最強以外ありえない   作:てんぞー

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いえーい!

 村が見えた。

 

 ゲーム時代はそのまま歩いて中に入る事が出来たのだが……まあ、こんな団体さんを引き連れていきなり村に入る事は無理だろう。少し離れた所から村人たち……いや、村の戦士たちが出てきているのが解る。こっちをやっぱり警戒しているのだろうか?

 

 ゲームとは違うしなぁ、人も状況も。

 

 しゃーない。

 

「話してくる」

 

「待て、護衛を付けろ」

 

「いるでしょ、ここに」

 

 頭の上で寛いでる狐をぺちぺちする。鬱陶しそうにするマガちゃんがまあ……しゃーないなあ……みたいな顔を浮かべてる。狐の顔なのに良くそういう細かい芸が出来るなコイツ。一応レベルは120あるのでこの中では一番強い。護衛にするならコイツで十分なはずだ。

 

 それを東吾は理解しているし、マスター仮面も承知している。修三さんは少し不満げだが、ちらりと酒クズの方を見た。アレは殿を務めながらずっと酒を飲んでる。マジでアイツ登場してから酒を飲む事以外何もしてないぞ。

 

 初対面から今までずっと酒を飲んでる。本当に飲んでしかいない。

 

「少し不安はあるけど任せても大丈夫そうかな」

 

「……まあ、酒クズが反応しないのなら」

 

「どういう信頼なのそれ」

 

 なんかの特殊技能持ちなのあの酒クズ? 酒クズの方を見ても一切答えが出て来ない。というか樹海に飲み終わった缶を捨てようとするな。マネージャーさんが飛び降りて回収に向かってるじゃん。少しは申し訳なく思えよ。

 

 釈然としないなあ。

 

 ミストから降りて、頭の上で寛いでいた狐を下ろして、村の方へと向かう。

 

 褐色肌、トライバルな衣装に身を包んだ屈強な戦士達が並んで村への入り口を塞いでいる。人にしか見えない彼らは一応扱いとしてはモンスターだ。それもレベル100の。つまりレベル100の住人が50人ぐらいこの村には揃っている。

 

 普通に戦いになったら俺達が数の暴力で殺される。戦いにならないで欲しいなぁ。死にたくねぇなぁ。

 

 そう思いながら村の前までやってくると、村までの道を塞ぐ戦士達の壁、その中央が割れた。その間を1人の少女が歩いてきた。

 

 褐色の肌、地面に届きそうなほど伸びた赤い髪、白い神秘さを感じる装束……ゲーム内にも登場したNPCだ。そう、原作においては攻略可能キャラとして配置されたこの村の巫女だ。

 

 優雅に見守られながら前に出ると、彼女は俺の前で足を止め、そしてにこりと笑った。

 

 ドン!

 

 戦士達の槍が足元を叩き、剣が盾とぶつかり音を鳴らす。リズミカルに叩かれるそれは一瞬で音楽となった。

 

 後ろの戦士たちが急いで白い布を広げる。横断幕のようなそれには日本語が書かれてた。

 

「ニッホンチームのぉみなさぁん! よーこそっ!」

 

「よーこっそ!」

 

 なんか歌って踊りだした。

 

「????」

 

 こんなの知らねーぞ俺!!! いや、待て、見たことあるぞこれ……ゲームじゃない……SNSで! コレ昔流行ったミームだ! なんか依頼してダンスとお祝いしてくれるやつ!

 

 なんで!! 暗黒樹海の!! 中で!! SNSミームに遭遇するんだよ!!!

 

「ぷく、くくふふ……だめ……しぬ……」

 

 酒クズが腹を抱えたまま倒れ込んだ。東吾や仮面はぽかーんとしてるし、皆俺に助けを求めてる。

 

 助けてほしいのは俺の方だよ。

 

 なんか何年も練習してきましたと言わんばかりにキレの良い動きをしてるし。ちゃんと踊ってる側は滅茶苦茶笑顔だし。ラジカセないから音楽担当してるチームいるし。

 

 無駄にクオリティ高くて困るな……。

 

「解った、解ったよ。俺の負けだ。君の勝ちだラトゥーリア」

 

「ふふ、大神の仰ったとおりですね。こうすればミコト様方は必ず喜ばれると」

 

 創造神のクソボケ様? 遺言になんてものを残してるの? というかそうか、超越してる神だから未来に発生するSNSミームを見てなくても解るのか。嫌だなぁ、SNS巡回してる創造神。

 

 語録に汚染されてそうだしレスバもしそうで本当に嫌だな。

 

「驚きました? これはただのウェルカムでこれ以上は何も用意してないよ……と大神は言葉を残されてます」

 

「思考読んだ上でメッセージ残すのは本当に凄い事なんだけどこんな事で披露してほしくなかった」

 

 振り返って手を振る。

 

 それで許可が出たと理解し、皆が動き出す。

 

 なんか、どっと疲れた感じがする。改めて村の―――始まりの村と呼ばれる旧世界で最初に構築された村の巫女であるラトゥーリアへと向き直る。

 

「迷惑をかけるかもしれないけどよろしく」

 

「此方こそ、幾星霜と……お待ちしておりました」

 

 ラトゥーリアが俺の手を取り、長い時を待ちわびていたという熱を感じさせる。その想いを手の中に感じながら、俺達は最初のチェックポイントに到着した。

 

 

 

「改めまして、この村の代表を務める巫女のラトゥーリアです。どうか皆様、よしなに」

 

