最強以外ありえない   作:てんぞー

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盛大に死んで逝ってね!

 起きたら久遠が帰って来てた。もう誘う時間でもないしその日はそのまま終わった。俺が寝ている間にモールで楽しく時間を過ごしたらしい。

 

 いいなー。

 

 そうやって特に進展のないまま平和な1日は終わり、次の日がやって来る。休みと準備を終えたので、再び弾丸攻略スケジュールへと帰還する。つまり、行くべき場所はもう決まっている。

 

 再び図書館日本経由で暗黒樹海へ。

 

 ゲートを抜けて広場に到着すると既にラトゥーリアの姿がそこにあった。ゲートから出て来た所で直ぐに近寄って―――フラメアがインターセプトした。

 

「ミコト様、ようこそ再び―――あの?」

 

「マスターの護衛ですから。護衛。ふふふ」

 

「大丈夫ですよ、ここは平和ですから。ですので」

 

「いえいえ。一応。一応」

 

「ふふふ」

 

「あはは」

 

「おい、どうにしかしろよ色男」

 

「これ、俺が悪いの?」

 

 勝手にバチバチしてるだけじゃん。ともあれ、暗黒樹海の村に到着し、ラトゥーリア達による歓迎も受けた。真っ先にホドロの所へと俺達は向かうと、問答無用でオークションで確保した大量の素材と作成リストを投下する。

 

 だがホドロも準備をしていた。

 

「ここ数週間……この日に備えて準備はしてきた」

 

 作業場にいたホドロはそのコンディションを完全に調整していた。髪の毛は逆立ってフルバフでスーパー樹海人2ぐらいのコンディションだった。オーラがもう人間じゃない。そもそも人間じゃないや。

 

「来るが良い!!!」

 

 覚悟は決めてきたらしいので追加でランダム合成を叩き込む。これで戻ってくるまでホドロも仕事があるだろう。これで日本チームの最低限の強化の準備は整った。

 

 次は本命のために行動を開始する。

 

 無限残業ホドロを放置して広場に戻る。サポート班はこちらで待機して支援体制を確立し、本攻略は俺とランカー達で行うことになる。

 

 ここからは人数増やしての移動が危ないので、数を絞って行動することになる。広場でサポート班が準備を整えているとラトゥーリアがパフェキャンでフラメアを無力化してやってきた。

 

「ミコト様、暗黒樹海に向かうと聞き、事前に転移像を起動しておきました、ご活用ください」

 

「あ、ショトカ開通してくれたの? 凄い助かる」

 

「いえ、貴方様の一助となるなら光栄です」

 

 広場の端へ視線を向ければ大神―――つまり主神の姿を象った石像が置いてある。嵌め込まれた宝玉は本来の輝きを取り戻している。つまりワープポイントとして利用可能になっている状態だ。

 

 暗黒樹海に向かうメンバーで転移像の前に集める。

 

 さて。

 

 暗黒樹海に向かうということで朝からそこそこ慌ただしかったが、ここまで来れた。

 

「じゃ、やろうか」

 

 俺の言葉に皆が応えた。

 

「安全第一でね」

 

「楽しみだな」

 

「樽確保……良し!」

 

「椿くん、樽を持ち歩くのはどうかと思うよ」

 

 うーん、見事にバラバラ。それでも全員がプロだ。即座に全滅ということはないだろう。準備が完了したのを確認したら転移像を起動させる。

 

 俺達を光が包み込み、ゲートを抜けた時の様な酩酊感のあとに、世界が切り替わる。

 

 即ち闇と樹海の境目に。

 

 暗黒樹海の境目は本当に黒と普通の境目になっている。一歩前に出た瞬間に完全な黒が支配する闇の世界が広がっている。その闇も深すぎてまるで中が見えないレベルだ。

 

 外側を見れば巨大な大樹が天蓋を形成し、空を完全に遮断しているのが解る。そのせいで上から光が入ってこない。完全なる闇だ。この中で視界は通らない。だから強い光属性を持つモンスターの力が必要になる。そうだね、フラメアで解決だね。

