最強以外ありえない   作:てんぞー

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今度お土産にエナドリ持ってくるよ

 広場に出たら東吾たちが戻っていた。ややぼろぼろになっているのを見るとそこそこ苦戦したらしい。まあ、ボスの()()は死ぬほど面倒な上にビジュアルも最悪なタイプのボスだから苦戦するのもしゃーないという所だろう。

 

 ああいうグロタイプのボス、もう1度戦いたいなあ、とは思えないんだよね。やっぱボスのビジュアルも大事だよ。

 

「おいすー」

 

「おいすー、じゃねえんだよ。なんで来ないんだよ」

 

「半ギレでウケる」

 

 気持ちは解らなくもないが、俺が顔を出したらその時点で反則負けだろ。マスター仮面もちょっとぼろくなってるからこれ、そこそこローテーション回したな。

 

 ―――ローテーション。

 

 それはゲームになかったリアル用のダンジョンボス攻略戦術だ。

 

 1パーティー目が対応し、対応に失敗して壊滅したら2パーティー目が入れ替わるように戦闘に入る事で1パーティー目を逃がすか、立て直すだけの時間を与えるのだ。これを繰り返す事で常に全滅するリスクを減らすのだ。

 

 これはダンジョン攻略における基本戦術にもなっている。特に根の国とか図書館での探索でボスを相手する場合最低限2、或いは3パーティーを用意してローテーションを組む。人数が少なければ少ない程回転率が上がって地獄を見るのだが……まあ、東吾とマスター仮面の姿を見ると結構回転したんだなぁ、って思える。

 

 2パーティーで完結出来てる辺り相当優秀なんだけど。流石日本の1位と2位だけはある。

 

「此方も終わった所です」

 

 修三さんwithサポートチームがやって来た。認められた証であるメダリオンを見せる修三さんと、その背後でポーズを決めるサポートチームがどことなく誇らしげだった。

 

「私一人じゃ厳しい所でしたけど、チームの皆が優秀で助かりました」

 

「工作が得意です!」

 

「魔術にプログラミングを応用出来て面白かったです」

 

「新素材ざっくざっくですよ!」

 

 どうやらサポート班も結構活躍していたらしい。これで力と信の試練は突破した。後は知恵比べをあの酒クズが突破出来ているかどうかだ。全員で酒場の方へと視線を向けると、空になった10を超える樽の前にあの女はいた。

 

「もう飲めないの? じゃあ質に貰っていくわね」

 

「あっあっあっあっ」

 

 無一文になった知恵比べの試験官からメダリオンを回収して堂々と酒クズ、帰還。

 

「勝ったわよ」

 

「ありなんだ、それ……」

 

 恐らく全員の心の声を代弁した。俺の言葉に誰もが頷いてたし、ラトゥーリアは少し困った表情を浮かべ、数秒悩む様に目を閉じてから頷いた。

 

「酔い潰したのも知恵を使った……という事にしておきましょう」

 

 ガッツポーズで勝利を宣言する酒クズに一斉にブーイングが飛ぶ中、ラトゥーリアはでは、と言葉を区切って注目を集める。

 

「良くぞ試練に打ち勝ってくれました。これより皆さまは私達の客人であり、そして同胞となりました。この樹海を個人の力で生きて行くのは非常に大変です。大神に命じられこの地に世界の開闢より根を下ろして幾星霜……私達は常に助け合う事で生きてきました」

 

 ラトゥーリアはそれから数秒言葉を止め、続ける。

 

「更なる探索には私達の力が必要になるでしょう。ここからは新たな友人として、対等な取引をしましょう。此方へとどうぞ」

 

 ラトゥーリアがそう言って先導するのに従って歩く。広場から少し離れた位置に、大きな建築がある。店舗の様な形状をしたその店の中には上半身に大量の入れ墨を刻んだ半裸の男がいた。ラトゥーリアを見て、それからチームを見て、最後に俺を見て頷いた。

