最強以外ありえない   作:てんぞー

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うふふふ、あははは、おほほほ。ノーコメントでお願いします

 インビジブルストーカーは生命力を爆発させて復活した!

 《ライフストック》の残りが0になった!

 インビジブルストーカーは生命の危機に発狂した!

 《無限覚醒》! インビジブルストーカーの行動回数が増加した!

  Active Support

 行動予測:対象全体ランダム→《逆鱗》3回行動+4回行動

 「攻撃対象を絞らない事で庇い辛くするつもりみたいだな」

 きなこは《不壊の城壁》となり守護する覚悟を決めた!

 《絶対障壁》が展開された! きなこのダメージカット率が上がった!

 きなこは《抗う意思》を見せた! 強化解除耐性を得た!

 きなこは味方を《包み込む》! 味方を包み込んで守る!

 《インビンシブル》! きなこは無敵になった!

 

 発狂モードに入ったインビジブルストーカーが補助行動で攻撃にディスペル効果を付与した。それに対して仮面がきなこに解除耐性を付与する事で対処し、そのまま全体守護、ダメージ80%カット、そして追加で無敵効果が発動する。無敵があるなら他の手段は必要ない? それは甘えだ。

 

 直後、インビジブルストーカーが無敵貫通効果を発動させた事で無敵だけだったら突破されていた事を証明した。ボス戦では複数のダメージ軽減手段を用意する事が大事だ。そうしなければ突然の死を迎える事もある。

 

「かんてん!」

 

 かんてんの《プロテクション》! きなこに守護の障壁が現れる!

 

「これで100%カットだ! 発狂はこれで乗り切る!」

 

 発狂モードに入ったインビジブルストーカーに対し、巨大化したきなこが味方全員を包み込んで守護した。それに発狂モードに入った怪物が襲い掛かる。全身から血を吹き出し、まき散らし、その血で辺りを焼きながら縦横無尽に暴れ回る。

 

 乱タゲ4回攻撃が合計で7回飛んで行く。その度にディスペル効果と、追撃固定ダメージが発生する。ダメージカットで直撃は防げるが、追加の固定ダメージはダメージカットでは防げない部類の毒ダメージの様な物だ。

 

 毒や火傷の様なDoTダメージはダメージカットや無敵では防げない。

 

 それを利用して追加攻撃のダメージを持続区分にする事で絶対に防げないダメージを発生させる事が出来る。それが7回、4回攻撃に追加して放たれる。

 

 ダメージカットで直撃は防げても、28回分の追加ダメージがきなこを焼く。

 

 ゼリィはそんな体力の高い種族ではない。防御を固めた所で直ぐに死ぬ。これを最後まで耐える事は出来ない。だから当然、この手の攻撃の対策も行っている。きなこがダメージを喰らったダメージの数値が俺を通して仮面にも伝わっている。

 

 それによって減った割合を計算し、さくらもちが体力を削って即時ヒールをきなこに差し込む。その減少数と回数を計算し、最小限のヒール回数できなことさくらもちを殺さずに発狂乱舞を乗り切る。そしてそれが終われば、リーサルに入る。

 

 再びあんこが飛び上がり、ゼリィ達が合体する。巨大な槍となったゼリィ達が発狂乱舞で疲れ切ったインビジブルストーカーへと向かって飛翔し―――頭から貫いて即死させた。

 

 貫通して突き抜けた槍が空中分解し、カラフルなゼリィ達が降り注いで着地する。

 

 死亡したインビジブルストーカーは断末魔を上げる事なく、ゆっくりと地面に横たわり、分解され、ドロップを残しながら消滅して行く。鱗と甲殻、そして体内で生成された宝石がいくらか。それだけを残し、樹海の入り口の戦力チェッカーを役割としたボスは消え去った。

 

「うむ、良く頑張ってくれた。今日も見事な勝利だった」

 

 仮面がまず最初にゼリィ達を労う。ぴょんこぴょんこと喋れない代わりに全身で跳ねて喜びを表わすゼリィ達はマスター仮面の周りを踊るように飛び跳ねている。戦闘が終わったのでサポート班がドロップ品を回収して、後ろで観戦してたマスター達が合流してくる。

 

「尊くん、見事なサポートだった。やはり日本チームに君の存在は不可欠だと思える戦いだった」

 

「お疲れ様、良いファイトだったな」

 

「酒の肴にはなったわ」

 

「無事で何よりです」

 

 東吾とハイタッチをしてから修三さんに頭を撫でられる。滅茶苦茶子供扱いされてるのだが流石にちょっと恥ずかしい。悪い気はしないんだけど。

 

 ぴょんぴょんするゼリィ達はこっちにもやってきてお疲れ様ー、と意思を伝えて来てくれる。慣れると結構可愛いんだよね、こいつら……。

 

「これで門番は撃破か?」

 