 

「さて、この中は完全なる闇になってるけど―――」

 

「お、なんすか。出番っすか」

 

 ララを持ち上げて、頭だけを闇の中に突っ込む。まるでプールの中に突っ込んだような感触だ。それから数秒待ってからララを引っこ抜くと、綺麗にララの頭だけが無くなっていた。

 

「こんな風に俺達は闇の中は全く見えないけど普通にあっちからは見えるから注意だよ」

 

「今の殺す必要あったか?」

 

「では干渉しますね」

 

 フラメアが入れ替わるように前に出る。片手で魔法陣を浮かび上がらせると暗黒樹海を覆う闇に干渉し、指先を闇へと向ける。モーゼが海を割ったように暗黒が割れ、その中に隠されてきた樹海の姿が露わになる。

 

 それは漆黒の世界。

 

 この世で最も秘される魔境であり、人の侵入を拒んできた聖域。

 

 開闢の時に神が生み出し、そして闇のヴェールを以って封じて来た世界。それが今、地球人類の前にその真なる姿をさらす。巨大な樹木はそのまま、辺りには黒く濁った植物が生い茂り、そして外から入り込んでくる光を空気を吸い込む様に吸引してくる。

 

 フラメアによって下げられた干渉力によって、吸光性を持った植物たちは光を飲む力が薄れている。その影響で薄暗い闇の世界が見える様になる。

 

 だがこの闇の世界にも進むべき順路が存在する。

 

 それはかつて、とあるロマンを夢見た男の名残。世界の果てを見に行く最後の旅に出た男の足跡。それが闇の中、決して消えない光の足跡となって所々残されている。完全な闇は一筋のロマンによってその完全性が失われた……暴かれない限りは。

 

「ようこそ、暗黒樹海へ」

 

 唯一、この抜け方を知っている人間として他の4人を歓迎する。全員、初めて見る大魔境の光景に言葉を失い、それから境目を見て、そして激変する環境に目を細める。

 

「これが暗黒樹海か……本当に環境が切り替わるな」

 

「一体どういう構造をしてるんだこれ? 光を吸い込む植物なんて見た事がないぞ」

 

「うーん、これは迷いそうだなぁ」

 

「あっちこっちに凄い数の死亡フラグが見えてるわねこれ」

 

 楽しそうにしているのを見ると思わず笑顔になる。やっぱり新マップ、それも特殊な構造をしている所を見るのは楽しい。ゲームでとりあえず新しいマップに到着したら環境を眺めたりするのは最近のRPGあるあるではないだろうか? それがリアルとなると迫力も違ってくる。

 

「とりあえず突入する前に2個3個言っておく事がある」

 

「聞こう」

 

 ここら辺は流石プロというか、反応が早い。全員俺の言葉に耳を傾けてる。

 

「第1に空気の濃度、重さは変わってない。フラメアから離れると離れるだけ苦しくなるし、酸素中毒で死ぬ可能性が出て来るので、絶対にはぐれないで欲しい。フラメアが死んだ場合も同等の危険性が発生するので絶対にフラメアを死守して欲しい」

 

「了解した。1人は常に護衛に回そう」

 

 2つ目。

 

「暗黒樹海は所謂迷いの森構造になっていて、間違ったルートを通ると永遠に進めないけど、正しいルートを通れば凄いあっさりと奥へと進める。ただし時差がヤバイから、中層に辿り着いて外に出るだけで1か月2か月ぐらいの時差は覚悟してね。今回は浅層と中層の合間にある安全地帯まで移動して、そこを拠点に狩りをする予定。そこからならワープで直ぐに村に戻れるから」

 

「はぐれたら死ぬ、と」

 

 このマップ、色々と行ける場所が分岐するのだが、正しい手順があってそれを守らないとひたすら戻されるんだよね。まあ、行き止まりにもアイテムがあるし全くの無駄という訳ではないのだがやっぱり時間の問題があるので今回は雑魚狩り集中の為さっさと進みたい。

