

 追ってくるようにフラメアがやってきて、ララを腕からリリースすると勝手に死に始める。ララが道路掃除を始める傍らでゲートから次々と後続のマスターたちが入場してくる。仮面、東吾、酒クズと日本のトップスリーがやって来る。モンスター達もやってきて一気に大所帯になり、感嘆の声を零しながら辺りを見渡す。

 

「ここが暗黒樹海か……!」

 

「凄いな、これは。ここまで大きな樹木の姿なんて見た事がないぞ」

 

「ふーん……偶にはこんな場所で飲むのも悪くはないわね」

 

 ゲームで見ていた景色とはまるで違う。リアルの景色は根の国の時もそうだが、見る者を圧倒するだけの畏怖がある。

 

「この暗黒樹海というダンジョンは」

 

「おう」

 

「旧世界において、最も古い地域だと言われてるんだ」

 

「最も古い地域?」

 

 うむ。

 

「一番奥にある魂のゆりかごは別名創造主の砂場って言われてて、創造主が世界を始める時に使った場所で、世界を形作るのに使った泥があるんだ」

 

「天文学的価値の有りそうなもんだな」

 

 まあ、そこまで見るには破壊神の討伐が必要だし、そこまで行って見れるのは世界設定とかなんだが。報酬としては破壊神倒したときにもう貰えてるので見る必要はないんだよね。

 

 創造神のことがもっと知れるというだけで。

 

「ここはまだ空が見えるけど」

 

 見上げると頭上、生い茂る木々の間から陽光が降り注いでるからここはまだ明るい。

 

「このダンジョンの名にもなってる暗黒樹海は空が完全に覆われてて光が一切届かない、深海みたいな場所になってるよ」

 

「成程なぁ」

 

「ここからは見えないか」

 

 そうだね、流石にここからは遠いかも。ゲーム内でもそれなりの広さがあったので、1時間か2時間ぐらいノンストップで歩く必要があるかもしれない。

 

 当然、こういうダンジョンで移動するのに飛行は禁止だ。飛ぶのは目立つし、狙われやすい。飛んだ結果四方八方から対処できない数のモンスターに襲われるケースなんてのもある。

 

 だから地上を移動する必要がある。

 

「まず最初は村を目指そう。到着すれば最初のショートカットが……と、来た来た」

 

 リアル化で細かい景色は変わったが、ルートは覚えている村への行き方説明しようとして、遮る様にしゅー……という息遣いが木々の合間に漏れた。

 

 皆で辺りを見渡すが、そこには敵の影も形もない。

 

 だが視界を捨て、命の気配を追えば見えてくる。

 

「そこだな」

 

 銃を取り出して木の1つへと向かって発砲する。なにもないように見えた大樹に弾が当たる寸前、見えない何かに弾丸が当り、弾かれる。

 

 そして隠れていた姿が露わになる。

 

 それは木に体を巻きつける細長い、巨大なトカゲだった。

 

 全身を赤い甲殻と鱗に包まれ、50メートルを超える細長い体を木に巻き付けながらこちらを見下ろしている。その体には何枚もの爬虫類の様な羽が生えており、口を開くと丸く畳まれた異様に長い舌が見えた。

 

「カメレオン?」

 

「インビジブルストーカー、お待ちかねのウェルカムドリンクだよ」

 

 再び透明になるとズドン、という音と共に木に足跡が残った。再びズドン、という音で何かが飛ぶ。飛翔した姿に音はない。空気の揺らぎもない。ゲームにありがちなその空間が盛り上がってるとか、揺らいでるとかもない。

 

 完全なる透明。幹を蹴ったときの衝撃音でしか居場所が察知できず、それが今、断続的に囲むように響いてる。獲物を見定めて囲い込んでる動きだ。

 

 無論、獲物とは俺達の事になる。

 

「さて、お手並み拝見だな、チャンピオン」

 

「死んだら骨は拾うわ」

 

「安心すると良い、君たちの出番は来ないからね」

 

 東吾と酒クズがモンスター達を連れて下がり、仮面が前に出る。

 

「尊くん、丁度良い。実戦での連携をここで確かめるために試合と同じ形式、ルールでやろうか」

 

「了解、ルールの範疇でしっかりサポートさせて貰うよ」

 

「頼もしい言葉をありがとう。さて―――」

 

 仮面は言葉を区切ると、モンスター達を呼んだ。

 