「ん? そう。これに勝てないようならそもそも踏み入る資格はないからね。ただこれを倒した所で村に行くまでは道中100レベの雑魚モンスターは当然のごとく出て来るし、安心安全って訳じゃないよ。徘徊型のボスもいるし。奴の縄張りはこっちの方じゃないから会う事はないだろうけど」

 

「了解した。尊は中団で守られながら案内を頼む。先頭は俺、殿は酒クズで担う」

 

「私は戦ったばかりだから休憩ついでに中団に入らせて貰うよ」

 

「私も尊くんの護衛に集中させて貰うよ」

 

 滅茶苦茶手厚く守られてるな、俺。俺が死んだらほぼ攻略不能になるからそれはそうなんだけど。お姫様気分だぜー、とか思っているとやって来たミストが俺を口で摘まんで、そのまま背中に乗せて来た。あぁ、実家……実家のポジションよ……何時ものポジションで凄い落ち着くよ。

 

「出て来るのは虫、植物、獣タイプのモンスターばかりだけどどれもデカいから見逃すことはまずないと思う」

 

「ま、雑魚が相手ならどうとでもなるだろう」

 

「それでは皆、準備が整い次第移動するぞ」

 

 仮面の言葉にサポート含めた一同が返答し、モンスターに騎乗する。

 

 ララを先頭の東吾に投げると、東吾がそれをキャッチし、ララを真の先頭に配置した。配置した瞬間罠へと向かって肉体が自動的に吸引されて行く。

 

「じゃ、出発っすね。あの世に」

 

 ララがあの世に出発する中、俺達も村へと向かって出発する。

 

 ゲーム内でもモンスターに騎乗する事で移動速度を上げて探索する事が出来て、その場合はマップを爆速で駆け抜けて行くのだが、当然そんな事リアルの高難易度ダンジョンでする事は出来ない。少なくとも周辺にいるモンスターは全て、手心を加えてこない敵だらけだ。

 

 根の国はまだ自分の存在が通じるからギャグ寄りで。

 

 図書館は本質的に人類の味方だから待ってくれる。

 

 だけど暗黒樹海のモンスターはほぼ野生という言葉も変だが、人類に対しては中立的な立場のモンスターだ。縄張りを守る為に襲うし、そこに慈悲はない。ゲーム的に見れば戦闘する事自体に違いはないのだが、リアルになると生きるか死ぬかの問題になる。

 

 根の国も図書館も人類にとってはチュートリアルだった。

 

 残された高難易度ダンジョンはどれも慈悲がない。

 

 その代わりに得られる報酬も豪華だろう。

 

 中団、守られるように樹海を進みながらミストの背からこの狂った程木々が育った環境を見つめる。現実には存在しないとしか言えないこの光景は見る者を圧倒するだけの迫力に満ち、この環境に適応したモンスター達が遠巻きに見つめ、時には手を出してくる。

 

 レベル100、とはいえ根の国で戦う事に慣れた東吾や酒クズは問題なく襲い掛かるモンスター達を対処する。

 

 俺も、記憶からルートを引っ張り出しながらナビゲーションを行う。木の根の上を移動したら今度は大地の上に移動し、木の根や落ちて来た家よりもデカい枝を回避する為に別の根に登ったら、今度はそれを伝って低めの枝に乗る。

 

 そのまま、しっかりとした足場として機能する枝の上を歩みながら更に樹海を進んで行く。

 

「尊くん、良いかな」

 

「何かな」

 

 一緒にミストに乗っているマスター仮面が話しかけて来る。

 

「君は度々恐ろしい規模の力を持つモンスターの話をする。竜王だとか海王だとか。それに匹敵するモンスターは他にもいるのかい?」

 

「まあ、竜王とか海王とかはモンスターの中でも特別なんだけど、あの方々程強くなくても厄介で死んで欲しいと思える連中はいるよ」

 

「……例の東京に現れて、根の国のモンスターによって討伐された邪神とやらか」

 

 東京黄泉に関してはノーコメントです。修三さんが尊くんがやったな? みたいな視線を送ってきてるのは無視する。俺はミストの背の上でゼリィをぷにぷにしながら視線を華麗に受け流す。やっぱりぷにぷにしてて触り心地最高だな……抱き枕専用にゼリィを育てても良いかもしれない。

 

「死亡したパペッターは射程には制限あっても維持距離が無制限の洗脳能力があって、洗脳された本人は自分が洗脳されているという自覚さえなく、自分のポテンシャルを100%駆使されてしまう。数多くの英雄や英傑を洗脳しては回収し、それを人形に改造した英雄人形とかいうコレクションを持ってたよ」

 

 もし英雄人形を全部持ち出したらまあ、世界との全面戦争みたいなもんになってただろう。

 

 そんな事にはならなかったけど。

 

 慢心、油断、傲慢。つけ入る隙が多すぎたねぇ。殺せる時に殺しておくもんだよ、アレは。

 

