最強以外ありえない   作:てんぞー

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Error!

「じゃ、やりますか。クラマオウ、コノハサクヤ、黄龍、スクナ。酒代の為に頑張って」

 

 山間に強風が吹いた。風に視界が遮られたと思えば白い羽の天狗の王が降臨する。舞い散る花びらの間をゆっくりと歩む様に草花を象徴する姫君が現れ、龍脈から大地の化身そのものが、黄金色に大地を染め上げながら現れる。

 

 そして最後、リョウメンスクナは4本の腕で4本の強い零の缶を開けると、それを口の中に流し込んだ。

 

「めんどくさいからストライキして良いか?」

 

「上がカスなら下もカスかあ」

 

「アレだけだ。アレだけが例外なんだ」

 

「アレと一緒にしないでください」

 

「ぐおーん(アレ縁で引き寄せられた合体なんだよー)」

 

 空を飛んでいる黄龍からなんかあんま知りたくない情報が入って来たな。この東洋神魔パが歪沢椿という酒クズが集めたモンスターであり、彼女が日本3位として保持している構築だ。こう見るとゲームとか漫画で良く見る名前ばかりだな。

 

 さて。

 

 相手側のモンスターも布陣を終えたらしい。巨大な鎧姿が山に手をかけているのが見える。うーん、デカい。足元にいるモンスターも十分デカい筈なのに、小さく見えて来るのが不思議だ。

 

 ドローンカメラによるカウントダウンが始まる。めんどくさそうにしていたスクナが強い零の缶をにぎりつぶすと全部纏めて1つにし、それを口の中に放り込んで食べた。赤髪をオールバックに流し、欠伸を零すと頬を軽く叩いて眠気を払った。

 

 天狗の王が相変わらずコイツは……と額に青筋を浮かべるのを花の姫が窘め、空を飛ぶ巨大な黄金の龍がのんびりと空を泳ぐ。こいつら、戦いの前だというのに高揚とかそういうの一切ないな……。

 

 本当に大丈夫なのこれ?

 

「じゃ、よろしくね未来の救世主さん」

 

「その呼び方は止めてくれ」

 

 溜息と共に戦闘がカウントダウンがゼロになり、戦闘が始まる。シンクロ、開始。サポートの為に脳をフルに稼働させ、酒クズと嫌々ながら接続し―――。

 

「あ」

 

「お」

 

 同時に声が漏れる。

 

「マジか」

 

 イタリア代表が現れた!

 軍神マルスが現れた!

 月神アルテミスが現れた!

 怪猫ウェルダンテが現れた!

 凶獣テラヴントが現れた!

 尊は《メタ知識》で対象のデータを解析した!

 椿は《泡沫の世界》で無数の未来を観測した!

 《メタ知識》と《泡沫の世界》が組み合わさる!

 《確定予測》により行動と予兆が確定された!

 

 相性が良すぎた。酒クズの未来予知は無数に存在する未来の可能性を観測する能力だ。常に正解が見えているわけではなく、彼女自身がそこから正解を選ぶ必要がある。

 

 その選択がメタ知識による補正で潰される。最もありえる未来がピックアップされる。その結果、たった1つの未来だけがその瞳に観測される。

 

「ひっひっひっ、面白くなってきたな。パパ今日はちょっと頑張っちゃうぞー」

 

 スクナは勝手に観測された未来を再観測した!

 スクナは絶■■避を獲得した? Error?

 

「あ、こら」

 

 システムの範疇から飛び出してスクナが戦場を飛び出した。一直線に敵陣へと突っ込んだ。突出した単騎なぞどの時代も囲んでボコられる運命だ。単騎で敵陣に踏み込んだスクナの運命は決まった――ように見えた。

 

 振るわれたマルスの刃を受け流した。

 

 マルスの攻撃!

 スクナはError!!

 スクナは回避した!

 Error! スクナは回避した?

 Error! Unidentified Movement?