「あんこ! きなこ! かんてん! さくらもち! 行くぞ!」

 

 マスター仮面に呼び出されて現れたのは4匹のゼリィ達だった。

 

 黒いけど元気なダークマターゼリィのあんこ。

 

 デカく、頼りがいのあるグランゼリィのきなこ。

 

 透き通るように透明でクールなピュアゼリィのかんてん

 

 ピンク色でキュートなナースゼリィのさくらもち。

 

 DLC未導入環境においてゲーム本編ラスボスを務めた日本チャンピオン、マスター仮面が率いるN()P()C()()()モンスター達だ。

 

 最弱種族と言われたゼリィの可能性を信じ、それで日本最強へと成り上がった男のチームだ。

 

 ぴょんぴょんと跳ねながらマスター仮面のモンスター達が前に出て、やる気を見せるように体をぷるぷると震わせる。それに対抗するように正面、木の根が割れて、衝撃と共にインビジブルストーカーの姿が露わになった。

 

 明らかに弱く見える敵の前に轟くような咆哮を放って威嚇するも、マスター仮面は笑みを浮かべる。

 

「相手は何時も通り強者だ……やるぞ! 尊くん、サポートを頼むぞ!」

 

「任せて」

 

 マスター仮面の少し後ろ、支援しやすい位置を取る。

 

「尊くん、気を付けてね」

 

 後ろから来る修三さんの声にサムズアップで応え、それから視線を正面に戻す。

 

 戦闘、開始。

 

 ????? が 現れた!

 Passive Support!

 尊は相手の名前を開示した!

 インビジブルストーカーの正体が暴かれた!

 インビジブルストーカーの体力を表示した!

 ダメージ計算を解禁した!

 思考クロックの速度を解禁した!

 対象の殺意の矛先を察知する!

 ……さくらもちが狙われているようだ!

 マスタースキル使用:可

 現実とデータの差異を調査中……。

 

 開始0秒に自身に出来ることを纏めてログとして出力する。戦闘が開始するとサポート班も図書館から樹海に入り込んでくる。

 

 《BOSS》! インビジブルストーカーは強者だ!

 《下剋上》の時が来た! あんこは強者に挑む!

 あんこの強化上限が解除された!

 あんこは統制者特攻を獲得した!

 種族を超えた挑戦が始まる!

 インビジブルストーカーは《透過》した!

 

「む」

 

 インビジブルストーカーが再び透明になって行く。姿を消して完全に気配が消え去る。音も消えた戦場から動きが消える。

 

「《透過》はボス用スキル、1ターンの間自身に絶対回避状態を付与する。必中属性も効果なし。ただし必中効果は通じる」

 

「必中を付与しなければ通じない、という事か」

 

「来るよ」

 

 透明になったインビジブルストーカーの殺意がさくらもちへと向けられる。完全に透明となったインビジブルストーカーによる必殺の火力が放たれる。

 

 《音無き狩人》! 絶対回避時オーバークリティカルが確定する!

 《樹海の住人》は環境を力に変える! 攻撃力が1段階上昇した!

 《アサシネイト》! さくらもちに死が忍び寄る!

 《カバーリング》できなこが庇った!

 

 無色透明、気配もなし。完全に消失したとしか思えないインビジブルストーカーの姿が現れる事なく必殺の一撃がさくらもちへと向けられる。それを伝えられたきなこがさくらもちを守るように体を大きく膨らませて割り込む。無明の―――恐らくは舌が槍の様に伸びてきなこを貫く。

 

 Over Critical! きなこは死亡した!

 《強者生存》によりインビジブルストーカーはターンに1回再行動を獲得する!

 さくらもちは体力上限を削って自分の身を《分け与える》!

 きなこは蘇った!

 《音無き狩人》! 絶対回避時オーバークリティカルが確定する!

 《樹海の住人》は環境を力に変える! 攻撃力が1段階上昇した!

 《アサシネイト》! さくらもちに死が忍び寄る!

 《カバーリング》できなこが庇った!

 Over Critical! きなこは死亡した!

 インビジブルストーカーは《3回行動》できる!