 

 いや、ほんと、奥行くだけなら楽なんだよ。

 

 1年経過ペナルティが重すぎる。これがダンジョン攻略の足を滅茶苦茶引っ張ってるんだよな……。ゲームの仕様としてはまあ、受け入れられるんだけど。これが現実となると話はだいぶ変わって来る。唯一ペナルティの時差がないのはノアぐらいだが、アレはちょっと今の人類戦力で勝てるかどうか怪しいよね。

 

 海王が。

 

 タイダルウェイブ! アクエリアス・ワールド! ブルースフィア! ずどん! ずがん! 見える範囲全滅! 見えない範囲も全滅!! 大陸沈没!

 

 やっぱ俺がSに上がるまではノアとドラゴンズバレー無理では? 絶滅せずにちょっと待っててくれよ人類!

 

「んで最後に」

 

「うむ、何かな?」

 

「とりあえず1戦、俺からのサポやネタバレ抜きでやってみない? 暗黒樹海の雑魚は相当強いよ。かなりハイレベルだけど、これは高難易度ダンジョンに今後出て来る雑魚の基準でもあるし。ボスはこれを超える理不尽な性能してる。それを先入観無しで体験してほしい」

 

 俺の言葉に少年みたいな男共が楽しそうに頷く。

 

「勿論だ。願ってもない」

 

「ネタバレ抜きで戦えるのは喜び以外の何物でもないぞ」

 

「少し不安かな」

 

「私も結構不安」

 

 不安なのは樽で酒を飲んでるお前の姿の方なんだが。本当にちゃんと戦えるのかこいつ? まだ戦ってる姿を1度も見た事がないんだけど? まあ、でも、現役3位だしな……ちゃんと強いんだろう。たぶん。

 

 という訳で。

 

 同意を得られたので暗黒樹海へと入り込む。

 

 ねばりつくような闇の重みが体に襲い掛かる。だがそれらは全てフラメアの干渉によって相殺され、闇の重みで圧殺される事も窒息する事もなくなる。それによって暗黒樹海の道が開ける。足を踏み出し、大地を踏むたびにくしゃり、と足元の大地に光の足跡が残る。

 

 外から入り込んできた、靴に付着した光の残滓だ。

 

 だがそれもやがて、大地や植物に吸われて消える。

 

 僅かな光でさえここには不要。

 

 全ては闇の中で静かに眠り続ける―――筈だった。

 

 樹海、木々の合間から何かが迫って来る。それがモンスターであると認知するよりも早く、歴戦のマスターたちが戦闘態勢に入る。1番前に立つのはやはり、現役の日本1位であるマスター仮面だ。可愛らしいけど恐ろしく強いぷにぷにのゼリィ達を戦闘陣形で展開させるとそれは現れた。

 

 それは黒い。

 

 それは形を見いだせない。

 

 それは認知できない。

 

 それは暗黒を身に纏った縺ッ縺?″縺カ縺だった。

 

「なんだ、これは……?」

 

 仮面の困惑する様な声をよそに、戦闘エリアは形成される。敵の戦意、それによって戦いは始まった。

 

 縺ッ縺?″縺カ縺Aが現れた!

 縺ッ縺?″縺カ縺Bが現れた!

 縺ッ縺?″縺カ縺Cが現れた!

 《暗黒樹海》の闇が濃く辺りを満たしている!

 全ての存在は対象指定できなくなった!

 縺ッ縺?″縺カ縺ABCは《暗黒のヴェール》に身を浸した……。

 縺ッ縺?″縺カ縺ABCはこのターン絶対回避状態になった!

 

「?????」

 

 仮面が頭の上に大量のはてなを浮かべた。

 

「あの、対象指定できない上に絶対回避付与されたのですが」

 

「うん!」

 

 仮面の言葉にサムズアップと笑顔で応える。

 

「Welcome……暗黒樹海へ!」

 

 サムズアップした指を真下に向ける。

 

「盛大に死んで逝ってね!」

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