 

「アンタらが大神のおっしゃってたいずれ来る客人か」

 

「彼はホドロ、職人です」

 

「所謂スキルカードの、職人だ。スキルカードの合成と、モンスターの素材を触媒にスキルカードを作るのが俺の仕事だ。試練を乗り越えてこの村の同胞となった今、アンタらにも俺の仕事の成果を分けてやる。素材かカードを持って来い」

 

 という訳で、スキルカード作成のご解禁である。これによってついに数々のインチキスキルが解禁される。これまではモンスターの合体を通してでしか作成できなかった合成スキルも、ホドロに任せればこの場で合成してスキルカードにしてくれる神の施設である。

 

 ランクマで遊ぶ人間はまあまあここに通い詰めた。ここにあるリストを全て作成すると後は叡智の書からコピーを引き出すだけなので来ることはなくなっちゃうのだが。ホドロくん、滅茶苦茶ガタイの良いイケメンなので人気あったよね。

 

「ホドロ」

 

 持ち込んで来たタブレットをホドロに向かって投げると、ホドロがそれを片手でキャッチする。それを見つめ、構造を理解するとバチ、っと青白いスパークがタブレットを駆け抜ける。電源の落ちていたタブレットが勝手に起動する。

 

「そいつに作れるもんのリストを叩き込んだ。欲しけりゃ素材を取って来い。以上」

 

 投げ返されるタブレットを掴むと、話す事は終わりと言わんばかりにホドロが触媒の調合へと戻って行った。会話が終わった事で皆の興味は一瞬で俺の握るタブレットへと向けられる……が、俺はリストの内容を既に知っているのでタブレットを東吾に渡しておく。

 

 良い年した大人たちが目を輝かせながらタブレットを覗き込む。

 

「おいおいおいおい! 見た事のないスキルばかりだぞこれ! なにこれ! なにこれ! なにこれ―――!」

 

「テンション上がるなぁ」

 

「うわ、聞いた事のないモンスターの素材が多いなぁ」

 

「私にも見せなさいよー。吐かないから。おえっぷ」

 

「1秒で矛盾するの止めないか?」

 

「あ、すいませんデータ共有して貰って良いですか? リストの素材と手持ちの素材を照合したいので」

 

「あぁ、了解した。今共有する」

 

「ただいまー、WIFI開通させてきましたわー」

 

「助かる!」

 

「これで外のチームと状況を共有できる。煽るために自撮り送るかぁー」

 

 戻ってきたWIFI職人が頭の上に再び乗っかった。大人組はやっぱり新しい要素にお目々をキラキラさせながらリストを見てあーだこーだ言ってる。

 

 解る。

 

 めっちゃ楽しいよね、この瞬間。新要素の解放に伴い広がる世界観とシステム……ゲームってのはそういう瞬間が凄いワクワクするもんだ。

 

 まあ、現状作れるもんはそう多くないだろう。なにせ樹海のモンスターだけではなく、他の通常やDLCダンジョンの雑魚やボス素材まで要求してくる。

 

 トレハン準備して集めることを意識しておかないとそもそも集まらない。ウチはララ採用でここら辺の素材集めはだいぶ楽をしてるが、ララ抜きだと相当キツイだろう。

 

 というわけで大人達が少年少女に戻っている間に叡智の書を取り出して、ホドロの前に進む。

 

 すっ……と叡智の書を構えるとホドロも警戒心を全開にして触媒を構えた。

 

「アンタが巫女様の……良いだろう、出すもんを出せ」

 

「ふ」

 

 微笑んでから山のようなスキルカードをどっさりと叡智の書から出す。そりゃあもうずどどどどどという擬音が見えてくるレベルで放出する。

 

 山のように重なったスキルカードを見てホドロがフリーズする。その後手を爆速で動かして合成してほしい順番とシリーズに一瞬で仕分けし、数個のデッキができる。

 