 

「さくらもち、きなこ、ループ処理でここは乗り切るぞ」

 

 死亡、《分け与える》、《カバーリング》。このループでさくらもちの体力上限を削りながらきなこが何度も蘇る。割り込み可能である即時行動の《分け与える》はゼリィやスピリット系のモンスターを対象に、自分の体力上限を削って即座に蘇生するスキルだ。

 

 これを駆使する事で単体攻撃はほぼ完封する事が出来る。

 

 《強者生存》を含めた4回行動が完了する事で漸く足の遅いゼリィ達が動く事が出来る。そう、ゼリィ達は弱いモンスターだ。俺が戦ったEランク認定戦でのゼリィも弱かった。どれだけランクを上げて世代を交代してもゼリィは最弱の種族だ。

 

 それでも、それを使いこなす事が出来れば狂ったような火力を発揮する事が出来る。

 

 この不審者仮面―――ワールドツアーDLC実装後でAIと構築アップデートが入った後の評価はTier1である。

 

「これが欲しいんだろう?」

 

 Active Support!

 尊は《全能者の采配》を振るった!

 さくらもちの全ステータスが2段階強化された!

 かんてんの《ラッキースター》! あんこのクリティカル率が50%上がった!

 さくらもちの《エンジェルギフト》! 自身の強化を味方と共有した!

 あんこは2段階強化を得た!

 きなこは2段階強化を得た!

 かんてんは2段階強化を得た!

 あんこの《アルティメイタム》! 強化効果が2倍になった!

 あんこの《星の挑戦》! 強者へと挑む者に幸運が訪れる!

 あんこのクリティカル率が100%上昇した!

 あんこは味方に号令をかけた!

 

「行け! 最弱のモンスター達よ! 結束した君達の輝きは決して巨獣に劣るものではないと! 神ならぬ身であっても決して劣るものではないと! 証明するのだ!」

 

 あんこは《ユニゾンアタック:槍》を発動させた!

 

 ―――日本1位という事は日本で1番強いだけではなく、最も人を魅了するマスターでもあるという事だ。

 

 根本的にマスター仮面はエンターテイナーだ。最弱の種族を相棒に選び、戦い、そして日本1位と世界5位という座についている。見られているという事を自覚して派手なアクションを見せながらも勝利を描く。

 

 彼はエンターテイナーとして、興行としてのモンスターバトルを良く理解し、そして愛している。

 

 故にバトルにおけるその動きは見ていて楽しい。

 

「!!!!」

 

 飛び上がったゼリィ達が空中で合体する。巨大化したあんこがその姿を巨大な槍へと変形させる。漆黒の槍が空中へと飛び上がり、初速から音速を超える。空へと飛びあがって視界から消え去るようにジグザグ、木々の合間を通り抜けながら加速すれば、その姿は目視出来ない速度へと到達する。

 

 質量を伴った音速を超えた速度で漆黒の槍が5本もの大木を貫き、透明になって隠れる姿へと届いた。

 

 あんこの《共鳴する結束》!

 《ユニゾンアタック》に参加した仲間の強化が合算される!

 インビジブルストーカーは絶対回避状態だ!

 《ユニゾンアタック:槍》は必中する!

 

 無色透明、気配さえ無くしたその姿を槍となったあんこ達が捉え、貫通した。胴体を真っ二つに引き裂きながら強化上限が解除された影響でバカげた強化段階へと達したあんこの槍撃が一撃でインビジブルストーカーを殺した。

 

 攻撃を放った衝撃で空中で分解されたあんこ達が落ちて来る。

 

 透明化の解除された前半後半に分かれたインビジブルストーカーも姿を現し―――しかし、直ぐに凄まじい生命力で体の前半分と後ろ半分を繋げた。

 

「これで死なないか!」

 

「《ライフストック》だよ。蓄えられた生命力を爆発させる事で死亡直後に完全回復して蘇ってる。死ぬ度に消費してるけど後2ストックある」

 

「つまり後2度は蘇るという事か」

 

 蘇ったインビジブルストーカーが怒りに咆哮し、その肉体がビキビキと音を立てながら力が込められてゆく。最弱と侮っていた驕りは消え去り、翼が広げられ、これまで使用されていなかったスキルが解禁される。

 

 その様子を見てマスター仮面が成程、と笑う。

 

「これは楽しいな」

 

 高難易度ダンジョンでしか味わえない理不尽な強さのボスとの対面。これまでは根の国でしかなかったものが、違うバリエーションとなってここでは味わえる。それが楽しくて楽しくてしょうがないという表情を浮かべ、立ち向かう。

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