 

 ……駄目だ、スクナの動きが構築したシステムを貫通してくる。俺の認知を越えてくる動きをしている。つまり俺が知っているゲームとしての動きを超越して動いている。

 

 マルスの攻撃を回避しながら刃を掴むと捻り上げ、確定した未来を利用するようにマルスの力をそのまま利用して相手へと向けて投げた。自身の数倍巨大な質量が投げられ、相手を巻き込みながら山へ衝突する。

 

 その衝撃に山が崩れ始める中、フィールドスキルが発動する。《暗黒樹海》が山を突き破って現れ始め、山が闇に覆われ始める。それを覆す様に別のフィールドが即時展開され、フィールドをフィールドで上書きして無効化する。

 

 基本的な対フィールド戦術が構築され始めている。

 

 だがそれを台無しにするようにスクナが発動者の顔面に拳を叩き込んだ。

 

「おぉ、見えるって快適だな。何やっても成功するし、何やっても失敗しない感じがスゲェ。無敵モードじゃん」

 

 スクナは回避している?

 スクナは??? 

 スクナ?? スク?? Error! Error!

 

 ―――ソレにはセンスがあった。

 

 時間を見るのではなく面や線で捉えるセンスが。タイムラインを理解して完全に合わせる才覚が。足りなかったパーツが埋められるように全能感がスクナの脳を満たす。

 

 時間が見える。それは対処法が解るということ。

 

 本来生物は一方に流れる時間しか知覚出来ず、流れの異なる時間を知覚しても適応する事が出来ない。だがスクナには武芸と技巧と才覚と経験があった。それも異なる時間に適応する為のものが。

 

 スクナの資質と能力が完全に合致した。

 

 先を見て、技を置く。怪猫の奇襲を小石を蹴って潰し、迫る魔法を起点を見抜いて踏み抜く。凶獣の乱撃を未来を見て回避し、カウンターで次の攻撃への盾に使う。

 

 嵐。

 

 その中心。スクナは1人で立っていた。

 

「ひひひ、ははは」

 

 援護なし。支援魔法なし。ただ孤独の舞台に立ってもなお無傷。四方八方から襲い来る攻撃と爆撃、地形を消し飛ばすほどの衝撃と嵐を全て回避、迎撃、受け流す。

 

「そら」

 

 アルテミスの放った矢の雨は必中、必ず当たるそれはスクナが放った小石で軌道を変え、ぶつかり合い、地上に届く前に崩れ落ちた。

 

 支援魔法を理解しているかのように割り込んで奪い、その合間に《神便鬼毒酒》を呷る。血管に酒を通すかのように酔いながらも力は増し、更に力強く殴り飛ばす。

 

 文字通り、無敵だった。

 

 システムの範疇から飛び出していた。

 

 認知が存在を定義させられない。

 

 戦闘補助、理解の為に組み上げた思考整理用のシステムが敗北を告げた。

 

 こいつは、そういう領域を今、ぶっちぎった。

 

 何時かは現れると思った、システムの範疇に収まらない存在。言い換えてしまえばこれまでの相手はお行儀の良い戦い方をしてた。だがこいつは違う。ルール、法則、システム。

 

 その全てを蹴り飛ばして自分の道を行く強さがあった。

 

「捕まえたぁ!」

 

 猫を掴み、盾にしながらそれを凶獣の心臓に叩き込んだ。頭の弾ける音と心臓の破れる音。当然の死を迎えるモンスター達、その返り血を浴びて爛々と鬼神が目を輝かせる。

 

「もっとだ! 足りねぇ! 簡単すぎる! これがチートってやつか! ははははは―――!」

 

 振り下ろされる軍神の剣を紙一重で回避し、飛んでくる矢を弾いて軍神へと叩き込んだ。それで仰け反る未来を観測したスクナが動く。

 

 軍神の差し出された腕を掴み、捩じ切る。

 

「返すぜ! そーらーよっ!!」

 

 捩じ切った腕を軍神に突き刺し、それをそのまま投擲する。貫かれた巨体が吹っ飛び山に突き刺さる。轟音を立てて山が崩れ始める。

 

 良かった。

 

 何もかもが。

 

 絶望的に相性が良すぎた。

 

 そしてこいつは駄目だ。見ていて解る。こいつは何時か、マスターを殺すタイプのモンスターだ。初めて見た、ここまでイカレてブレーキのかかってない本物の化け物は。

 

 こんだけ強いのになんでゲーム本編で酒クズを見てないのか解った。こいつ、スクナにどっかで殺されてるな?