 根の国、図書館で回収したスキルカードや協会で今日という日の為に購入してきた最小単位のスキルカード素材だ。

 

「これをそれぞれ合成して上位版スキルカードへの変換よろしくお願いしますね! こっちは変異結晶使ってから合成して変異版の上位化でお願いします。こっちはルートBで、こっちはルートAで、こっちはストップでるまでランダム合成続けてください。素材が切れたら供給します」

 

 無限にスキルカードだけなら出せるから。

 

 俺の出した山盛りスキルカードにホドロは笑みを浮かべたあと、羅刹の如き表情に変貌した。

 

「良いだろう! 俺への挑戦と見た! おおおおおおお―――!」

 

 凄まじい勢いで指示通りにカードの合成が始まった。頑張れー、君は恐らく今後しばらくデスマーチが続くだろうからよ。

 

 そんな俺と作業開始したホドロを見ている皆に告げる。

 

「あ、可能な限りスキル更新してください。全力で」

 

「全力で」

 

 オウム返しする仮面に頷いて全力でと言う。

 

「じゃなきゃ死にます」

 

「この戦力で?」

 

「この戦力で」

 

 うーん、そうだなぁ、と呟く。暗黒樹海内部に入ると敵がだいぶインフレするんだよね。あの内部はここで最高クラスのスキルを揃えてから挑戦する前提みたいなもんなんで。無論、取れないスキルも多いだろう。

 

 だけどここに来るまでにいくつもの100レベダンジョンを攻略しているだろう。それで余った大量の素材がある筈だ。それを注ぎ込んで攻略する事が前提になってる。

 

 今のメンツだとちょいパワーが足りない。底上げが必要だ。

 

 ホドロが早速完成させたスキルを一枚手に取る。叡智の書にさっと通してからそれを東吾に投げる。

 

「……クリティカル率+50%?」

 

「安かった時代に最下級素材を買っておいたんだよね。合成すればあら不思議、環境の最強パーツになる。これ2枚で確定クリティカル、100バフで確定OCだ」

 

 これ込みだけで火力はだいぶ変わる。特にこの先、クリティカル前提の高防御モンスターが増えるし。理想はバフだけでOC維持なのだが、構築次第では難しい。

 

「取り敢えずHP100と攻撃100と魔力100も作る。クリ50も欲しい。ここ入れるならクリダメ100も欲しい。まずは対雑魚対ボス向けの火力と耐久パッシブの準備」

 

 対人戦想定だとこれを積むよりも手札増やしたほうが強いので抜けるのだが、PvE想定だとこの手の火力の底上げ手段が欲しい。というかないと辛い。

 

「欲しいスキルは他にもあるけどモンスターは素材がちょっと足りないかな」

 

「準備が足りない?」

 

 仮面の言葉に頷く。

 

「足りない」

 

「椿くん」

 

「さっきから行く想定で見てるけどろくな事にならないわよ? 雑魚相手に1戦するだけで壊滅状態。とてもじゃないけど素材稼ぎなんて出来ないわよ」

 

 珍しい酒クズの真面目なシーン。なお片手には酒場から徴収した樽が握られている。酒クズからの言質も得て仮面が決断する。

 

「良し、今回の遠征はここで切り上げる。リストもあるし、ベガスで素材調達してからまた来よう」

 

「了解、撤収ー! 全員帰り支度始めろー!」

 

 号令に従い撤収の準備が始まる。これ以上は疲労もあるし無理をさせるわけにはいかないという判断だろうが、正しい。暗黒樹海内部はこの玄関パートとは比べ物にならない程ヤバい。

 

 だから撤収の準備を進める中、空に向かって手を伸ばしてから―――追加のスキルカードをドサドサカウンターの上に置いた。

 

 じゃ、追加でよろしく。今度お土産にエナドリ持ってくるよ。

 

 暗黒樹海遠征隊、第一回遠征。

 

 第一目標、スキルカード作成機能の解放完了。

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