「私達はこのダンジョンの外から来た日本という国に所属するモンスターマスターとそのチームです。いきなりの訪問、失礼します」

 

 村の中に客人として迎え入れられ、そのまま村の中で一番大きな建築へと招かれる。

 

 代表者として挨拶を行う仮面に対して、ラトゥーリアは存じ上げていますと答えた。

 

「貴方がたの来訪は遥か昔から伝えられております。黒髪の少年ミコト様率いる戦団が来たなら力になるように、と」

 

 日本チームの視線がこちらに向けられる。それに俺は肩を揺らして応える。

 

「相手は全知全能の神様だよ。何でもお見通しだ」

 

 しかしこういう事やるなら自分のケツぐらい拭いてくれませんか? という意見は永遠に出てくる。はあ、とため息を零す。

 

「皆様が力を求めてこの樹海に踏み入ったことは理解しています。ですが力を求めるものには試練を与えるのが習わし。課せられた3つの試練を乗り越えたのなら同胞として魔物に叡智を授ける札を作成しましょう」

 

「スキルカードが欲しければ試練を受けろ、という事」

 

 成程、と仮面や東吾が頷く。どうせ試練の内容と答えも知ってるんやろ? という顔が向けられる。だがそれにカットインするようにラトゥーリアが粘土板を取り出した。

 

「なお大神よりミコト様が参加すると試練にならないから禁止カード行き、と言葉を残されてます」

 

 ラトゥーリアの発言に一瞬で室内が静かになる。

 

「た、対策されてる」

 

「嘘だろ」

 

「うん……まあ、当然といえば当然なんだが……大会で出禁になる前にダンジョンで禁止リスト行きになるのか……」

 

 暗に俺が大会から出禁食らう様な奴だって言ってます? 腹いせにララのお腹をワシャワシャしてやる。こんな感じに出禁を食らうのは流石に初めてだ。

 

「力の試練は指定された魔物と戦っていただきます。信の試練では村の問題を解決し、村人の信用を勝ち取ってもらいます。そして知の試練では知恵比べを行います。この3つの試練を乗り越えたら樹海の同胞として認めましょう」

 

 それからラトゥーリアは此方を見てにこり、と笑う。

 

「勿論ミコト様は別です。村を好きなように見て回って、力が必要なら訪ねてください。大神に認められしお方の力となれるなら幸いです」

 

 ラトゥーリアから逃げるように皆の方にずりずり移動する。

 

「見たか雑魚ども、俺だけVIP待遇だ。正直心細いので早めに合流してくれると助かります」

 

「すまない、ラトゥーリアさん。試練を受けようとは思うけど相談の時間は貰ってもいいかな?」

 

「勿論です。では試練の準備をして来ますので席を外しますね」

 

 そう言ってラトゥーリアが去って行く。その姿が見えなくなってから緊急会議が始まる。

 

「こんにちわ、デッキに3積みされてる皆様。禁止カードです」

 

「誇るな馬鹿」

 

「デッキに居場所がないの理解してるのかしら?」

 

「環境カードが暴れると直ぐにこうだ。何故印刷する前に気付け無いのか」

 

 ともあれ、俺の参戦が回避された。当然、試練の内容も攻略方法も知っている。だけど参加不可というのなら、俺は人差し指でばってんを作って自分の口を塞いだ。

 

 それを大人達が見て頷いた。

 

「ま、頼りすぎるのは良くないな」

 

「そうだな。力の試練は戦闘になるから最低2人で行動したい」

 

「俺と1位で良いだろう」

 

「なら私はサポート班の皆さんと村の問題解決に奔走しますね」

 

「修三さんの人徳なら安心して任せられます」

 

「信の試練をお願いします」

 

 それから全員の視線が酒クズに集まった。胸の谷間から瓶ビールを取り出すと手刀で瓶の首を切って、そのまま飲み始めた。

 

「知の試練でしょ? まあ、任せなさいよ。美味しいお酒の為なら私負けないから」

 

「今から制限行きに緩和出来ないか交渉出来ない???」

 

 いや、無理でしょこれ。知というより恥だよこれ。絶対に試練の間に酒を飲んで終わるだけだよ。絶対に無理だって。力の試練に回した方が良いんじゃない? 元2位で現3位なら戦闘で間違える事はないだろう。流石にないよね? 戦ってる姿見た事がないからちょっと解らない。

 

 こんなにも俺は心配なのに、大人3人はまるで心配する様子を見せていなかった。

 

「尊、前、俺の知り合いの話をしたよな?」

 

「フィールドでクソして去った話?」

 

「惜しい、そっちじゃない」

 

 いや、ここまで話を持って行けば大体何を言いたいのか解る。改めてこの酒クズを見て、えぇ、という声を零しながら両手で耳を塞ぐ。嫌だ、認めたくない。そんな現実間違ってるだろ。

 

「その酒クズは本物の予言者、或いは予知能力者だ。クイズや知恵比べだったらピーピングするからほぼ無敵だぞソイツ」

 

「いえーい!」

 

 瓶ビール掲げてダブルピース。

 

「この村、外には存在しないお酒がたんまりあるんだよね。勝てば飲ませて貰えるみたいだし勝つしかないでしょ」

 

 良い笑顔でそう言いきる酒クズ―――歪沢椿は酔ったままダブルピースを浮かべていた。

 

 本当に? 本当に任せて良いのコレ?

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