 

「残すはキレイな女神サマだけだなぁ、おい」

 

「滅茶苦茶にも程があるわ」

 

「おいおい、俺に言ってくれるなよ。今はちょっと無敵入ってるだけだからよ」

 

 弓を構える月神の姿を見て、にたりとスクナは笑った。危機を察知した月神が下がろうとし、その動作を全て見ていたスクナが女神に一瞬で追いついた。

 

 伸ばした手は女神の首を掴み、2本目の腕で弓をへし折った。3本目の腕で女神を押さえつけ、圧倒的な力で全てを蹂躙した。鬼神。悪童。怪物。その名にふさわしい姿で蹂躙を完了させた鬼の王の姿がそこにはあった。

 

 ゲームが成立しない。或いは成立させない。強いとかそういう次元じゃない。まさしく異次元としか言いようのない強さを証明していた。これが本当に現実なのかどうかが疑わしい程に。許されるのか? これが? 試合が試合らしさを見せていない。

 

「さぁて、この女神サマはどうしてやろうかな」

 

「殺すならさっさと殺せば? それで終わりでしょ」

 

 掴まれた月神が呆れたように言う。それを見てスクナが不満げな表情を浮かべる。

 

「おいおい、負けたんだからもう少し悔しがってくれよ。そうじゃなきゃ暴れた意味がないだろ。わーきゃーされるのは鬼の役割なんだぜ? 折角なんだ、もっとイイ悲鳴を聞かせてくれねぇか? なあ?」

 

 そう言うスクナにアルテミスは答えない。まともに問答する気はないらしい。繋がっているシンクロを通して鬼神の考えが伝わって―――来ない。一方的に、酒クズの方から接続を切らされた。その衝撃にちょっと頭が揺らぐ。

 

「酒クズ?」

 

「もう戦いは終わりだし、スクナの悪癖が出て来たから……スクナ! 戦いを終わらせて! 早く! もう満足したでしょ! 終わってさっさとお酒を飲もうよ! ねえ!」

 

 酒クズの呼びかけにスクナは鬱陶しそうに振り返る。マスターとしての強制力が働いている。Sランクマスターである以上、スクナは酒クズに逆らう事が出来ない。それは用意されたルールであり、不文律だ。だがそのギリギリのラインをこの鬼神は探っている。

 

 本当に大丈夫かコイツ?

 

 そう思うと残虐な笑みをスクナが浮かべた。

 

「ああ、解った―――さっさと殺して終わらせるか」

 

「見ない方が良いかも」

 

「え?」

 

 スクナが女神の腕を引きちぎった。その鮮血シャワーを浴びるように。引きちぎった腕を喰らい、逆の腕を引きちぎり、見せつける様にドローンカメラに殺戮を見せつけて行く。

 

 最終世代のモンスター達は皆、規格外の生命力を持つ。腕や足を失っても直ぐに再生するか、或いはそれでも死なない。中には心臓や頭を破壊しても即死しない奴だっている。それを理解してスクナは女神を解体し始める。

 

 殺しているんだから指示に従っているだろう? と言い訳するように。

 

 千切って。ばらして。食らって。鮮血を浴びて。

 

 それでも最後まで女神は悲鳴を一度も上げる事なく最期を迎え、鬼神は膨れた腹を撫でながら声を零した。

 

「んだよ、つまんねー女。少しは悲鳴上げろよな」

 

 最後に赤く染まったドローンを握りつぶして、日本の1勝が決まった。




 色々と粗があったので修正しました。
 また最近執筆を詰め込み過ぎている疑惑が出て来たので話の整理と修正の為に更新頻度を少し下げます。
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