「利益と信用と地位が支配する社会において、人を完全に支配する能力はある種の文明特攻と言える能力だったよ。まあ、もう死んだので心配する必要はないんだけど」

 

「不思議だなぁ、それだけ脅威のあるモンスターがピンポイントで殺されるなんて」

 

「不思議ですねぇ」

 

 うふふふ、あははは、おほほほ。ノーコメントでお願いします。

 

「尊くん、他にはどんなのがいるんだい? この際君に警戒しておくべき脅威を聞いておきたい」

 

 まあ、名前を出すなら他の邪神だろう。

 

 歩いていた木の枝の終わりに到着する。ここからは地上へと降りる必要がある。順番に地上へと向かって降下し、着地してから道を確認する……あった、ここに住まう住人たちが置いた目印だ。それを確認してから村へのルートに戻る。

 

「邪神インスペクターは秘密を暴く獣性から生まれた邪神だと言われている。お空にいっぱい咲いた目玉みたいな姿をしてる」

 

「東京での出現報告のある奴だな。どういう奴なんだ?」

 

 インスペクターは凄い解りやすい。

 

「知りたがり。インスペクターは秘密を暴かずにはいられない知りたがりの邪神。知る事が全て、それ以外に興味はない。あらゆる秘密を暴いて自分のモノにしたいんだ」

 

「それだけ聞けば危険性はなさそうだけど?」

 

 修三さんの言葉にせやな、と頷く。

 

「問題はインスペクターが秘密の全てを暴いた相手は秘密を共有する、という点から自身と同一の存在として見られて強制的に同化させられるんだ。つまり、インスペクターに情報の全てを暴かれた存在はインスペクターの一部として融合されるんだ」

 

 上を指差す。

 

「空に浮かぶ無数の目、アレは全てインスペクターと同化した結果生み出された目玉だって言われてるよ。つまりあの目の数は被害者の数なんだ。自身と同化すれば秘密を知る者は己だけ……つまり秘密を独占し、本当の意味で自分のものとする事が出来るって訳よ」

 

「危険性があるなんてレベルじゃなかったな」

 

「い、生かしておけない」

 

 それはまあそう。後は……そう。

 

「邪神チクタクマン。浪費された時。時の審判。時間の報い。忘れられた時間の復讐者。時間という概念に密接に絡む邪神だよ」

 

「もうこの時点でロクでもない事が解るな」

 

 先頭の東吾が呆れた声を飛ばしてくる。

 

「チクタクマンは定期的に時計の針を巻き戻して自分の状態を戦闘開始前の状態に戻すんだ。そして巻き戻して発生した時の負債を押し付けて来る」

 

「時の負債?」

 

「うん」

 

 右手を持ち上げてぷらん、と手首から先を下げる。

 

「チクタクマンが時間を巻き戻すたびに肉体が鉄くずに置換されるんだ。歯車とか、板金とか、そういう錆びた鉄くずに体を置き換えさせられるんだ」

 

「モンスターが?」

 

「いや、マスターが」

 

 そう、チクタクマンはモンスターと戦いながらペナルティの全てをマスターに押し付けて来る邪神なのだ。戦いが長引けば長引く程マスターが死んでゆく。モンスター達は戦いながらも後ろで主が鉄くずに作り替えられてゆく姿を見せつけられるのだ。

 

「時間を巻き戻す前に倒さなきゃいけないんだけど、根本的にアグロ構築で倒せる程弱くないんだよね。じゃあランプやミッドレンジでしっかりバフらなきゃいけないよね? って話をするとそれまでに肉体が鉄くずに変えられてゆく恐怖に耐えながら冷静にバフ計算できるかどうかって話になるんだよね」

 

「ははは……戦いたくないな、それは」

 

「でしょ」

 

 車サイズの食虫植物が蔓を伸ばして襲い掛かって来る。先頭を行く東吾はララが死亡してから前に出て対処の為に戦闘を開始する。レベル100とはいえ、デバフに耐性が無ければ回復を反転して100%ヒールを投げて即死させて終わる。

 

 この手の雑魚処理において東吾は無敵に近い。図書館と根の国での冒険を通じてか、戦い方や格というものも洗練されてきた。ダンジョンというものによる人類のステップアップ計画、今一番成功しているのはもしかして東吾なのかもしれない。

 

「良し、処理完了したな。移動を再開しよう。尊、ルートはこっちで良いんだな?」

 

「ん、問題無し」

 

 似たような景色がどこまでも続いている。それでもゲームを遊んだ事のあるプレイヤーだったらこの樹海に住まう者達が活用するサインや目印の様なものが配置されているのが解る。

 

 それを辿って行く事1時間程。

 

 大地の上から根を移動し、そこから再び枝の上まで上がれば樹木の上に築かれた村の存在が見えて来る。

 

 その村こそが旧世界において最も古くから存在する村であり、また最も古い人類の血を引く一族の居場所でもある。

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